太子たち一行は、馬傀駅付近の広場にて
陛下一行とは別の場所でバーベキューをしながら
酒やドリンクを好きなだけ飲んで休憩していました
牡丹雪が降り止んだ、白い雪景色の広場で、腹違いの兄弟が本音を語り合っています。
「李瑁よ
このままずっと大人しく、父上に従い続けて
父上と一緒に、巴蜀へ入る気か
巴蜀は、楊国忠の地元だ。」
「兄上、帝都長安は無防備で
いずれはアン・ルーシャンに占領されます。
ゆえに
父上に着いていくしかないのでは
」
「そうやって、一生
父上の言いなりになって
自分を卑下するだけの人生で、お前は本当にいいと思っているのか
お前は、父上に、玉環(楊貴妃)を寝取られ
その上、血の繋がった我々息子よりも父上が寵愛していた安飛鳥(アン・ルーシャン)に
玉環(楊貴妃)を弄ばれ
挙句の果ては
このザマだ
お前は父上を憎いと思わないのか
」
李瑁は静かに酒を飲んで、返事をせずに黙りこくっていると…
龍星の側近がやってきて、李瑁から少し離れた場所で
龍星と側近で、ヒソヒソ密談を始めました。
「陳玄玲は 口約束でなく 一筆欲しいと。」
「ほほう。陳玄玲は、私をゆする魂胆か
」
「殿下、しかし、今は陳玄玲だけが頼りですので…
事を成した後に、口封じをすれば良いのでは
」
「よし
では書いてやろう。
王思礼の三千人の軍が、近くに控えていると、陳玄玲に言え
」
「はい、承知致しました。」
龍星は側近と数分間話した後に、バーベキューの席へ戻り
また、李瑁と話し出しました。
「我々太子は、父上から、苛められ続ける日々は、もう今日で終わりにしよう
」
「そうですね。
兄上は、最愛の伊代妃と
森忍妃の二人の妃と、生き別れさせられたのですからね。」
「それだけじゃない
愛妾にしたかった好みの女を、父上に分捕られ、諦めるしかないという経験もしたよ…」
李瑁は驚いた顔で、龍星を見つめました。
二人は血のような赤いワイン
を、若くて綺麗な龍星の愛妾の酌で
グラスに注がれています。
「こうして、戦いもせずに、鎧を着て、逃げて、飲み食いしているだけでは
どんなに奮起しても、国を救う事も、敵を倒す事もできぬだけか
愛しい妻を、呼び戻す事もできぬ。」
「そうですね
私も玉環(楊貴妃)と生き別れてから、十数年経ちましたが
心の傷は癒えることはなく
煩悩の炎は、消えることはないですからね
」
「その十数年間、私は、世継ぎの座を守ってきたんだ
少しは成長したと 思っている…
だが、父上に対する怒りは、どうにもできないでいる。
李瑁よ
お前の自尊心
男としての気概は、一日も安らぐことはなかろう
私とて同じだ
お前の気持ちは、痛いほど分かるつもりだ。」
李瑁は、龍星のストレートな言葉が心に当たり、涙目になりました。
「李瑁、お前には、私と一緒に、飛龍軍を指揮して欲しいのだ
玉環(楊貴妃)の愛人となっている、楊国忠の地元の巴蜀に逃げて
反乱の鎮圧からも逃げて
父上が寵愛し過ぎた、楊貴妃の愛人だった飛鳥(ルーシャン)からも逃げ続けるつもりか
父上が、お前の正室の妃だった玉環(楊貴妃)と
愛慾に溺れたツケが
今こうして、国民と我々が、巻き込まれているのを黙って見ているつもりか
あの淫乱女のせいで
唐の国が傾こうとしているのを
何としても
我々で 、ご先祖様の面目を守るのだ
李瑁
今日からは、私の天下にしたいと思う
もう、父上に 虐め続けられる日々は、今日で終わりにしよう
」
李瑁の目から、涙が流れました。
「腹を満たしてから、父上と淫乱女に逢いに行くぞ
さあ、李瑁
飲んでばかりいないで、力をつける為に、ちゃんと食べるんだ
」
陛下一行に届くはずの、食料を積んだ馬車は、龍星皇太子一行の方へ、全て届けられていたのでした。
つづく
⛩絶世の美女と言わせ続ける妖魔伝説
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