とにかく怖い話。コミュの【お風呂系】　幸せの形

『四葉のクローバーの花言葉、知ってる？』

ベッドの上で俺がプレゼントしたクローバーをモチーフにしたシルバーのネックレスを眺めながら、気だるそうにマキは言った―――




＊＊＊＊＊
マキと出会ったのはまだ彼女が１０代の頃だった。
明るく仕事も真面目で、若いのに大人びているな〜と思いつつ、３０を越えた俺は若いっていいなぁ〜なんてオッサンのように見ていた。

彼女は早くに両親が離婚し、母子家庭で育ったらしい。
母親が仕事が忙しい為、マキが幼い兄弟の母親代わりだったらしい。

一緒に仕事をするうちに彼女が大人びているのではなく、急いで大人にならざるを得なかった為に、無理に大人の仮面をかぶっている事に気付く。

最初こそ同情やら、兄貴みたいな気持ちだった。

しかし時が経つにつれ、一緒に仕事をする時間が長くなるにつれ、いつも一生懸命で精一杯大人を演じている彼女を、とても愛しく感じるようになっていた。

自分の気持ちに気付いてからは、どちらからともなく自然な流れで一緒に居るようになった。

２人に言葉は必要ない。

同じ空間に居るだけで、同じ時間を共有するだけで心が温かく幸せだった。

彼女と一生を共に過ごしたいと思った。

・・・何もかも捨てても。



しかし、そんな時も長くは続かなかった。

正直に言おう。


飽きてしまったのだ。


最初は俺の方が気持ちが大きかった。しかし俺を気遣い、絶対に心を許さなかった彼女の心が完璧に俺に向いた。

今思い返してみれば、職場にも内緒だったし、そのスリルに酔っていた部分と、若いねーちゃんを落としたいというハンターみたいな賭けが楽しかったんだと思う。

彼女の気持ちが重くなってきた。

―――何よりかみさんが勘付き始めている。

彼女にはかみさんを愛してないなんて言ったけど、俺はかみさんを愛しているし、もうすぐ子供も生まれる。

何もかも捨ててもいいなんて思っていたが、所詮恋愛における一過性の熱病みたいなもんだ。

彼女は最初こそ、家庭を壊さないように・・・というスタンスだったが完璧に気持ちがこちらに向いた今、急に俺の子供がほしいなんて言ってきた。

まったく冗談も程々にしてほしい。
職場にも勘付かれ始めているし、俺の出世にも響く。

―――潮時だな。

・・・さて、一体どうやって手を切るか・・・

仕事を辞めてほしいが彼女が生活を支えているようだし、仕事もよくやる分クビにもしづらい。

いっその事死んで・・・


・・・くくく、俺ってヒデーヤツだな。
まぁ、かみさんもまだ里帰り中だし、今晩もう一回会っとくか。




＊＊＊＊＊
子供が産まれ、かみさんがもうすぐ帰ってくる。

彼女を未だ切る事が出来ず俺は焦っていた。

今夜彼女と会う約束をしている。
最近の俺の態度で察する部分があるのだろう。

仕事もシフトを減らし、彼女からあまりコンタクトを取って来なくなった。


今日こそは・・・。




＊＊＊＊＊
あの夜、俺は彼女に会う事は出来なかった。


・・・いや、彼女には一生会う事はない。


彼女は死んだのだ。
大量の四葉のクローバーを浮かべた浴槽の中で、首を切って。

はは、クビにしたいとか、死んでくれないかなんて思ってたけど、まさか本当にクビ切って死ぬなんてな・・・。

そして司法解剖の結果、彼女の腹の中には―――。

何とも後味が悪い。一時は愛していた女だ。

・・・まぁ、しかしこれで俺の幸せを脅かすモノはなくなった訳だ。



今日は結婚記念日だ。
ここ数日は彼女の自殺により少々塞ぎこんでいた。かみさんも心配しているようだったし早く帰ろう。




＊＊＊＊＊
「お帰りなさい」

笑顔で迎えてくれるサナエ。あぁ、幸せだ。
もう浮気はしない。２人を同時に愛するなんて出来っこないんだ。

「疲れたでしょう？まずはお風呂に入ってきたら？？」

部屋の奥からはいい匂いがしてくる。記念日の為に腕によりをかけたのだろう。
『いい匂いだな。記念日のご馳走だろ？先に食べたいな。』

「まだメインが出来てないの。だからお風呂で体キレイにしてきて☆」
サナエに促され、先に風呂に入る事にした。




＊＊＊＊＊
着替えを用意し、脱衣所で服を脱いでいると後ろから視線を感じた。

『サナエ？』

振り返るが誰もいない。気のせいか。

服を脱ぎ終え風呂場に入り、浴槽の蓋を開けようとしたその瞬間・・・

「ゴッ！！！！！」

と鈍い音と共に頭に衝撃を感じ、意識が薄れていった。

・・・視界の端には・・・マ・・・キ・・・？？




＊＊＊＊＊
『んんっ・・・イテ・・・？？・・・！！』
俺は浴槽の中で手足を縛られていた。


『うわぁ！！』


湯船には沢山の

四　葉　の　ク　ロ　ー　バ　ー


「ふふふ・・・集めるの苦労したのよ・・・」

『サナエ！？これは一体・・・？？』

「すごいでしょ？今日のためにまた探してきたの」

どう言う事だ・・・？まさかマキの事がバレていたのか？
・・・頭が痛い。
現実離れしたこの状況を俺は理解できずにいた。

沢山のクローバーが浮かんでいる浴槽に、ポタポタと血が流れ込んでいる。
どうやら頭を殴られたらしい。

「あの女・・・私からあなたを奪おうとした・・・私が命がけで出産していた時に・・・」

『サナエ！！すまなかった。魔がさしただけなんだ！愛しているのはお前だけだ！！』

「あの女が死ねばあなたが戻ってくると思ったのに、あの女が死んであなたはずっと落ち込んでいたわ・・・」

『違う！それは誤解だよ！！』

「もう信じない・・・あなたも私の手で・・・」


ア　ナ　タ　モ　？




＊＊＊＊＊
ふと気付くと、俺はサナエの上から自分の体が血に染まっていくのを見ていた。

何度も何度も笑いながら俺を刺す妻と、その横で笑っているマキを・・・





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『四葉のクローバーの花言葉知ってる？』



ＢＥ　ＭＡＩＮ　　私の物になって





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「今日の記念日のご馳走のメインはあなたよ・・・ふふふ・・・これで私達は一心同体・・・ずっと一緒ね・・・あなたは私だけの物・・・」
サナエは幸せそうに俺を解体している。




『これからはずっと一緒・・・お腹の子も・・・あなたを離さない・・・』
マキは俺が体から離れた瞬間から纏わりつくように離れない。




この狂気の風呂場で、俺は体も魂も２人の女性の物になった。







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完全なる遅刻ですが、お風呂系イベントに参加させていただきました。

http://mixi.jp/view_event.pl?id=26840449&comm_id=2604634

もはや時代に乗り遅れておりますが・・・


長文・駄文に最後までお付き合い頂きありがとうございました。