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会社法判例百選コミュの51-55

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51取締役選任決議の不存在とその後の取締役選任決議の効力
最判h2.4.17 向陽マンション事件
原告が代表取締役としての地位確認と、訴外Aが地位を有しないことの確認
参考条文:298?、?、299、346?

s49.7.1総会→不存在
s49.6.30当時の取締役のまま
s60 Dへの通知なし
s60 総会決議無効。特段の事情なくば不存在のまま。あれば有効。

■ 取締役選任の株主総会決議と代表取締役の選任の取締役会決議の不存在とその後に改めてなされた取締役選任決議の効力
⇒決議は原則として連鎖的に不存在となり、いわゆる全員出席総会においてなされたなどの特段の事情がある場合に限り、例外的にその連鎖が遮断される。さらに、招集通知漏れのあった取締役会決議の効力について、新たに開催された取締役会における選任決議は、招集通知を欠いた取締役が出席してもなお決議に影響を及ぼさないと認めるべき特段の事情があるときには有効となる。
事案   X(原告・被控訴人・被上告人)とAは、Y会社(被告・控訴人・上告人)の株式をそれぞれ50%ずつ所有し、XはYの代表取締役、A,B,Cはそれぞれ取締役であった。
 これらの取締役の任期満了以前の昭和49年7月1日(この日の決議が無効)、臨時株主総会において、Xが取締役を辞任し、その後任としてDが選任され、その後の取締役会でAが代表取締役に選任されたが、そのような事実はなかった。
 そこで、XはYを被告として、?Xが取締役および代表取締役の地位にあることの確認、?Aが代表取締役になく、?Dも取締役に無いことの確認、?上記各決議の不存在、を求める訴えを提起した。
 しかし、その後にAはXの請求が認められた場合に備えて、昭和60年1月30日に改めて取締役会を開催し、X,A,Cが出席した上でXを代表取締役から解任し、後任をAとする決議がなされた。Bに対する通知なし←これが無効主張の理由。
 この決議に基づき、YはXの請求のうち、?Xが取締役および代表取締役の地位にあることの確認、?Aが代表取締役にないことの確認は確認を求める理由がなくなったと主張した。
第一審  原告の請求認容
第二審  控訴棄却
最高裁 一部破棄差戻、一部棄却
Xが代表取締にあることおよびAが代表取締役にないことの確認を求める請求は破棄差戻し、Xが取締役の地位にあることの確認を求める請求に関しては棄却した。Aが代表取締役であることを認めたと思われる。
【理由】
すなわち、記録中の上告人の定款によると、上告人の取締役の任期は二年、員数は五人以内と定められていることが、また、同じくその商業登記簿によると、昭和四九年六月三〇日当時上告人の取締役又は代表取締役に就任していた者は、いずれも、昭和四七年一二月二五日に選任(重任)されたものであることが窺われるところ、前記事実関係によれば、被上告人が上告人の取締役を辞任した事実はないというのであるから、被上告人はその任期が満了する昭和四九年一二月二五日まで上告人の取締役たる地位を有していたものというべきところ、同日の経過をもって、被上告人のみならず、簡東緒、簡信義及び簡徳和の三名の任期も満了するから、上告人は商法二五五条に定める取締役の員数を欠くことになり、したがって、同法二五八条一項に基づき、右四名は、新たに選任された取締役が就職するまで、引き続き上告人の取締役としての権利義務を有するものといわなければならず、また、同法二六一条三項、二五八条一項に基づき、被上告人は、同様に、引き続き代表取締役としての権利一義務を有するものといわなければならない。
 もっとも、上告人の商業登記簿上は、昭和五九年一月三一日に新たに簡東緒、簡徳和及び簡美恵の三名が取締役に選任された旨の登記がされていることは原審が確定したところであり、また、記録中の上告人の商業登記簿によると、その前の昭和五三年五月二五日、昭和五六年一月三一日にも新たに取締役が選任された旨の登記がされていることが窺われる。
しかし、昭和四九年七月一日付けの株主総会における簡美恵を取締役に選任する旨の決議が存在するものとはいえないことは前記のとおりであるところ、このように取締役を選任する旨の株主総会の決議が存在するものとはいえない場合においては、当該取締役によって構成される取締役会は正当な取締役会とはいえず、かつ、その取締役会で選任された代表取締役も正当に選任されたものではなく、株主総会の招集権限を有しないから、このような取締役会の招集決定に基づき、このような代表取締役が招集した株主総会において新たに取締役を選任する旨の決議がされたとしても、その決議は、いわゆる全員出席総会においてされたなど特段の事情がない限り(最高裁昭60.12.20第二小法廷判決・民集39-8-1869参照)、法律上存在しないものといわざるを得ない。
したがって、この瑕疵が継続する限り、以後の株主総会において新たに取締役を選任することはできないものと解される。そして、本件においては、このような特段の事情についての主張立証はない。
【あてはめ】
 してみると、昭和六〇年一月三〇日当時、被上告人、簡東緒、簡徳和及び簡信義の四名は、商法二五八条一項に基づき、上告人の取締役としての権利義務を有していたものであり、このうち被上告人、簡東緒及び簡徳和の三名によって同日開催された取締役会における、被上告人を上告人の代表取締役から解任し、簡東緒を代表取締役に選任する旨の前記決議は、招集通知を欠いた簡信義が出席してもなお決議の結果に影響を及ぽさないと認めるべき特段の事情がある場合には有効と解すべきものである(最高裁昭四四年一二月二日第三小法廷判決・民集二三巻一二号二三九六頁参照)から、この場合にあっては、被上告人は、上告人の取締役としての権利義務は依然として有するものの、代表取締役としての権利義務は消滅し、簡東緒が代表取締役たる地位を取得したものといわなければならない。
【まとめ】
株主総会における取締役選任決議が、不存在である場合において上記決議に基づく者が代表取締役として選任され、この者がその取締役会の招集決定に基づき招集した株主総会において取締役を選任する旨の決議がなされたときは、上記決議は原則として連鎖的に不存在となり、いわゆる全員出席総会においてなされたなどの特段の事情がある場合に限り、例外的にその連鎖が遮断されるとし、さらに、招集通知漏れのあった取締役会決議の効力について、新たに開催された取締役会における選任決議は、招集通知を欠いた取締役が出席してもなお決議に影響を及ぼさないと認めるべき特段の事情があるときには有効とされ、それを審議するために原審に差し戻した。
(学説)
・連鎖的影響を避けるため、瑕疵の切断を認めない考え
・法的安定性のため、瑕疵の切断を認める考え



