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2017年01月05日08:02

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溜池通信by吉崎達彦より





<1月1日>(日)

○あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

○酉年についての薀蓄を少々。鶏肉や卵が食べられるようになったのは江戸時代になってから。それまでの日本人はもっぱら野鳥を食べており、鶏は神社などで飼われていて、時を告げる神聖な鳥であった。

○急速に身近な存在になった鶏を、リアルに描いたことで有名なのが江戸時代の絵師、伊藤若冲である。これまたかの時代の「遊民経済学」を絵に描いたような人生でありました。

○今から300年前、京都の青物問屋の跡取りに生まれた若冲は、商売にも道楽にも関心が沸かず、生涯妻を娶ることもなく、とにかく絵筆を握っていれば幸せ、という人物であった。いるよね、こういう日本人。30歳を過ぎてから狩野派に弟子入りするも、こんな真似事をしていてもしょうがないと思って、独学でみずからの画風を確立しようとする。

○ついには家業を弟に譲り、ひたすら模写を続けるが、やはりリアルを描くに如くはなしと決意。庭で数十派の鶏を飼い始める。しばらくは絵筆をとらず、ただただ鶏を観察する日々が続く。1年を過ぎ、「もう見尽くした」と思った瞬間に鶏の「神気」を捉えることができ、自然に絵筆が動き始めたという。

○鶏の神気が捉えられるようになった若冲は、草木や岩にも神気を見ることができるようになった。つまりは何でも描けるようになり、写実と空想を取り混ぜた独自の画風を確立する。同時代の京都は、円山応挙の黄金時代で門弟千人と言われていた。それに比べれば若冲は孤高の人であったが、歴史的評価はむしろ「奇想の画家」若冲の方が高いのではないだろうか。

○てなことで、本年はたぶん伊藤若冲を使った年賀状が飛び交ったのではないかと推察いたします。すんません、ワシのもそうでした。

○ちなみに若冲という号は、『老子』45章の「大盈若沖」から採られたそうである。その意味は、「大いに充実しているものは、空っぽのようにみえる」。かくありたいですね、平成丁酉、元旦。


<1月2日>(月)

○たくさん寝たので、さすがに時差調整は終了。「朝生」に最初に出たのは2005年2月のことで、もうずいぶん前のことになる。確かあのときも森本先生、一太さん、小林よしのりさんが居た記憶がある。まあ、よくまあワシもこんな世界で生き残っておるなあ、と思ったが、何よりしぶといのは司会の田原総一朗御大であろう。

○タハラさん、御年82歳。この日は絶好調だったなあ。「朝生の放送中に死にたい」などと言っていたはずだが、番組終了後に「今日は時間が足りなかった」などとのたまっていた。そんなこと言って、新年は5時間バージョンであるから非常に長い。新幹線に乗っていたら博多についてしまう。午前3時半まで来た時点で、「これでやっと半分か」などと思ったものである。CM中に「これだけ長く座っていると腰が痛い」とぼやいたら、よしりん氏が「いつも漫画を描いているから、ワシは平気だ」と言っていた。あんまりうらやましくはない。

○お隣の津田大介氏、お向いの青木理氏がともにIpadを使っている。3人とも、テレビ朝日スタジオ内のWi-fiが使えるんですねえ。ついついFacebookを開いてしまうではないか。反対側の竹田恒泰氏も、スマホで何かを読んでいるご様子。出演者が揃って「内職」をしている。「朝生」は今年で30周年だそうだが、昔と比べればずいぶん景色が変わりましたなあ。

○これまた出演者の荻原博子さんから、『生き返るマンション、死ぬマンション』(文春新書)を頂戴する。お返しに拙著を進呈する。実は長い付き合いで仲良し、という話は以前にも書いたような気がする。中林さんとはアメリカオタクつながりで、これまた古い。トランプ政権について、もっといろいろ語りたかったですな。他の人抜きで。

○井上達夫東大教授は、もちろん「リベラルを嫌いになってもリベラリズムを嫌いにならないでください」のあの先生だ。この日が「朝生」初登場。しかるにしっかり「場の空気」を支配していましたね。「リベラルとは正義のこと也」という主張を堪能できました。でも、ワシはあんな風にキッチリ詰めた議論はあんまり好きじゃない。「んなわけないっしょ〜」と混ぜっ返したくなる方である。

○とりあえず、終わった後に「あんなこと、言わなきゃ良かった」と悔やむような発言はしないですんだ気がする。正月早々、そういうのって嫌だものね。まあ、あってもすぐに忘れてしまうんだけど。長らくやっていると、「鈍感力」は鍛えられるのであります。

<1月4日>(水)

○年の初めに恒例のヤツが出ました。ユーラシアグループの「Top Risks 2107」です。今年のテーマは"The Geopolitical Recession"(地政学的不況)です。

○それでは、今年のトップテンをご紹介。


1. Independent America (わが道をゆくアメリカ)

2. China overreact (中国の過剰反応)

3. A weaker Merkel (弱体化するメルケル独首相)

4. No reform (世界的な改革の停滞)

5. Technology and the Middle East (中東を脅かすテクノロジー)

6. Central banks get political (政治に侵食される中央銀行)

7. The White House versus Silicon Valley (ホワイトハウスvs.シリコンバレー)

8. Turkey (トルコ)

9. North Korea (北朝鮮)

10. South Africa (南アフリカ共和国)

Red herrings(番外=リスクもどき)

US domestic policy, India versus Pakistan, Brazil (アメリカ国内政治、インド・パキスタン対立、ブラジル政治)



○「今年の懸念材料はアメリカと中国と欧州がビッグスリーだ!」と言われてしまうと、「それって、ほとんど全部じゃん」、あるいは「そんなこと、知ってらあ」と減らず口を叩きたくなりますな。もっともユーラシアグループとしては、「地政学的リスクにご用心」とか、「もうすぐGゼロ時代がやってくる」なんてことを言っていたら、本当にその通りの時代が到来してしまって、悪い予言が当たってしまった魔女の如き心境なのかもしれません。

○その一方で、例年通りイアン・ブレマーらしい「冴え」が垣間見えるのが、6番や7番でありますな。全世界の中央銀行が政治に侵食されているのも、ワシントン政治(東部)がシリコンバレー(西部)に喧嘩を売っているのも、きわめて今日的な事態だと思います。それからここ数年、ランキングから遠ざかっていた「北朝鮮」が戻ってきたことも、新しい事態を感じさせます。

○それにしても、1位から10位まで日本はまったくお咎めなし。いやー、こんなにリスクフリーでいいんですかねえ。そういえば今日も株価は盛大にあげていましたね。昨年末に出た11月の鉱工業生産がとってもいい感じなので、実は日本経済、生産や輸出も回復しているらしくって、実は実体経済もそこそこよろしいみたいなんですよ。えっ?ジョージ・ソロスが日本に来てるんですって? 「押し目待ちに押し目なし」と言いますけど、これは意外な大相場になるのかもね。
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