おなじみの私的解釈ではありますが、たぶん、これが本当だと思っています。文中に登場する「朝顔＝二日酔い」という部分は、実際に江戸時代の文献に残っている当時の隠語です。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
宝井其角が去った１７０７年、遠い石川県で４歳になる少女が遊んでいた。もちろん、この人は不良ではない。しかし、江戸中のワルさえも虜にするほど粋な句を詠むのである。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「朝顔や つるべ 取られて 貰い水」の千代女さんだ。
この人はもっと大ブレークするべき俳人なのだが、美しい句を詠む女流俳諧師としてだけ知られるところが残念でならない。千代女さんは２１世紀人さえ唸らせる、恋や愛、哀しみ、そして洒脱も俳句に詠んだ人だ。
現存する座卓と、それが一緒に描かれた全身画から、身長１６０ｃｍを超えるスラリとした美女であったと伝えられる。
「近道は 男のわざや 桃の花」
「ふみわけて 雪に迷うや 猫の恋」
など、男女の恋心を詠んだとしか思えない句を多数残している。ちなみに、専門家の解説は、前句が「旅先で出会った男性に 近道を教えてもらったという句」であり。後の句に至っては「猫のさかりを詠んだ」とされる。。。。。。そんな解釈で江戸っ子が口ずさむはずがない。
たとえ、「猫の恋」が季語の一つだとしても、千代女が詠めば、もっと深い印象を与えるというものだ。千代女の句は、詠み人の句意を超えて、多くの人に愛されたのである。その土壌に其角の「伊達」や「洒落風」が生きていたことは間違いない。美化の誇張だけで、江戸っ子の心をつかむとは考えにくいのである。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
千代女の人生には大きな不運と幸運が極端に訪れる。
結婚生活は夫の病死により、２年に満たずに終わり、愛児もまた病気で失い、その後は独身を通してしまう。しかし、数々の有名な俳人との出会いから、その俳句の才能が開花し、数多くの句を３００年後の現代に残した。
さて、千代女の生まれた１０年後に、千代女の俳句に更なる価値を与える人物が生まれている。柄井川柳である。どちらも長寿だったので、活動期は重なっている。ここに、歴史の奇跡がある。
柄井川柳とは、「川柳」の語源となった選句者であり、江戸の洒落や粋を短文形式の文学にまで押し上げた人である。
川柳は、すでにあった句選集に比べて、そのセンスの良さから、驚異的な数の句を集めるようになる。月に１万句を超えることもあったという。
投稿者は、町人から高級武家に至るまで、その句選集に掲載されることを最高の栄誉として粋を競った。「川柳」とは個人名である。その川柳に選ばれた「優秀作」が、江戸の「粋」を熟成させていく。
「孝行を したい自分に 親はなし」
「色おとこ 金と力は なかりけり」
川柳のもとへ送られた句は、３３年間で２６０万句とも３００万句とも言われる。中世最高の感性は日本にあったのではないかと思えてくる。その感性は、服装から武具、日用品に至る、あらゆるものに影響を与えた。余談だが、この時期の植木屋は、障子に映る庭木の枝の影にまで心血を注いだとされる。
その川柳の爆発的流行の少し前に、石川県から江戸へ千代女はやってきた。そして「朝顔に、、、」という句を残していくのである。
本人にとっては、朝顔の清楚な美しさと、人の優しさを詠んだものだったはずだ。現在の解釈もそこに戻っている。それが予想外の事態に発展する。そこは江戸である。「粋はどこだ」と目を輝かせる庶民５０数万の暮らす大都市であった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
江戸っ子はこの句を「粋」と解釈したのである。さらに、
「朝顔は 地に咲くことを あぶながり」と来たら、もうたまらない。
