ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

MmRコミュのMmR-37. Sorppor

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 もし外部とつながったリンクがあるならばそこから脱出できる可能性はあるが、自分やシアン、そしてあはは。といったプログラミングに精通した人間が参加している以上、素直に脱出できるルートが残されている可能性は少ない。しかし、外との接続が完全に断たれているとしても、内部には必ずこの『プログラム』を監視し、自分たちを――具体的にはこの首輪から出る信号を管理している端末があるはずだ。もしその端末を見つけて操作することができれば、首輪の爆破コードや出口のロックなどを内部から解除して、生きてここから脱出することも不可能ではない――。
 この空間が電脳的に構築された空間である以上、プログラミングの知識さえあればその理を書き変えることも不可能ではない。技術に裏打ちされた自分の言葉にティティスも一応の説得力を感じてくれたらしく、眉根を寄せてその可能性を吟味しているようだ。
 彼女の肩越しに、廊下から顔をのぞかせるしるびーとクルシアの姿が目に入った。初めて耳にした脱出の可能性に、二人の顔には希望と興奮の色が見て取れる。
 しかし、ティティスの反応はにべもなかった。
「呆れました。本当にそれだけで、脱出できると思っているんですか?」
「それは――」
「やってみなくちゃ分からない、ですか? すろぷろさん一人でですか? シアンさんはもう死んじゃいましたから、あはは。さんを探し出して、協力してもらうんですか? 彼が協力してくれる可能性は? もし二人で作業に取りかかったとして、かかる時間は? 全員の首輪が爆発する前に、全ての処理を終えることができますか? パソコン一台ないのに?」
「可能性が高くないのは否定しません」
 痛いところを突かれ、すろぷろは渋面をつくった。しかしそれでも諦めず、説得を続ける。
「ただ、私の見立てた感じだとこの『プログラム』は意外と単純なシステムで管理されているようです。従来の『プログラム』でよく見られる禁止エリアもないようですし。今回の会場が脱出困難な密閉空間にされているのも、有人の監視体制が敷かれていない点をカバーしているだけに過ぎないかと。以前にちゆ板で行われた『プログラム』ではもっと広大な島が用意されていたけど、大勢のコテハンを監視するために防衛軍の一部隊が現地に駐留して目を光らせていたじゃないですか。それに比べれば、今回は人の目が入っていないだけに手の打ちようはあります」
 外部とのつながりを完全に遮断されているということは、その中でどう状況が動こうと外からは見えないということである。
 例えば盗聴や人工衛星による監視を行い、有人による監視のもと、発生した脱走計画の芽を早くにつみ取る――他の『プログラム』では可能なそういった対策が、今回の『プログラム』では行われていない。
 そこにこそ、つけ込む隙がある。それがすろぷろの判断だった。
「なるほど、技術者らしい言い分ですね。でも仮にその脱出計画が成功したとして、生き残ったわたしたちはどうなるんでしょうねぇ? ちゆ板での『プログラム』では生存者なしという公式記録が出ていますが、隠れて島を脱出した人もいて、彼等には当局から追っ手がかかっているという話ですけど」
 その話なら、自分も聞いたことがあった。公式に死亡通知が出されている人間が、この世界で生きていていい理由はない。脱出者は執拗に追っ手をかけられ、サーバやプロバイダの体面にかけてこの世から葬り去られる。
「もしわたしたちが生きてここから逃げ出せたとしても、同じ展開になると考えるべきでしょう。この城内でのシステムをごまかせたとして、外部のサーバの目から身を隠すのは不可能です。サーバと『プログラム』が結託しているならば、余計に……ですね。家に帰り着いた途端に拘束されるか、あるいは射殺されるか。そんなオチじゃないですか?」
「身元の偽造ができる知り合いがいるのです。すぐに連絡がつくかは分からないけど、当座をしのぐなら私でも、何とか。しばらくはちゆ板やmixiには立ち入れなくなるかもしれませんが、避難所を転々とすれば、いつかほとぼりが冷めた時に、きっと……」
「――絵空事ですね」
 溜め息を一つついて、ティティスは冷淡にすろぷろの意見を切り捨てた。
「そういった点に対して、『プログラム』側が何も対策を講じていないと思いますか? 正規の手続き以外の方法で外に出る人間がいたら、出た瞬間に監視の目がつくでしょう。一度追っ手に足跡を捕まれたら、どこまで逃げても同じことです。違いますか?」
 すろぷろは唇を噛んだ。
 一見、ティティスの言っていることは一方的な悲観論に見えるが、厳然たる事実だった。それに比べれば、この城を生きて脱出することなど大事の前の小事に過ぎない。
 対策がないわけではない。
『プログラム』を執行していると言われている中央政府のメインコンピュータに潜入し、ブラックリストに記されているだろう自分のデータを消去する。もしくは脱出後の足取りに修正を行い、追っ手を煙に巻いてもいい。
 不可能ではない。莫大な時間と予算をかけてシステムに侵入し、幾重にも張られたセキュリティを突破し、データに手を入れた後に足がつかないよう、セキュリティや監視システムの網の目をくぐり抜けて逃走する……。
 それが限りなく不可能に近い行為であることは、少し考えれば分かることだった。可能性はある――そのひとことで先にある問題から目をそらし、当座の問題ばかりに目をやっていた自分の浅はかさに、すろぷろは歯がみする思いだった。
 が、だからと言って掌を返し、殺し合いに走る気は微塵もない。
 努力すれば報われる――そう無邪気に思えるほど若くはないが、努力をしなかった者に報いは訪れない――決して短くはない今までの歳月は、確かな経験としてそれを身にしみ込ませていた。
 自分の手で及ばない範囲の問題であるならば、それは仕方がない。努力をするもいいし、誰かの力を借りるのもいいし、それこそ奇跡を待ってもいい。
 しかし、今ここで自分がなすべきことは何か、出来ることは何か。それを見出した以上、自分はその可能性から目をそらすわけにはいかない。
 今はただ、生き残ることが先決だ。そして一瞬一瞬、その時に考え得るベストを尽くし、少しでも良い未来に向けて歩き続けるだけだ。
 だから今は、戦うわけにはいかない。死ぬわけにはいかない。
 殺し合うわけにはいかない。
「――それに、」
 しかし、
「もし首輪の起爆コードが分かれば、解除なんかしないで自分以外みんな殺しちゃえばいいんですよ。そうすれば自動的に自分だけが生き残って、大手を振って外に帰れます。わたしならきっとそうしますし、すろぷろさんがそうしない保証はないでしょう? 自分の命を、誰か他の人に預ける気にはなれません」
 冷たく響いたティティスの言葉が、むき出しのナイフのようにすろぷろの胸に突き刺さった。言葉を失う彼の顔を正面から見つめ、ティティスはにっこりと微笑む。
「交渉は決裂ですね」
 空を裂く音とともに、ムチが蛇のように床を走った。

