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Spare Timeコミュの「resonance world」7 岩下真二

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広い部屋に幾多の本棚が並び、本棚は天井まで達していた。殆どの本が古く、異国の言葉で書かれているものだった。
知識の海に差し込む光は、厚く黒いカーテンが完全に遮っていた。そのカーテンは装飾性より、遮光性と視線をさえぎることに重きを置いて作られているようだった。
部屋には、丸いティーテーブルと緑色のランプ、猫足の木の椅子が置かれているだけだった。
その椅子に座る彼は、ランプに照らされ、浮き上がる彼の顔はよく見えないが、左の頬に大きな傷跡が残っていた。肌の色は驚くほど白かった。
テーブルの上には新聞と数枚の写真とメモが広げられていた。
○○新聞。社会面三面。地域記事。
地元の事件や事故を報じるページが開かれていた。
その面の左端、消費者ローンの広告の横、ただスペースを埋める
為だけに書かれた記事。

「住宅街に突然の竜巻発生」
昨日早朝、A町にある○○公園にて局地的な竜巻が発生した。
竜巻は公園の中央にある人工湖から発生し、3分程経過した後、消滅した。
目撃者の話によると、竜巻の高さは20メートル程にもなり、
かなり遠くからでも視認できたという。
池に停泊してあった二人乗りボートが3艇巻き上げられ、遊歩道に落ち大破した。通常なら、駅への近道に利用する人の通りが多い時間帯だが、このとき公園には誰一人としておらず、
けが人はなかった。
しかし、今回の竜巻、気象庁の報告によると、当時のA町は晴れ。
竜巻が起こるような条件はまったく揃っておらず、突然の竜巻の原因は分かっていない。

彼はゆっくりと目を開けた。そして、新聞の横にある小さなメモと写真を手に取った。写真には、父親が、二人の子供を抱いて芝生の上に座っているところが写っていた。
二人の子供は同じ格好をして、顔もそっくりだった。
そして、メモには、
天海 響18歳 天海 命18歳
命 ○○病院306号室
と書かれていた。
彼は立ち上がり、メモをコートのポケットに仕舞い、
部屋を出た。
彼閉めた扉の横には、海の上を走る列車の油絵が飾られていた。

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