52(56)決議無効確認の訴えと決議取消の主張 マルチ産業事件
最判s54.11.16
参考条文:830?、831?提訴期間の問題
■ 主張された瑕疵が決議取消事由であるにもかかわらず提起された株主総会決議無効確認の訴えが、出訴期間などの決議取消無効訴訟の要件を満たしている場合の、出訴期間経過後になされた決議取消の主張は適法か
⇒適法。
事案  昭和50年5月30日に計算書類等の承認決議を行ったが、同年8月20日に株主Xが当該計算書類が監査役の監査を受けていない違法な書類であるとして、株主総会決議無効の訴えを提起した。その後、昭和52年5月24日に当該計算書類の承認取消の訴えを予備的に提起した。
第一審  原告らの主位的請求棄却、予備的請求却下
第二審  原告らの主位的請求につき控訴棄却、予備的請求について原審差戻し
最高裁  被告の上告棄却。原告の請求認容。
【理由】
 商法が株主総会決議取消の訴と同無効確認の訴とを区別して規定しているのは、右決議の取消原因とされる手続上の瑕疵がその無効原因とされる内容上の瑕疵に比してその程度が比較的軽い点に着目し、会社関係における法的安定要請の見地からこれを主張しうる原告適格を限定するとともに出訴期間を制限したことによるものであつて、もともと、株主総会決議の取消原因と無効原因とでは、その決議の効力を否定すべき原因となる点においてその間に差異があるためではない。
このような法の趣旨に照らすと、株主総会決議の無効確認を求める訴において決議無効原因として主張された瑕疵が決議取消原因に該当しており、しかも、決議取消訴訟の原告適格、出訴期間等の要件をみたしているときは、たとえ決議取消の主張が出訴期間経過後になされたとしても、なお決議無効確認訴訟提起時から提起されていたものと同様に扱うのを相当とし、本件取消訴訟は出訴期間遵守の点において欠けるところはない。
(学説)
<無効確認の訴えに、取消の訴えも含まれるか>
・厳格説 商法の規定の上で各訴えにつきその訴訟要件が異なる以上、それぞれ異なる訴訟物であると理解されるならば、原告が訴えの類型を誤って裁判を提起した場合には、裁判所は請求失当として却下すべきであるとする。旧訴訟物理論的。
 ←これに対しては、訴えの選択の危険を原告に一方的に押し付けるものとして、あまりに形式的すぎると批判される。
・転換説 訴えの類型ごとに訴訟物は異なることを前提としながら、裁判所は取消原因をも主張する無効確認の訴えは、取消訴訟の要件を満たしているかぎり、取消の訴えも含むものとして転換を認めるべきとする。本判決はこちらか。