         【残り12人】

コメント(5)

すろぷろ
「そ…そんな、ティティスさん、何を言ってるんだ!
 うん、確かにその可能性は認めるよ…でも私がそんな人間だとは思わないでほしい。
 かんがえてもみてくれ、私の性格を。思い出してくれないか、今までの私のことを。
 そんなことをする人間に思えるかい?
 のっぴきならない事態に陥っても、友人を裏切ったり見捨てたことはない。
 手段を選ばずに自分のことばかり考えていては、『プログラム』の罠にはまってしまう!
 が…確かに技術的に難しいことであるのは確かだと思う…でも!
 あははんと協力すれば、きっと何とか活路を見出せるんじゃないか。そう思うんだ。
 っ…!まさか、あははんも疑っているのか、ティティスさんっ?彼はそんな人間じゃない!
 ただ、彼はまだ若い…やはり一番重要な情報は、年長者である私が管理しよう。だから、
 かってな願いかも知れないが聞いて欲しい。私に全て任せてくれないか?」


みたいな。
うっはオレ信用できねぇ〜www<私に全て任せてくれないか

うーむ、既視感。すろぷろさんはててさんを説得しようとする(そして失敗する)運命なのか。

この世界はちゆロワ世界の延長に存在するのかしら。あのちゆロワの出来事が歴史としてあって、パラレルな感じなのかしら。電脳でコピーでバーチャルでクローンなのかしら。
うわー 
読んでいて緊張感に耐えられないw
ドキドキします。

次の展開を想像しただけで心の臓が・・・
誰も縦読みに気付いてくれない(´・ω・`)

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

MmR 更新情報

MmRのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング