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とにかく怖い話。コミュの【3/5】狸と兎

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5夜連続ショートショートシリーズの3夜目です。
どうぞ。
〜〜〜〜〜〜〜

 むかしむかし、とある山に狸と兎が住んでいました。

狸と兎はとても仲良しでした。

二匹はいつも一緒に遊んでいました。

二匹とも、とても良い子でした。

 しかしある時、山に入って来た人間に、狸のお父さんが殺されてしまいました。

狸はとても悲しみました。

 兎は狸を慰めました。

狸はそんな兎の気持ちをとても嬉しく思いました。



 ある日、兎は狸を誘って山の神様のところにお参りをしに行きました。

中央にある山の神様の祭壇の横には、右に水の神様を祭る祭壇、左には火の神様を祭る祭壇がそれぞれ置かれていました。

狸に幸せが訪れますように。

狸がお父さんの死を乗り越えられますように。

兎も、狸の事を山の神様にお祈りしました。



 お父さんの死を乗り越え、狸が前を向いてがんばっていたある日の事でした。

今度は狸のお母さんが、病気で死んでしまいました。

 狸はまた、深い悲しみに落ちてしまいました。

兎は、狸を励ましました。

狸は兎に「ありがとう」と言いました。



 狸はそれからも一生懸命にがんばりましたが、何一つ良い事がありませんでした。
兎は狸を誘って山の神様にお祈りしたりしましたが、結局狸には辛い事ばかりがおこりました。



 そのうち狸は全てが嫌になりました。



 狸は、人のものを盗むようになりました。

人の嫌がる事をして、それを見て楽しむようになってしまいました。

「狸さん、そんな事をしてはいけない」

兎は言いました。

「昔の優しかった頃の狸さんに戻ってよ」

とも言いました。

でも、狸には兎の気持ちが届きませんでした。

狸はますます悪い事をするようになってしまいました。



 ある日、兎がいつものように山の神様の祭壇でお祈りをしていた時の事です。

ひょっこりと狸が姿を現しました。

「やあ狸さん、丁度今、君の事をお祈りしていた所なんだよ。一緒に君もお祈りをしよう」

兎は狸が来てくれた事を嬉しく思い、声をかけました。

「兎さん、今日僕がここに来たのは、お祈りをする為じゃないんだ」

狸はそう言うと、後ろ手に持っていた棒を振り上げました。

…そして、火の祭壇と水の祭壇を棒で殴りつけ、ぐちゃぐちゃに壊してしまいました。

「何をするんだ!いけないよ狸さん!」
兎は必死に止めようとしましたが、狸は力が強く兎はすぐに跳ね飛ばされてしまいました。

跳ね飛ばされ地面に体を打ちつけた兎を見て、狸は一瞬表情を変えましたが、すぐに山の神様の祭壇に向きなおり、棒を振り上げました。

…ですがその時でした。

狸の持っていた棒が砂のように崩れさり、地面にパラパラと零れ落ちました。

狸は一瞬驚きましたが、すぐに山の神様の祭壇を睨みつけました。

「山の神様は、僕をちっとも助けてはくれなかった。僕には辛い事ばかりおこる。人のものを盗めばそれが手に入る。人に悪い事をして、僕より困る人がもっともっと増えればいい。そうしたら僕より不幸な人がいっぱい増える。増えていけば僕は皆と比べて不幸じゃ無くなる。僕は山の神様なんかに頼らず、自分で幸せになってやる」

そう言うと狸は山の神様の祭壇を更に強く睨み、帰って行きました。

 兎はとても悲しい気持ちになりました。

どうすれば狸を救ってあげられるのかを考えても、何も思い浮かびませんでした。

兎は泣きながら、狸が壊してしまった火と水の神様の祭壇を片づけました。

 その夜、兎は夢を見ました。

山の神様の夢を。

山の神様は兎に言いました。

「狸さんにはきっと火の神様と水の神様のバチがあたるだろう。でもそれは仕方の無い事。兎さんは、狸さんが大きな過ちを犯してしまった時、彼を止めなければいけない。それが兎さんの役目だ」

 兎は、狸を救えるのは自分しかいないと強く思いました。




 「またお前か!」

畑を耕しているおじいさんは、切り株に座る狸に言いました。

狸はそんなおじいさんを見て楽しそうに笑いました。

 狸はよくこのおじいさんの畑に来ていたずらをしていました。

畑の野菜を盗んだり、一生懸命に働くおじいさんをおちょくったり。

 おじいさんはそんな狸をかわいいと思っていました。

おじいさんには結婚しているおばあさんがいますが、子供がいませんでした。

だから、毎日イタズラをしに来る狸を子供のように思い、仕事中の楽しみにすら感じていました。

「いたずらばっかりやってねーで、たまには手伝ってみねーか?」

「誰がこんな汚い畑なんか耕すもんか!じいさんの畑に出来た野菜を盗めば食うには困らん!」

「盗んだ野菜より、自分で一生懸命作った野菜のほうが美味いぞ」

「どっちも同じだよ!」

狸は今日も、おじいさんをおちょくると満足し、山に帰って行きました。



 昔、おじいさんはイタズラが大好きな子供でした。

だからなんとなく、狸の気持ちがわかっていました。

それと同時におじいさんは狸を見て、幼い頃のイタズラ心が蘇ってきました。

 翌朝、おじいさんは狸がいつも座る切り株に、トリモチをベッタリと塗っておきました。
 おじいさんが畑仕事をしていると、案の定狸がやってきて切り株に座り、おじいさんをいつものようにおちょくってきました。

