法学院　行政書士試験制覇の扉コミュの行政書士試験対策ガイダンス　憲法編

行政書士試験対策ガイダンスその２　憲法編

今回は前回に引き続き、2回目のガイダンスを行いたいと思います。
これも初級者向けの内容なので、中級または上級者の受験生の方も知識の再確認程度ができれば良いと思っています。

では早速内容に入っていきましょう。

≪憲法典とは？≫

憲法は日本国の法律の中でも最高位の地位を占めています、よって憲法の内容に違反する下級の法律や行政機関が発生する命令、省令などは全て違憲無効となり、効力を否定されます。

では、その憲法は一体何を定めているのでしょうか。

主に国民の権利と義務が中心、即ち核となるわけですが、他にも国を治める為に必要な機関として、国会、内閣、裁判所などといった公的機関に関する規定なども存在します。

≪憲法の特徴　人権総論≫

試験対策上、本試験では例年5問の出題があります。これにはほぼ１００％といって良い程に国民の権利義務に関する判例知識と国の統治に関する問題で構成されています。

では憲法で保障する国民の権利義務とは一体なんでしょうか？

主に自由権と呼ばれるものが中心となっています、表現の自由、人身の自由、信教の自由など様々な自由が保障されてはいますが、このような制度ができあがった裏にはまだ帝国だった大日本帝国憲法典では自由権は確かにあったものの、法律の留保がついていたり、あるいは保障そのものがなされていない自由権も存在していました。
敗戦後、ポツダム宣言に同意し、外国の手中化におかれ、マッカーサー司令官の管理下におかれ、天皇を神とする帝国憲法を大きく修正した内容が盛り込まれた日本国憲法の草案が出され、衆議院で再修正を行い、草案は可決されて今の日本国憲法ができあがったという事実があったわけです。

さて、前置きをいいとして、日本国憲法は自由権を中心に、『基本的人権の尊重』『国民主権』『平和主義』の3本柱を立てています。

あくまでも平和的にがモットーなわけですね。基本的人権とは、人は生まれながらにして当然に人権を有しているという意味から人権という人としての権利は存在して当たり前、即ちそれが基本となり、そこから芽生える様々な権利を尊重しなさいという意味なのです。

そして国民主権とは、国の在り方、つまりは国の政治的意思決定は国民の意思で決めていく、という意味です。国民が主役なわけですね。

最後に平和主義ですが、これは憲法9条で実際に平和主義に基づいた条文が定められています。

・国の交戦権はこれを認めない

・戦力の保持禁止（自衛隊及び、沖縄のアメリカ軍基地の軍隊は戦力保持に当たらないという判例が出ています）

・戦争放棄

この３つが実際に定められています。

現在、安保法が成立し、集団的自衛権が発動できるようになりましたが、結果的に交戦するのだから、いくら防衛手段だと言っても平和を脅かす種は蒔かないで欲しいところです。
強行採決、如何なものでしょうね。

≪国民の自由権≫

試験対策上のお話をすれば、限定されてしまいますが、今回はガイダンスということなので余り長々とは書きません、前半ですから後編で統治機構について記述していきたいと思います。

・人身の自由

これは身体を不当に拘束されない自由を指しています。

例えば、理由なしに相手を拘束することは許されませんよね、泥棒が何か物を盗んだ場合、犯行後であれば裁判官が発する令状（逮捕状）がなければ如何に目の前にいるとしても逮捕することはできません。しかし犯行の最中や犯行をやり終えた直後であれば話は変わってきます。現行犯扱いでその場で令状無しに逮捕することができるのです。

先ほど、令状がなくては犯行後の犯人が目の前に居ても逮捕できないと言いましたが、これは実は原則論なのです。

例外として緊急逮捕というものがあります。

憲法では定められておりませんが、その場で逮捕しなければ証拠隠滅、又は逃走の恐れがあるなど、一定の条件を満たしている場合はその場で逮捕した後に、裁判所に対して逮捕状を請求できるという制度を緊急逮捕と言います。
これは別個の法律で定められており、この制度が違憲ではないかという裁判もありましたが、最高裁の判決は合憲、つまり憲法に違反してはいないという結論を出しています（判例）