<原告の意思表示が必要か(本判例では明らかとなっていない)>
・必要説
・不要説



53 総会決議不存在確認の訴えと訴権の濫用
最判53.7.10
■ 決議不存在の訴えにおいて、法律関係の早期確定(Yの利益保護)と法的安定性(Xの利益保護)のどちらを優先すべきか(信義にもとる訴えの提起は許されるか)。
⇒権利濫用により、許されない。
参考条文:830?
事案   Y有限会社は、Xが取締役で、Xの娘のAが代表取締役であったが、経営に行き詰まりを感じたため、社員持分を甲乙に譲渡することとなった。その後、X、Aと甲乙間で持分譲渡の合意と甲乙によるその代償の支払い、X、AのY会社に対する取締役辞任届けがなされた。
 昭和47年5月28日の社員総会(総会?)において、?前記各社員持分譲渡の承認、?甲乙を取締役に、乙を代表取締役にすること等の決議がなされたとして、その旨の登記がなされた。しかし、上記総会は、招集手続きがなく、社員が一堂に会して議案について協議議決したものではない。←ここに瑕疵がある。
 また、同年6月11日Y会社の社員総会(総会?)で商号をJからKに変更する旨の決議がなされたとして、商号変更登記がなされたが、総会招集の手続きはなく、総社員の同意もなかった。
 Xは前記持分譲渡の合意がなされてから約三年後に、上記社員総会決議の不存在確認を求める訴えを起こした。
第一審  原告の請求認容
第二審  被告の控訴棄却
本件社員総会決議が会社経営の実権の移転という重大な事項にかかわるものであり、かつ、その決議に関する比較的軽微な瑕疵の存否ではなく、決議の存在そのものが問題とされている以上、被上告人の本件訴の提起を権利の濫用であるとして排斥することはできない
最高裁  Xの訴えを訴権の濫用として、却下した。
【理由】
被上告人は、相当の代償を受けて自らその社員持分を譲渡する旨の意思表示をし、上告人会社の社員たる地位を失うことを承諾した者であり、右譲渡に対する社員総会の承認を受けるよう努めることは、被上告人として当然果たすべき義務というべきところ、当時実成安佐子と共に一族の中心となつて上告人会社を支配していた被上告人にとつて、社員総会を開いて前記被上告人らの持分譲渡について承認を受けることはきわめて容易であつたと考えられる。
このような事情のもとで、被上告人が、社員総会の持分譲渡承認決議の不存在を主張し、上告人会社の経営が事実上山形夫婦の手に委ねられてから相当長年月を経たのちに右決議及びこれを前提とする一連の社員総会の決議の不存在確認を求める本訴を提起したことは、特段の事情のない限り,被上告人において何ら正当の事由なく上告人会社に対する支配の回復を図る意図に出たものというべく、被上告人のこのような行為は山形夫婦に対し甚しく信義を欠き、道義上是認しえないものというべきである。
ところで、株式会社における株主総会決議不存在確認の訴は、商法二五二条(会社830?)所定の株主総会決議無効確認の訴の一態様として適法であり、これを認容する判決は対世効を有するものと解されるところ(最判s38.8.8、s45.7.9)、右商法二五二条の規定は有限会社法四一条により有限会社の社員総会に準用されているので、右社員総会の決議の不存在確認を求める被上告人の本訴請求を認容する判決も対世効を有するものというべきである。
そうすると、前記のように被上告人の本訴の提起が山形夫婦に対する著しい信義違反の行為であること及び請求認容の判決が第三者である山形夫婦に対してもその効力を有することに鑑み、被上告人の本件訴提起は訴権の濫用にあたるものというべく、右訴は不適法たるを免れない。
【まとめ】
持分譲渡等について、社員総会の同意を受けるよう努めることは、Xの当然の義務。今回のXの訴えの提起は、特段の事情のない限り、Xにおいて何ら正当の事由なくY会社に対する支配回復を図るいとに出たもので、信義を欠き、道義上是認し得ない。 よって、Xの本件訴えの提起は、訴権の濫用にあたる。