おじいさんはあれやこれやと狸に言い返しながら1日働くと、ゆっくりと狸に近付きました。

 狸は当然逃げようとしましたが、トリモチが固まって、切り株から体が剥がれません。

 狸は縄でぐるぐる巻きにされ、おじいさんの家に連れていかれてしまいました。



 縄で縛った狸を連れて帰ったおじいさんは、おばあさんにコソコソと何かを耳うちした後、大きな声で「今夜は美味い狸汁でも食うとするか!ばあさん、湯を沸かしてくれや!」と叫びました。

「はいよ!」と言って、おばあさんは大きな鍋に水を汲み、囲炉裏に火を点けそこに置きました。
 縄で縛られたタヌキは震えが止まりませんでした。

「お願いだ!もう悪い事はしない!!逃がしておくれ!」

必至に命乞いをしました。

しかしおじいさんは「何を言うか!狸汁なんてめったに食えるもんでねえ!今夜は御馳走じゃわい!」と笑い、「ばあさん、ちと風呂入ってくるわ」と言って部屋から出て行きました。

 トントンと野菜を切るおばあさんに狸は命乞いをします。

「おばあさん、お願だ!もう悪さはしないから、どうか命だけは!」

「ダメダメ。今夜は御馳走なんだから」

おばあさんは笑いながら舌舐めずりをします。

狸の心臓は高鳴り、恐怖が心を支配します。
どうにかして助かる術は無いものか?

狸は考えに考え、こう言いました。

「おばあさん、縄が手に喰いこんで痛いんだ。…ほどかなくてもいいから、少しだけ縄をゆるめてくれないか?」

 縄が手に喰いこんではさぞ痛かろうと思ったおばあさんは、すぐに狸の縄を緩めてやりました。

…が、その一瞬の隙を突き、狸は縄からスルスルと抜け出しました。

「あ、こら!逃げるんでねえ!」

おじいさんが風呂からあがった後、一緒に野菜汁を食べようと思っていたおばあさんは、狸を逃がしてはおじいさんががっかりするだろうと思い、入口を締めて通せんぼをしました。

(捕まれば、食われる!)

狸はおばあさんが野菜を切っていた包丁を手に取ると、おばあさんの懐に飛び込んで行きました。



 「はぁはぁ…」

山に帰った狸は、池で手や体を必死に洗いました。

心臓も、呼吸も、脈拍も、震えも、

そのどれもが速度を緩めてはくれませんでした。

寝ようと思い横になってもなかなか寝付けませんでした。

目を見開いたまま倒れた、真っ赤なおばあさんの顔が、狸の頭の中から消えませんでした。



 翌朝、家の隅に座りこんでいる狸の元に、兎さんがやってきました。

「やあ、狸さん」

「兎さん…」

一匹で居る事に怖くなっていた狸は、久々に兎の顔を見て心の安らぎを感じました。


「兎さん!聞いてほしい事があるんだ!」

狸は目に涙を浮かべながらそう言いました。

兎は狸の目を見ずに、「…そんな事より狸さん、今日は山にタキギを取りに行こう」と誘いました。

一匹で居る事が怖かった狸は、兎と一緒に行く事にしました。



 拾ったタキギを背負い、山を歩いていると、カチカチカチと音がしました。

兎に何の音か聞いてみると、「ここはカチカチ山だからカチカチ音が鳴るんだよ」と教えてくれました。
長年住んでいた山の名前を、狸は初めて知りました。

 その直後、狸は激痛に襲われ、気を失ってしまいました。



 気が付くと、狸は雨の山道で倒れていました。

「痛っ…」

起き上がろうとすると、背中に激痛が走りました。

どうやら、酷い火傷のようでした。

 なんとか家に帰りついた狸は、水に濡らした葉っぱ等で背中を冷やして休んでいました。

…するとそこへ、また兎がやってきました。

兎は生きていた狸を見て少し驚きましたが、それを顔に出さずに「薬を持ってきてあげるよ」と言った後、瓶に入った薬を持ってきて、狸の背中に塗ってくれました。
 狸の背中に物凄い激痛が走ります。

しかし狸は我慢しました。

きっと、効いているから痛いのでしょう。

狸は激痛の中、一夜を過ごしました。



 翌朝、狸の背中は化膿し、酷い高熱も出て、意識朦朧の状態でした。

 そんな狸の元に、今日も兎はお見舞いにやってきてくれました。

そして目に涙を浮かべながら「今日は釣りに行こう」と狸に言いました。

狸はしんどかったのですが、きっと兎はしんどい自分を楽しませてくれようとして誘ってくれていると思い、フラフラの体をやっとこさ動かし、一緒に海に出かけました。

「さあ、狸さんこの船に乗ってくれ」

兎は言いました。
狸の視界はボヤケ、もうまともに目の前にある物がわからなくなっていました。

ただ子供の頃、兎が粘土で作ってくれた作風が、その船からはにじみ出ていました。

「…兎さん、相変わらず工作が上手だねぇ」

狸の顔が自然とほころびました。

 狸と兎はそれぞれ別の船に乗り、沖に出て行きました。

その途中、狸は意識が遠のき、少し横になりました。

兎の泣き声が聞こえて来ました。

狸は妙な懐かしさを感じ、そのまま眠りにつきました。



              ―了―



コメント(2)

カチカチ山、殆どそのままですね;。
ひょっとして五日間おとぎ話のリメイク版で、終わりですか?それとも全話揃った時に怖い謎が解明されるのでしょうか?

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