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とにかく怖い話。コミュの-お唯-

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陽のあたる場所。
・・・お唯とは…私の家に住み着いている女の幽霊のことである。

お唯は、とても楽しく愛嬌のある幽霊である。
しかし同時に恐ろしい幽霊でもあった。



彼女との出会いは、もう二年も経つであろう…。
とても、あの日々が懐かしく思えてくる。


ある日、私は友人と飲みにいった。
その日の夜、私はへべれけに酔ってしまった。
私は…いつ家に帰って来たかわからないほどの状態であった。
翌朝、気分の悪いのを我慢しながら仕事に向かう。
玄関に立った私は少し考え込んだ・・・

いつもは不均等に転がっている靴達が整然と並べられている。
そして油も塗られている・・・
私は、くびをひねり数分考え込んでしまっていた。

「まっ、いいっか。誰かしらぬがすまぬな」
私は独り言のつもりで呟いている…そして急いで仕事に向かう。
その私に家の門をこえた頃に聞こえてきた。
・・・・・かすかに。

「いいえ…行ってらっしゃいませ」
「お帰りを待っています」
うっすらと・・・花の香りが感じられた。



その日の夕方…今朝の不思議な一件を思い出しながら私は帰路へと向かう。
時代は昭和30年初頭・・・
戦後一番平和な時代だった・・・そんな頃。
人々の笑顔が純粋に輝いていた…そんな日々。



私は家の前に立ち、また考え込んだ。
私は…? 
ひとりで…?
この家で暮らしてきた…。? 確かそのはずだが ???



しかし、目の前の家には明かりがつき台所からは湯気が立っている。
トントントン。
包丁でまな板を叩く音がする。
何か切っている? 料理?
最近縁故にしている女性はいないはずだ。まして食事の支度をするほどの女性などは。
ますます私は考える。が答えは出ない。
ただ、嫌な予感がした。私は勘だけはよかった。

ザック ザック ザック 門を過ぎ玄関の鍵を開けた。
ガッチャガッチャ ガラガラガラ・・・
私は初めて自分の家の玄関から中を覗き込んだ。

「おーい、誰かいるのかーー」
「おーーい、おーーい」
その瞬間、廊下の奥から真っ白な影が凄い勢いで私に向かってくる。
その廊下は真っ暗な闇なのに、白い影がうごめくのはわかった。
私は、冷や汗を流し腰が抜けた。
すると、その影は私の前で一度止まり台所へと移動していく。
まるで私を誘うがごとく。
下半身がへろへろな私は、這いつくばり移動するので精一杯だ。
そして、ようやく台所につく。
そこで私は二度目の腰を抜かした。
テーブルの上には食事が用意してあり。私の見た白い影は、美しい後ろ姿。そして味噌汁を温めていた。
白味噌の大根と油揚げの具の。私の大好きな具の味噌汁。
「この女は私の好みを知っている」
小さな声で呟いてしまう。
「だが、この女は女幽霊だ」
「幽霊?」「幽霊か・・・?」
私の体には鳥肌が、幾分かパンツが湿った様な。
焼き魚も鯵の開き。ほうれん草のおひたし。里芋の煮物。すべて私の好物である。
私は、観念した。
そして、その白い影と夕食をとった。
私も今までは様々な女性と夕食をとり酒を酌み交わしたことはある。
しかし目の前のいる女性?・・・とは初めての経験だ。
この世の女性ではない・・・がこの世の女性であった。・・・はずだ。
失礼な事は出来ない。一応男子たる物・・・である。

彼女がみそ汁をついでくれた。
白い手が私の手と重なる。
・・・彼女は照れている。
幽霊も女性なのだ・・・。
私は思った。日本男児は女性に恥かかしてはいけないと。

そのうち、少しづつ私たちはお互いを理解し始める事ができていく。
そう、真っ白の影であった彼女の顔の輪郭が見えてくる。
彼女の切れ長の目。
筋の通った鼻筋・・・控えめな唇。
面長な顔立ち。
とても美しい。
美しすぎる。

私は久しぶりに恋に落ちてしまった。  幽霊に。
女と男が恋に堕ちるきっかけに、たいした理由は必要がない。
それが生きているか死んでいるかなどはである。

その日を境に私の人生は変わった。

彼女との散歩は真夜中。
彼女は私の背後から歩いてくる。
いや、飛んでくるのだ・・・。
そして囁く・・・背後から。
これが、癖になる。
こまったものだと最近そう感じている。

