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会社法判例百選コミュの66-70

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66(130)検査役選任の請求事由 会社VS株主
大阪高決s55.6.9
参考条文:358
■ 検査役の選任請求が認められた事例
事案  (1)抗告人会社は、昭和二八年一二月二二日一般小型貸切貨物自動車運送事業等を目的として設立された株式会社であり、発行済株式の総数は一万二〇〇〇株、資本の額は金六〇〇万円であって、その定款には、営業年度は毎年三月二一日から翌年三月二〇日までの年一期とし、営業年度の末日を決算期とする、定時株主総会は毎決算期の翌日より三月以内に招集する、取締役及び監査役の任期は就任後二年内の最終の決算期に関する定時株主総会終結のときまでとすると定められている。
(2)相手方は抗告人会社の発行済株式の総数の一〇分の一以上にあたる四〇〇〇株を有する株主である。
(3)相手方は昭和五二年二月一一日抗告人会社の代表取締役に就任したが、同年五月二〇日代表取締役を辞任していわゆる平取締役となり、同日相手方に代って福岡光雄が代表取締役に就任し現在に至っている。
(4)抗告人会社の定時株主総会は、昭和五二年五月二〇日相手方が代表取締役在任当時に開催されて後、現在の代表取締役福岡光雄が代表取締役就任した後、少くとも、昭和五三年三月二一日から同年六月二〇日までに一回、昭和五三年三月二一日から同年六月二〇日までに一回招集、開催されなければならないにもかかわらず、一回も開催されておらず、かつ、昭和五二年三月二一日から同五三年三月二〇日までの第二五期及び昭和五三年三月二一日から同五四年三月二〇日までの第二六期に関し商法二八一条所定の計算書類を作成しておらず、また、同法二八三条による計算書類を定時株主総会に提出してその承認を求める手続がされていない。
(5)抗告人会社代表取締役福岡光雄は昭和五二年五月二〇日に取締役に就任し既に二年間の任期が満了しているにもかかわらず、株主総会を招集、開催して取締役を選任する手続を怠り、代表取締役たる地位にとどまっている。
(6)抗告人会社代表取締役福岡光雄は昭和五二年一二月頃入院して手術を受けたが,その治療費中個人で負担すべき約一〇〇万円を抗告人会社の資金から支出した。
(7)抗告人会社は昭和五三年三月二一日から同五四年三月二〇日までの第二六期では、年間売上高約二億円、年間損失一三〇〇万円(利益なし)の小規模赤字会社であるにもかかわらず、代表取締役福岡光雄に対し役員報酬として年間約一〇〇〇万円を支出した。
 以上の事実に基づき、原告は違法事由があるとして、裁判所に検査役選任の申し立てをした。
第一審  原告の請求認容
第二審  被告の控訴棄却
【理由】
 以上の事実が認められるところ、右(4)の事実は商法二三四条、二八一条、二八三条及び抗告人会社定款に違反し、右(5)の事実は商法二五四条、二五四条の二、二五六条及び抗告人会社定款に違反し、右(6)の事実は商法二五四条、二五四条の二、民法六四四条に違反しかつ不正行為の疑いがあり、右(7)の事実は商法二五四条、二五四条の二、民法六四四条に違反する疑いがあると認められる。よって、抗告人会社の業務の執行に関しては、商法二九四条一項所定の「不正ノ行為又ハ法令若ハ定款ニ違反スル重大ナル事実アルコトヲ疑フベキ事由」があるものと解するのが相当である。
 抗告人は、抗告人会社の業務執行に関し法令若は定款に違反する事実があったとしても、代表取締役福岡光雄以外に実質的な出資者がおらず、日常的会社業務については全ての責任が同人に負わされている等の抗告人会社の実情からすれば商法二九四条一項にいう「重大ナル事実」には該当しない旨主張するが、記録によれば、少くとも相手方は抗告人会社の実質上の株主であることが認められるのであって、前記認定にかかる(4)ないし(7)の事実が商法二九四条一項にいう「重大ナル事実」に該当しないものということはできない。よって、抗告人(会社)の主張は採用することができない。
* 会社財産への影響が必要であるとする説もある(百選解説)。
* 本判決は、「重大な事実の存在を疑う事実」があればよいという説か?



67 違法行為の差止め請求権 東京電力福島原発の運転差止請求
東京高判h11.3.25
参考条文:会社360、電気事業法39?
事案  
第一審  原告の請求棄却
第二審  控訴棄却(上告)。原告敗訴。
【理由】
1 原子力発電機を運転して電気事業を行う会社の代表取締役の善管注意義務ないし忠実義務(法令遵守義務)について
 原子力発電機の原子炉施設の事故により、施設外に放射能物質を漏出させた場合、その社会的被害が莫大なものとなる可能性があり、会社の被る経済的損害が多大なものとなることは明らかであるから、原子炉施設を設置・運転する会社の代表取締役には、右のような事故を引き起こすことがないように原子炉施設の安全性を維持し、原子炉の工作物に事故の発生につながり得るような欠陥が存在する疑いや安全運転上の異常徴候があるときには、直ちに原子炉の運転を停止させることにより、事故の発生を未然に防止する注意義務がある。
 事業用電気工作物設置者は、事業用電気工作物を通産省令で定める技術基準に適合するように維持する義務を負い(電気事業法三九条一項)、通商産業大臣(以下「通産大臣」という。)は、事業用電気工作物が技術基準に適合していないと認めるときは、その設置者に対し、技術基準に適合するように同工作物を修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる(同法四〇条)。技術基準は、電気工作物が人体に危害を及ぼし又は物件に損傷を与えないようにすること等を目的とする(同法三九条二項)ものであるから、電気事業の経営を執行する被控訴人(取締役)は、法令遵守の一環として技術基準をも遵守する義務があり、その業務の執行に当たり、本件原子炉施設が技術基準に適合するか否かについても留意し、技術基準に適合するようにこれを維持すべき義務を、代表取締役の善管注意義務ないし忠実義務の一態様として東京電力に対して負う(商法二五四条の三)。
 他方、原子炉施設の安全性・健全性に関する評価・判断は、極めて高度の専門的・技術的事項にわたる点が多いから、原子炉施設を設置・運転する会社の代表取締役としては、特段の事情がない限り、会社内外の専門家ないし専門機関の評価・判断に依拠することができ、また、そうすることが相当というべきである。・・・
4 以上によれば、本件原子力発電機の再循環ポンプの水中軸受、再使用しているケーシング部分に技術基準違反があるとは認めることができない上、本件事故後、本件原子力発電機の運転を再開するについて、資源エネルギー庁及び原子力安全委員会等による健全性の検査の過程及び合格の判断に過誤があることが明らかであるなどの特段の事情も認められないから、技術基準不適合による電気事業法違反を前提とする被控訴人に善管注意義務ないし忠実義務違反があるということはできない。