江戸っ子にとっての朝顔とは、「二日酔い」あるいは「酔っ払い」の意味を含んでいたのである。石川県から来た千代女がそれを先に知っていたとは思えない。ここから、本人の句意とは別の意味をもって、千代女の句は日常会話にまで使われていったことが想像できる。また、それらの句が、絶世の美女の詠んだ句と分かれば、江戸っ子には、朝顔の花が一層粋に輝いたことだろう。
二日酔いで朝から赤い顔の熊さんが、井戸の冷たい水を飲むためにヨタヨタ歩いていくと、すでに長屋の女将さんたちが、朝食の準備中である。その順番を待って
「すまねえ、水を一杯くれねえかい」と頼むと、
「あら、熊さん。また朝顔が貰い水かい」
そんな会話がこの句を後世に伝えたのである。働き者の女性たちが楽しそうに笑う声が聞こえてくるようだ。
ちなみに、当初は「朝顔に」と詠んだ句を、後年、本人が「朝顔や」に変えた理由も、ここにありそうだ。
もっとも、「朝顔に」でも、十分洒落ている。のどが渇いて井戸まで行ったら、すでに二日酔いの八っつぁんが釣瓶を抱えて水を飲んでいる様子に例えることができる。夏は日が延びるから仕事もはかどり、給金も増えたであろうから、酒を飲む機会も多かったはずだ。この季節が朝顔の咲く季節と重なっている。
さらに、二日酔いが冷たい井戸水を飲みに行ったら、朝顔の蔓がつるべに巻いていて、近くの家で水を貰った、という解釈もできる。まあ、どんな詠みかたをしても、当初の千代女の句意とはかけ離れていそうだ。詠まれた井戸はお寺の井戸だと云われているから、長屋ではない。
流派を超えて、多くの俳人と交流を持ったことで知られる千代女である。江戸で流行し始めた川柳に興味を持ったことは十分に想像される。そこで、この後で自分の句が流行している理由を知った可能性が高い。
「朝顔や 宵から見ゆる 花の数」
江戸っ子には、『宵の飲みっぷりを見ていたら、明日の朝二日酔いになりそうな人が想像できる』という意味に解釈されたはずだ。粋が最上の江戸で、これ以外の解釈があったとは思えない。明日の朝顔たちが、酒屋で引用して大いに笑い転げたであろう。
そして、後年本人が選定した朝顔の代表作には、まったく別の句が入った。ここに、「つるべ取られて、、」が入っていないという点に留意すべきである。千代女さんはもう気づいている。すでに川柳は隆盛を極めており、武家まで含めた江戸の人口は１００万に達しようとしていた。そこで、圧倒的な感性で江戸の粋をうならせたのである。
本人が選んだ朝顔の一句はこれだ。
『朝顔や 起こしたものは 花も見ず』
これは、恋焦がれて一緒になった新婚の女房に起こされた二日酔い（朝顔）が、あれほど好きだった女房の顔（花）も見ずに、あわてて仕事場へ駆け出して行く様子ではないか。朝顔やの「や」が複数の対象を暗示している。 「朝顔を」なら、花だけの句で終わっただろう。千代女ならではの「女性の粋」である。飲みすぎた亭主が、少々寝過ごし、あわてて駆け出して行ったあとの庭先に、朝顔の花が揺れている様子が余韻として残る。どっちに詠んでも名句である。
「なぜ、あの一番有名な『つるべ取られて、、』が代表作ではないのだろう」と疑問に思う人が多い句だが、この真意を想像すれば、こちらの方が奥深い。また、あの句がどれほど流行したとしても、自分の意図した句意での流行ではなかったのだろう。
千代女の句には、詠む者も、その句で呼びかけられた者も、双方を粋にしてしまう絶大な魅力があった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「百生（ひゃくなり）や 蔓ひとすじの心より」
この句など江戸っ子たちが恋文に使ったであろう。恋する乙女心にも思えるし、夫の病死後は残る生涯を独身で過ごした思いを込めたとも思える。また、俳句に込める一途な心を詠んだ句という解釈もできる。
「うら道に よきことふたつ 清水かな」
独身時代の句とされる。裏道を歩いて、想いを寄せる人のもとへ向かう途中だったのだろう。清らかな泉が同じ場所に湧き出ているのを見て、今日もいつものように逢える、そんな気持ちを詠んだように思える。よきことの、もうひとつこそが主題だろう。その想いが清水のように次から次へと絶えることなく湧いてくる、そう解釈できる句だ。
「あさがほや 帯して寝ても 起はづれ」
女性の朝顔を詠んだと解釈すると、非常に艶っぽい句である。江戸っ子なら必ずそちらの意味で詠んだであろう。
「今日は今日の風にしたがふ 若葉かな」
「若草や まだどちらへも かたよらず」
「打ちすてて 誰がぬしなるぞ つづみ草」
（つづみ草：タンポポのこと）」
「あしあとは 男なりけり 初桜」
「美しい 夢見直すや 花の春」
男女の恋心を感じるこれらの句も、専門家の解釈は、江戸っ子が苦笑するであろう内容となっている。学者は、一茶や芭蕉の研究と一緒に、ユーミンの詩を研究すべきであろう。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
辞世の句は難解とされる
「月もみて われは この世をかしく哉」
「かしく」は手紙の最後につける「かしこ」と同じ意味らしい。月を見ながら、あるいは、月が私を見ながら、人生を終えようとしています、という解釈が一般的だ。たったそれだけかい！と私は言いたい。
だから私はこう解釈する。
「月が見られた」という表現は、大きな感謝の気持ちだろう。そこに「も」とあるのは、その最後に見る月と同じように輝く感謝の気持ちが他にもある、ということではないのか。
その感謝とは、特定の流派に属さなかった自分に俳諧の指導をしてくれた師匠たちへの感謝、旅の先々で自分に優しくしてくれた人への感謝、自分の句を愛してくれた人たちへの感謝、そして、結婚してからも句会への出席を許してくれた夫への感謝ではなかったか。
また、夫と死別してから、一生を独身で通した千代女にとっては、愛しい人とまた会える日がそこまでやって来ているという思いもあったはずだ。その願いの叶う前に、夜空に輝く月を見たのである。
結婚後２年足らずで他界した夫が、月の下で我が子を抱いて立っている。
優しい夫が笑顔で語りかける。
「長い句会だったなぁ。さあ、一緒に家に帰ろう」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＊画像の本は昭和１７年に発刊された千代女の俳句集です。この年は紙の統制により、電話帳の発行も禁止された年なので、どうしてこの本が無事に発刊されたのかとても不思議です。
発刊を許された理由があるとすると、戦地に赴く兵士たちへこの本を贈りたいと思った人がいたのだろうと想像しています。
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宝井其角が去った１７０７年、遠い石川県で４歳になる少女が遊んでいた。もちろん、この人は不良ではない。しかし、江戸中のワルさえも虜にするほど粋な句を詠むのである。
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「朝顔や つるべ 取られて 貰い水」の千代女さんだ。
この人はもっと大ブレークするべき俳人なのだが、美しい句を詠む女流俳諧師としてだけ知られるところが残念でならない。千代女さんは２１世紀人さえ唸らせる、恋や愛、哀しみ、そして洒脱も俳句に詠んだ人だ。
現存する座卓と、それが一緒に描かれた全身画から、身長１６０ｃｍを超えるスラリとした美女であったと伝えられる。
「近道は 男のわざや 桃の花」
「ふみわけて 雪に迷うや 猫の恋」
など、男女の恋心を詠んだとしか思えない句を多数残している。ちなみに、専門家の解説は、前句が「旅先で出会った男性に 近道を教えてもらったという句」であり。後の句に至っては「猫のさかりを詠んだ」とされる。。。。。。そんな解釈で江戸っ子が口ずさむはずがない。
たとえ、「猫の恋」が季語の一つだとしても、千代女が詠めば、もっと深い印象を与えるというものだ。千代女の句は、詠み人の句意を超えて、多くの人に愛されたのである。その土壌に其角の「伊達」や「洒落風」が生きていたことは間違いない。美化の誇張だけで、江戸っ子の心をつかむとは考えにくいのである。
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千代女の人生には大きな不運と幸運が極端に訪れる。
結婚生活は夫の病死により、２年に満たずに終わり、愛児もまた病気で失い、その後は独身を通してしまう。しかし、数々の有名な俳人との出会いから、その俳句の才能が開花し、数多くの句を３００年後の現代に残した。
さて、千代女の生まれた１０年後に、千代女の俳句に更なる価値を与える人物が生まれている。柄井川柳である。どちらも長寿だったので、活動期は重なっている。ここに、歴史の奇跡がある。
柄井川柳とは、「川柳」の語源となった選句者であり、江戸の洒落や粋を短文形式の文学にまで押し上げた人である。
川柳は、すでにあった句選集に比べて、そのセンスの良さから、驚異的な数の句を集めるようになる。月に１万句を超えることもあったという。
投稿者は、町人から高級武家に至るまで、その句選集に掲載されることを最高の栄誉として粋を競った。「川柳」とは個人名である。その川柳に選ばれた「優秀作」が、江戸の「粋」を熟成させていく。
「孝行を したい自分に 親はなし」
「色おとこ 金と力は なかりけり」
川柳のもとへ送られた句は、３３年間で２６０万句とも３００万句とも言われる。中世最高の感性は日本にあったのではないかと思えてくる。その感性は、服装から武具、日用品に至る、あらゆるものに影響を与えた。余談だが、この時期の植木屋は、障子に映る庭木の枝の影にまで心血を注いだとされる。
その川柳の爆発的流行の少し前に、石川県から江戸へ千代女はやってきた。そして「朝顔に、、、」という句を残していくのである。
本人にとっては、朝顔の清楚な美しさと、人の優しさを詠んだものだったはずだ。現在の解釈もそこに戻っている。それが予想外の事態に発展する。そこは江戸である。「粋はどこだ」と目を輝かせる庶民５０数万の暮らす大都市であった。
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江戸っ子はこの句を「粋」と解釈したのである。さらに、
「朝顔は 地に咲くことを あぶながり」と来たら、もうたまらない。
江戸っ子にとっての朝顔とは、「二日酔い」あるいは「酔っ払い」の意味を含んでいたのである。石川県から来た千代女がそれを先に知っていたとは思えない。ここから、本人の句意とは別の意味をもって、千代女の句は日常会話にまで使われていったことが想像できる。また、それらの句が、絶世の美女の詠んだ句と分かれば、江戸っ子には、朝顔の花が一層粋に輝いたことだろう。
二日酔いで朝から赤い顔の熊さんが、井戸の冷たい水を飲むためにヨタヨタ歩いていくと、すでに長屋の女将さんたちが、朝食の準備中である。その順番を待って
「すまねえ、水を一杯くれねえかい」と頼むと、
「あら、熊さん。また朝顔が貰い水かい」
そんな会話がこの句を後世に伝えたのである。働き者の女性たちが楽しそうに笑う声が聞こえてくるようだ。
ちなみに、当初は「朝顔に」と詠んだ句を、後年、本人が「朝顔や」に変えた理由も、ここにありそうだ。
もっとも、「朝顔に」でも、十分洒落ている。のどが渇いて井戸まで行ったら、すでに二日酔いの八っつぁんが釣瓶を抱えて水を飲んでいる様子に例えることができる。夏は日が延びるから仕事もはかどり、給金も増えたであろうから、酒を飲む機会も多かったはずだ。この季節が朝顔の咲く季節と重なっている。
さらに、二日酔いが冷たい井戸水を飲みに行ったら、朝顔の蔓がつるべに巻いていて、近くの家で水を貰った、という解釈もできる。まあ、どんな詠みかたをしても、当初の千代女の句意とはかけ離れていそうだ。詠まれた井戸はお寺の井戸だと云われているから、長屋ではない。
流派を超えて、多くの俳人と交流を持ったことで知られる千代女である。江戸で流行し始めた川柳に興味を持ったことは十分に想像される。そこで、この後で自分の句が流行している理由を知った可能性が高い。
「朝顔や 宵から見ゆる 花の数」
江戸っ子には、『宵の飲みっぷりを見ていたら、明日の朝二日酔いになりそうな人が想像できる』という意味に解釈されたはずだ。粋が最上の江戸で、これ以外の解釈があったとは思えない。明日の朝顔たちが、酒屋で引用して大いに笑い転げたであろう。
そして、後年本人が選定した朝顔の代表作には、まったく別の句が入った。ここに、「つるべ取られて、、」が入っていないという点に留意すべきである。千代女さんはもう気づいている。すでに川柳は隆盛を極めており、武家まで含めた江戸の人口は１００万に達しようとしていた。そこで、圧倒的な感性で江戸の粋をうならせたのである。
