〈2017年社員旅行 前編〉
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〈2017年社員旅行 中編〉
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シオリ「後ろ向きコースターも乗るです」
とても冗談を言っている顔ではない。
こいつは悪魔か。
ハリウッド・ドリーム・ザ・ライドは前向きのジェットコースターだが、同じエリアに後ろ向きコースター「バックドロップ」というものもある。
私も一応説得はした。
午後も近づき、人が増え、バックドロップは120分待ちとなっている。
さっきより待つことになる。
そしてモモコさんもきっと私たちのことを待っている。
私の足腰も限界だ。
さっきは新幹線の中で怒って悪かった。
巻き舌かますほど怒ることではなかった。
だから許してくれ。
しかし何を言ってもシオリは笑顔のまま「乗るです」を繰り返していた。
このめげない強靭な不屈の心があるからこそ、非道な性格の院長の下で長年働けるのであろうか。
モモコさんが退屈していないかと思って電話もしてみた。
あわよくば「葉桜、シオリ、どこにいるの?早く合流しようよ」と言って呼び戻してはくれないかと期待していた。
ティロリロリロン、ティロリロリロン(LINE電話着信音)
モモコ「あ、葉桜ちゃん。いまどこにいるの?」
私「いま、ジェットコースター乗ってたんですけど、シオリが『次は後ろ向きのヤツに乗る』って言ってきかなくて…」
モモコ「あ、そう。いってらっしゃーい♪」
期待を見事に打ち砕くモモコさん。
モモコ「2時間後に乗るのね?じゃあ、私、乗ってる葉桜とシオリのムービー撮るわ!」
すっかり体調も戻ってイキイキとした声のモモコさん。
変わってドブのような顔色の葉桜。
観念して、バックドロップの入り口に向かう私。
待ち時間はさっきより長いはずなのに、体感時間はずっと短かった。
あの恐怖体験をもう一度味わうくらいなら、もっと待っていたほうがマシだと思っていた。
そしてまた私とシオリの乗る順番が来た。
後ろ向きコースター、今度は一番後ろの席。
シオリ、脅威のクジ運。
そして、バックドロップ、発車。
私「ほんぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!」
(以下略)
降車後、満足げに笑うシオリに向かって叫んだ。
私「シオリさん!車椅子!!」
バックドロップを降りてから、やっとモモコさんと合流。
私「モモコさーーーん」
モモコ「おつかれー。約束どおり、ちゃんと2人が乗ってるコースターのムービー撮ったよ。ホラ見て」
そう言ってムービーを送ってくれるモモコさん。
遠方から、あの疾走コースターに乗っている私とシオリが見えたのだろうか。
驚くべき動体視力。
マサイ族か何かだろうか。
モモコ「あれ、葉桜ちゃん、つけまつげとれかけてるよ?」
アメリカンコーヒーのお湯割りくらい顔が薄い葉桜は、つけまつげヘビーユーザーだ。
超高速コースターを連続2回乗ったので、そりゃつけまつげも取れかけるだろう。
鏡と接着剤を取り出し、修正しようとすると、モモコさんが覗き込んできた。
モモコ「どうやってつけるか見たーい」
私「みぎゃあああああああああ!!」
絶叫マシーン降りたのに絶叫する葉桜。
結局乗る前も乗ってるときも降りた後も絶叫してるな。
基本騒がしいアラサー。
私「やめてください!見ないでください!来ないでください!ここはあなたが来てはいけないサンクチュアリ!!」
意味の分からないことを叫ぶ葉桜。
モモコさんは水川あさみ似の美人で目もパッチリしているので、つけまつげをあまり使わない。薄顔の苦労を分からぬ人に、その修繕作業を見られたくないため必死の抵抗。
無事メイクの修繕も終え、お昼ご飯。
モモコさんに「お腹すいたでしょう?」と声をかけてもらったが、ジェットコースターで内臓が揺さぶられ、朝から何も食べていないのに吐きそうになっていた。
昼食を終え、やっと一息つく。
ティロリロリロン、ティロリロリロン(LINE電話着信音)
モモコ「あ、院長。いま、シオリと葉桜と一緒に、昼食をとってるところです。・・・・・・・・・
え?…みんなで合流する?」
せっかく収まった吐き気がまたぶり返す。
おかえりなさい、吐き気さん。結構早く帰ってきたのね…。
ずごくすごく院長と合流したくなかったが、私だって社会人。
逃れられないことは分かっていた。
旅費ほぼ全額出してもらってるのに「金だけよこせ。そばには寄るな」というわけにもいかない。
しぶしぶ院長家族と、ハリーポッターエリアで合流。
院長「どうやー、満喫しとるかー」
いまのところ存分に吐き気を満喫しています。
院長「せっかくだから、みんなで一緒の乗り物に乗るかぁ」
そういって院長が選んだアトラクションは『ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー』
当時は3Dメガネをつけて、ライドに乗り、映像と疾走感を味わえるアトラクション。
(2018年からメガネ不要で3D映像が楽しめるようになりました)
待ち時間は120分だったが、スタッフと院長、ヨメ子、院長の息子みんなで並ぶことに。
突然ですが、ここでクイズです。
「ケフケフ」
「コッホン、コッホン」
「ウエーッホン!ウエーッホン!!」
何の音でしょう。
正解は
私の後ろに立っている院長の咳の音。
院長はアレルギーと気管支が弱いせいで、よく咳をする。
私、身長が150cmしかないので、院長の咳がシャワーのように浴びる羽目になる。
書いていて「新型ウイルス騒動になっている今だったら、考えられないことだなぁ」とか思っていたが、当時だって普通に不衛生だし、不愉快だ。
その日の夜は「葉桜、風呂場で死んでるのかと思った」と心配されるほど長時間、頭を洗い続けた。
さっきのバックドロップの待ち時間と同じ時間のはずなのに、この待ち時間は永遠にすら感じた。
待ち時間こそ苦痛であったが、ライドは本当に感動的。
もし未体験の方がいたら、事態終息後に是非ご堪能いただきたい。
ちなみに院長の息子(当時小学6年生)は「怖かったからずっと目をつぶっていた」とほざいていた。
阿呆か、もったいない!金返せ!(注:葉桜は入場料を出していません)
「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」「バックドロップ」「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」計3つのアトラクションを楽しみ、当社員一行はUSJを後にした。
そして、このときのまだ葉桜は知らなかった。
1ヵ月後、USJの年間パスポートを持っている友人からUSJに誘われ、「葉桜、USJはいつぶりなの?」と尋ねられ、返答に窮することになることを、まだ知らなかった。
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