昔々あるところに3匹の子豚が住んでいました。
長男は藁の家を。
次男は木の家を。
三男はレンガの家を作りました。
そこへ狼が、子豚を食べてやろうと現れました。
狼はまず、長男の藁の家へ行きました。
「ふん、こんな藁。オレの鼻息で吹き飛ばしてやる」
「愚かなり狼。この藁は、こう使うのだ」
鼻息を吹こうとした狼の鼻に、きりりと立った藁が突き刺さります。
「ぎええええ、なんだコレは!」
「その藁には、事前に私の気が込めてある。これぞ中国拳法秘伝、藁嚆矢!」
『紀元前4世紀に隆盛した格子針法に伝わる、本来は治療用の技。気を込めた藁を経絡に打ち込む事により、敵の動きを封じる。なお、今に通じる嚆矢(物事のはじめ)というのは、治療の際、まず身体の調子をみるために経絡へ打ち込むことを由来とする。 (中国・失われし治療術 太公望書林刊)』
「貴様はすでに鼻息の噴けぬ身体。引くのならば生命までは取らぬ」
「畜生、覚えてやがれ!」
鼻息を封じられた狼は、次に次男の木の家へ行きました。
「こんなもの、オレの腕力にかかれば一瞬で、熱っ!あつつつつつつ!」
「来たか狼。我が力は物事の本質、根源たる炎。その腕を焼き尽くしてくれよう」
途端に、木の家の一部が剥がれ落ち、狼の両腕に張り付いたかと思うと燃え上がり始めました。
「止めろぉ!わかった、ここには手出ししないから!やめてくれ!」
(ていうか、豚が炎使いっておかしいだろ。むしろお前が焼き豚だろ)
心の中でツッコミながら腕を焼かれて、這う這うの体で狼は逃げ出しました。
最期に狼が来たのはレンガで出来た三男の家でした。
「やぁやぁようこそ狼さん。兄たちが失礼しました。魚がメインですが、家の中にごちそうが用意してありますので、こころゆくまでお楽しみください」
「ん・・・? お前はレンガをぶつけてきたりしないのか?」
「しませんよそんな野蛮なこと。ささ、どうぞ。仲直りに兄たちを呼んできますので、先に食べていてください。長テーブルの奥まで料理は並んでいますから」
「う、うむ。お前は素直でいい奴だな。お前は見逃して、料理の方をいただこう」
「・・・ところで狼さん。登り窯ってご存じですか?」
「いや?」
「そうですか。わかりました」
「しかしどこまで続いてるんだこのテーブル・・・」
その日、3匹の子豚は、久しぶりに美味しい焼き蒸したお肉を食べたそうです。
めでたしめでたし?
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