本人が選んだ朝顔の一句はこれだ。
『朝顔や 起こしたものは 花も見ず』
これは、恋焦がれて一緒になった新婚の女房に起こされた二日酔い（朝顔）が、あれほど好きだった女房の顔（花）も見ずに、あわてて仕事場へ駆け出して行く様子ではないか。朝顔やの「や」が複数の対象を暗示している。 「朝顔を」なら、花だけの句で終わっただろう。千代女ならではの「女性の粋」である。飲みすぎた亭主が、少々寝過ごし、あわてて駆け出して行ったあとの庭先に、朝顔の花が揺れている様子が余韻として残る。どっちに詠んでも名句である。
「なぜ、あの一番有名な『つるべ取られて、、』が代表作ではないのだろう」と疑問に思う人が多い句だが、この真意を想像すれば、こちらの方が奥深い。また、あの句がどれほど流行したとしても、自分の意図した句意での流行ではなかったのだろう。
千代女の句には、詠む者も、その句で呼びかけられた者も、双方を粋にしてしまう絶大な魅力があった。
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「百生（ひゃくなり）や 蔓ひとすじの心より」
この句など江戸っ子たちが恋文に使ったであろう。恋する乙女心にも思えるし、夫の病死後は残る生涯を独身で過ごした思いを込めたとも思える。また、俳句に込める一途な心を詠んだ句という解釈もできる。
「うら道に よきことふたつ 清水かな」
独身時代の句とされる。裏道を歩いて、想いを寄せる人のもとへ向かう途中だったのだろう。清らかな泉が同じ場所に湧き出ているのを見て、今日もいつものように逢える、そんな気持ちを詠んだように思える。よきことの、もうひとつこそが主題だろう。その想いが清水のように次から次へと絶えることなく湧いてくる、そう解釈できる句だ。
「あさがほや 帯して寝ても 起はづれ」
女性の朝顔を詠んだと解釈すると、非常に艶っぽい句である。江戸っ子なら必ずそちらの意味で詠んだであろう。
「今日は今日の風にしたがふ 若葉かな」
「若草や まだどちらへも かたよらず」
「打ちすてて 誰がぬしなるぞ つづみ草」
（つづみ草：タンポポのこと）」
「あしあとは 男なりけり 初桜」
「美しい 夢見直すや 花の春」
男女の恋心を感じるこれらの句も、専門家の解釈は、江戸っ子が苦笑するであろう内容となっている。学者は、一茶や芭蕉の研究と一緒に、ユーミンの詩を研究すべきであろう。
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辞世の句は難解とされる
「月もみて われは この世をかしく哉」
「かしく」は手紙の最後につける「かしこ」と同じ意味らしい。月を見ながら、あるいは、月が私を見ながら、人生を終えようとしています、という解釈が一般的だ。たったそれだけかい！と私は言いたい。
だから私はこう解釈する。
「月が見られた」という表現は、大きな感謝の気持ちだろう。そこに「も」とあるのは、その最後に見る月と同じように輝く感謝の気持ちが他にもある、ということではないのか。
その感謝とは、特定の流派に属さなかった自分に俳諧の指導をしてくれた師匠たちへの感謝、旅の先々で自分に優しくしてくれた人への感謝、自分の句を愛してくれた人たちへの感謝、そして、結婚してからも句会への出席を許してくれた夫への感謝ではなかったか。
また、夫と死別してから、一生を独身で通した千代女にとっては、愛しい人とまた会える日がそこまでやって来ているという思いもあったはずだ。その願いの叶う前に、夜空に輝く月を見たのである。
結婚後２年足らずで他界した夫が、月の下で我が子を抱いて立っている。
優しい夫が笑顔で語りかける。
「長い句会だったなぁ。さあ、一緒に家に帰ろう」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＊画像の本は昭和１７年に発刊された千代女の俳句集です。この年は紙の統制により、電話帳の発行も禁止された年なので、どうしてこの本が無事に発刊されたのかとても不思議です。
