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2016年07月29日08:54

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ロッキード事件から40年 「日米安保が破壊される」と疑惑もみ消しを依頼した中曽根幹事長

 下記は、2016.7.29 付の dot の記事です。

                        記

 ロッキード事件から40年が経ち、米国では事件に関する「秘密文書」が指定解除されている。それらの文書から朝日新聞編集委員の奥山俊宏氏は、重要な事実に思い当たったという。

                    *  *  *

 1976年7月27日、田中が東京地検に逮捕されると、米国の在日大使館は国務省に報告した。

「日本の一般の人々の間には、米政府と日本政府がスキャンダルを隠蔽しようと談合しているという疑念が根強くありましたが、田中逮捕はこれを払拭することになるでしょう」

 9月2日午後、ホワイトハウスで、駐日大使のホジソンは、田中逮捕を含むそれまでの経緯を振り返って、大統領補佐官のスコウクロフトに感想を漏らした。

「本当の奇跡です。米国政府の非協力への非難は、大きな魚が明るみに出たことで、筋道が通らなくなりました。ロッキード以前よりも米日関係はむしろ強くなっています。つま先をぶつけることなく、それを成し遂げています。これは三木のおかげです」

 ホジソンは、田中を逮捕した日本政府のトップ、三木武夫を称賛した。

 ロッキード事件への対応にあたって米政府が最も重視したのは米国の国益だった。自民党が下野するようなことになれば、日米安保条約が破棄され、米国の国益にマイナスになるのではないか、と恐れた。それを防ぐことが至上命題だった。

 76年2月23日、日本への資料提供について、米司法省のソーンバーグ刑事局長は司法長官への報告の中で「情報開示やそれに続く訴追によって友好国政府に生じるかもしれない害悪」などの検討が必要だと指摘した。

「たとえば、国務省は、関与者が特定され、公開されれば、日本政府は倒れ、その結果、より非友好的な政府になりそうだと心配している」

 ソーンバーグによれば、2月23日時点で、国務省は、三木政権に協力することが米国の国益に資するかどうか見解を固めていなかった。このため、その判断が固まるまでの間は、日本への資料提供について最終決定は見送る方針とした。

 つまり、犯罪捜査の任にある司法省でさえ、捜査の都合よりも、「より広い国益」を優先する必要がある、という立場だったのだ。

 これに先立つ4日前の2月19日朝、自民党幹事長の中曽根康弘は内密に米政府の代理人に会い、関与政治家の名前の公表によって「日米安保条約の枠組みの破壊につながるかもしれない政治状況」に陥る恐れがあると指摘した。ホワイトハウスに保管されていた米大使館の公電によれば、中曽根は「私は合衆国政府がこの問題をもみ消すことを希望する」とのメッセージを託した。

 表では、政府も自民党も、中曽根自身も、「徹底的に究明する覚悟だ」「米側に全資料の提供を重ねて要請していく」と公言していた。ところが、裏では逆のメッセージを米政府に届けたのだ。これについて駐日大使のホジソンは種々の考察を加えた上で、「さらなる有害情報の公表」は避けるべきだと本国の国務省に進言した。

 最終的に、米政府は日本の検察に資料を提供した。提供される情報は、訴訟では用いることができるものの、それ以外の場面では秘密とされる、というのが両国政府のとりきめの骨子となった。その情報を端緒として、日本の検察はロッキードの代理店商社の丸紅の首脳から自白を得て、田中の逮捕・起訴にこぎつけた。

 ロッキード社の対日工作は、米政府の諜報機関CIAも報告を受け、了解していた。また、CIA自身も日本の政治家にカネを流していた。こうした疑惑も76年4月初旬に報じられ、日本政府は当初、米政府に真偽を問い合わせた。米政府は否定も肯定もしない態度を貫き、駐日大使のホジソンが三木に直接会って、「CIAは避けるべき問題です」と忠告した。

 私はこの夏、これら7年ごしの取材と分析の成果を書籍『秘密解除 ロッキード事件──田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店)にまとめた。

 たしかに、「田中は米政府の虎の尾を踏んだ」説には、それを裏付けるかのような、いくつかの状況証拠があった。

 しかし、原稿を書いていて、そんな「虎の尾」説の真偽より重要だと私が思い当たった事実がある。

 CIAやロッキード社のカネを受け取っておきながら、逮捕もされず、公表もされなかった政治家がいた。米政府にロッキード事件を「もみ消す」よう要請したとして米公電に名前を刻まれながら、それを隠しおおせた政治家がいた。

 もし70年代、80年代にそれが発覚していれば、それら政治家の政治生命に致命的な悪影響を与えただろう。つまり、それは彼らの弱みとなった。そして、それら政治家の中には、のちに首相に上り詰めた人が複数いたし、暴露に怯え続けた末に自死を選んだ人もいた。

 そうした事情が判明したのはいずれも2006年以降のこの10年のことだ。

 日本政治の枢要な地位にあった人たちが米政府に弱みを握られ、その「虎の尾」に怯え、恐怖や懸念、不安を抱え続けてきたのだと考え当たったとき、私は暗然とする。

 40年を経ようという今になって初めて秘密を解かれつつあるロッキード事件はそうした問題を私たちに提起し、突きつけている。(敬称略)

 ※週刊朝日  2016年8月5日号より抜粋

 http://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%e3%83%ad%e3%83%83%e3%82%ad%e3%83%bc%e3%83%89%e4%ba%8b%e4%bb%b6%e3%81%8b%e3%82%8940%e5%b9%b4-%e3%80%8c%e6%97%a5%e7%b1%b3%e5%ae%89%e4%bf%9d%e3%81%8c%e7%a0%b4%e5%a3%8a%e3%81%95%e3%82%8c%e3%82%8b%e3%80%8d%e3%81%a8%e7%96%91%e6%83%91%e3%82%82%e3%81%bf%e6%b6%88%e3%81%97%e3%82%92%e4%be%9d%e9%a0%bc%e3%81%97%e3%81%9f%e4%b8%ad%e6%9b%bd%e6%a0%b9%e5%b9%b9%e4%ba%8b%e9%95%b7/ar-BBv0jsR?ocid=LENDHP#page=2
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