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2008年01月25日09:15

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経験でのみ物を語るのもプアな話なんだが

デス・スウィーパー 1 読了
きたがわ翔の新作。真っ赤な装丁が
本屋でも異彩をはなっており、思わず
手に取ってしまいました。

思えば、きたがわ翔の漫画を読むのは本当に
久しぶり。昔、ガキの頃に『19<NINETEEN>』に
おお嵌りして、読みふけったもんだったが
次の『BBフィッシュ』でなんとなく離脱。
嘘。『19<NINETEEN>』を貸してくれた子に
振られたから。せつなさも相俟って、読んでたけど
『BBフィッシュ』はなんか違ったんだもんよ。
以降、コンスタントにリリースは続いている物の
全く食指が延びず、このまま縁の無い作家に
なるかと思われていましたが。

が。

もう、パラパラと立ち読みでページを
繰るだけでも傑作の予感がビシビシ伝わってくる。
元々画力のある漫画家だけに、こういった重いテーマを
扱うと強烈な魅力を放ってきます。

扱われている題材は「放置され、腐乱しきった遺体の処理を
行う特殊清掃業者」。死という概念すらが隠蔽された現代社会で
死を見据える事で生きる実感を取り戻そうとする青年の物語、
というのが骨子となるか。

あまりこういった感想を述べる際に自身の経験等に
囚われて、自分に引き寄せすぎて語る事(ロッキング・オン的!)
は野暮もいい所なのだが、一巻を読んでいる時間、様々な事を
思い出した。

数年前付き合いのあった子が数日私の家に泊まり続けて
いた後、帰宅した所、彼女のお父さんが亡くなっていた。
死後は4日ほどであり、真っ先に連絡を受けた私が
赴いてみた時の感覚(視覚、嗅覚、触覚様々な物は連動して
記憶として結ばれるんだ、という事を思い知らされた)。
やがて親類も集まってきて、身内にしか出来ない段取りが
行われる時、私にやる事は無かったので、近所のコンビニに
行った。その時買ったものは食事も出来ずにあれこれ切り盛りする
親類さん方のための軽食と、充満する臭いを消すためのファブリーズ
だった事。

私がこの本を読んでいる時に常に鼻先に漂っていたのは
この『死』の臭いだった。作中で表現される臭いはこの数千倍も
凄まじい物であるが、間違いなく私が生きていて嗅ぐ事のない、
今後もあるかどうかも分らない『死を体現する臭い』だったのだ。

綿密な取材がされている労作であろうとも思う。
私の親類が亡くなった際も、一人暮らしで連れ合いもなく
割合疎遠な親戚だった為、死後の発見が遅れた。
おまけに季節は真夏。一週間ほど放置されてしまった
遺体はみる陰も無かったそうだ。棺の中でやはりドライアイス詰めに
されている遺体が、どのような状態であるかは想像するしかないが、
恐らくこの作品で描写された遺体と近似であった事だろう。
特殊清掃業者、という職種があるという事もその時知った。

この物語がどう発展していくかは一巻の時点では分らないが、
単純な自分探しの物語にせず、より根源的な『生と死』の
物語にしてほしい。

蛇足だが、この人絵は凄い上手いのに人の『手』だけは
苦手らしい。19<NINETEEN>の時からそうだったが。

この事を指摘したのはこの作家を紹介してくれた子だった。
中学生の頃から手フェチを公言していた訳だな。

甘酸っぱいやら、死体臭いやら。

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