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小説書き込み自由コミュの死を告げる妖精-S.W.B.F.-(1-5)

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第伍話 「見て欲しい…」

 …どれだけの時間こうしていたか判らない。ティニが落ち着きを取り戻すまで、オレはこの少女を抱きしめていた。考えてみれば、女を抱きしめたなんて初めてだった。まあ、相手は子供だけど…。
「…落ち着いたか?」
「あ、う、うん…。ありがと、お兄ちゃん」
 お兄ちゃん、か。オレにも妹がいた。ルシフェランザの宣戦布告と同時に始まった空襲で、父親や弟と一緒に死んでしまった。オレの目の前で…。
 ティニがオレの体から離れて上目遣いに顔を覗き込んでくる。…酷い顔だ。涙で目の周りは赤く腫れ上がり、しかも涙はまだ完全に止まっておらず溢れている。それでも必死に笑顔を作ろうとするあたり、シャリオの名に相応しい強さを持っている子だと思う。………ん?
「…ティニ、ちょっと」
「え、何?」
 オレは急いでペンとノートを机の上からひったくり、ティニの全身が見える位置に椅子を動かした。今までの絵がどうにも気に入らなかった理由…欠けていた“何か”が判ったような気がしたのだ。言葉では言いづらいが、とにかくペンを走らせる。時折ティニに視線を移しながら書き上げたエンブレムは、今までで最高の出来だった。…無論、オレの主観的意見だが。
「…出来た」
「…?」
「ほら、見てみろよ」
 ティニがノートを覗くと、そこにはやや腰掛けたような体勢で、右手で溢れる涙を何とか拭おうと目をこすり、左手でこちらを指さす少女が描かれていた。背中には昆虫に似た二対の透明な羽根がはえており、それが彼女を妖精であるとを物語っている。どうやら服は着ていないようで、腰に「Banshee SQ」と書かれた幅の広い布をかけてあるだけだ。
「うわぁ…」
 その妖精は随分泣き腫らしたようで、目の周りが赤い。そしてこちらを見つめる瞳はもの悲しそうでもあり、とても優しそうでもあり、また何かを訴えているようでもある。妖精の髪は茶色でエメラルドのように深い緑の瞳は…ティニそのものだった。
「まるでさっきまでのティニみたい」
 相手も気付いたようだ。
「そりゃそうだ。お前をモデルにしたんだから」
「あ、やっぱり…?。ねぇ、『SQ』って何?」
「それは『Squadron』…『飛行隊』って意味だ」
 ティニはまたしばらくの間、妖精となった自分を見つめた。オレはこれで大佐にも自分の面目が立つと思うと気が抜け、疲れと眠気が甦ってきた。

