かなり前にクロエさんからアルファベット順に10選を作ってみてはどうかという提案をいただいた。懸案にしていたのだが、「A」の付くバンドはあまりに多いので、一通り聴くのも大変。そこで今回は、アルファベット最後である「 Z 」の付くバンドで10選を作ってみることにした。単にバンド名で集めてみただけなのだが、どのバンドも1位にしてもして良いぐらいに素晴らしかった。やっぱりプログレって良いものですね。
曲 バンド アルバム
第1位 �� Five single combats / Zamla Mammaz Manas [ Family cracks 1980 Sweden ]
ツァムラ・ママス・マナは、70年代からのスウェーデンの前衛バンド。超絶技巧の５人組が大迫力の高速回転・狂乱状態で迫ってくる。5人編成なのに、ドラマーが2人いる。アヴァンギャルドなことこの上ないのは、まずピアノが通常の音階でなく駆け回り、リズム隊も変速に次ぐ変速。そこにときおり混じる人の声も変な感じで、さらに人の叫びのようなギター。全体として、曲芸としか言いようがない電撃的なサウンドだ。
第2位��Hroica〜��Help this lovely world / Zingale [ Peace 1977 Islael ]
ジンガーレは、イスラエル70年代のバンド。6人編成で、ツイン・キーボードに加えてヴァイオリン奏者がいる。平和を希求する主張が込められたコンセプト・アルバムとなっており、現在の情勢下で聴くと非常に感慨深い。ドラムスがありえないほどの高速で疾走する上で、宙を舞うヴァイオリンが次々と繰り出される。ドラムスとヴァイオリンの白熱のインタープレイが凄絶すぎて、既に西洋音楽の文脈を超越していると感じる。そして、このアルバムだけはどうしても2曲入れておきたくなった。攻撃的で戦闘のような前曲に連続する次の曲は、平和を歌う優しく静かなヴォーカル曲。ヴァイオリンとドラムスのコンビネーションにブラスが加わって、楽園的な美しさを醸し出す。
第3位�� Free folk / Zao [ Kawana 1976 France ]
ザオは、マグマにいたヨシコ・セファーが結成したジャズ・ロックの5人組。しかしマグマとジャズ・ロックの中間に位置することが、冒頭の男女混声ヴォーカルからも分かる。バンド名「ザオ」は日本の蔵王から来ているという。導入部 は普通のジャズ・ロックで、金管楽器が何本も絡み合う。ところが3分半過ぎに 登場するのは、天才少年ディディエ・ロックウッドのヴァイオリン。マグマでも 白熱のプレイを聴かせた若き凄腕プレイヤーだ。空間を切り裂き、縦横無尽に宙を舞い踊る鬼気迫るインタープレイの前には、私の好きな軟弱なシンフォニック・ロックなど吹き飛んでしまう。ヴァイオリンとブラスの激しい闘争に、全身緊張の金縛り状態だ。
第4位�� Fairy queen / Zello [ Zello 1996 Sweden ]
スウェーデン90年代6人組のゼロ。このバンドでようやくシンフォニック・ロックが登場することになる。美しいメロディーにほっと一息。このバンドは、ツイン・キーボード編成の上に、ヴァイオリンを弾きまくるのが印象的。ちょっとクセのある力強い男性的な声が、メロディアスなヴォーカルを歌い、バックにコーラスが流れる典型的なシンフォニック・ロックである。この曲では前半はヴァイオリンのソロ、後半はキーボードのソロが大活躍して、空間を縦横無尽に彩っていく。
第5位 �� Hear the voices calling in my head / Zarg [ Zaravash 2002 Brazil ]
ザーグはブラジルの21世紀バンドで、5人組。知名度は低いと思うのだが、堂々とした風格を感じさせるシンフォニック・ロックを展開する。それはドラムスが超絶的にうまい上にキーボードが広大な空間いっぱいに広がって、変幻自在に彩色するからだろう。ヴォーカルは独特のハイトーンで、ちょっと女性的な響きもある。拍子変化してからのアップ・テンポの演奏もぴったりと整合的だ。 たまたま「Z」のつくバンド名を集めてみただけだが上位5バンドとも実にドラムスがうまい。このバンドは、歌詞も何となく文学的な香り。
