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とにかく怖い話。コミュの川沿いの寮

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※体験談です。怪談話とは違って特にオチはありません。あまり怖くはないですが、ちょっと小説風に書かせていただきます。

先日、俺の彼女の仕事が決まった。古い旅館での仲居なのだが拘束時間が長く、従って通勤することは出来ない。

そこで寮へと入ることになった。

「ここって…」

彼女の荷物を運んで一緒に寮へとやってきたが、近代的なマンションなどを想像していた俺たちは半ば呆れたようにその前で立ち尽くしていた。

「あたしこんなん嫌やあ」

「何で先に確認しとかへんねん」

それもそのはず、築何十年を経ているのか分からないが、そのアパートは相当に古い和風の建物だった。

昔の下宿といったほうがピッタリだろう。


および腰で手渡された鍵で部屋のドアを開けると、中も予想通り和風のつくりだった。

それでも六畳の部屋が手前にあり、その奥にまた六畳の和室。そしてその奥にさらにキッチンとトイレ、そして後付のシャワー室がある。

広さだけなら十分と言えた。しかし──

「ちょっと、なんやこれ!」

荷物を置くために押入れのふすまを開けた彼女が悲鳴をあげた。

「なんや騒々しいなあ」

恐らくゴキブリでも出たのだろうと入れ替わりに首を突っ込み中を確認する。しかしそこに見たものはそんなものではなかった。

「おい……」

押入れの正面奥に貼ってあるのは間違いなく御札だ。仰々しい行書で醍醐何とか……解読しにくいものだが、ひとつだけはっきりと読めるのは『封』という文字だ。

その瞬間背筋に悪寒が走る。思わず身震いして後ずさった。

かたわらで恐怖のあまり顔色をなくしている彼女を見て、俺はようやく冷静さを取り戻した。

「大丈夫だって。お前、幽霊見たことある?」

「ないけど……」

「俺もない。霊感が無かったらどうって事ないって」

それは確かに強がりだった。かと言って、ようやく見つけたばかりの職をすぐに変えるわけにもいかないだろう。

とにかくその場はなだめすかすより他なかった。

「とにかく今日はここに泊まってやるから心配するな」

明日は朝から仕事だが仕方がない。さすがに一人で初日の夜は越せないようだと、かび臭い部屋を見渡して覚悟を決めた。


「しかしこの妙な落書きもなあー」

夜になって改めて見渡した四方の壁は、一見コンクリートのような灰色だ。表面の感触もさほど変わらず、ただしキメは細かい。

その壁に幾多の落書きが施されてあった。

「外人やなあ」

すべて英語で書かれた落書き。それは純和風な部屋に不釣合いで、薄暗い電気に照らされて連なっている。

その中でもひときわ目を惹く一行がある。その話題は二人とも避けていたが、どうしてもそれを無視することは出来なかった。

英語に疎い俺たちでもその意味だけは分かる。

『HELP!』

見るたびに不安と憂うつが胸に広がった。

(助けてくれ……か)



そして夜は更け、俺たちは布団に潜り込むと買ってきたビールの勢いでそのまま眠りについた。

そうでもしなければ眠れそうにはない。


しかしその努力も虚しく、俺はまだ暗い部屋の中で目を覚ましてしまった。

手元の携帯を開くとまだ午前1時だ。

(なんや、まだまだやなあ)

再び目を瞑るが、しかしどうにも頭が冴えて眠りに落ちることはなかった。目の軽い痛みのような睡眠の欲求すら湧いて来ない。

(タバコでも吸うかな)

彼女を起こさないように気をつけながら布団を出ると、携帯を片手に換気扇のあるキッチンへと向かった。もちろん電気など点けたら起こしてしまう。暗闇の中、慣れない部屋を歩いた。

シンクの正面にはスリ硝子をはめ込んだ窓がある。左手のガスコンロの上に灰皿を置くとそこでタバコに火を点けた。

手持ち無沙汰の左手で携帯を開き、闇に浮き上がる画面を注視する。とりあえず適当にサイトを検索してみることにした。

(ミクシイのコミュでもいいか?)

そして開いたのが『とにかく怖い話』というコミュだ。

別に空元気というわけでも無かったが、どうせちょっと気持ち悪い寮だったら、ついでに怖いもの見たさで読んでみようという軽い気持ちだった。

煙を吸い込み、チリチリとタバコが音を立てると、キッチンのシンクがぼんやりと赤く染まった。

そのとき──


スリ硝子に黒い影が映りこんだ。



瞬間携帯を握った手からどっと汗が噴き出し、心臓はわしづかみにされたように凍りつき息も出来ない。

その俺をあざ笑うかのようにその影はすうっと左へ移動し、そして窓から姿を消した。


じっと窓を凝視し続ける俺はまだ動けないでいる。小さく震える指がタバコの灰をポトリと落とした。

(うそやろ……)

外の明かりに照らされて誰かの影が映っていただけかも知れない。
恐怖はあったが、それを確かめなければ胸を撫で下ろすことは出来ないだろう。

震える指を伸ばして、その窓のサッシを掴む。やや動きの硬い窓がキリキリと軋んで夜風を導いた。

深呼吸をすると、半分ほど開けた窓から首を覗かせる。

(んな、アホな!)

二階の窓からは広がる川が見下ろせるだけで、そこに影が映るようなものは見当たらなかった。
そして慌てて影の去った方向へ首を向けたその瞬間だった。


『ドンッ!』


左手の奥の壁から大きな衝撃音が響いた。

思わず身を縮こませて壁を凝視する。硬直した時間の中、俺の足だけが小刻みに震えていた。

(何かおるで)

姿は無くてもこれだけ気配が濃厚であれば、素人の俺にだって分かる。しかし、しばらく続いたその気配は不意にかき消すように感じ取れなくなった。

張り詰めた室内の空気がふわりと軽くなる感じがする。と同時に、隣の部屋から彼女の大きく乱れた呼吸が聞こえてきた。

「どうした?」

尋常ではない姿に、思わず傍で膝をつく。

「金縛りにあっててん!」

半泣きだった彼女はそう言うと、安堵からか大粒の涙をこぼした。



こんなことがあっても、とりあえずはそこで生活しています。
早く金を貯めて、引越し出来れば良いのですが……

コメント(5)

↑ほたるの墓が頭に過ぎりました…笑

俺も早く引っ越した方がいいと思います(>_<)
確実に引っ越した方がよろしいと思うさぁexclamation ×2

霊は御札の貼ってある部屋から離れられないと思うから、そこから逃げれば大丈夫あっかんべー

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