 ティニはじっと、お兄ちゃんの描いた自分を見つめる。バンシーは死を告げる妖精、本来だったら縁起の悪い妖精のはずだが、そのエンブレムを見ても恐怖だとか嫌悪などは湧いてこなかった。
「気に入った?」
 隣から声をかけられたけどティニは振り向かず、声も出さずにただ首を縦に動かした。「そっか」とお兄ちゃんからの返事。
「だったらそれでステッカー出来たら、基地に呼んでやるよ。最初の一枚をお前に貼らせてやる」
「本当!?」
「ああ、ホントは民間人を基地内に…しかも格納庫周辺の施設に近づけさせるなんてヤバいんだが、まあ今度の司令は話の判る人だから何とかなるだろ」
 そう言うとお兄ちゃんはもう冷め切ったコーヒーを飲み干した。
「ありがとう、お兄ちゃん! 約束だよ?」
「ああ、約束だ」
 嬉しかった。端から見れば大したことではないだろうけど、それでも本当に嬉しかった。思わず飛び跳ねたくなったほどだもん。幸せの絶頂ってトコで、改めて妖精の自分を見つめてみる。
「………ところでお兄ちゃん?」
「ん?」
「なんでティニ裸なの?」
 最初見たときにも少し不思議だなと思った。でも、妖精が服を着ていたらきっとこの羽根は動かせないよね…と、自分の中で答えはもう出ている。ただお兄ちゃんの反応が見たかっただけだった。この質問にお兄ちゃんは一瞬驚いたような、困ったような顔をしたのをティニは見逃してないよ? 少し顔紅いし。
「それは…ほら、服着てたら邪魔になって羽根が動かせないだろ? 空飛ぶんだし、邪魔な物は無い方が…」
「ふ〜ん? そっか、そうだよね〜」
 わざと少し引っかかるような言い方をしてみる。「…何だよ」と予想通りの反応。
「いや、お兄ちゃんも男の人だから…もしかしてティニの“そういう姿”を想像しながら描いたのかな〜って」
「アホか! オレに幼女趣味は無い!」
「え〜? ホ・ン・ト・に〜?」
 お兄ちゃんの顔を上目遣いで至近距離から覗き込む。「無い!」とこっちの言葉の続きみたなタイミングで言う。顔を真っ赤に染めて、ティクスさんとかエリィさんたちが起きちゃうんじゃないかと思うくらい大きな声で…。まったく、可愛いトコもあるんだね。つい意地悪しちゃいたくなっちゃうよ。
「じゃあ試してみよう?」
「はぁ? 一体何で試すって…っ!?」
 呆れたみたいに溜め息を吐きながら目を閉じた隙に不意打ちキス。ちゃんと両手はお兄ちゃんの両頬に添えてホールド…って言っても向こうがその気になれば何時でもふりほどけるよね、十歳の腕力じゃ。
 薄目を開けてお兄ちゃんを見たら、両目をお皿みたいに真ん丸くして驚いてた。多分今ティニが何したかさえ判らないんだね。それでも三秒もしないうちに引き剥がされちゃった。
「な、なななな…何すん…!」
「しーっ!」
 まったくもう、ティクスさんが起きたら困るでしょ? でも本当によく寝るなぁ。今日買い物から帰ってきたときも寝てたっけ。幸い夢から目覚める様子もなく熟睡したまま、ちょっと寝返りを打った程度ですんだ。
「やだな、お兄ちゃん。お兄ちゃんくらいの歳ならキスくらいもう経験済みでしょ? そんなに動揺するなん…」
「オレはそんな軽い男じゃない…」
「…え? あれ、じゃあもしかして?」
 お兄ちゃんの顔がトマトみたいに紅くなる。意外だった。嘘でしょ?
「オレのこれまでの人生二十一年間でキ、キスなんてしたことも無いしする相手もいなかった…」
 どもった…。『キス』って単語でどもった。顔も真っ赤になってやかん乗せたらお湯が二秒で沸きそう。
「ご、ゴメン…。ファーストキス奪っちゃって…」
 自分からキスして、プラス子供で女のティニの方が恥ずかしいよ。ティニもファーストだったからただでさえ恥ずかしいのに…。
「まったくだ。まあもういいけどな! こんなこと一々気にしてたら女みたいだ」
「そ、そうだよ。それにキスもしないまま戦争で死ん…」
「縁起でもないこと言うな」
「ゴメン…」
 今のは言い過ぎだったね、反省反省。
「…ティニも初めてだったから、許して? ね?」
「判ったからもう寝てくれ。…オレももうそろそろ寝る」
「あ、うん…。じゃあこれ片付けて寝るよ」
 空になったポットとコーヒーカップ二つをトレーに乗せて、部屋を出る。
「…嫌われちゃったかな?」
 ポットとカップを厨房の水道で洗いながらボソッと呟いた。声に出すつもりは無かったんだけど…。

コメント(6)

 第伍話、第壱章のラストを締めくくる話のスタートです。

 ………とは言っても、第壱章で描きたかった内容は第四話で既に書いてしまったため、やっぱし元のまったり重視の普通な話になってしまった感は否めません(・・;

 しかもよくよく考えてみると、エンブレムを大勢で考えようと外泊許可をもらってきたのに結局一人で考えてる主人公…。ええ、彼の苦労はすべて作者であるオレの技量不足によるものです(−ー; イヤハヤ、ヨミカエシテテハジメテキヅイタワ