二 争点2について
1 一の1で説示したように、本件のように事故が発生し一旦停止した原子炉の運転を再開しその継続を命じようとするに当たっては、本件事故による本件原子炉施設の損傷状況、事故後に機器等に施された修理等に関する諸事実を基礎として、修理後の本件原子炉施設の健全性及び事故発生防止対策の有効性について慎重な検討を行い、これに基づいて業務執行をすることが、代表取締役として尽くすべき注意義務ないし忠実義務の具体的内容をなすというべきである。もっとも、右のような原子炉施設の健全性についての判断は、特殊な専門領域における科学的、専門的、技術的な知識、経験を必要とするものであり、被控訴人自身が必ずしも必要とされる専門的、技術的知識、経験の全般にわたって、これを具有することを期待し得ないから、被控訴人として右善管注意義務ないし忠実義務を尽くしたというためには、社内の専門的知見を有する者らの報告、情報、意見や社外の信頼すべき公的専門機関やそこに所属する専門家の判断、見解、更には監督官庁の指導などを踏まえつつ、それらの意見等を尊重し、これに依拠して業務を執行することが必要であり、かつ、それらの意見等を信頼して業務の執行に当たる場合には、特段の事情がない限り、代表取締役としての会社に対する前記義務は尽くされていると解するのが相当である。・・・
4 本件原子力発電機を継続運転した場合、将来控訴人らの指摘するような事故を発生させる抽象的危険を内包しているとしても、東京電力には日本の産業、国民生活に欠かせない電力の安定供給義務があり、東京電力の最高経営責任者である被控訴人は、現在における本件原子力発電機による電力供給の必要性の度合い、本件原子力発電機の運転を停止した場合に生じる代替の電力供給手段の確保のために要するコスト、運転を停止した場合に生ずる本件原子炉施設の管理ないし廃炉のコスト、本件原子炉施設の健全性についての信用不安が東京電力の事業の運営全般に及ぼす諸々の影響等利害得失についても総合考慮した上で経営的判断をせざるを得ない立場にあるところ、監督官庁である資源エネルギー庁及び原子力安全委員会という原子炉等の安全確保のための規制に関する事項を所掌事務とする(原子力委員会及び原子力安全委員会設置法二二条)公的機関が、専門家の調査・検討に基づいて下した本件原子力発電機の健全性についての評価・判断に、右検査の過程及び合格の判断に過誤があることが明らかであるなどの特段の事情が認められないことは前記のとおりであり、今後十分な監視を行うべきであるとの原子力安全委員会等の指摘ないし指示を順守する限り、右諸検査の終了、合格という結果を信頼し、それに依拠して、本件原子炉施設に安全上の欠陥状態はないものと判断して本件原子力発電機の運転の継続を命ずることができ、また、東京電力の組織内部の原子力発電等の専門家の判断についても、その判断の前提データにねつ造や過誤があることや判断そのものに過誤があることが明らかに認められるなどの特段の事情も認められないので、これを信頼して原子力発電の運転業務の遂行を命ずることも許され、その限りでは、被控訴人の代表取締役としての会社に対する善管注意義務ないし忠実義務(商法二五四条の三)に違反するところはないものといわざるをえない(なお、本件原子力発電機は平成二年に運転再開後約一〇年間大過なく稼働し、控訴人らが安全上の欠陥として指摘している点が現実の事故発生の予兆を示していることを認めるに足る証拠はない。)。
* 類似事例→百p139、東京地決s56.10.29、東京地決h14.4.1、東京地決h16.6.23
* 基準は公知されている必要があるか。→株主が容易に知りうるように質問できる状態ならよい。
* 基準の一義性
* 「公知」「一義性」要件より、その内容を多少厳し目にしている。数値をいれればすぐ報酬がわかる状態にしておくことが必要。




68(73)退職慰労金の決定方法 名古屋鉄道事件
最判s39.12.11
参考条文:361
■ 一般的委任の可否
⇒本件は一定の基準があり、有効とした。
 原告Xは、「何れの会社と雖もその会社に物を支給するに基準慣例のない会社は存在しない。それがあるから役員に一任しても無条件でないというのであれば、商法269条は殆ど不必要な空文である」と主張していた。
事案  Y株式会社では、一定の基準に従って退職慰労金の金額を決定していた。1958年11月18日に監査役Aが退職するにあたって、Yの株主総会は、やはり取締役会に一任する決議を行い、退職慰労金が支給された。これに対して、Yの株主Xが、無制限の一任決議の違法性を主張して提訴した。

第一審  原告の請求棄却
第二審  原告の控訴棄却
最高裁  上告棄却。当該株主総会決議は無効決議ではない。
【理由】
 原判決は、従来被上告会社(被控訴会社)において退職した役員に対し慰労金を与えるには、その都度株主総会の議に付し、株主総会はその金額、時期、方法を取締役会に一任し、取締役会は自由な判断によることなく、会社の業績はもちろん、退職役員の勤続年数、担当業務、功績の軽重等から割り出した一定の基準により慰労金を決定し、右決定方法は慣例となつているのであるが、辞任した常任監査役高木吾平に対する退職慰労金に関する本件決議に当つては、右慣例によつてこれを定むべきことを黙示して右決議をなしたというのであり、右事実認定は、挙示の証拠により肯認できる。
株式会社の役員に対する退職慰労金は、その在職中における職務執行の対価として支給されるものである限り、商法二八〇条、同二六九条にいう報酬に含まれるものと解すべく、これにつき定款にその額の定めがない限り株主総会の決議をもつてこれを定むべきものであり、無条件に取締役会の決定に一任することは許されないこと所論のとおりであるが、被上告会社の前記退職慰労金支給決議は、その金額、支給期日、支給方法を無条件に取締役会の決定に一任した趣旨でなく、前記の如き一定の基準に従うべき趣旨であること前示のとおりである以上、株主総会においてその金額等に関する一定の枠が決定されたものというべきであるから、これをもつて同条の趣旨に反し無効の決議であるということはできない。
* 取締役が退職慰労金の具体的金額等に決定をさらに代表取締役に一任することはできるか
⇒できる(最判s58.2.22)。
* 退職慰労金は、報酬の後払的性格を有するものであり、無条件の取締役への委任はできない。しかし、お手盛りの危険がないほどの一定の基準があれば委任可能。
* 周知性
⇒支給基準が作成された事実が明らかにされておれば、その内容が明らかでなくても、質問できることをもって株主は支給基準を知りうる状況にあったとされている(関西電力事件最判s48.11.26、味の素事件最判s58.2.22)。
(その他の論点)
・使用人兼役員の報酬
判例(最判s60.3.26)は、限定すれば取締役会で決定できるとする(会社法361?の趣旨)。具体的には、体系が確立しており、使用人としての分は別に支払う旨を明示してあればよいとする。