第6位 �� Suicide / Zomby Woof [ Riding on a tear 1977 Germany ]
ゾンビー・ウーフは孤独そうな哀愁のメロディーで愛すべき70年代バンドなのだが、「Z」の付くバンドは名バンドばかりなので、6位になってしまった。ドイツ・シンフォとドイツ・ハード・ロックの境界的な位置を占め、繊細で夢見るようなサウンド。間奏ではなぜか、このバンドでも巧みでメロディアスなヴァイオリンが配置されている。ドラムスもうまいし、ヴォーカル・メロディをはじめとして、すべての楽器の音色がメロディアスで、情感たっぷりに訴えかけてくる。
第7位�� Streched out hands / Zaragon [ No return 1984 Danmark ]
ザラゴンは、珍しいデンマークのシンフォニック・ロックであり、少年声のハイトーン・ヴォーカルを擁する80年代の5人組。曲の冒頭から入る声がなんとも魅力的だが、それに続くキーボードと泣きのギターのソロもなかなか聴かせるし、次々と変転していく曲調に合わせて、ヴォーカルの表情も変化させることができる。イエスのヴォーカルでジェネシスをやったらこうなった、という感じだろうか。
第8位�� Touch the sky / Zoldar & Clark [ Zoldar & Clark 1977 USA ]
まだまだ続く「Z」名の良いバンド。自信のないバンドは「Z」を名乗らないのだろうか。アメリカ70年代のゾルダー&クラークは、サーカス団の名前から来ているらしい。連続する爽やかなコーラス。ある意味でイエスっぽいアップ・テンポの演奏と、晴朗で透明感あるコーラス。しかし間奏の木管楽器のようなキーボードのメロディーは月並みでないし、背景を埋め尽くすストリング・キーボードも壮大だ。一方で、ギターが粘っこくてサイケデリックなのが、時代を感じさせる。
第9位�� Hung up on a dream / The Zombies [ The best of The Zombies 1968〜 UK ]
一番有名なゾンビーズが9位になってしまった。このバンドはビート・ポップの時代に「ふたりのシーズン」で大ヒットを飛ばし、人気を博した5人組。時期から見ても、プレ・プログレというべきバンドだ。しかしこのバンドはメロトロンを使った最初期のバンドでもある。この曲の背景に流れ続けている乳白色のストリングス音は、メロトロンだ。その使い方も効果的で、3分と短い曲ながらシンフォニック・ロックとしての形式は整っていると言えるだろう。ヴォーカルは哀愁に満ちていて甘すぎることはなく、またリズム隊も軽すぎることはない。
第10位�� Blindness / Zen Carnival [ Bardo 2006 ]
ゼン・カーニバルは、20世紀アメリカの4人組。バンド名は「禅の祭典」を意味しているし、ジャケットにも日本の大仏像やインド風の仏塔が描かれているものの、東洋色・民族色はない。空間いっぱいをキーボードで埋め尽くすタイプの壮麗なシンフォニック・ロックで、ヴォーカルは若々しいミドル・トーンが声を張り上げる。ヘヴィネスの強いギターに、これまたハードなキーボードが絡みつき、変転し拍子変化していく展開がみごと。
[次点]�� Il cavaliere rosso / Zenit [ Pravritti 2001 Swiss ]
スイスのゼニットは、子供のような響きのある女性ヴォーカルに、低い声の男性ヴォーカルが絡むツイン・ヴォーカルの5人組。童話的でイマジネイティブなサウンドになるのは、キーボードがメロディ・背景ともに、とても豊かな音色で彩っているからだろう。キーボードによる男女合唱も魅力。メロディーを描くのはハープシコード音で、そこに小鳥のさえずりなども加わって夢想的な雰囲気となる。ラストでは、ドラマチックなメロトロン音がクライマックスを告げる。
〇その他候補にしたバンド
Zauber, Zebra(USA), Zebra(Spain), Zenobia, Zoreya
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