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2018年12月28日07:15

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特別短編小説 乖離交差のフェアリーテイル 最終回

乖離交差のフェアリーテイル

プロローグ
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1968814136&owner_id=10063995

第1話
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1968937792&owner_id=10063995

第2話
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1968977621&owner_id=10063995

第3話
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1969065506&owner_id=10063995

第4話
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三行でわかるあらすじ
・果心はヒャッハー!
・リッドとユーの対立
・萌えキャラ『般若ちゃん』登場☆

 始まるよ!







〜ヤブシ地区・中央区〜

 アイは何か嫌な予感を覚え、ダンクとシティが待機している地点まで走っていた。

アイ「いやとくに理由は無いんだが、虫の知らせという奴かな?
 なんかこう、気がついたら手遅れでしたみたいな、zal、ザー・・何とかみたいないきなり怪物が出てきて話がバーンで終わり・・みたいな?嫌な予感がするんだよなー。
 いや、気にしても仕方ないな。
 この曲がり角を曲がれば目的地の筈」

 アイが曲がり角を曲がると、
 そこには地獄が広がっていた。

シティ「アーッハハハハハハハハ!
 楽しい!楽しいわ本当に楽しい!!
 もっと、もっと遊ばせてよ!」

 シティの笑い声が響き渡りながら、空中に大量の電柱やビルが舞い踊っている。
 アイは知っている。
 シティが楽しい、それは世界が危機に陥っている時であるという事を。
 アイの眼前には、戦場とよぶのもおこがましい景色が広がっていた。

アイ「・・・・」

 ビルのあちこちに電柱やバスが突き刺さり、道路には溶岩が噴き出しながら車や電柱をゆっくり溶かしていく。
 そして空中の電柱やビルの間に、シティとダンク、そして着物を着た般若の女性が戦っている。

シティ「アハハハハハハ!」
ダンク「シティ、気を付けろ!
 敵は本気だぞ!」
般若の女性「そうだ。
 我が聖なる行為(コスプレ)の場を汚した罪を後悔するがいい!この般若ちゃんの前でなぁ!」
アイ「な、なんだあれは!
 日本刀を振り回し、魔法を使い、溶岩を操り、コスプレ大好きで着物が似合うあの女!
 まさか、かし」
「うわあああああああ!!」

 突如響いた悲鳴を聞いて、アイが素早くそちらに顔を向けるとそこには、溶岩から逃げている子ども二人の姿が見えた。
 一人はマルグという、知り合いの子だ。
 もう一人はコスプレしていてよく分からないが、二人の背後に溶岩が迫りとても非常に危険な状態である事に間違いはない。

アイ「げ、マルグ!?
 なにやってんだあいつ!助けなきゃ!」

 アイは素早くマルグ達に向かい走り出していく。コスプレした方は衰弱しているのか体があまり動いてない。
 マルグが必至にもう一人を抱え、ようやくなんとか逃げられている状態だ。
 だが彼等の背後に溶岩が迫り、今にも二人の足に届きそうになっていた。
 アイは素早くアイスボムを打ち出し、二人の背後の溶岩を氷らせ、冷やしていく。
 走ってくるアイに気付いたのか、マルグがアイを見て息を呑んだ。

マルグ「お、お前は変態ロリコン誘拐犯!」
アイ「もうその名前でいい!
 だから早く走れ!溶岩は俺が食い止める!」

 逃げるマルグの背中に立ち、アイは溶岩に向かいありったけのアイスボムを撃ち込んでいく。
 溶岩がアイスボムにより一瞬で冷やされ、固まった溶岩が壁となって更に凍りついていく。
 だが、溶岩の質量がひどく大きく、溶岩自体の侵攻を止める事が出来ない。

アイ「ああくそっ!
 このまま溶けてたまるか!
 俺にはなあ、俺にはでっかい夢とか小さい希望とか色々あるんだよ!
 こんなデロデロに消されてたまるかあ!アイスボム全弾発射ァ・・あ!」

 アイが素早くアイスボムを発射し、溶岩を凍らせていくが、溶岩の上に大量の電柱の欠片が落下していく。
 その内の一つが逃げていくマルグに向かっていくのが見えた。
 アイは悪態をつきながらアイスボムを中断し、素早く欠片とマルグの間に飛び込む。
 そして、自ら盾となって電柱の一撃を防いだ。

