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2017年10月01日12:43

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本 有頂天家族〜二代目の帰朝〜  森見登美彦

”有頂天家族〜二代目の帰還〜” 森見登美彦

前作から七年後の’15年に発刊された本書、
今年早くも文庫化(アニメ化も)されたので森見ファンとしては
遅まきながらお買い上げ。

誇り高き「阿呆の血」が騒ぐ!
天狗や人間にちょっかいを出しては狸界で顰蹙を買っている、
京都下鴨家の三男狸・矢三郎は、まあまあ愉快に暮らしている。
ところが、老いぼれ天狗・赤玉先生の跡継ぎである“二代目”が
イギリスより帰朝すると、平和な街の気配が一変。
天狗親子は大喧嘩、狸たちは覇権争い、
二代目と何か因縁ありそうな弁天様、
狸を喰う人間たち”金曜倶楽部の面々は悪巧み、
あちこちで多発する片思い……と、京都の街は混迷を極める。
矢三郎の「阿呆の血」が騒ぐ! 一族の誇りをかけて、
尊敬する師、愛する者たち、そして毛深き命を守れ!
愛おしさと切なさで落涙必至の感動巨編。
(bookデータより)

森見ワールド全開で大いに楽しめました。
狸・天狗・人間が敵に味方に三つ巴、
しかも狸は蛙、虎に始まり人間、電車(しかも空を飛ぶ)、林と動物どころか
人・物にも化けることができるとあって、荒唐無稽になるのは必至。
しかも明治大正昭和初期の文学調に京言葉を掛け合わせてポップにした
これも森見氏ならではの軽妙な語り口ですっかり摩訶不思議な世界に
ズッポリ引き込まれました。。

今作は天狗の親玉赤玉先生と二代目の親子の確執(前作で弟子の弁天様を取合う)、
狸界のライバル夷川家(偽電気ブラン製造本家)との覇権争い(当主早雲の死と
父の悪行を詫びる長男呉一郎の帰還)、
恒例の金曜倶楽部の狸鍋の宴(今年の犠牲狸は)を軸に、
主人公矢三郎の大活躍に加え海星(夷川家)との恋(弁天様への未練もありつつ)
長男矢一郎と玉蘭のいじらしい恋、次男矢二郎(蛙姿からの卒業)の旅立ちといった
サイドストーリーにさらなるサイドサイドストーリーが複雑に絡み合う感じ。
ただの馬鹿話があったり、キュンとなるやりとりがあったり、
まさかの大どんでん返しがあったり、手に汗握る立ち回りがあったり。

兄弟それぞれの成長と恋ばな、母親(前作で父が亡くなっているので)や
祖母との心温まるやりとりが増えたのと、
京都だけでなく有馬温泉や四国、挙句に鬼たちが血のラーメンを作る地獄まで
舞台が広がっているのも、前作以上に楽しめた所以でしょう。

前作を読み返してから読めばよかったのですが、
それがなくても十分楽しめました。
読み返したとしても、矢三郎が今なんの姿に化けているのか
読んでていてわからなくなったり、
語られる過去の事件が前作にあった事件なのかどうかわからなかったり。
人物相関図、地図、年表をつけて欲しい。(多分出ている)

ハチャメチャの中にも家族愛と品を感じる娯楽大作、
ラストは第三部がありそうな矢三郎と弁天様との
やりとり(これがなかなか余韻があって良い)で終わっているので、
また、愛すべき狸たちの物語読めるのが楽しみです。

弥三郎のセリフ、
”阿呆の道よりほかに、我を生かす道なし”
この達観がなんとも素敵でした。

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