買い物は堂々と二人ではいく事ができない。
私が大体のものを買い付け彼女がいつもの囁きで助言する。
しかし、たまに彼女は大物の鯛などを持ち帰る。真っ暗な空を鯛が飛んでいく。
「今日は鯛か。鮪は明日にするか」
喧嘩したら負けると知っているので私は理由は聞かない事にしている。

休み日、私は前日の夜から友人を呼びドンチャン騒ぎをしている。
すると、いつのまにか友人の一人一人が青い顔しながら帰っていく・・・・・
ここらへんは生きてる嫁さんも幽霊の嫁さんも変わりはない。
私は日々学習をさせてもらっている。嫁は、怖いと。

ただ夜の営みは現実とは違っていた・・・。
寝床に横になる私に、彼女は空中遊泳するように近づいてくる。
最初に手と手が触れ合う。重なりあう。
すると彼女の体が肌色に変わっていくのだ。
髪の毛は深紅の黒・・・初めて見た。
彼女の紅・・・
そして、すべてが生きているがごとく、肌は 紅く、まるで生きている様な・・・
体が触れる重なる・・・微電流がお互いの体に共有していく。快楽も・・・
決して肉体的な物でなく、すべてが共有され互いにその時間を守ろうとする。
結束・・・不思議な感覚である。

翌日、朝食のとき目を合わした彼女は照れていた。
いつもの白い影が・・・
何となく。
・・・桃色だった。


7日ほどは特に何事も無く日々は過ぎていく。
変わった事と言えば私と彼女の呼吸であろうか。
彼女は素晴らしい、私の考え行動の先を読み空中を飛ぶ。

ある日、会社に向かっている私に彼女の香りが漂ってくる。
「どうした、何かあったのか?」
最近、彼女は静かに反応するようになっていた。
「忘れ物ですよ」
と、耳元に彼女の声が届いたと思ったら書類が空から降ってくる。
「ありゃー。ま、とりあえずありがとな」
と私はつぶやく。
その後、私は書類を拾いまくり周囲の人々からの好奇の視線を浴びてしまう。
そんな私を彼女は高い空の上より眺めているのだ。
空の一部分が白かったり、桃色だったり、青かったり、黄色かったり・・・変化している。
もちろん私にしか見えないはずだからいいものを。
・・・そんな私を彼女は楽しんでいるようだ。
・・・そんな私を。

でも、そんな彼女が私には愛おしくてしょうがない。
「また、夜な」
そうつぶやくと彼女は風にのって帰っていく。
夏の青嵐のなかをまっすぐに。

そんな、穏やかな日々をひとつの事件が闇を感じさせた。

私は仕事が終わり電車に乗り帰途にいる。
・・・すると。
「きゃーー」
車内に悲鳴がはしる。
女学生の一人が私にを指差して・・・
「死神だ、この人死神だーーーー」
騒ぎだし泣き出す。

周囲も騒ぎだし私への視線が強く感じてくる。
私はいてもたってもいられなくなり、次の駅で降りた。
ホームのベンチに座り今遭った事を思い出す。
あの女学生が騒ぎだす一瞬前に、私は彼女の事を思いだしていた。
お唯の事を・・・
その瞬間、彼女の香りがして女学生が騒ぎだしたのである。
私は、考えた。

何?
彼女は、死神か?
まさか。
そんなはずは無い。
まさかな。


そして、ようやく私は自宅に近い駅に着いた。
彼女は駅に着いた私を待っていた。

「お帰りなさい」

「おう、ただいま」

彼女は一瞬で私の体に取り巻く。
まるで霧のように。
たまに恐ろしい形相で私たちを見つめている人々がいる。
きっと見えているのだろう。
私は、そのような人に特に念入りに頭を下げる。
すると彼女は小さな巻き風を送る。
びっくりしたように相手は逃げていく、二度・三度と私達に視線を捧ぎながら。

「いつまで・・・この町に住めるのかな・・・」

私が嫌みを言うとさらに強い巻き風をおくってくる。

「ふふふーーー」
彼女は含み笑いと共におくってくる。
そんな彼女は黄色に変化する。
私は慌てて彼女と帰宅していく。
日々の私たちの楽しい日課だ。

そして・・・こんな日に限って彼女は求めてくる。
彼女は女になる。
幽霊も人間も・・・なにも違いは無い。
相手を求めるという欲望がどれだけ強いのか。
彼女は、その気持ちで表せ方が一変する。
髪、肌、唇、乳首、すべて生きていたままの姿に戻っていく・・・
私は彼女のその姿にすべて打ち負かされてしまう。
子供のように彼女を求めてしまう。
心に広がる・・・広がっていく。
彼女の痛み、悲しみ、憎しみまでも。
そして私たちはひとつになっていく。
妥協も、あきらめも、悲しみも。
しかし最後に私達に存在しているもの。
それが私たちを繋ぎ止めていた・・・それが必要だった。

翌朝。
相変わらず彼女は桃色だった。
私は益々愛おしくなっていく。


ある日、私はなぜか仕事にいくきになれずに布団に微睡んでいると。
強烈な風が吹き私は目覚めた・・・瞬間。

「だめよ、日々を大切にして」
彼女がつぶやいた。


最近、彼女はご機嫌な日々が続いているみたいだ。
「ふふふ~~ふふ~~~ふふふん」
よく台所から鼻歌が聞こえてくるのだ。
幽霊も鼻歌を歌う物なのか。
私は又ひとつ勉強になった。

幽霊女心と言うものを。

そもそも、幽霊とは何なのだ?
私は休日の午後考えてしまった。
もとは人、だったが・・・今どう見ても人に感じられる。そして、女・・・いじらしく、可愛く、美しい。
彼女は女性そのものだ。

ただ、やきもち焼きで風を自在に操る。
下手に喧嘩などしてみれば家中に台風が駆け抜けた様な。
私は一回だけその経験をした事がある、だから二度と彼女を怒らす事はしまい。
・・・肝に銘じた。


「ふふふ~~ふふ~~~ふふふん」
今日の彼女は特別機嫌が良い。
こんな夜は何かある。
私は勘だけは良かった。

「貴方・・・」
・・・きた。
「ねえ、貴方・・・」
「私、動物園いきたい」

「動物園か・・・そうか・・・」
「今度の休みにでもいくか」

台所に風が舞う。
「私、うれしい!!!」

私の好物の冷や奴がほこりまみれになってしまった。
鰹節も吹き飛んだ・・・。




そして、ある初夏の午后。
太陽は、無造作に大地に降り注ぐ。
汗が体中から溢れていく。
「はあはあはあ・・・」
息をするのも苦痛だ。
その私の背中にまたがり・・・

「きゃーーー貴方、お猿・お猿」
「きゃっきゃ・きゃっきゃ、言っているわ」
「きゃーーー貴方、おしりが真っ赤よ、お顔も紅いわ」

いつにもなく彼女は騒ぎ、猿山に大きな風をたなびかしている。
そして私の背後から芋のかけらを投げている。
猿たちは彼女の姿が見えるのだろうか? 盛んに威嚇してくる。
だが、猿も動物だ・・・食欲には勝てないようだ。

廻りの子供達は不思議そうに私を見ている。
それは、そうだろう。
私の背中から芋の欠片が猿たちに飛んでいくのだから・・・。
私は苦笑いをするしか無い。
・・・そして私は思う。
今夜は私に・・・風は舞う事は無いと。




「唯・・・」
「来月の夏休みに二日、三日家を空ける事になりそうだ」

「そうですか・・・」

「うん・・・」
「留守を頼むな・・・」

「どこに、御用事ですか・・・?」

「野暮用だ・・・」
気のせいか風が動きはじめる。
彼女の鼻歌が聞こえなくなっている。

「あなた・・・」
彼女が真っ赤に光りだしていた。

「あなた・・・」
私の大好きなあの黒髪が真っ赤に燃え、箸やら包丁やらが中を舞う。
「あなた!」
「私もお伴します!!!」

「わかった・・・怒るな・・・考えすぎだ・・・」
「久しい友人が療養所に入ることになってな、お見舞いにだ。だから・・・怒るな・・・お前の勘違いだ」
台所に嵐が吹いた。
私の説明不足が招いたとはいえ。
「お唯怒るな・・・頼む怒るな・・・風だけはやめてくれ!!!」

「馬鹿・・・・・!!!!!」
これでもかってほどの巻き風を送った彼女は出ていってしまった。
数日・・・私の食事は、ねこまんまだった。


八月のよく晴れた週末に私はお唯と旅を始めていた。
目的地は長野の高原にあるサナトリウムだ。
お唯は何か勘違いをしている。・・・重箱に手料理をつめている。
「お唯、今日はお見舞いなんだ・・・弁当など必要ないぞ」

「なに言っているの・・・! 久しぶりのお出かけなんですから・・・。ほんと貴方は女心がわからない人ね」
・・・・・・・
解るはずがない・・・荷物は私が持つのだから。

はじめは空いていた車内だったが松本を過ぎる頃には・・・
笑顔で満面の彼女は・・・今は列車の屋根の上で光っている。
膝を抱え、いつもの鼻歌を歌っている。
さすがにこれだけの人々の中で感情を光で表現するのには躊躇ったようだ。
そして一時間ほどたち目的の駅に到着した。

「おーーーい。お唯ーーーー!!!」
私は彼女を呼んだ。
すると寂しかったのか瞬間私にまとわりつく。
「私・・・煙い・・・」
彼女の笑顔はすすだらけだった。
私は手ぬぐいで拭いてあげる、すると彼女は少し照れ、くったくのない笑顔でほほえんでいる。
「さあ いくか」
「はい」
私たちは友人もとに急いだ。



「よっ、久しぶりだな。元気か・・・?」

「元気だったらこんな所にはいないよ」
「しかし・・・いや久しいな・・・わざわざすまんな」

「ちよっとした小旅行になったよ」
「お前にも会えたしな、思っていたより元気そうでよかったよ」

「土産だ」
私は、重箱の煮物を差し出した。

「貴様が作ったのか・・・?」

「いや・・・俺ではない」

「では、これか・・・?」
奴は悪ガキみたいな笑顔で小指を立てて笑い出す。

「まっ、そんなものだ」
真っ青な空の彼方から窓ごしに風が吹き込んでくる。
「お唯・・・」
私は彼女の名を呼んでいた。
彼女の風だった。
初秋の青い空を駈ける爽やかな風だった。

私たちは友人の見舞いの帰り。
少し足を伸ばし。
海を見に行く事にした。
それが。
私たちの始まりだった・・・。





光は波の轍の中、乱反射している。
波が砕ける、そして防波堤を彼女が駆けてくる。
初めて見た。
彼女の走る姿を・・・まるで少女のような満面の笑みが眩しい。

二人は波打ち際を歩き続けた。
波が彼女の素足によせては帰り・・・刻はいつのまにか夕暮れとなり、あたり一面夕暮れの面影を漂わしてくる。
波は彼女の足元を。
「・・・・・あまり優しくしないでください」
かすかに彼女の言葉は、波の音にかき消されてしまった。

私は彼女を見つめた。そして・・・不思議な光景に出くわした。
いつも浮遊している彼女が砂浜に素足をおとし、まるでその感触を懐かしがっている様にみえた。
波がやさしく打ち寄せている。
まるで、少女が波打ち際で戯れているかのように。

「いえ、なんでもありません」
彼女の笑みは・・・
振り向いた・・・
彼女の見つめる遠い先・・・瞳の先。
彼女は何を見つめているのだ?


彼女はずっとずっと私に…その笑みを絶やさなかった。


その日、私の帰りは遅くなってしまった。
「はあはあはあ」
彼女を怒らすまいと必死に駅から走ってきた。
「お唯ーーーおーーい・・・お唯」
私は、夜に迷い・・・彼女の微笑みを探してしまう。
そして・・・ひとつの現実に懐かしい痛みを思い出した。

二人の寄り添う場所。

お唯は縁側にひとり佇みその無防備な後ろ姿をさらけ出す。
そして、いつもの彼女の鼻歌が響いていた。
「ふふふ・・・ふふ・・・ふふ」
それは、いつか聞いた子守唄だった。

私は夜に迷う。
いつからか・・・ずっと迷っていた。
お唯の存在する場所・・・そこに空間に亀裂がはしる。
その彼方に顕われて来た。
その後ろ姿に…重なる様に少女の後ろ姿が。
なつかしい痛みが、その後ろ姿が・・・。






・・・8月の夜、近くの大きな川で花火大会があるようだ。
「貴方!!! 再来週の土曜日、花火大会よ!!!」
「貴方!!!!!! 早く帰ってきてね」
風が動き始めている。
渦を巻いている。

そして・・・

彼女は、その刻が来るのが待ちどうしかったらしい。
私の職場まで訪れて、その空でチカチカ光りだしている。
「もうすぐ仕事が終わるから待っていてくれ」
彼女は益々光りだす。

夏で良かった。
雷に近いものとして人々は目をそらしてくれている。

時間は、夜も七時を過ぎていただろうか。
広く漆黒の夜に明かりが灯る。
赤、青、黄色、緑、白、・・・
様々な色の共編が始まった。

彼女は大変喜んでいる。
私の体に巻き付き同じ色で答えてくる。
赤、青、黄色、緑。白・・・・
そして私に口づけをする。
桃色なりながら。

当然周りの人々は不思議な物を見ているようだ。
ただ、花火の煙が私たちの愛の姿を紛らわしてくれていた。

「貴方・・・ありがとう」
「私、うれしい。貴方と花火が見れるなんて・・・」
「私、ずっと一緒に花火が見たかったの・・・」
彼女の頬に涙が流れた。
「とても幸せです、ありがとう」
「とても綺麗・・・私の表現みたいね」
「本当にありがとう」

花火は一時間ほどで終わった。
人々は、それぞれ家路へともどる。
その時、
彼女は一瞬で私から離れていった。
一瞬だった。
私は、瞬間の狭間の中で途方に暮れていた。

自宅に帰ると彼女はいない。
気配さえ感じえる事ができない。
「どこか寄ってでもいるのか」
私はつぶやいた。
彼女のいないこの家は・・・私には寂し過ぎる。
「お唯ーーー」
大きな声をあげて叫んでいるが返事は無い・・・

私は心底思えた。
私は、彼女を愛している。

「お唯ーーーー」

「何処にいるんだーーーーー返事をしてくれーーーーーーーー」

この家の中に彼女の気配はもう無かった。

私一人だった。一人になってしまった。

彼女の存在が感じられない日々・・・
私は荒れていた。

彼女が欲しい・・・
唯、欲しい・・・・

何故、私から離れていく・・・
何故、今・・・いつから?


そんな日々が10日ほど流れていく。
そんな休日のある日、あまりに入る事の無い部屋の障子を私は開けていた。無意識に。
その部屋は廊下の奥のひっそりとした場所に存在している、いつも薄暗い長い廊下のなかで、唯この部屋だけが陽のあたる場所だった。
6帖くらいの普段使われていない部屋。
その部屋に置かれていた・・・写真があった。
幼い彼女の姿が・・・

この部屋は彼女が生活の場にしていたみたいだ。

白黒の古い写真。優しい笑みをかぐわす親子の写真。
そこに、彼女がいる。
幼い彼女の姿。
私は、瞬間。彼女とわかった。
「・・・お唯」

そして、様々見た事も無い物が散らばっている。
写真・手鏡・櫛・紅・・・・
様々な女性の手にするものが散らばっている。
おそらく最後につむじ風でも起こしたのだろう。
幽霊も持ち物を持っている物なのか。
私は不思議な心持ちになった。
それにしても彼女はどこに・・・?


彼女がいなくなり一ヶ月が過ぎていく。


私は記憶をたどっていく。
彼女は、いつから私に・・・
記憶は曖昧だった。
すべて曖昧な優しい記憶しかない。
唯、すべてやさしい愛しい記憶しか残っていない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

彼女がいなくなり1年の時が過ぎた・・・

私は孤独だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

言葉にできない、彼女を求める心は・・・・

家に帰っても感じられない・・・・・・・
彼女は、もう存在しない・・・・・・・・
私は、ひとりだ。
ひとりだった・・・
「お唯・・・」
私は、泣いた。
夏の夕暮れ。空は残酷に遠く紅く白く青かった。










「熱を測りますよ」
「体の具合は、いかがですか」
看護婦は無造作に私に問いかけてくる。

私は体を壊した。
かなり悪いみたいだ。
体がきしむ、悲鳴をあげている。

「お唯・・・」
「お前が、いてくれれば・・・」
「お唯・・・」

医者が私に告げた。
「もう手を尽くす事が出来ません」

私の命が終わるときが来たみたいだ。

私は人生を思い返す・・・
お唯と過ごした日々が蘇る。
あの日々が一番幸せだったのかもしれない。

「お唯」

息が苦しい、意識が遠のいていく・・・
「私は、死ぬのか・・・」
うっすらと私の視覚が薄れていく・・・

瞬間、蘇っていく・・・
あの至福の日々を・・・

死に至ろうとする私の周りに懐かしい風が舞っていく。
あの香りが漂ってくる。
「ああ。懐かしい。何もかも懐かしい」
目の前に、あの様々な色が蘇ってくる。

様々な私の記憶の? いやちがう。果てしない刻の流れの中での必然の偶然。



「お唯・・・来てくれたのか。逢いたかったよ」

「ごめんなさい、あなた。お疲れ様」

「俺は、もう死ぬのか?」

「はい、私の所に来る事になります」

「お前の所にか・・・それも・・・酔狂か・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
懐かしい笑顔をに逢えた・・・


「体が辛いですか?」

「つらいよ」

「もうすぐです・・・解放されます・・・痛みから」

「その時は私は一人か」

「いいえ、私が・・・」

「お唯、いてくれるのか!!!」

「はい、最後まで貴方のそばにいます」

「ありがとう・・・」

私は死と言う恐怖から逃れる事ができた。
お唯がそばにいてくれるのなら。

「お唯、お前は・・・」
「どうして私の前に・・・?」

彼女は、はにかんだ。

「私は、貴方の娘です」
「前世で生まれた貴方の娘、唯です」
「私がお父さんの死を看取るため、ここに呼ばれたのです」

「そうか」

私は、すべての日々・・・その意味を理解する事が出来ていた。
そして、それらの現実を受入れる事が出来る様になっていた。

この世界に死神などいない。
必ず愛しい人が迎えに来てくれる。

「有り難う。唯・・・
      ・・・・・・・・」

やがて、すべての事柄の存在を受入れる準備ができていく。

そして・・・私の人生が終わっていく。

「有り難う、唯、さとみ・・・」

相変わらず彼女は病室の天井で漂い色を表す。

彼女の色・・・桃色・赤・青・黄色・緑・白、・・・・そして。
・・・黒。

初めての色だ。

薄れていく意識の中感じられた。

彼女の頬を流れる涙・・・

そして、屈託のない笑顔が・・・


私は、帰っていく・・・

彼女達の所へ・・・

至福の時間に・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・









その世界は、青く・高く・気高く・そしてもろかった。


「ありがとう・・・唯」

「はい、おとうさん・・・」



まっしろでかがやく世界が・・・すべての笑顔が・・・思い出が・・・。
やさしいあきらめと・瞬間の妥協ともに。

・・・私を待っていた。



























・・・・・・・・。?

コメント(84)

私にご意見・文句・等ある方は43の方へのご意見を。又、それが嫌ならばメッセでお受け致します。宜しくね。
コメント最初から読みましたが…読者からの批評を受け入れるつもりがないのであれば、このようなコメント機能があるサイトに作品を載せる必要はないと思います。
長いたらーっ(汗)
長すぎて読む気にならずにコメ読んだァタシw
46 里枝@絶賛体調不調中様。ありがとうございます。貴方の感性は私の違った物をお持ちみたいです。ぜひお友達になりたいです。わたあめ・・・か。
47 48 49様。 ありがとうございました。
53 里枝@絶賛体調不調中様。わかりますよ。文章を読んだ瞬間に頭に映像が浮かびましたよ。確かにキラキラしていますね、特に夜店では。・・・でもお唯は杏飴が好きなんだよな。
この前唯と名乗る煙に殺されかけましたよ。
これを読んで確信しました。
やはり死神だったのですね。
○○系と書いて欲しかった。他のコメにもあったけど、私みたいに実話系しか読まない人にとってはちゃんと記しがないと困るし、第一怖くないし。怖くないだけならまだいいけれど、批判に対する態度もきちんとなってない。これは投稿者としてあるまじきことかと。


削除希望です。
うー…ん。話がやたら長い割に内容が進展しないので(笑)途中で読み手が飽きて来ると思います。
せっかくきれいな文章ですので、もう少しスッキリ纏められたらよろしいかとグッド(上向き矢印)

題名に【創作】と書いて頂きたいという意見に同感です。
コミュニティーの説明文でも推奨されていますし、私も基本的には実話を好んで読ませて頂いております。
次回作からは、どうかよろしくお願いいたします。m(_ _)m
自己陶酔しながら書いたんだろ〜な〜ってシラケる作品。