(学説)
<確認の利益の有無>
? 社員総会決議自体を不存在と認定すると、Xは社員であり、全面的に利害関係人なので、確認の利益あり(判例)。
? 本件Y会社は、Xの個人会社であるので法人格を否認し、Xと甲乙との合意によって持分は移転したとすべき。よって、確認の利益なし。
? X,Aが会社に出した辞任届けをもって、譲渡承認書とみて、持分譲渡を認めるべき。よって、確認の利益なし。
<本件のような訴権濫用判断は妥当か>
そもそも、Xの信義違反は甲乙に対してなされたので、Y会社を被告とするのは妥当ではない。甲乙を被告とすべき、という反対説がある。

* 他からの訴えによっても結論が変わらないことも必要



54(59)取締役の解任の正当事由 福岡小型陸運事件
最判s57.1.21 株主総会決議取消請求
参考条文:339?、?
■ 会社法339による取締役解任の意義
⇒取締役と会社の関係は民法の委任の規定により、いつでも理由なく解任することができる。
■ 会社法339?の正当な理由の意義
⇒会社が残りの報酬の支払い等をする必要のないような特別の事由をいう。本件の「経営陣の一新」は正当な理由である。
事案 もともとY会社は、Xと訴外AとXの妻Bが取締役をする会社であった。
Xが療養のため、代表取締役を辞任し、かわりにAがなった。その後、Xは取締役も解任された。この解任決議の無効・取り消しを求めて出訴した。
第一審  原告の請求棄却
第二審  原告の控訴棄却
最高裁  原告の上告棄却。株主総会決議は有効。
【理由】
 原審が適法に確定した事実は、
(1)被上告会社の代表取締役であった上告人は、昭和五二年九月ころ持病が悪化したので、被上告会社の業務から退き療養に専念するため、その有していた被上告会社の株式全部を被上告会社の取締役新道虎男に譲渡し、新道と代表取締役の地位を交替した、
(2)そして新道は、経営陣の一新を図るため同年一〇月三一日開催の臨時株主総会を招集し、右株主総会の決議により、原告を取締役から解任した、というのであり、
右事実関係のもとにおいては、被上告会社による上告人の取締役の解任につき商法二五七条一項但書にいう正当な理由がないとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。



55(77)取締役の職務執行停止仮処分の効力と後任取締役の選任
日東商事事件
最判s45.11.6 民事保全。お家騒動。
参考条文:352、70の2、
■ 職務代行者選任の仮処分は、後任の取締役が選任されることにより、影響をうけるか。
⇒受けない。所定の手続により執行するのみ
■ 取締役の職務執行停止代行者選任の仮処分と職務執行を停止された取締役の後任取締役の権限
⇒職務代行者がいるかぎり、後任取締役の権限は制限される。
■ 仮処分後に、後任取締役が選任された場合、代表取締役を選任できるか。
⇒取締役会で選任できる。
事案  同一会社から異なる代表取締役によって、異なる会社に対して同一の土地が売却されてしまった。
 二重売買の一方当事者(後に買い受けた者)から、所有権確認等の訴えが提起された。
 この場合に、全取締役が辞任し、職務代行者が選ばれた(仮処分)が、その後で新たに代表取締役が選任された。この後任取締役の扱いはどうなるか。
第一審  原告の請求棄却
第二審  原告の控訴棄却
最高裁  破棄差戻
【理由】
 商法二七〇条(会社352)の規定により取締役の職務の執行を停止しその代行者を選任する仮処分は、民訴法七六〇条のいわゆる仮の地位を定める仮処分の性質を有するものであつて、商法二五八条二項の規定により裁判所が一時取締役の職務を行なう者を選任する裁判とはその性質を異にするものである。そして前示職務執行停止代行者選任の仮処分決定は、その本案判決が確定したときは当然その効力を失うものと解すべきであるが、右仮処分により職務の執行を停止された取締役が辞任し、株主総会の決議によりあらたに後任の取締役が選任された場合、このことのみによつて、直ちに右仮処分決定が失効したり、右代行者の権限が消滅したりするものと解すべきではなく、右後任取締役の選任等により事情の変更があるとして仮処分決定を取り消す判決があつてはじめて右のごとき効果が生ずるものというべきである。
けだし、仮処分の後、職務の執行を停止された取締役が辞任し後任の取締役が選任されたときは、右仮処分による職務執行停止はその対象を失い、代行者選任はその必要がなくなつたものというべきであるが、法は、かように事情が変更した場合でも、これを訴訟手続により認定したうえ判決により仮処分決定を取り消すべきものとしており(民訴法七五六条、七四七条)、右取消のない以上、仮処分によつて与えられた代行者の権限が消滅するいわれはないのであつて、本件のような仮処分につきその例外を認めなければならない理由を見出しえないからである。

