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とにかく怖い話。コミュの夜語りの宴にて

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専門学校の二年目の、もう夏も終わろうという頃、山梨県の某所に学校で二泊三日の研修旅行をしにいくことになった。研修なんていうのは建前で、ほとんど修学旅行の延長のようなものだったのだけれど。

その旅行の二日目の夜は河口湖にある旅館で過ごすことになり、旅行最後の夜ということで当時仲の良かったグループ同士で示し合わせて、夜中にこっそりと一つの部屋に集まった。
勿論、怪談をするためだ。河口湖にかかる大橋は心霊スポットとして有名だし、なにより近くには樹海がある。時期も時期なので、人を集めて怪談をするにはうってつけの場だ。自称霊感有り(笑)のぼくも、この企画には大賛成だった。

「怖い話してると、霊が寄ってくるってまじかな!」

その場にいたひとりが嬉々としてそんなことを口にしている。他の面々もみんな同じような様子だった。中には「やっぱやめない?」と怖がる素振りを見せるひともいたけれど、それがポーズだというのはすぐにわかった。目が明らかに笑っている。

一番最初に語りだしたのは、……仮にS田さんとしよう。典型的なギャルだ。悪い言い方をするならば普段の彼女はとても喧しいひとで、ぼくは神妙に頷いて聴くふりをしながらも、「雰囲気出ないだろうな、これは」と内心ではあまり期待していなかった。

しかし彼女は語り始めるや否や、びっくりするほど声のトーンが落ちる。場面によっては溜めを作ったり囁き声を交えたりと、中々に雰囲気が出ていてオチの部分では背筋が寒くなった。途中で語りが詰まることなくきれいに整理されていたし、話し慣れていたんだろう。
ただひとつ残念なのは、その内容がカントリー娘にまつわるアノ噂話だったことだ。いくら雰囲気が出ていようと、オチが読めていては楽しみも半減してしまう。

とはいえ、彼女の見事な語りによって場には暗い陰りが落ちた。ただそのあまりのクォリティにみんな怯んでしまったらしく、誰も口を開こうとしない。
このまま興が削がれても困るので、仕方なくぼくが二番手を買って出ることにした。高校のころの体験談で、S田さんのような凄絶な語りには到底及ばなかったけど、話の内容はみんなを更に震え上がらせるのに足るもので安心した。S田さんも黙り込んで、時折息を呑んでいた。
この場でぼくが語った体験談については、また別の機会に。


そこでようやく火が点いたのか、ポツポツとみんなが語り始める。ぼくと同じように体験談を、或いはひとづてに聴いたものを、また或いは都市伝説を。
中には話の内容だけでゾっとするようなものや、「いやそれギャグだろ」とつっこみをいれてしまいたくなるような、コメディ染みたものまで。

みんな夢中になって語り続け、気付けば二時間が経過していた。
その時ぼくらは真っ暗な部屋の中で輪になっていて、その中心に明かりの代わりとして開きっぱなしにした携帯電話を置いていた。携帯のディスプレイに表示されたデジタル時計は02:15を指している。ちょうど、丑三つ時のまっただ中。

「次、だれ?」
「あたしもうネタ無いんだけど」
「つーか若干眠くなってきた」

みんなのネタもつきかけ、そろそろお開きにしようかという雰囲気になり始めた時に、それは唐突に起きた。

Ririririririri

輪の中心に置いていた携帯電話に着信が入った。
画面には非通知の三文字。

突然振動しながら場違いなまでに喧しい黒電話の着信音を撒き散らす携帯に一時はきゃあきゃあと騒いだものの、誰もがすぐにその場にいる何者かの悪戯だろうという考えに至った。
みんながみんな、一斉に「お前だろ!」とふざけながら犯人を暴こうとするが、誰も名乗り出てこない。
……ひょっとして、いたずらではない?
そんな妖しい空気が漂い始めたころ、携帯の持ち主であるS田さんが震える声で呟いた。

「てゆーか、あたしの着信、これじゃないんだけど。だってほら、西野カナのさあ」

怯えた様子の彼女が、隣に座る親しい友人に文字通りすがりついた。ぼくは「これもS田さんの演出か?」などと勘繰っていたが、次の瞬間には血も凍りそうになった。

Ririririririri

再び携帯に着信が入った。またもや画面には非通知の三文字。
誰かの悲鳴があがる。女子達が抱き合って布団にくるまった。
電話に出てみよう、なんて発想はなかった。もし電話の向こうの相手が、この世のものではないモノだったとしたら。そんなモノの声を、耳元で聞いてしまったら。ひょっとしたら、みんな同じことを考えていたのかもしれない。

着信が途切れ、間髪入れずに三度目の着信が入った。
ぼくにはそれが、「早く出ろ」という何者かの明確な意志のように思えた。
もう、誰も声すらもあげられなかった。ただ凍りついたまま、振動する携帯を見守るだけだ。

やけに長く感じられた着信が不意に途切れた。画面に表示されるバッテリーのマーク。バッテリー切れだ。張り詰めた空気が弛緩するのがわかった。みんながほっと胸を撫で下ろしている。これでもう電話はかかってこない。そしてバッテリー切れによって携帯のハイライトも消えて、部屋に暗闇が訪【どうして、でないの、】れた。


【ねえ】


首を絞められたような、糸みたいにか細い女の子の声だった。

次の瞬間にはみんなで大パニックを引き起こして、なにかをわめきながら我先に廊下に転がり出た。
そのあまりの大騒ぎに先生方やホテルのスタッフが飛んできて、ぼくらは先生方から厳重注意という名の説教を受けた。ただ、ホテルのスタッフは苦笑い。

稀にスタッフの間でも、心霊現象は起こっていたそうだ。


 了

コメント(14)

トイレとかで1人の時に霊現象に遭わなくて良かったですねげっそりげっそりげっそり
携帯も使える幽霊 かぁ〜 霊は機械に強かったり利用する と聞くし。

同じホテルに泊まっていた客たちにとっても、深夜に大騒ぎの若者たち・・腹が立つ恐怖だったね(-_-;)
ま・・どこでも誰でも起こり得るコト と寛大に処したコトでしょう。
S田さんの話については、カントリー娘で検索をかけると色々と出てくると思われます。とても有名な怪談なので、すぐに見つかるでしょう。

作中でぼくが語った話はまた近い内にでも。
文章がとても上手くて惹きこまれました。
次のお話、楽しみにしています。
怖いですね。やっぱり霊はよってくるんですね。カントリー娘の話は知らなかったのでググったらすごく怖い話で、でも動画は削除されたのか見つけられませんでした。
河口湖大橋を通勤時によく通っていました。 花束が橋の中腹の歩道に手向けられていたのを何回か見掛けたことがあります。

霊現象とかの類いは、残念ながら?(・・;)?一切見たことはありませんけどね(^_^;)
大橋は死ぬまでに一度は歩いて渡ってみたいですね。
十数人で押し掛けて、次の日の朝刊に「集団自殺か」なんて見出しでデカデカと載ってみたり。

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=70599856&comm_id=1154462

作中でぼくが語った話ができました。
よければこちらもご覧ください。
僕が怪談話をするなら、カントリー娘…って考えながら読んでたらギャルに先こされました(汗)

ってか、逆にそれからリアル度が増して怖さ10倍です…
カントリー娘のアノ噂はあまりにも有名過ぎて、各所で怪談をすると必ず耳にしてまうま。
いや、怖いけど、怖いけども。

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