アイ「ぐわああああああああああ!!」
マルグ「ロリコン!?」

 電柱の一撃を体で受けた事で、ひどい衝撃がアイの全身を襲う。それでもまだ気合いで頑張ろうとしたが、今度はダンクの撃ち漏らした魔法の光球がアイに直撃し、今度こそアイは気を失った。
 
アイ「が、は・・ゆ、ユー・・」
「ロリコン!大丈夫かロリコン!
 ロリコーーン!!」

 消え行く意識に響くのは、マルグの声だけだった・・。


▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ 


 アイが再び目を覚ますとそこは綺麗な草原だった。青空も深林も全て穏やかな、不思議な世界。
 妖精が空を飛び、怪物がのしのしと草原を歩いている。
 アイはそれらを見ながら首をかしげる。

アイ「あ?
 どこだここ?俺の体は、無事にある。
 意識もここにある。
 つまりこれは・・・・」

 アイはしばらく首をかしげていたが、はっと頭に電球を灯した。

アイ「分かった!ここは異世界だ!
 遂に俺も異世界転生デビューを果たしたんだな!
 ようし、ならばやる事はただ一つ!
 この世界中のゴブリン共を集め、軍団を作り、世界征服するのだ!
 元の世界で見ていろよ我が仲間達!
 お前達の頼れる賢いリーダー、アイはここでニュー・ゴブリンズを作り上げて世界を征服するからな!
 フハハハハハー!わーはははははははははははー!!」

 だれもいない草原で、アイの笑い声が響き渡った・・。

▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △

 〜ヤブシ地区・中央区〜

アイ「むにゃむにゃ・・さあまずは、あの街にいくぜー・・」
ユー「パパ!パパ!
 目を覚ましてよパパー!」
スス「落ち着いてユーちゃん!
 今のリーダーに触っちゃダメよ!」

 ヤブシ地区の中央区では、ダンク、ユー、スス、マルグ、リッド、そしてメルの五人が倒れたアイを囲むようにして見守っていた。
 ススがアイの頭や怪我を確認しながら傷の様子を見ている。
 あの後、事態に気付いたダンクがアイを連れて三人一緒に中央区の広場まで連れてきたのだ。そして互いに素性を話し誤解がとけた。
 シティと般若ちゃんの攻防はまだ続いている。般若ちゃんの正体は良く分からないし、シティに真実を話した所で止めないのはわかりきっているからだ。

スス「不味いわね、頭に直撃しているからひどい出血をしている。ダンク、ここの止血を頼める?」
ダンク「ああ、任せとけ。包帯はいくらでもあるからな。
 それが終わったら治療魔術をかけるぜ」
スス「お願いね、リーダーの意識をなんとしても戻さなきゃ」
ユー「パパ、パパァ!
 しっかりして!目を覚ましてよぉ!」

 スス達の治療をみて、ユーはぼろぼろと涙を流しながら駆け寄ろうとするが、メルがユーの肩を掴んで話そうとしない。

メル「ま、待つんだ、ユーちゃん!
 今、君が揺さぶったりしたらリーダーの傷が悪化しちゃうかもしれないんだ!ここは抑えて!」
ユー「う、うーー・・メル君・・」

 ユーは涙ながらにメルの顔を見るが、直ぐに力強く突き放し、睨み付ける。

ユー「あ、あなた達がいけないんだ!
 あなた達がもっときちんとしていれば、パパがこんな怪我を負う事は無かったんだから!」
メル「・・・・ごめん」
ユー「ごめん、て思うならパパを治してよ!早く!」

 ユーがアイに目線を向けると、アイの頭部にリッドが手をのせていた。良く見ると手の甲が白く輝いている。

ユー「!」
リッド「・・ごめんね、ユーちゃん。
 アイさんがこんなに傷ついたのも、全部私が勝手な事をしたせいよ。
 アイさんは責めなかったけど・・私は、私が許せないの。
 私の能力でどこまで治せるか分からないけど、やれる所までやってみる」

 リッドはそう言うと、手の輝きが強くなっていく。リッドの能力は『触れた傷を治療する能力』。
 一見便利な能力に見えるが、能力を発動する為には傷に触れなければいけない。
 リッドの手がアイの血で赤く染まっていく。
 それでもリッドは全く気にせず、傷が治るよう集中していた。
 ユーは悔しそうにリッドから目線を外しながら、全員に聞こえるように叫ぶ。

