ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

小説書き込み自由コミュの死を告げる妖精-S.W.B.F.-(1-2b)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 ティクスには事情を簡単に説明し、ジープの後部座席にティニと彼女の荷物を乗せて目的地へと向かった。
 目的地は駅からすぐ近くの場所だったのだが、気付くのに時間がかかった。いや、店名の所には「白い鳥」とだけ書かれていて、実際はそれが現地の言葉で書かれているなんて一言も書かれていなかったせいなのだが…。
「ここ?」
「ん〜っと…「ヴァイス・フォーゲル」…ああ、ここだな」
 木製の小さな札にOPENと書かれていて開店していることを教えてくれる。店内の灯りは煌々としており、中から聞こえてくる笑い声からそれなりに賑わっているらしい。少しほっとする。適当な場所に車を停めて店の戸を開けると、頭上に取り付けられた小さなカウベルが小気味よい音を鳴らして客人の来訪を告げた。
「いらっしゃい!…って、あれ?」
 カウンターの向こうでグラスを拭いていた女性がこっちを見て驚いたような、不思議そうな表情を浮かべる。無理も無い、随分長いこと会っていなかったからな。
「久しぶり、エリィ」
「ああ、やっぱりフィリル!? 大きくなっちゃったね〜」
 あはは、と笑いながら作業を中断してオレたちを空いていた奥のテーブル席に通す。
「なんだ、親戚ってエレクトラさんのことだったんだ」
「ティクスちゃんも大きくなったね〜。あたしが向こうに住んでた頃はまだ二人ともこ〜んなだったのに」
 エリィが自分の胸あたりで掌を水平に動かしている。確かに、前に会ったときはこの人を見上げていたような気もするが…ティクスはともかくオレはそんなチビだったか?
「ところで…このおチビちゃんは誰?」
 彼女の視線はオレたちの連れに向けられている。「チビじゃない」っと、幾分明るさを取り戻した少女が睨む。
「ああ、テルニーアって言うんだが…色々と込み入った事情で一人になっちまったらしくてな。駅で拾ったんだ」
「事情って…ああ、そう言う事ね」
 エリィも納得したようだ。
「そう…。で? まさかここで預かれって言うんじゃないでしょうね!?」
「お、それもいいな。エリィのトコならオレも安心だしさ。頼まれてくれない?」
「ちょ、ちょっと! 何勝手に話を進めてるの?」
 何やら自分に関係し、尚かつなかなか重要な話をしている事に気付いたのかティニが抗議の声をあげる。
「お前だって何時までも駅の床…もしくは公園のベンチをベッドに寝るわけにはいかないだろ? なあエリィ、頼むよ。オレとティクスは基地の中だし、その中に民間人連れ込むわけにもいかない。一応敵国の人間だし」
「でもあたしだって…。ちょっと待って、あんたたち軍属になったの!?」
 何を今更…。むしろそうじゃなかったらここにいるわけがないじゃないか。
「う、うん。まあね、わたしもフィー君も…家無くなっちゃったし」
「そういうこった…。それにこの子だって、この辺うろついてたってことはウェルティコーヴェンの国籍を取得出来てないからだろうし、しばらくここにいた方がいいと思うんだ。オレたち今度一つの部隊を任されることになるらしいしな。忙しくなる」
 二人の話を聞き、エリィはしばらく「う〜ん」と考え込んだ後、酷く疲れたような溜め息を吐いた。
「解った解った、ここはあたしが面倒見て上げるわよ。ただ本人の同意を得てからね」
 その言葉に三人の視線が一斉に一人の少女に注がれ、注がれた当人は正直戸惑った様子である。それまで特に会話にも参加できず、聞く側に徹していたらいきなり話題をふられたのだ。無理もない。
「ティニは………別に、どっちでもいいけど…でも、居場所が出来るなら…ここにいさせてもらおかな?」
 おずおずとそう応えると周りは「ヨシ決まり!」と指を鳴らした。
「え〜っと、ねぇエレクトラさん。なんかここのおすすめメニューとかってある?」
「はいはい。適当に作ってきてあげるから食べて行きなさい。あ、そうだ!」
 彼女はカウンターに向かおうとして再び振り返った。その顔はニヤッと怪しげな微笑を浮かべている。彼女にとっていい考えを思いついたときの表情だ。
「フィリル、その子預かって上げる代わりにだけどさ〜」
「交換条件? いいよ、何?」
「あんたたち今度部隊を任されるんでしょ? 隊員連れて何処か飲み食い行くときはウチに来てね」
 それは多分、ここの質によりけりだろうが…。でもまあ先程ティクスが見ていたメニューを見る限りそこそこ品数も豊富らしいし、悪いところでは無いはずだ。非戦闘地域だし、悪条件は今のところ見受けられない。
「了解、常連客になれってんだな? 解ったよ、その辺はなんとかしてやる。異動にならなきゃな」
「交渉成立ね」
 軽くウィンクして、エリィはカウンターの向こうへ姿を消した。
「これでなんとか寝床は確保出来たな」
 微笑むオレに、ティニは俯いて小さな声で「ありがと」と短く礼を述べた。
「でも、なんで…」
「………罪滅ぼしさ」
「え?」
 言った後でなんだか居心地が悪くなって、ティニから視線を外すと肺に溜まってた空気をまとめて吐き出した。その後何やらティクスがティニに耳打ちしてたが、その内容は聞き取れなかった。