・総額、最高限度額を決定すれば報酬を限定したことになるか
 なる(東京地判s26.4.28)。361条は404?前、409?本と異なり、「個人別の」と定めていないし、総額、最高額を決定すればお手盛りは防げるので、会社、株主の利益は害されないからである。

・特定取締役への一任の可否
 判例(最判s31.10.5)は肯定。しかし、多数説は取締役会における討議の機会を奪うことになるとして、取締役全員の同意がある場合に限り、認める。



69(72)会社による取締役の報酬の一方的な減額 協立倉庫事件
最判h4.12.18
参考条文:361、339
1 退職慰労金は361にいう報酬に含まれるか。
⇒含まれる。
2 退職慰労金の金額支給期日等を取締役会に一任する総会決議は361に反しないか
⇒具体的に定まった取締役報酬を一方的に無報酬に変更することができない。同意が必要。契約の拘束力。
事案   本判決は、具体的な額が定められた取締役の報酬を、株主総会決議によって一方的に変更することの可否が争点となった取締役報酬請求事件について、具体的に定まった取締役報酬を一方的に無報酬に変更することができないことを判示した最高裁の判決である。
 原告は、被告株式会社の取締役であり、毎月月末に定額の報酬を支給されていたが、常勤の取締役から非常勤取締役に職務を変更されたことに伴い、取締役会の支給停止の決議、その後の株主総会の原告の報酬を無報酬とする旨の決議に基づき、原告は取締役を退任するまで報酬を支給されなかった。そこで、原告が右の期間の取締役報酬を請求した。
第一審  一部認容
【理由】
取締役の職務内容に変更が生じたときには、次の営業年度から取締役報酬を無報酬に変更することができるとして、支給停止後の新営業年度からの報酬請求は棄却
第二審  一部認容
【理由】
取締役の職務内容の著しい変更を前提として株主総会で決議したときは、例外的に、同意なくして将来に向かって減額ないし無報酬とすることができるとして、株主総会までの報酬請求の限度で認容した。
最高裁  原告の請求認容。破棄自判。
【理由】
 株式会社において、定款又は株主総会の決議(株主総会において取締役報酬の総額を定め、取締役会において各取締役に対する配分を決議した場合を含む。)によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その報酬額は、会社と取締役間の契約内容となり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するから、その後株主総会が当該取締役の報酬につきこれを無報酬とする旨の決議をしたとしても、当該取締役は、これに同意しない限り、右報酬の請求権を失うものではないと解するのが相当である。
この理は、取締役の職務内容に著しい変更があり、それを前提に右株主総会決議がされた場合であっても異ならない。
* 339?の損害賠償請求を防ぐために無報酬としようとしたのを、脱法行為として認めないようにするという目的もある。