ユー「ぱ、パパが治らなかったら全員許さないんだから!!」

 それ以上ユーは何も言わず、広場の隅に座り込んでしまった。
 メルもマルグも、アイ達に目を向ける。
 アイは相変わらず、目を閉じたままだった。

▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △

〜『異世界ゴブゴブランド(命名・アイ)』〜

アイ「ふっ、思えば長い旅だった。
 この世界にゴブリンは存在せず、誰も知らないから仕方なく勇者を名乗り、魔王の軍団を襲うも面白いようにボコボコにやられる毎日が嫌で蕎麦屋の修行に走り、ある日出前で訪れた建物に入ると亡国のスパイと勘違いされ逮捕、そのまま城に捕らえられ、『吐け、吐くんだニャホニャホタマクロー!』と訳の分からん尋問を毎日喰らい、出前で鍛えた足を活かして脱走。
 世の中の理不尽に怒りつつも生活の為に軍隊からはぐれた怪物を退治してたら今度は『怪物保護団体』から『怪物虐待、反対!断固反対!』と石を投げられ、『だったら魔王はどうなんだよ!あいつら怪物を毎日操って悪い事をしてんだぞ!』『それもそうだ、ならお前が魔王を倒してこい!そうすればお前の罪は不問にしてやろう』なんて言われて、魔王城へやってきた。
 さあ、遂にこの異世界を統べるラスボスと対決する時だ!姿を現せ!」
「いーーよーー」

 アイが力強く叫ぶと、玉座の奥から黄色と紫の二色で構成された怪獣、ニバリ・フランケンが現れる。

フォト



ニバリ「はろはろ〜。
 オイラがこの世界を統べる魔王、ニバリ・フランケンなのだー」
アイ「やいニバリ!
 お前、なんで異世界で魔王なんかやってんだよ!」
ニバリ「いやー、ボクちゃんね、『ニバリーランド』を作りたいと思ってたんだよね。
 ニバリーランドの中ではみんなが紫と黄色の服を着るのが流行で、みんなこの二色の服を着るんだー」
アイ「じ、自分の夢を叶える為に世界を荒らすなんて許せん!
 このアイが成敗し、魔物達の悪行を止めてやる!」
ニバリ「うーん、そうなのか。
 でもワチキも悪い事をしないと叶えられない夢だし・・仕方ない。
 この世界の魔王として、戦うよー」

 間延びした声で喋るニバリの爪が、ギラリと輝く。アイは僅かに眉をひそめる。

ニバリ「ふっふっふ。
 ニバリーランドができた暁には『ハハッボクニバリ(裏声)』で挨拶してやるもんね!さあ魔王の爪に裂かれてやられろー!」

 ニバリが爪を振り上げ、アイは首をかしげる。そして手のひらをニバリの前に出した。

ニバリ「さあ魔王の前に嘆けー」
アイ「待った!」
ニバリ「んー?」
アイ「お前、女だろ?なら魔王はおかしいんじゃないか?」
ニバリ「・・・・・・・・あ。
 そういやそうだった」
アイ「女なら、魔王じゃなくて・・えーと、あれ?
 なあニバリ、女で偉いのって女王だっけ?王女だっけ?」
ニバリ「んー?どっちなのかニバリも分からないなー」
アイ「マジか。どうしようこの空気。
 そうだ!」


      TAKE 2!



アイ「さあ、遂にこの異世界を統べるラスボスと対決する時だ!姿を現せ!」
ニバリ「はろはろ〜。
 わたしがこの異世界を統べるラスボス、『まじょおーじょ』のニバリだぞ!」


フォト



 アイが力強く叫ぶと、玉座の奥から黄色と紫の二色で構成された怪獣、ニバリ・フランケンが現れる。良く見ると羽に『まじょおーじょ』と書かれている。

アイ「やや、お前ニバリだななんで以下略。
 こうなれば以下略」
ニバリ「ふふふ、ニバリには以下略。
 さあこい以下略!」
アイ「よし、ややこしい動機は以下略でカットした!
 さあ戦うぞニバリ!」(・・・・パ!
 ・・パ!)
ニバリ「いーよー!ん?」(パ・・覚まし・・!リー・・)

 不意に、二人の周辺に声が聞こえてくる。辺りを見回すが、誰もいない。
 しかし、声はだんだん強くなっていく。

(リー、ダ・・!おねが・・パパ・・!)
アイ「はて、何でこんな声が?」
ニバリ「・・そっかー。
 アイには、仲間がいるんだよね。
 とっても頼れる、とっても面白い仲間達がいるんだよねー」
アイ「ニバリ?」
ニバリ「バイバイ、アイ。
 また遊んでくれたら、ニバリ嬉しいな」

