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2024年04月27日13:35

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経済談義第61回:資本逃避について

長期連載の経済談義シリーズです。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。



今回のテーマは「資本逃避」です。ある国から資本が逃げ出していくことです。
経済危機に陥った国で発生することがあり、日本でも将来発生する可能性があると僕を含む超悲観派は心配しています。

楽観派の評論家の皆さんは、「一万円札をスーツケースに詰めた人々が続々国外脱出することなんかあり得ない」と笑うのですが、それは資本逃避というもののとらえ方を間違っています。
資本逃避というのはそういうものではありません。
そうしたことが仮に起こって一万円札が国外に持ち出されたとしても、持ち出し先の国で一万円札が価値あるものとして尊重されるのであれば全く問題ありません。

資本逃避というのは円でいえば、「円を外貨に両替しようとする人々が殺到すること」です。円と外貨を比較した結果、資産を外貨で持っておいたほうが有利だ、と判断した多くの人々が為替市場に円売り・外貨買いを行ったり、銀行の両替窓口に詰めかけたりすることなのです。


ひとつ注意したいのは、資本逃避が発生したからと言って円という通貨が消えてなくなってしまうのではないということです。円の通貨としての流通量は変わりません。
消えてなくなるのは円通貨ではなく、円通貨の「価値」です。
為替市場に円売り外貨買いが殺到すると、市場原理により円の為替レートが暴落します。急激な円安により、円通貨の価値が、ひいては日本全体の価値が損なわれるのが資本逃避の実態なのです。



投資収益の一部が非課税になる制度「新NISA」が話題になっています。個人投資家の皆さんはもちろん、これまで投資を行っていなかった方々も投資に目を向けるきっかけになっているようです。

ではいろいろな投資商品がある中で、どんな商品が人気になっているでしょうか。
たとえば「新NISAナビ」というサイトを見ると、松井証券の取り扱い高ランキングは以下のようになっています。

1位 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
2位 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
3位 eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
4位 eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
5位 iFreeNEXT FANG+インデックス
6位 iTrust インド株式
7位 たわらノーロード 先進国株式
8位 eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
9位 eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
10位 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・VTI)
(2024/4/27現在、出展:https://www.tsumitatenisa.jp/ranking/fund/

国内株商品はごく少数で、全世界や米国など、海外の株式に投資する商品がほとんどであることがわかります。ほかの証券会社でも似たような傾向です。

新NISAを創設した金融庁の目的はもちろん個人資産の株式への流入による株価のかさ上げですが、そこで想定していたのは「日本株」でしょう。
しかし現実には海外投資が圧倒的に人気で、あてが外れた形になってしまっています。


投資信託会社としては、こうした商品を売って受け取った資金は、それに見合った高利回りで運用しなければなりません。低金利の日本で運用するより、商品の対象国であるアメリカはじめ海外で運用する必要があるでしょう。

そのためには、受け取った「円」を、海外投資に使える「ドル」に変換しなければなりません。
つまり、為替市場には「円売りドル買い」が発生するわけです。

人気商品が軒並み外貨建て、となると、為替市場への円売り圧力も相当なものになります。
ごくざっくりと考えてみましょう。日本の個人資産のうち現預金は総額で1100兆円などと言われています。新NISA制度によりこれの半額が投資商品に移るとして、そのうちの(少なめに見積もって)半額が外貨建てだったとしましょう。
すると、270兆円の円売りドル買いが発生するわけです。円レートを暴落させてもおかしくないほどの規模です。

大量の円売り外貨買いが発生するという観点からいえば、これも厳然たる資本逃避の一形態なのです。



日米に大きな金利差が発生しています。
金融緩和を続ける日銀がほぼゼロに近い金利を継続する一方、アメリカFRBの金利は約5パーセントです。
それを反映して日米の民間金利にも5パーセント近い差が発生しています。

ふたつの銀行があって、かたやゼロ金利、かたや利回り5パーセント、となれば、常識的に考えて後者を選ぶでしょう。
最近では邦銀も超高利回りのドル建て預金を始めています。これであれば、いつも使っている銀行で高利回りの預金ができるわけです。
ドル建てだと預金保護の対象外になってしまうデメリットがありますが、金利がこれだけ違うと高利回りの魅力が勝るでしょう。
金融リテラシーにたけていないお年寄りなども、これから預金をドル建てに移し始めるでしょう。

ドル預金として円を預かった銀行は、資金をドルで運用しなければなりませんから、当然、円をドルに両替します。為替市場に大量の円売りドル買いを発生させることになります。
それもまた、資本逃避の大きなルートになるでしょう。


上記のように、様々なルートで大量の円売りドル買いが発生しています。


現在急激な円安が進んでいます。おとといから今日にかけてだけで円ドルレートは3円下がっており、暴落と言える状況です。
財務省は投機筋なるものに責任転嫁していますが、それはお門違いというものでしょう。
この円安は、大規模な資本逃避がすでに現実になりつつあることを示唆しているのだ、と僕は見ています。



今後、政府と日銀が適切な対応(要は利上げです)を打てなければ、この流れは長期にわたって続くでしょう。

さらに、国債は金利ゼロのままでは金融商品としての魅力を今後失うので、売りが殺到して暴落する可能性も出てきます。
(価格が下がれば自動的に実質金利が上がり、ある程度の調整はなされますが、別の問題が発生します)

そうしたことが発生したときに、資本逃避は新たな段階に入ります。
いわゆる、「政府と中央銀行が信認を失うことによる資本逃避」です。そのリスクは着実に高まっています。



連載バックナンバー:
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