「官邸支配」の実態を、沖縄防衛局幹部から聞いたことがある。「箸の上げ下ろしにまで口を出すってよく言うけど、うちはクレーンの上げ下ろしも全部お伺いを立てないといけない」
▼クレーンは辺野古のクレーンを指す。新基地建設を強行して「国の意志」を見せつけ、重要選挙の前には止めた。政治情勢に応じ、菅義偉官房長官や官邸官僚が事細かく指示してきた
▼今回の設計変更申請に異変を感じる。これは失策だ。全国に新型コロナウイルス緊急事態宣言を出した当の政権が、対策に追われる県に約2200ページもの申請書を持ち込んで承認を求めるなんて、誰の支持も得られない
▼「こんな時期に」と怒る野党国会議員に、防衛政務官は「おわび申し上げる。本意ではなかった」と言わざるを得なかった。布マスク2枚配布、10万円の給付金を巡る混乱を見ても、いよいよ官邸の統治能力が低下しているのかもしれない
▼今こそ、沖縄からの発信を強化する時だ。いかに新基地が「不要」か。「不急」どころか完成の見込みもない難工事か。特に兆単位の予算無駄遣いの指摘は、過去のどんな時期より説得力を持つだろう
▼一つ前の新基地「沖合案」は根強い反対で頓挫した。「台風」を理由にやぐらが撤去され、そのままになった。今も、工事はコロナを理由に止まっている。(阿部岳)
ログインしてコメントを確認・投稿する