 声はだんだん強くなっていく。アイの体は動かなくなり、手を振るニバリの姿はだんだん小さく、遠く離れていく。
 アイは思わず、ニバリに手を伸ばした。

アイ「ニバ・・」

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △

アイ「り・・・・あれ?」

 アイが目を覚ますと、そこはヤブシ地区の中心だった。
 辺りを見渡すとゴブリンズのみんなが安心しきった感情でこちらを見ている。

スス「良かった!
 無事だったのね!」
アイ「へ?スス?」
ダンク「良かった、意識が回復したな!
 リーダー、ずっと気を失ってたんだぞ!」
アイ「気を失って・・ええと・・?」

 アイは少しずつ気を落ち着かせていきながら立ち上がり、記憶を思い出していく。なにかものすごく濃い内容の夢を見た気がするが、思い出せない。
 代わりに思い出されるのは、現実の記憶。

アイ「ハロウィンを中止させる為にヤブシ地区に来て、子どもを助けようとしたら間違えてリッドを捕まえて・・?
 あれ、それからどうしたっけ?」
メル「そこから先は僕が話すよ」

 下に目線を向けるとメルが立っていたので、アイは首をかしげる。

アイ「あれ?お前たしか今回の作戦に参加してないはずじゃ?」
メル「正義の味方『ルゴル31』が皆の邪魔をしてきたんだ。
 僕も近くにいたから応戦したけどやられちゃって・・」
アイ「そうか、じゃあ、リッドは今頃・・」
ユー「警察に保護されてるみたいだよ。
 パパ」

 ユーが両手を後ろに組みながら冷たい目線でアイをみつめる。アイは首をかしげた。

アイ「あり、ユー?
 もしかして怒ってらっしゃる?」
ユー「当たり前よ。
 勝手に助けにいって勝手にボロボロになって、皆に心配ばっかりかけて・・怒らないわけないじゃん。
 ちょっとは自分の体を考えてよ」
アイ「あ、あはははは・・悪い、ユー。
 確かに少しうかつだったな。
 次からはこうならないよう気を付ける。
 だから、機嫌を治してくれないか?」
ユー「・・・・次は、無いからね」

 ユーはそれだけ言って、アイに背を向ける。アイは声をかけようとせず、皆に声をかける。

アイ「さて、ゴブリンズ諸君!
 これから大急ぎで逃げるぞ!さっさと逃げようぜ!」
全員「おーーっ!」
ユー「・・ふん、本当に元気なんだから。
 心配して損した。あー早く帰ろ」
アイ「そうだな、早く警察に見つからんよう帰ろう!」
ユー「・・無事で、本当に良かった・・。
 リッド、ありがとう・・」

 ユーが小さく呟いた言葉。
 それは誰にも聞こえない、だけど誰かに届けたい温かい言葉。
 ユーはマルグとリッドが逃げた方に背を向けて、アイ達と一緒に走り出す。
 彼らの日常へと、帰る為に。


△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △

〜その後〜

 僕、メルヘン・メロディ・ゴートに届いたメールによると、マルグとリッドは無事に警察に保護されたみたいだ。
 『謎の人物が私達を助けてくれた』って伝えると警察が見せてくれた写真を見て、ぎこちない顔ではい、と答えたよ。
 
 ハロウィンイベントについては告発文が発表された事で、今後の行動について懸念するようになったってテレビで行ってたけど、必要ない気がする。
  
 だって、警察の目にもテレビの目にも、シティと般若ちゃんが派手に暴れた跡だけを報道していたんだから。
 道路は溶けるしビルのあちこちに電柱は刺さるしで、経済にも打撃をあたえちゃった。
 だから、この小さな騒ぎの真相を気にする相手なんて、誰もいなかったんだ。
 今回の話は、皆の心の中に御伽話(フェアリーテイル)のように記憶の中で小さく、だけど大事に残される。
 その御伽話は皆が思い描くの内容はバラバラだけど、後で話し合えば新たな発見に気付ける、パズルのような御伽話なんだ。
 アイは相変わらず悪巧みを考えているし、ユーは皆と一緒に笑っている。
 僕は友達とまた旅行に行く計画をたてているんだ。
 次はどこにいこうかな。
 また新しいわくわくを見つけるのが、凄く楽しみだ。
 
 P.S
 所で般若ちゃんの正体、わかる人いるかな?


  終
 


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