 まぁまだしばらくこんな戦場とは縁の無い場所での話が続きますが、どうか「死を告げる妖精」をよろしくお願いします。
Bパート

「あれ? 今何時だろ?」
 厨房の中にあった大きな壁掛け時計は、もうすぐ三時半と教えてくれた。今からだと、そんなに眠れない。
「でも寝ておいた方がいいよね、絶対…。明日は…じゃなくて、今日はエリィさんたちに迷惑かけられないし」
 カップの水滴を丁寧にふきんで拭き取り、食器棚にしまう。ポットにはまた水を入れてコンロの上に置いた。粉末状になったコーヒー豆が入ったビンを隣に置き、これで朝にまたコーヒーを作る準備も万端。
「…これでよしっと」
 寝る前にすべきことはこれでもう残ってないはず…強いて言うなら歯磨きくらい? コーヒー飲んだし。そう思って洗面所へ向かう。
「…あれ? トイレの電気がついてる?」
 ああ、お兄ちゃんが入ってるんだな。とりあえず今は話しかけづらい…。足早に、だけど足音をなるべくたてないようそっと駆け抜ける。歯を磨いて早く寝てしまおう…うん、それがいい。玄関掃除をする前に一度磨いておいたし、簡単に磨いただけで口の中を濯いで部屋へ戻る。コーヒーなんて飲んだのが悪かったのか、ベットに入っても寝るに寝付けない。灯りを消す前に見た時計の針は四時をさしていた。もう三時間も眠れない。
 しばらくじっとしていると廊下を歩く足音が聞こえてきた。隣の部屋に入って数歩聞こえ、しばし沈黙。壁に耳を押しつけていると、小さく「…どれだけオレに貸しを作れば気がすむんだよ、このバカは」とお兄ちゃんの声が聞こえた。
 何のことだろ? ティニは隣で起きている問題を想像してみて、すぐ予想が付いた。本来ここの民宿としての客間は一人一部屋を想定されている。エリィさんが言うには、ダブルベットだとかそう言う類の家具は辺境より首都圏に需要があるためかほとんどまわってこないらしい。そのため必然的に値段が釣り上げられ、ヴァイス・フォーゲルのすぐ近くには外国からの客を扱うホテルもある状況でそんな金を使うのはもったいない。そもそも民宿をやってても客が泊まったことなど数えるほどで、満室になったことなんて思い出すだけでも苦労するほどらしい。たった五つの一人部屋でこの状況だし、二人部屋なんて要らないでしょ?っというのがエリィの言い分。サガラスも同意見。つまり隣の部屋では今、そのたった一つのベットをティクスさんが占有しているため寝るに寝られない者がいる。せめてもの救いはシングルの割には幅の広いベットを取り入れていることだが、キスさえ未経験だったお兄ちゃんに異性と同じ布団で寝るなどという考えは浮かんだ途端泡のように消えるだろう。
 ガタッと椅子を引くような音が聞こえた。どうしよう、いくらなんでも普通の木製の椅子で寝るのは体に悪いような気がする。夜明け前の空気は綺麗だがとても冷たい。ティニは布団を飛び出して隣の部屋のドアを叩いた。
「お兄ちゃん?」
「ティニか? 早く寝ろと…」
「椅子で寝るのは体によくないと思うよ?」
「? お前がよくオレが…いや、そんなことはいっか。ティクスを起こすのは可哀想だしな、それに今からじゃそんなに長時間寝られない。大丈夫さ、オレはそんなやわじゃない」
「…一緒に寝よ?」
 沈黙。気まずい。いや、確かにこれを言うために声をかけたんだけど、実際とても恥ずかしいことを言ってるんじゃ無いかなって気はしてる。それに相手はあのお兄ちゃんだし、これは頂けなかったかな? あんなことの後だし…。諦めて部屋に戻ろうかと思ったら「いいのか?」とお兄ちゃんの声。
「いいも悪いも、ティニが誘ってるんだよ? ティニ、お兄ちゃんと寝たいの」
「何故?」
 訊かれると…返事に困るんだけどさ。
「う〜ん、上手く言えないけど…。誰かと一緒に寝るなんてしたことないし、いい機会だと思ったから…」
「…願望か?」
「え?」
「ホントは本物の家族にそうして欲しかったから、今はオレをその代役に任命しようってことか?」
 そうかも知れない。お兄ちゃんが戦争が始まって両親と弟…そして妹を失ったって聞いて、そこに付け入ってティニは自分の寂しさを紛らわそうとしているのかも知れない。いや、多分…そうだ。二十一年間キスさえしたこと無いくらいうぶで可愛ささえ感じる優しいお兄ちゃんは、ハッキリ言ってティニの理想のお兄ちゃんだった。だから…一緒にいたくて、甘えたくて、我が儘とも言えるお願いをしているんだ。今度は自分を見てくれるから、もっと見てって…何とか振り向かせたいんだ。ティニのすべてを見て、受けとめて欲しいから…。
「ご、ゴメンね? そんなの嫌だよね、我が儘過ぎだね。…ゴメン、寝るよ」
 ヤバい、なんでか判らないけど泣きそうになってる。ギリギリ涙声にはならなかったけど、急いで部屋へ逃げ込んだ。ベッドに飛び込んで布団を頭から被る。頭の中で以前自分を冷たい眼差しで突き放した兄弟が「お前が何かを欲しがるなんて贅沢なんだよ!」と侮蔑に満ちた言葉のナイフでティニを斬りつける。
 …そうだ。これがティニのお兄ちゃんと弟だった。兄弟だけじゃない。母親も父親も、ティニの家族は自分を見るときに温もりなんて微塵もない。氷のような目で見つめてくる。
「でも…でも……」
 あの人は、お兄ちゃんは自分を見てくれた。冷たくあしらうこともせず、手を差し伸べてくれた。同じ場所で三日三晩過ごして、最初に声を掛けてくれたのはお兄ちゃんだった。長い冬の雪に埋もれた草花に春の陽射しをあててくれたような気がして、はしゃいだ。暖かな光だけではない。水も与え、土をも与えてくれた。出逢ってまだ二日しか経っていないにも関わらず、こんなにも自分が親しみを感じた人間は他にいない。自分は変われる、変わってみせると思ったのはお兄ちゃんのいつも見守ってくれるような優しさに惹かれたせいだ。だから…。
 第伍話のBパートをアップしました。明日で長かった第壱章も終わりです。