だいたい前世の娘って設定が受け入れられなかったな〜。

私もこの話には創作だとハッキリ書くべきだと思うな〜。

すみませんね〜、私が理系だからか、この文字の羅列が面白く思えなくて〜。読解力が足りない私が悪いんでしょ〜ね〜。
文章の雰囲気は良いのですが、言葉遊びに酔いしれている感は否めないですね。そのいやらしさを読者に見抜かれてしまっていますね。所々、おかしな表現がありますし。
肉体関係を結んだ幽霊の前世が「自分の娘」という設定にも違和感があります。主人公の前世か来世の妻とかの方が自然ですね。
それと、携帯ユーザーのために、コメント欄に分割して投稿して下さると良いと思います。

ダラダラと長くしないで簡潔にまとめたら良い作品になると思います。
私にご意見・文句・等ある方は43の方へのご意見を。又、それが嫌ならばメッセでお受け致します。宜しくね。
すごく好きな話です。
なんだかほんわかしました。
でも皆さん何故そんなに叩くのでしょう?
主の態度が気に入らないの?

私はこういう話があってもいいと思います。
面白かったです。
62 まっち〜様。人の言葉には同じ言葉でも2種類の意味があります。それは正反対の位置にあり対峙していますが根本は同じものです。私は荒れる前にそれを避けているだけです。ルールに従っています。ここに書けない説明を貴方にしてあげたいけれど、メッセ拒否されていてはそれも出来ません。私は真摯に忠告頂けた方には必ず「ありがとうございます」とお礼を言わせてもらいます。初心に戻ります。
誤字脱字が非常に残念。
それだけでどんなに面白い内容でもしらけるんだよね。
66 拓人@時々トマト様。適当にスルーしてください。しらけるのなら私の名を見たらスルーでどうぞ願います。
作品を出す以上は、最低限の常識じゃない?
このトピだけに限らずね。
こういった話嫌いではないが…怖い話とは違うかと思います(´・ω・)また、個人的にはいい話なら創作だろうが体験談だろうが気にしませんがコミュの決まりは守り、【創作】【体験談】等の種類をタイトルに付けるべきかと…
> 風船かずらさん
様々なコメントを読みましたが、風船かずらさんのコメントが一番しっくりきました。
それに言い方、意見、一番気持ちの良いものでした。
ついつい、失礼しました。
トピ主の味方する訳じゃないけども‥

トピは良いコメントには良い返事を返すけど‥指摘コメントには悪態ついてるからそこが良くないんじゃないかな‥それだと裏表ある人みたいな感じしちゃうョ‥あせあせ(飛び散る汗)

合作=創作
合作=実話

初めて読んだ私には分からない‥こういう私みたいな人も居るから出来れば記載してもらえると有り難いなるんるんあとコメント返しもマメだから、もう少し物腰柔らかく、オブラートに包む感じにしてもらえると嬉しい。わーい(嬉しい顔)



トピ主‥うっかりツンデレだったり‥しないよねわーい(嬉しい顔)あせあせ(飛び散る汗)
物書き目指してますって言うのなら、諸々ツッコミ所満載ですが、趣味で書く分には良いんじゃないですか。
どんな作品にも批評は付き物ですが、批評される覚悟がないなら載せない方が良いですよ。
物書きは、傷ついてでも恥かいてでも、なりたい人間が成るものですから。
トピ主さんのコメント見る限り、どっち側の人間か分かりません。どちらかにして下さい。
怖い話、とは違う気もしましたが内容自体はコミュ違いだとは思わないです。

内容も小説を良く読む者としての意見ですがいいと思います。
文章が単調過ぎたので少し抑揚を付けて欲しかったです。

皆様も申し上げてる通り批判も感想の一つです。それを攻撃的に返すのはどうかと思います。

いい感想だけ欲しい、最低限のマナーが守れないなら別の場所へどうぞ。
物語は俺の子供なんだよ?
俺とまほが苦しんだ末に生まれた子供なんだよ。
時間の流れをそのままに受け取らないでくれ。
今と久遠からの過去、そして永遠に続く未来際。
時は我儘で俺たちの常識の範疇には無いんだよ。
だから・・・俺たちは夜迷う・・・
俺の手から離れた子供でも他人からあーだこーだ言われ貶されたら普通は護るよ。
唯は間違いなく俺たちの子供なんだ・・・。


お唯ならいま俺の上で白目剥いてヒィヒィ言ってるよ!な話

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