 エリィが持ってきてくれたランチは…なるほどなかなか美味しく、値段も手頃だったのでいずれ合流してくる部下たちを連れてくるには申し分ないな…と判断した。
「さて、どうするか…部隊名」
「そうだね…」
 危うく忘れるところだった。基地を出てここへ来た目的は、この難問を解決するためである。前々からコールサインを自分たちで決められたらなとは思っていたが、いざ目の前に突きつけられるとなかなか浮かばない。
「なんかいい名前無いかな?」
「なんかこう…空飛びそうにない名前はNGだよね。でもそういうのって大抵何処かが使っちゃってるから」
「まずどういう感じにするかだよな…」
「妖精の名前なんかどう? 色々あるよ?」
 それを提案したのはティニだった。最初はオレたちが軍人であること…それも以前彼女の住んでいた国の敵であるフォーリアンロザリオの戦闘機乗りであると知って驚いていたが、オレたちを恨むだとかそういったことはされなかった。むしろ時間が経つほど子供らしい純粋さと明るい笑顔でこちらに接してくれるようになり、内心ほっとしている。
「妖精、か…」
「良い考えだとは思うけど…妖精でも少しこう、覚えやすくて更に相手に威圧感がある名前がいいよね」
「うぅ…そう言われると、妖精ってどれもこれも可愛くて弱そうだけど」
「怖いイメージの妖精って、あんまり思いつかないよね〜…」
「………いや、ある」
 オレの言葉に二人そろって驚きの声と共に視線をこちらに向ける。確か随分前に話を聞いたことがある。その妖精の名前は…えっと、確かそう。
「バンシー」
 紙の上にBansheeと書いて見せる。
「知らないなぁ。どんな妖精なの?」
 ティニが興味津々と言った感じで訊ねてくる。
「誰か死人が出るとき、その死を嘆いて泣き喚き、その人の家族の前に現れて死を告げる妖精だよ」
 確かそんな感じだった。しばらく自分の書いたBansheeのスペルを見つめていると、二人が静かになったのを感じ、視線を上げて二人を見る。
「……イイじゃん!」
「うん! なんかカッコイイよ、『バンシー飛行隊』ってなるんだね!?」
 一瞬気に入らなかったのかと不安になったが、二人とも一昔前の少女漫画並に瞳の中がキラキラしてる。どうやら気に入ってもらえたらしい。

 夕暮れ時、ティニをエリィに任せて帰路につく。せめて今後自分が乗る機体さえあれば、チェックに追われて基地を出ずに過ごすだろう。面倒な作業ではあるが、オレ自身も気に入っている。棺桶であり武器である愛機と共にいられる時間は楽しい。別れ際ティニが「明日も逢えるよね?」と訊いてきたが、機体が届くまでは行ってやってもいいか、と思う。
「それにしても、フィー君は優しいね」
 唐突に奇妙なふりで話しかけられて反応に困っていると、向こうが話を続けてくれた。
「ティニちゃんには、わたしたちがあのとき空にいた事…一応内緒にしてあるよ。あの子には『多分フィー君は自分も戦争で家族を失ったから、ティニちゃんの事ほっとけなかったんだね』って言っておいたから」
「…ま、嘘じゃないしな。それも理由の一つなんだろうし」
 そう、ティニを見かけたとき気になったのには色々理由がある…。それが何か、幾つくらいの理由が重なったのかは自分でも解らないが…。

コメント(3)

 ………はい、bパートで終わりませんでしたorz

 でもま、次回はちょっと短めになるかも…。次のcパートで第弐話が終わります。(´・・)=3 イヤ、ナガクテスミマセンネ。ホント...

 ちなみにこの話は一応戦争がメインなのですが、第壱章には冒頭の戦闘シーン以外には最後にちょろっとおまけ程度にしか戦闘シーンがありません。

 物語全体としても第壱章は非常にまったりなお話です。

 今回で名前だけは決まった「バンシー隊」…彼らの戦いをメインに描かれるのは第参章になります。

 その辺りになると、敵味方双方の多種多様な戦闘機が飛び回るようになるので、そこら辺になったら機体の簡単な解説ものっけたりしますね。

 それと、やはり一週間は間隔を空けすぎかなって思うので、次回からは水曜日と土曜日or日曜日の週二回のペースで更新していきたいと思います。

 まだまだ序盤も序盤で結構長ったらしい話ですが、皆さんどうかお付き合いください。m(_ _)m
 あ、一応次回は水曜にUPしますが…

「もうちょい早くても大丈夫だろ」

 って声が多ければ火曜・木曜・土曜の週三回というペースに変更も可とか考えてますw

 この話を読んでくれる皆さんの意見も耳に入れながらUPしていきたいので、何か要望があれば言ってください。

 一回がまだ長い!とか、ここ誤字or脱字じゃない?とか…検討しながら修正していきますので、どうかよろしくお願いします

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

小説書き込み自由 更新情報

小説書き込み自由のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング