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Harvard Medical School Bostonコミュのニューイングランドで活躍する日本人研究者紹介メールマガジン 第5号

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ニューイングランドで活躍する日本人研究者紹介メールマガジン 第5号
2009/2/27
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在ボストン総領事館の上尾(あがりお)です。昨年12月に当地に着任しました。既にお会いした方も、これからお会いできる皆さまも、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
さて、上尾にとっては初めて、本メルマガ通算第5回目のインタビューに行ってきました。今回はコネチカット州にあるイェール大学消化器科で肝臓病及び血管の研究をされている岩切泰子(いわきり・やすこ)先生に、(1)研究内容と(2)PI(Principal Investigator=首席研究者)として確立するために必要と考えることを聞いてきました。
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「肝臓病は肝臓だけが悪くなるのか?―周辺で起こる血管異常と一酸化窒素のメカニズムとは―」
☆岩切泰子 Yale University School of Medicine准教授へのインタビュー☆
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(1)先生の研究内容について教えてください。
私の主な研究分野は次の二つに分けられます。
1.一酸化窒素のシグナル伝達メカニズム
2.肝臓病における肝臓内外の血管の構造/機能の変化とそのメカニズム です。

●一酸化窒素って?―血液や神経に大事な信号を送っています―
 一酸化窒素(Nitric oxide; 以下NO)は、窒素原子と酸素原子がそれぞれ一つずつ結合しただけの単純な分子ですが、生体内では主要なシグナル分子として多彩な生理機能に関与しています。生体内で作られたNOはsoluble guanylate cyclaseという酵素を活性化し、cGMPを生成します。このcGMPがシグナルの伝達分子となり血管機能調節、神経伝達などの重要な生理反応を促します。NOが血管機能調節において情報伝達物質であるという発見によって、1998年に米国の3人の科学者にノーベル生理学、医学賞が送られました。

 最近の研究で、cGMPの生成だけでは説明できないシグナル伝達のメカニズムがあることが分かってきました。その一つとしてNOによる生体内タンパク質の修飾(S-nitrosylation;
タンパク質のシステイン残基にNOが結合すること)があります。私の一つ目の研究分野は、このS-nitrosylationです。血管内皮細胞で作られたNOがどのタンパク質にS-nitrosylationを起こし、それによってどのような生理機能を調節しているかを調べています。多くの病気において、特にその後期では血管機能に異常をきたすと言われています。従ってNOが関与する血管機能調節のメカニズムを解明することにより、血管機能の回復を促し、治療の役に立つことができたらと考えています。

●肝臓病は肝臓の機能が落ちるってことですよね?―それは正しいのですが、肝臓の周辺でも異常が起こっています(合併症)―
 後期の肝臓病においても、血管機能の異常は致命的な合併症(胃静脈瘤、腹水など)を起こす原因の一つと考えられています。私たちの研究や他の研究者の研究から、その血管機能異常のメカニズムにもNOが大きく関与していることがわかってきました。2番目の研究分野では、そのメカニズムを細胞、動物モデル(ラット、マウス)、そして肝臓病の患者さんからのサンプルを使って調べています。
 肝臓病では、臓器そのものの研究に比べ、血管機能の異常に関する研究はまだまだ少ない状況です。私は、後期の肝臓病で血管の構造/機能の異常がどのようにして起きるのか、そして分子のレベルでどのような変化が起こっているのかを調べています。それらを解明することにより後期の肝臓病での合併症の治療に貢献できればと考えています。

(2)PIとして確立するために必要と考えること(グラント獲得のこつなど)
〜その1.良いメンターを見つけること!PDFを印刷したら色・形も要チェック〜
 こちらでは研究者を育てるという観点が重視されており、いわゆるメンターと呼ばれるシニアの研究者が若手の面倒をよく見、研究内容からグラントの書き方、キャリアの積み方など、多岐に渡ります。私自身も良いメンターに恵まれ、周囲のバックアップがあって2年前に自分のラボをスタートさせることができました。
 もし、周囲にメンターのような存在がいない場合には、ぜひ誰かしらに相談をしてください。例えばグラントの申請書一つをとっても、研究内容・成果はもちろんですが、書き方やプレゼン方法など、事細かに経験者やシニアによく見せてください。私自身もレビュアーの一人として、たくさんの申請書を見るのですが、どれだけ良いアイデアがあってもレビュアーに通じなければ意味がありません。些細なことですが、パソコンの画面上では綺麗に見えている図であっても、PDFにするとどうか、さらに印刷すると色や形がどう見えるかといった確認や、タイプミスやちょっとした行のずれさえも気をつけてください。ミスの多い人間に、果たして大事な研究が務まるのかと疑われても仕方がありません。見せ方というのは、本当に重要です。申請書は、なるべく分野を問わず、仲間内だけでなく多くの人に見てもらって分かりやすいものを作るよう意識してください。

〜その2.ネットワークを広げること!どこでどう繋がるのやら〜
 もう一つ、若手PIが確立しさらにある程度の地位を得るには、(1)資金(どれだけグラントを獲るか、稼ぐか)や(2)パブリケーション(質と量)に加えて、(3)知名度(国内外の学会への招待講演の数、どんな審査会に入っているか、どれだけレビュアーをしているか、地域への貢献度など)や最終的には(4)上司に気に入られているか、といったことも大事な点で、昇進の際には様々な側面から評価されるようです。当たり前の話かもしれませんが、若手であればあるほど、ありとあらゆる面でネットワークを広げる必要があると思います。つい最近も、ある学会で知り合った研究者がある日突然、別の学会に招待してくれたり、ということがありました。
 また、同僚とのコミュニケーションも必要だと思います。イェール大学では複数のラボが研究室や機材をシェアするオープン方式を取っています。これはスペースや機材メンテナンスの都合上でも効率が良いのですが、シニアから若手まで他人がどういった研究をしているのか色々な情報がすぐに入ってきますし、新しい発想の誕生にも繋がります。
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岩切先生、貴重なお話ありがとうございました。
岩切先生ご自身のラボでも現在ポスドクの研究者を採用し、先生がメンターとして面倒を見ておられます。若い研究者の発想から刺激を受けることもしばしばだとか。ちなみに、私が先生にお会いした日、先生は会う人会う人から「Congratulations!!」と呼びかけられていました。実はその前日に、先生の研究が長期のグラントを獲得したとの結果が出たそうです。先生は、皆さんのお陰でほっとしました、と謙虚に答えておられましたが、研究内容は勿論のこと、こんなに皆さんから祝ってもらえるのも先生のお人柄ですね。
岩切先生の研究に関する詳細は、http://www.med.yale.edu/intmed/faculty/iwakiri.html
先生へのお問い合わせは、yasuko.iwakiri@yale.eduまでご連絡ください。

【ご略歴】
2000年5月、コロラド州立大学にてPhD取得。同年6月よりイェール大学薬学部教授William Sessa、及び医学部教授Roberto Groszmannのもとでポスドクのトレーニングを経て、2006年9月より同大学医学部消化器科(Section of Digestive Diseases)にて Assistant Professor of Medicine。

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