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とにかく怖い話。コミュの裏・夏!恋!ときどき生霊

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他コミュにも投稿させて頂いた話です。

※物語で登場する人物名等はフィクションです。

前回:
夏!恋!ときどき生霊
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=73616143&comm_id=1154462



 高校を卒業して進学するわけでも、就職するわけでもなく、絶賛ニート生活を満喫中の俺。
 そんな様子の息子に親が不満を持つのも当然で、家に居づらいから
 とりあえず繁華街をウロついていた。
 親に落ち度があったわけじゃない、俺がダメなだけなんだ。
 
 ああ、親父、お袋、俺は生まれなきゃ良かったんじゃねーかな。
 生まれてこなきゃ、親父達も悲しい思いしなかったろうし、あんなもの見なくて済んだのに。
 
 俺は一組の夫婦を見ていた。
 腹の大きい奥さんと、それを労るように隣を歩く旦那、2人は幸せそうだ。
 
 だけどあの夫婦には見えていない。
 奥さんの右肩に黒くて大きい泥のような塊から何本も手の生えた変なものが乗っている。
 その無数の手で奥さんの腹を叩いている。
 残念だけど、その子はたぶん・・・
 
 生まれつき見えていたと思う、だけど親も弟も見えていない。
 これが異質だと気づいたのは小3の頃だった。
 もしあの夫婦に伝えても、きっと信じないだろう、俺の家族のように。
 そしてアレらも滅多に俺に気づかない、触れば別だが。
 
 やっぱりアレでは分かり難いので、今後はアレのことを仮に霊と表現しておこう。
 
 
 
 テレレレテッテッテー
 
 ドラクエのレベルアップの着信音が鳴った、しつこく連呼している。
 どうやらメールじゃなくて電話のようだ、相手は菊地。
 
「よお、どうした〜?」
「ああ、良かった!ちょっと僕の貞操に関わる問題が発生したんだ」
 
 息を切らしながら喋る菊地、まるでキモオタだ。
 
 菊地と俺は中学時代からの友人だ。
 他の友人達が進学や就職をする中、ニートは相手にされず徐々に周囲と疎遠になっていたが、
 そんな俺といつまでも関わろうとする変わり者だ。
 
 どうやら菊地は貞操の危機にあるらしい。
 
「とにかく電話じゃアレだからイオンで会わないか?」
 
 アレってなんだ、アレって。
 とりあえず俺はイオンへ向かうことにした。
 
 
 
「おーい、高梁〜〜〜」
 
 人ごみの向こうで手を振る男がいる、菊地だ。
 だが俺は他人の振りをする。
 
「シカトすんな!」
 
 ちなみに高梁というのは、俺の名前だ。
 
 菊地の話はこうだった。
 バイト先の子と海でデートすることになった、だけど自信がないから付き添って欲しいらしい。
 
 こいつが言うと嫌味に聞こえる、もちろん悪気はないのだろう。
 何といっても菊地は非常に残念なイケメンだ。
 自分がイケメンであることに気づいていない上に、鈍感だ。
 更に自分が好きな子にしか興味を示さない。
 
 その証拠に菊地には今7つの生霊が憑いている。
 たぶんほとんどのものが片思いの女だろう、妬んだ男のも混ざっていると思うが、
 1つを除いてはどれも弱弱しい。
 
 神様ありがとう、二物を与えなくて。
 こいつがヤリチンになったら、俺はきっと呪い殺すだろう。
 
 気の進まない俺に、
 菊地は吉野家の焼豚丼と、デート当日の食費と交通費を賄う条件を提案してきた。
 お前はいつから金で人を釣る男になったんだ。
 ニート生活で忙しい俺は断ろうと思ったが、割と良い大学に通っている菊地に
 恩を売っておくのも悪くないと思い承諾した。
 
 また、菊地の左足に憑いているモップのような形状をした生霊を見たとき、
 少し悪寒を感じたので心配だった…ということもついでに加えておこう。
 
 実は俺以外の見える人間には会ったことがない。
 俺自身のコミュニティが狭いということもあるが、
 仮に見える人が居たとしても、自ら名乗り出たりはしないだろう。
 何故なら、普通の人間にとって俺のようなヤツはホラ吹きなわけだから。
 
 死霊と生霊は俺的な区別の仕方がある。
 それは単純なことで、死霊は色は白っぽかったり、黒っぽかったりする。
 逆に生霊はカラーだ。
 
 そう見えるのは俺だけなのかも知れないが、俺以外の見える人間には会ったことがないから、
 他の人はどう見えるのか知らない。
 
 
 
 翌日、俺は寝坊して、待ち合わせ場所である駅の駐車場に15分遅刻した。
 本当は徒歩できたのだが、道が混んでたと言い訳したので、上手く誤魔化せたと思う。
 
 菊地を見ると例の生霊は、丸々と大きく育っていて、
 昨日見たときは膝ぐらいまでの大きさだったのに、今日は腰ぐらいまでになっている。
 もうほとんど菊地の左足が見えない、大丈夫なのか?
 それに禍々しさが増している、嫌な感じどころではない、これはもう殺意だ。
 
 だが俺はその殺意を華麗にスルーして、
 とりあえず、菊地の隣に立っているデート相手であろう女へ
 紳士的に嘗め回すようなイヤラシイ視線を送った。
 
 !!!
 この女を見た瞬間、猛烈な吐き気に襲われた。
 吐き気の理由は、昨日の夕飯にお袋が毒を盛っていたわけでもなければ、
 女が酷いブスだったわけでもない。
 むしろ美人だったし、胸も大きかった。
 本来なら、菊地の左足に憑いている生霊以上の殺意を菊地に抱いたことだろう。
 
 しかし俺は、それどころではなかった。
 寒さなど微塵も感じないような、蒸し暑い日だったのに、全身に鳥肌が立つ。
 あの生霊は、この女のものだと直感的に分かった。
 
 菊地はこの女に強い恨みを抱かれているのだろうか。
 
 いや、恨みだけが生霊を発生させる原因になるわけじゃない。
 強い思いや気持ちが生霊を生むのだ、単に好意より憎悪の方が強い感情であるというだけだ。
 また時として、本人の意思とは関係なく、憑いた人へ悪影響を与える場合がある。
 そして生霊の強さには個人差があること、幼い頃から霊を見てきた俺は何となく分かっていた。
 
 しかし、この生霊は禍々しすぎる。
 菊地はデートに付き添いを頼むぐらいだから、おそらく初デートなのだろう。
 2人の関係はそれほど深くはないはずだ、こんな生霊を生み出すこの女はいったい何者なんだ?
 
 一瞬のうちに色々なことを考えたせいか、むしろそっちで目が廻った。
 だが俺はその場の空気を悪くしまいと、すかさず挨拶をする。
 
「こんにちわ、高梁で〜す」
「はじめまして、佐藤です」
「うちの菊地がお世話になってま〜す」
 
 幼い頃から見えることが当たり前になっていたせいで、
 そこに霊がいると分かっていても、
 驚きもせず、現実としてすぐに受け入れてしまう自分の感覚が少し悲しかった。
 
 
 
 さて効率厨な菊地は、紹介も兼ねたお話は道すがら・・と急かすものだから、とりあえず出発。
 
 まぁ気持ち悪いというだけで、憑いているのは菊地だし、俺に直接的な害はないし、
 テキトーに話でもしていれば、気分も紛れるだろうと思っていた。
 
 しかし、車内という密室で、生霊を飛ばした女と、生霊に憑かれた男と、生霊と、俺という非日常を
 テキトーな会話で紛らわせるほど、俺の神経は図太くないことに今日はじめて気づいた。
 無理やりテンションMAXでマシンガントークする涙目の俺を誰が責められよう。
 海が見える頃には疲労もMAXになっていた。
 
 俺は正直海が嫌いだ、そこには霊がよく居る。
 特に海の中には入りたくない、水中にも居るからだ。
 基本的に霊は俺に滅多に気が付くことはないが、触れれば気づく。
 陸上を徘徊する分には、こちらが避けていればいいが、水中では勝手が違う。
 
 海での俺は霊に対する細心の注意を払いながら、ウラガンキン亜種と戦った。
 
 途中俺が、菊地と佐藤さんを2人きりにするというイベントが功を奏したのか、
 帰りの際の菊地はほとんど喋らなかった、どうやら爆発したらしい。
 
 俺は情に希薄なようでいて、実は希薄なのだが、菊地はイケメンである前に友人だ。
 駅の駐車場に到着する頃、会話に相槌でしか対応しない友人が、いよいよ心配になった。
 もしかして、リア充の菊地が爆発したからテンションが低いのではなく、
 左足に憑いている、酷く禍々しい生霊のせいで気分が高揚できなくなっているのではないだろうか。
 
 生霊はただ落とすだけではいけない。
 相手が生きている人間である以上、生きているうちは思いが途切れない限り何度でも戻ってくる。
 しかし、思いが途切れたり、本人同士の気持ちに変化があると、自然と消える場合がある。
 霊力や法力などといった素敵パワーを駆使して強制的に免疫を作ってあげれば、
 払うこともできるが、出来ればそれはしたくない。
 これは、菊地と佐藤さんの恋愛の問題だから、部外者の俺が絡むのは野暮な気がする。
 
 もちろん、俺は払うことが出来る、何故なら自分に憑いた霊は自分で払ってきたからだ。
 俺が力を貸すのは、最悪なパティーンのときにしておこう。
 
 おそらく、佐藤さんの思いが強くなればなるほど、生霊は強力なものになっていくだろう。
 菊地は心配だが、2人の恋愛は一応応援したい俺としては、
 いつまでも一緒に居たら邪魔者になるだけなので、この辺で退散するけど…
 頼むから早まるなよ、菊地。
 
 
 
 デートの付き添いの行きと帰りで2日分のカロリーを消費し、
 菊地への心配から心労でクタクタになって帰宅した俺にトンデモイベントが待っていた。
 
 部屋に戻ってPCをつけて2chを見ようとしたときに気がついた。
 マウスを握った俺の右手にモップが憑いている。
 
「なんじゃこりゃあぁぁ!!」
 
 普段はクールな俺も思わず叫んでしまった。
 しばらく呆然と右手に憑いた生霊を眺めていた。
 
 生霊は生きた人間の強い思いで生まれる。
 しかし、佐藤さんは明らかに菊地に気があるように見えた。
 俺に強い思いを抱くはずがない、せいぜい友達としての情ぐらいだ。
 
 もしかして佐藤さんは、俺とは違う種類の特異体質なのではないか?
 
 もし俺の考えが正しかったとして、それを本人が自覚してしまったら、
 恐ろしいことになりそうだ…
 
 
 
 結局、菊地は佐藤さんと一線を越えなかったという。
 意気地なしと思う反面、どこかホッとした。
 その後もたまに菊地の様子を見に行ったが、佐藤さんの生霊は徐々に禍々しさを失い、
 他6つの生霊と大差のない程度の弱弱しいものへと変わっていった。
 しかし、それはある意味、菊地と佐藤さんの関係値を物語っているようにも見えた。
 
 そんなある日、菊地から連絡が来て、ドライブへ誘われた。
 行き先は佐藤さんと3人で行った、あの海だ。
 何となく察していた俺は、菊地の女々しさに付き合うことにした。
 
 菊地はあの日、海で佐藤さんに聞かされた話しを語った。
 
 佐藤さんは大学生の時に知り合った1つ上の先輩と恋に落ちた。
 お互いに社会人になってからも付き合いは続き、いつしか結婚を意識するようになっていた。
 しかし、彼は佐藤さんが大学を卒業した頃から徐々に体調を壊していき、
 ついには衰弱死してしまった。
 彼が存命の頃は彼の両親とも仲の良い付き合いをしていたが、
 身近に居ながら彼の異変の気が付かなかった佐藤さんを恨み、民事訴訟を起こした。
 会社の同僚や友人からは同情されたが、頼るわけにもいかず、
 裁判の決着が付く頃にはすっかり疲れてしまって、実家に戻ってきたのだ。
 
 そしてその佐藤さんは、もう1度東京で頑張ってみると菊地にメールで伝え、
 すでに地元にはいないそうだ。 
  
 
 
「あーあ、好きだったのになぁ」
 
 菊地は、雲1つない空っぽな空を見上げて、独り言のような愚痴を言った。
 その足に、あのモップはもう居ない、佐藤さんは思いを断ち切ったのだろう。
 お前の気持ちはよく分かる。
 
 だが、これで良かったのかも知れない。
 もしかしたら、お前も佐藤さんの彼のように…
 
 
 
「そーえば高梁さ、佐藤さんを送っていくとき、早まるなよって言ったじゃん」
「あー」
「あれってどういう意味だったの?」
「あー」
「あー じゃなくて答えろよー」
「あれなー・・・」
 
 そうだな、お前になら話してもいいかもな…

コメント(9)

> 光乃写星 さん
なかなか怖く書くのは難しいですね^^;
書き物はまだまだ慣れていないので、文章がおかしい部分もあったかも知れませんが、
これからは怖い描写等も研究していきたいと思いますw

> もえぴーww さん
Γ●)) あざーーーーーーーーーーーーす!
これからもボチボチ書いていきたいと思います!


> スパイダー さん
読んで頂きありがとうございます!
作中に出てくる、ウラガンキン亜種とは、
PSPおよびPS3のゲーム、モンスターハンター3G(MH3G)に出てくるボスモンスターの名称ですw
今回の高梁視点のお話は、ややコア(2ch的)な作風にしてしまい、
伝わりづらい部分があったかもしれません。

作中、高梁の表現解説として、
『海での俺は霊に対する細心の注意を払いながら、ウラガンキン亜種と戦った。』
高梁は海に来たのにPSPで遊んでいたという意味です^^;
‘裏‘って付いてるから色っぽい話を期待して読んでみたんですが…orz

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