 第弐章になれば幾分軍事に絡んでくる話になってくるので、同じまったりでも舞台を民間から軍事に移してのまったりになります。

 では、また明日〜。
Cパート

「何やってんだ?」
「ひゃう!?」
 色々と頭の中がごちゃごちゃとしていたせいか、部屋に入ってきたことにさえ気付けないうちにお兄ちゃんはティニのベッドに腰掛けていた。布団を捲られ、ティニは冷たい空気にうずくまる。
「しょげたり笑ったり泣いたり…忙しいヤツだな、お前も」
「う…」
 うるさい、と言おうとしてやめた。言える立場じゃない。もうごちゃごちゃな頭じゃ何も考えられなくなって、枕に顔を押しつける。
「やれやれだな」
 呆れたような溜め息。前言撤回、やっぱり優しくない。お兄ちゃんも『前のお兄ちゃん』たちと同じだ。心の中で自分でもガキっぽいと感じる幼稚な悪態をついて、睨み付けてやろうと頭をわずかに動かした直後、そっと髪に触れるものがあった。頭の上に手を置かれたのだと気付く。その手は子供をあやす母親…でなければ父親のような暖かみを持った手で、髪を撫でている。
「…懐かしいな。ちょっと前まで、こうして自分の妹を寝かしつけてたものだが…って言っても一年以上前か」
「お兄ちゃん…」
「ウェルトゥもズィレイドも…どっちも死んじまったけど」
「ズィレイド?」
「弟の名前だ」
「…みんな、もういなくなっちゃった?」
 そう言うとお兄ちゃんは少し言葉を濁して、「実はさ」と続けた。
「お袋は生きてるんだ。ただ、死んだも同然ってだけで…」
「え?」
「ゴメンな、嘘付いてた。お袋はあの日、一応命はとりとめた。だが意識が戻らない。昏睡状態が続いて、何時死んでもおかしくはない状態でずっと生きてる」
 そうなんだ…。でも結局、似たようなものか…って、またティニは失礼なことを!
「ティニ…」
「ん? なぁに?」
「その…ティクスにベット使われててさ、寝る場所が無いんだ。一緒に寝させてもらってもいいか?」
 今更!?っていうか…断れるわけ、無いよ。
「うん、もちろんだよ!」
 ぐいってお兄ちゃんの腕を引っ張って、半ば強引に布団の中に引きずり込む。掴んでた腕にしがみつく。もそもそとお兄ちゃんが布団の中へ体を入れる。なんだかんだ言ってても、やっぱりティニの我が儘を聞いてくれる。やっぱりまた…前言撤回♪
「お兄ちゃんって、優しいんだね」
「飴と鞭…さ」
 枕をお兄ちゃんに貸して、その代わりにティニは腕枕をしてもらった。初めてだったけど、悪くない。
「ねぇお兄ちゃん、なんでティニの我が儘聞いてくれたの?」
「………。もうすぐバンシー隊も創設される。そうすりゃここに来られることだってそんなに多くはなくなる。なら…聞いてやれるときに聞いてやろうって思っただけ…さ、ね」
「えへへ…。じゃあそう言うことにしておいてあげるね?」
 そう言っても返事が返ってこない。代わりに聞こえてきたのは穏やかで規則正しい寝息。
「今日…と昨日、一昨日もかな? 色々我が儘聞いてくれたのと、髪を撫でてくれたお礼も兼ねて…オヤスミ」
 二度目のキスは…ちょっとだけ長めに感じた。それは起こさないように気を遣ったからだけど、本心はむしろ起きてくれないかと願っていた。そうすればその閉じた瞼が開き、自分を見てくれるから…。でもお兄ちゃんは起きてくれなかった。当たり前だよね。まる一日以上考え事してたんだし、ずっと眠そうにしてたから。
 再びお兄ちゃんの腕に頭を置いて、瞼を閉じる。そうしていると睡魔に意識を侵食されていくのが判った。