・信教の自由

帝国憲法時代は神道という宗教を絶対的存在として崇めさせていましたが、日本国憲法ではどの宗教を信仰するか、または信仰するかしないかは自由という権利を定めています。
信仰しないからといって処罰されたりすることはありません、あくまでも信仰は自由なのです。

そしてこの信教の自由には政教分離主義というものが存在します。

政教分離主義とは、国と宗教との関わりがどこまで許されるか、というものを定めたものです。分離とはいっても全く関わってはいけないわけではありません。

では、実際にあった判例を一つご紹介致します。

【津地鎮祭事件】

これは津市が市の体育館の起工にあたり、地鎮祭を行ったところ、それが政教分離主義で言うところの宗教的活動に当たるのではないかが争われた事件です。

判例では、国及び地方公共団体が宗教的活動をすることは禁止されているが、この宗教的活動とは『行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助・助長・促進または圧迫・干渉等になる行為』をいう。

本件起工式は宗教との関わりあいを持つことを完全に否定できないものの、憲法が禁止している宗教的活動には当たらないとしています、そして『』に記述した基準を目的効果基準といい、国と宗教との関わりがどの程度のものか、この基準に該当すれば違憲、しなければ合憲という立場を最高裁はとっています。

・思想、良心の自由

これは、日本国憲法によって初めて定められた自由権です。心の中で何を思うかは自由なんて当たり前だ！と思う人もいるでしょう。しかし帝国時代ではその思想さえも抑圧されていたのです。その反省からこのような規定が設けられています。
心の中に打ち留める限りは、例えそれが殺人をしたい、大勢の人間を苦しめてやりたいという考えがあっても実際に行動に移らなければそれもまた自由なのです。絶対的に保障されます。

・表現の自由

上記の思想、良心の自由に連動するものとして表現の自由というものがあります。

これは内心に思っていることを実際に表現し、外へ表示することができる自由をいいます、但し殺人や窃盗など、不法な原因の自由は認められていないところに注意しましょう。

しかし、不法な原因を除く表現であっても一部制限を受ける可能性があるものも存在します。判例をいくつかご紹介しましょう。

【レぺタ訴訟】

これは裁判の傍聴席においてメモを取る行為が制限されたことを違憲（表現の自由を制限されたから）ではないかが争われた事件です。

筆記行為は憲法上、尊重すべきであって保障にまでは至らないが故に形式的には原告敗訴となってしまいましたが、後日になって全国の裁判所の掲示板からメモ禁止の項目が削除された為、結局のところ原告勝訴と言えなくもないですね。

『尊重すべき』『故なく妨げられない』という点は覚えておきましょう。

【軽犯罪法違反事件】

これは電信柱や外の壁などにビラを貼ったことで軽犯罪法という法律に抵触した為、逮捕及び起訴された事件です。

被告側は軽犯罪法は表現の自由を不合理に侵害していると主張しましたが、裁判長は『例え、その行為が表現の自由であったとしても他人の財産権等に不当な侵害が及ぶ場合は、例え表現の自由であっても本件逮捕及び起訴は合理的な制約であって憲法には違反しない』と判示しています。

このように人権と人権のぶつかり合いを調整し、一定の制限を加える作用を公共の福祉といいます。

【戸別訪問の禁止】

法律上、選挙運動等で他人の自宅等を個別に訪問することは禁止されていますが、これが憲法に違反しているのではないかとして争われた事件です

戸別訪問は買収、利害誘導の温床になりやすい、選挙人の生活の平穏を害する可能性がある他、投票も温情に支配されやすくなるなどの危険があるようですね、それを以て戸別訪問を禁止する利益は禁止しない利益よりも大きいと判断できるため、戸別訪問禁止は憲法に違反しないとしているのです。

このように得られる利益と失われる利益を比べて判断することを比較衡量と呼びます。

さて、憲法の第1回ガイダンスはこれにて終了です、如何だったでしょうか。

憲法は法律の基本ですから、例年の試験では法的思考力を試す問題が多いので、憲法のように考えて解ける理論思考が必要となります。
是非とも頑張って欲しいと思います。