 取締役の職務執行停止代行者選任の仮処分により取締役の職務代行者が選任されている場合には、右職務の執行を停止された取締役が辞任し、その後任の取締役が選任されたとしても、会社の取締役の職務は、原則として職務代行者が行なうべきものであつて、その限度において右後任取締役は職務の執行を制限されるものと解するのが相当である。
けだし、前記仮処分が、後任取締役の選任により当然失効するものでないことは前述のとおりであるところ、右仮処分は、職務の執行を停止した当該取締役の職務に関するかぎり、これを職務代行者に行なわせることとしているのであり、後任の取締役は直接右仮処分の名宛人とされた者ではないが、右仮処分の性質上、その効力が及び、したがつて職務代行者の権限を承認せざるをえないものであるからである。
 そして、もし後任取締役は、仮処分により職務の執行を停止された者でなく、取締役である以上取締役としての権限を行使できるのは当然であるとの見解のもとに、無制限の職務執行を認めるならば、職務代行者の職務執行と競合して、取締役会の決議等につき困難を生ずることを免れないであろう。
 しかし、仮処分の後、職務の執行を停止された取締役が辞任し後任の取締役が選任された場合に、もし代表取締役が欠けているときは、これら取締役が構成する取締役会の決議をもつて代表取締役を定めることができると解すべきである。
けだし、会社を代表すべき取締役を後任取締役らが定めることは、何ら前記仮処分の趣旨、内容に牴触するものでないばかりでなく、実際上の見地から考えても、かような場合は、職務代行者が代表取締役を定めるよりも後任取締役がその意思によつて定めるべきものとするのが、商法が代表取締役の制度を設けた趣旨に合致することは明白であるからである。
【あてはめ】
 これを本件についてみるに、原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、中山国俊は、右にいう後任取締役の構成する取締役会によつて、適法に補助参加人会社の代表取締役に選任されたものというべきである。すなわち原判決によれば、同会社の前任取締役は仮処分によりその職務の執行を停止され、植田夏樹ほか三名がその職務代行者に選任され、また右植田夏樹が、商法二六一条三項、二五八条二項により一時代表取締役の職務を行なう者に選任されていたが、右前任取締役が辞任し、昭和三一年一二月二四日開催の株主総会において中山国俊ほか三名が取締役に選任され、右中山国俊ほか三名の取締役が同年同月二七日取締役会を開催し、中山国俊および江里口徹男を右会社の代表取締役に選任した(右各就任の登記は昭和三二年一月一二日経由された)というのであるから、中山国俊は有効に代表取締役に選任されたものというべきである。
 そして、前述したところによれば、右代表取締役中山国俊は、仮処分の存続中、取締役たる資格においてその職務を執行できない制約を受ける者であるから、代表取締役としての権限も直ちに行使できないものというべく、したがつて同人が補助参加人会社を代表して上告人との間に本件各土地の売買契約を締結したとしても、その効果を生じないものであるが、原判決によれば、前記仮処分申請は昭和三二年一月一四日その申請が取り下げられたというのであるから、その後は、中山国俊において、補助参加人会社を代表して前記売買契約を追認し、あるいはあらたに売買契約を締結することができるといわなければならない。
差戻審 控訴棄却
* 裁判所が選任したBがいなくなるまではAは代表取締役としての権利行使はできない。Bが去った後、Aはその行為を追認できる。仮処分の効果がなくなるまでBが代表者となる。


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