発刊を許された理由があるとすると、戦地に赴く兵士たちへこの本を贈りたいと思った人がいたのだろうと想像しています。
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コメント(13)
> 徘徊少女さん
仰るとおりです (微笑)
川柳の代表作と言えば『誹諷 柳多留』、そしてその先駆けと言われているのが『誹諧 武玉川』です。この『誹諧 武玉川』の編者は慶紀逸で、れっきとした江戸座の俳諧師です。
古い俳句講座の巻末についている俳人系譜の一部をのせましたが、この慶紀逸は其角の系統の江戸座の人で、炭太祇の師匠とされています。
江戸時代には、現在のような俳句と川柳といった業界の分離が無く、広い意味での俳諧として扱われていました。
> James さん
たしかに...、というかあまり生真面目に「芸術」とか「文学」といった枠に入れないで、もっと自由に愉しんでいた時代だったと思います(^o^)
仰るとおりです (微笑)
川柳の代表作と言えば『誹諷 柳多留』、そしてその先駆けと言われているのが『誹諧 武玉川』です。この『誹諧 武玉川』の編者は慶紀逸で、れっきとした江戸座の俳諧師です。
古い俳句講座の巻末についている俳人系譜の一部をのせましたが、この慶紀逸は其角の系統の江戸座の人で、炭太祇の師匠とされています。
江戸時代には、現在のような俳句と川柳といった業界の分離が無く、広い意味での俳諧として扱われていました。
> James さん
たしかに...、というかあまり生真面目に「芸術」とか「文学」といった枠に入れないで、もっと自由に愉しんでいた時代だったと思います(^o^)
この前読んでいた漢詩の本に面白いものが出ていました。
江戸も末期の頃の六如上人という、坊主というより漢詩の詩人／指導者として有名な人の作ですが、次のような漢詩を見つけました。
井邊移種牽牛花 井邊（せいへん）移し種（うえ）る牽牛花
狂蔓攀欄横復斜 狂蔓（きょうまん）欄を攀（のぼ）りて横復斜
汲□無端被渠奪 汲□（きゅうこう）無端（はしなく）渠（かれ）に奪（うば）われ
近来乞水向隣家 近来（きんらい）水（みず）を乞（こ）うて隣家（りんか）に向（むか）う
※ □ = 糸偏 + 更、コウ
千代女のスレに何故漢詩を...、と思われた方、下に意訳したものを載せましたが、如何でしょうか？
井邊移種牽牛花 井戸の近くにあさがお植えた。
狂蔓攀欄横復斜 蔓があちこち伸びちゃって
汲□無端被渠奪 釣瓶にまでも巻き付いた
近来乞水向隣家 水をもらいに隣まで。
そうです。千代女の ＜朝顔に釣瓶とられてもらい水＞ をそのまま漢訳したものと言われています (笑)
千代女のこの句が当時いかに人口に膾炙し、いかに人々に愛誦されていたかをものがたるものと思います。こういった句は、小理屈で難癖をつけるのではなく、心で素直に感じる句かと思います。
江戸も末期の頃の六如上人という、坊主というより漢詩の詩人／指導者として有名な人の作ですが、次のような漢詩を見つけました。
井邊移種牽牛花 井邊（せいへん）移し種（うえ）る牽牛花
狂蔓攀欄横復斜 狂蔓（きょうまん）欄を攀（のぼ）りて横復斜
汲□無端被渠奪 汲□（きゅうこう）無端（はしなく）渠（かれ）に奪（うば）われ
近来乞水向隣家 近来（きんらい）水（みず）を乞（こ）うて隣家（りんか）に向（むか）う
※ □ = 糸偏 + 更、コウ
千代女のスレに何故漢詩を...、と思われた方、下に意訳したものを載せましたが、如何でしょうか？
井邊移種牽牛花 井戸の近くにあさがお植えた。
狂蔓攀欄横復斜 蔓があちこち伸びちゃって
汲□無端被渠奪 釣瓶にまでも巻き付いた
近来乞水向隣家 水をもらいに隣まで。
そうです。千代女の ＜朝顔に釣瓶とられてもらい水＞ をそのまま漢訳したものと言われています (笑)
千代女のこの句が当時いかに人口に膾炙し、いかに人々に愛誦されていたかをものがたるものと思います。こういった句は、小理屈で難癖をつけるのではなく、心で素直に感じる句かと思います。
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