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ハイヒールの科学コミュの19 「全身運動からみた着地」と「衝撃」の話

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(「18 着地できる?(その2)」の続きです)

1番目の図は、全身運動として歩行を見たときの要因関連図です。このところ数回に分けて考察中の着地メカニズムは、この図でいえば、着地動作を足首柔軟性の観点で考えてみた、ということになります。
青い楕円は、脚の動作のサイクルです。
ピンクの楕円は、これらの脚の動作を支えている身体各部の機能です。今後順を追って、これらの要因についても考えていこうと思いますが、「着地」について一段落つける前に、もうひとつ、着地時の衝撃についても、書いておきます。

足首に柔軟性があったとしても、全身のバランスが取れていなかったり、推進力のロスがあったりすると、着地ポイントへ足を運んでいけない場合が多いのです。

まっすぐいい感じで歩いていると思うと、時々、前に出した足の着地が、左右にシフトしたりします。この「およよっ!」があると、その後の建て直し動作が結構「かっこわるい」ものになります。「かっこ悪さ」は一時の恥ですみますが、実は、予期せぬ方向への予期せぬ着地は、大きな衝撃を脚に与えがちなのです。

歩いているとき、どれほどの衝撃が、脚に(または足に)かかっているのでしょうか。
靴や、便利グッズなどの宣伝サイト、整骨院のサイトなどに、この衝撃うんぬんの話題は結構見かけます。しかし、私にすれば、首を傾げたくなる「理論」も、少なからず見かけます。
そこで、科学を謳うこのコミュでは、そのあたりにもメスを入れていかねばなりません。

さて、衝撃とは何でしょう?
衝撃力とか、衝撃荷重とか言う言葉が、巷では使われますが、学術的には、衝撃は「ちから」や「荷重」ではありません。簡潔にいうならば、脚への衝撃とは、脚をコントロールできる最小時間よりも短かい時間内に、力が加えられた状態を言います。もうすこし「感覚的に」わかりやすく言い換えれば次のようになります。
たとえば、手で、10kgの重さのものを持ち上げる場合、自分の意思で持ち上げるのなら、手や腕に感じる「重さ」は、「衝撃」ではありませんね。急に持ち上げた場合でも、腕の筋肉が脳からの指示で動いているのなら、「衝撃」ではありません。
ところが、腕の筋肉や表面の皮膚が、反応しきれないほど短い時間で、その「重さ」が手に伝わる場合、たとえば落ちてきたものを受け止める場合などですが、それは、「衝撃」です。

短時間で物体同士が「合体」したときに、それらの物体の固有振動数の逆数(つまり、固有振動の周期)より短い時間で行われた場合に、それを「衝撃」と呼ぶのが、学術的な定義です。
(学会によって少し違いがありますので、ご注意願います)
横道にそれますが、男女の「合体」でも、ある程度期待や予想ができる場合は「衝撃」ではなく、予想外の「合体」は、衝撃的です。心の共振周波数を超えた場合に、ショックを覚えるのと同じかもしれません。(かなり無理のある屁理屈!−苦笑−)

さて、足の筋肉や腱、骨、関節、皮膚などの反応が追いつかないくらい短時間の力の加わり方が、衝撃です。

予想しない状況での着地は、「衝撃」になることが多いです。
予想できる着地は、身体が応答できる範囲なら、衝撃とはみなさないほうがいいというのが、私の説です。

科学は、想像や理論的な考察だけでなく、実験も必要です。確認のためだけでなく、どうなっているかを自分で確かめることが大切です。

次のグラフは、いろんな歩き方をしたときに、足首にかかる「上下方向加速度」を実際に測定したものです。
これまた、使い慣れない言葉を持ち出して申し訳ありませんが、「科学」する以上避けて通れないので我慢してください。
加速度は、速度の変化を示すもので、これに質量をかければ、力になります。質量が同じものならば、その比は「力」を比較するのと同じです。

歩き方を通常の「かかと着地後足裏全体で支え、つま先で蹴り足」(はだし)した場合をnormal(クリーム色)で、かかとだけでどんどん歩く(10cmヒール、蹴り足なし)場合をhard(ピンク)で、つま先だけで、ちょんちょん歩く(10cmヒール)場合をsoft(水色)で示しました。

通常でも、2G程度の加速度がかかっていますが、かかとどんどん歩きは、その5倍の加速度がかかります。これによる力は、足首より上のひざや腰に伝わって、吸収されます。

(「2G」のG(ジー)は加速度の単位です。地球の重力加速度が1Gです。2Gですと、いつもの2倍の力を脚が受け止めていることになります。ただし、ほんの短い時間での話しなので、「2倍の体重」を体感することはないのです。しかし、確かに足首部分には、そういう力がかかっているわけです。

オードリヘプバーンのように軽やかに、つま先歩きをすると、通常の75%の負荷ですみます。

では、走るときはどうでしょう。今度は、通常の運動靴です。
ついでに、つま先走り(短距離のスタート時点)と、かかとだけでの走り(疲れてどたどた走るとき)を比べます。
つま先走りの場合は、通常の歩きと同じ2Gちょっとの加速度ですんでいます。どたどた走りは、その5倍です。

面白いのは、走るときも歩くときも、あまり変わらないということです。

そして、大事なことは、いずれの場合でも、意識化で行われる動作であり、特にハイヒールだからどうのこうのというものではないということです。普段の生活で常に体験している力のかかり具合なのです。つまり、「ちゃんと歩けば、怖くない!」なのです。

ちなみに、これら2つの加速度データは、当コミュ専属モデルで実際に私が測定したものです。

今回は、着地のメカニズムで、避けては通れない「衝撃」問題について、すこし難解かもしれないデータをお見せしました。

「ロスのない歩き」とは、「衝撃」を受けずに歩く歩き方ともいえます。そのために、着地する足の足首以外の身体の各部が、うまくコントロールするわけです。

具体的には、着地を「墜落」ではなく、「ソフトランディング」させるためのコントロールとも言えます。

次回は、「着地」そのものから、身体のその他の部分の関連について考えてまいります。

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=9888313&comm_id=1081323

コメント(2)

よくデータを整理してますね。方法論を会得しているからなのでしょうね。やや違う動作ですがバレリーナのトウへの負荷をおもいました。筋肉がないと堪えられないでしょうね。
こんにちは、和子さん。
いつもコメントありがとうございます。
励みになります。
データは、分析中のものがたくさんあって、実は整理しきれてません。中には、数年越しのものもあって(笑)、最近のまとめとのつじつまが合うかどうか確かめるのが大変です。
特に着地の妙については、奥が深い。理屈が通るたびに、科学の美しさを感じます。
バレエのことは詳しくはないのですが、ポジションのいくつかは、ストレッチ(腰痛の-笑-)に使っています。バレエでは、高いジャンプの時もトゥで着地するのでしょうか?それとも、ルルベ状態も使うのか、あの世界も奥が深くて、勉強することには事欠きません(汗)
今回のグラフでは、歩きでも走りでも、もそのショックを吸収して、同じくらいのショックにとどめられることを証明しています。脚って、素晴らしいです。

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