 二人が眠りについている頃、北の空では熾烈な戦いが繰り広げられていた。
「ガーネット3、エンゲージ。シーカーオープン!」
 ロックオンしようと、ミサイルシーカーと呼ばれる四角い囲いが前方の敵機を追う。しかしそのパイロットの目の前から、瞬時に敵機は姿を消した。
「なっ!?」
「ガーネット3、後ろだ。ブレイクしろ、ブレイク・スターボード!」
 僚機の叫びも虚しく、ミサイルの直撃を受けたパイロットは断末魔を上げる間もなく愛機と共に空に散った。
「やれやれ、こりゃまたつまんない獲物だね…。ねぇ、姉さん?」
「言わないの。これも仕事よ」
 敵パイロットたちの無線が聞こえる。畜生、余裕ぶっこきやがって! その時、視界の隅に機体背面から火を噴いている僚機が眼にとまる。
「ガーネットリーダーよりガーネット4、フュエルカットだ! 機体が炎上している、消火しろ! …どうした、応答しろガーネット4!」
 機銃でコクピットを撃たれ、パイロットは即死だった。機体は爆発、空中で分解された。
「こちらアゲート9! 女神に後ろを取られた、誰か助けてくれ!」
「アゲート11よりアゲート9! 待ってろ、今行く!」
「クロートー、後ろから来てるわよ?」
「問題ありませんわ、お姉様。この方たち、コブラすら使わなくても簡単に墜ちてしまいますもの」
 敵は爆発的な加速から急激な減速、そしてヴァーチャー?では考えられないほどの旋回性能でアゲート11の後方に転位した。
「な、なんだと!?」
「終焉ですわ」
 敵が放ったミサイルに反応して機体後部からチャフを撒くが、努力も空しく直撃を受けて爆散した。
「ガーネット2よりガーネットリーダー! ガーネット7、12も喰われた!」
「くそ、撤退だ! 全機撤退、作戦中止! 繰り返す、作戦中止! 全機戦闘空域を離脱せよ!」
「こちらガーネット6。駄目だ、追いつかれる! うわあぁぁぁああぁぁっ!」
 敵に背を向けて逃げる途中でも他の僚機たちが次々と撃破され、最終的に残ったの友軍機は四機…二個中隊が一個小隊にまで減った。出撃時の実に六分の一である。
「…畜生、『運命の三女神』め」
 敵の数はこちらの半数程度だったにも関わらず敗北したのは、敵のエースが乗る三機の戦闘機によるところが大きかった。コールサインはそれぞれアトロポス、ラケシス、クロートー。同じ小隊でも番号で呼ぶのではなく、各自のコールサインを呼んだり、「姉」と呼んだりする。本来四機で小隊を編成することが多いが、ヤツらは三機だけで飛ぶのが常だ。この化け物三機の中でも隊長機であるアトロポスの技量は敵味方問わず誰もが知っている。時には奴一機だけで二桁の撃墜数を叩き出すこともあるパイロットだ。現に今し方、我がガーネット中隊は一番機と二番機を残して全機墜とされ、共同戦線を張っていたアゲート中隊も一番機が片肺飛行している。運の強いヤツだな、生き残るとは…。
「こちらガーネットリーダー、作戦失敗。帰投する」
 仲間が沢山死んだ。こんなことが、明日も何処かで続くのか…。もう、疲れた。
 やっと第壱章を載せ終えました(;;´A`)ナガカッタ

 今回はラストにちょびっと戦闘シーンがありましたね。やっぱし戦うシーンは書いてて面白かったですw

 ずっとまったりなシーンが続いてましたからね〜。



 …ていうか、

 ここまでだけ読んでると完璧ティニがヒロインっぽく描写されてしまってますが、そんなわけではないんですよ?(・・;

 一応「こんな感じで書けたらな〜」と参考にしたのがエースコンバット04だったので、軍とは関係の無い場所に重要人物の一人を置きたくて作ったポジションだったのですが…まぁ、彼女がメインで描かれた第壱章はこれで終わりです。

 次回からはいよいよバンシー隊発足に向けての動きを描いていきます。ではまた〜(・ω・)ノシ
バンシー隊待ってま〜す^^

この話は続きが気になります><

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