70(63)取締役決議が必要な重要な財産の処分
最判h6.1.20
参考条文:362?
■ 「重要な財産」(362??)の意義
事案  1 上告人代表取締役杉本貞雄は、平成二年一月一八日、被上告人に対し、上告人の有する株式会社松北園茶店(以下「松北園」という。)の額面五〇円の株式一二万一〇〇〇株(以下「本件株式」という。)を代金七九八六万円で譲渡した。本件株式の譲渡については、上告人の取締役会の承認決議はされていない。
2 上告人は、ショッピングセンター等の経営を目的とする株式会社である。平成元年二月末日現在の上告人の資本金は一億六七〇〇万円、その有する資産の価額は合計四七億八六四〇万円余、そのうち本件株式の帳簿価額は七八〇〇万円であった。本件株式は、松北園の発行済み株式の七・五六パーセントに当たる。松北園は、茶の製造販売を営む株式会社で、昭和六三年及び平成元年に株主に対し一割配当をした。松北園は、上告人の発行済み株式の一七・八六パーセントを有しているが、上告人との間に商品の取引はなく、上告人は、松北園の株主総会に出席したことがない。
3 上告人は、もともと杉本家によって設立され支配されてきたものであるが、杉本家と代表取締役池田二郎らとの間で内紛が生じ、平成元年九月一九日に杉本家の親戚に当たり松北園の代表取締役でもある杉本貞雄が上告人の取締役及び代表取締役に選任され、池田二郎は、同年一二月一日、代表取締役を解任された。その後、杉本家と池田二郎らとの間で和解が成立し、本件株式譲渡の翌日である平成二年一月一九日、杉本貞雄は代表取締役を解任され、池田二郎が再び上告人の代表取締役に選任された。
4 杉本貞雄は、本件株式は元は杉本家が所有していたもので、利回りもさしてよくなかったので、これを処分して資金を調達した方が当時の上告人の財務状況から適当であると考え、被上告人に対して本件株式の買取りを依頼した。
5 上告人の取締役会において、昭和六三年六月一五日、上告人の有する他の会社の株式を譲渡することを承認する旨の決議がされたことがある。
第一審  請求棄却
第二審  控訴棄却
【理由】
本件株式は価格的には相当な財産であるが、配当を受領していただけで上告人の営業の維持発展のため必要不可欠な財産ではないこと、譲渡の代価を取得できること、本件株式の帳簿価額と上告人の資産額との対比などを併せて考えると、本件株式譲渡は商法二六〇条二項一号にいう重要な財産の処分に該当しないと判断して、右規定違反等を主張し、本件株式の譲渡の無効を前提として上告人が本件株式の株主であることの確認を求める上告人の請求を棄却すべき
最高裁  破棄差戻。重要でないとはいえない。
【基準】
 商法二六〇条二項一号にいう重要な財産の処分に該当するかどうかは、当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきものと解するのが相当である。
【あてはめ】
これを本件についてみるに、本件株式の帳簿価額は七八〇〇万円で、これは上告人の前記総資産四七億八六四〇万円余の約一・六パーセントに相当し、本件株式はその適正時価が把握し難くその代価いかんによっては上告人の資産及び損益に著しい影響を与え得るものであり、しかも、本件株式の譲渡は上告人の営業のため通常行われる取引に属さないのであるから、これらの事情からすると,原判決の挙示する理由をもって、本件株式の譲渡は同号にいう重要な財産の処分に当たらないとすることはできない。
さらに、本件株式は松北園の発行済み株式の七・五六パーセントに当たり、松北園は上告人の発行済み株式の一七・八六パーセントを有しているのであり、甲第一一号証によれば松北園は平成二年五月三〇日に開催された上告人の株主総会に出席した上取締役選任に関する動議を提出したことがうかがわれるのであるから、本件株式の譲渡は上告人と松北園との関係に影響を与え、上告人にとって相当な重要性を有するとみることもできる。
また、甲第一〇号証によれば本件株式譲渡の翌日である同年一月一九日に開催された上告人の取締役会において本件株式及び上告人の有する斉藤酒造株式会社の株式四〇〇株を杉本秀太郎に譲渡することの承認決議がされたことがうかがわれ、甲第一八号証によれば昭和六三年六月一五日に上告人の取締役会でされた上告人の有する株式の譲渡承認決議は株式会社長谷川商店の額面五〇円の株式四〇〇〇株及び細田株式会社の額面五〇円の株式一万三五〇〇株を対象とするものであることがうかがわれるのであり、上告人においてはその保有株式の譲渡については少額のものでも取締役会がその可否を決してきたものとみることもできる。
* 判タ解説:「会社の総資産の約一・六%にも上る財産については、これをどのように使用若しくは処分するかは通常は会社にとって重要な事項であり、本件株式譲渡は財産の有償譲渡としては通常の態様のもので格別の特殊性も認められないから、重要な財産の処分に該当する可能性が高いと思われる。また、本件株式が営業の維持発展に必要不可欠でないことや譲渡の代価を取得できることは、取締役会で譲渡の可否を決するに当たり考慮されるべきことで、取締役会に付議しなくてもよい理由にはならないと思われる。本判決は、以上のような点を考慮して、原判決を破棄し、事件を原審に差し戻したものであろう。」
* また、持ち合い株の場合は、その機能面からも、それを他に売却することは相互抑制できなくなるおそれがあることから、「重要」であることの根拠となりうる。

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