嘘。

その親父の一言目が見事だった。
もういい加減にしてくれ！これで二度目だぞ！
「いい加減にしてくれ。」の台詞はそのまま御返しします。
エントリーモデルとは云え列挙としたアルミフレームのG社のMTB。ペダルが割れた・・・ってのが1回目で、プラスチック1体成型のフラットペダルは見事にバレル部分から枠が引き千切られていた。無数の擦り傷、場所によっては摩擦で熔け落ちている。
無言で自転車をチェックしている背後で勝手な事をほざきながら仁王立ちしている馬鹿。ほ〜れ、何処も当たっちゃ居ないだろうが？
無言で売場から同様のペダルを抜いてきて小声で社員と話す。面倒臭ぇだろ？ペダルは廃棄処理で伝票切るからいいよな。ああ、お願いします。
ついでに整備もしとけよ！買い物してくっから！
死ね！馬鹿ジジイが。

今回はディレイラーブラケットを折って来た。
前回交換したペダルは既にギタギタだ。それよりも・・・純白の車体の後ろ半分は泥がこびり付いたままだし、チェーンもスプロケも油分が抜けてカサカサなのが、もう世の中何が起こっても赦せない。
これはお客様がお使いになってるのですか？の質問で火が付いたらしくて独壇場に嘘が並び始めた。

ウチの子供が使ってるからこそ問題があるのだ！命に係わる部分だろう？反射神経いいウチの子供だからこそ防げた様なモノだ！買って１年足らすで何でこんな目に遇わなきゃならんのだ！もうコレは要らね〜から金返せよ！何ぃ？お預りでメーカーに返すだあ？寝惚けんなよ！じゃあメーカーの担当から直接俺に電話寄越す様にしろよな！でよ、明日使う自転車出せよ！ああ、じゃあソレ車まで運べよ！

耐えるMgrが修理伝票を切り代車を携えて親父と店の外へ消える・・・やり場の無い怒り。

その・・・汚れてカサカサで後ろ変速機が不様にぶら下がったMTBをピットに入れる。
ドリーに掛かった、66年製のブルックスを付けた私の通勤快速とが並ぶ。同じ自転車・・・な筈。

ああ、貴方は何時も綺麗にしてもらえてて良いですね？
ああ、若いの。大変な目に遇ったなぁ？
ええ、もうクタクタです。肌もカサカサだしね。
大丈夫だよ。ここにいれば皆大切にしてくれるよ、また綺麗にしてもらったら元気出るよ！
ええ、でももうあの人ん家には帰りたくないなぁ・・・・貴方の家はどうなのですか？
そう、私は見ての通りヨボヨボのじい様だけどね。家は俺みたいなのが沢山居てな皆気さくで良い奴ばかりがあつまって楽しく余生を過ごさせて貰ってるよ。御主人が大切にしてくれてるからこそ私達もこうやって長生きしてられるのだよ。
そうなんですか・・・

二人が話している。
あのジジイはもうどうでもいい。
嘘付きながら生きて行きゃいい。

嘘は言わない機械。
でも・・・ちゃんと生きている。