mixiユーザー(id:8306745)

2007年12月25日09:52

43 view

『バイオリニストは肩が凝る』読了。

最近の個人的指揮者ブームの中、クラシック関連の
書籍も読み漁っていたのですが、例によって
行き着けのブクオフをうろついている処を
査収した物です。演奏者の視点でのエッセイなので
少し目線が違い、すこぶる面白い。

著者はNHK交響楽団で30年のキャリアのある
第一バイオリンだそうで、その経歴だけでも
只者ではございません。凡百の指揮者では
太刀打ちできないほどの経験と知識、実力のある
方なのでしょう。

しかし、クラシック畑の演奏家、指揮者は文章力の
高い人が多い。
やはり、構造的に物事を見て、提示〜展開〜再現〜解決という
ソナタ形式が身体に沁み付いているからだろうか?
片や、ジャズ関連は悪文が多い気がします。ノリ一発って感じ?
この辺りの考察は進めると面白いかも。

・・・何事にも例外は付き物ですが。

指揮者に対するある意味絶対的な信仰(時に作曲者以上に
信奉される!)を軽妙に切って捨てる筆致は
非常に面白い。音楽性の決定は指揮者に委ねられる事が
多いと伝説的な指揮者の音源等を聞いていると思うが、
当然の事ながらアウトプットとしての有能な演奏家達の
手がなければ、その作曲家の意図も精神も決して外界には
出ないのだ、という事のプライドは頷ける。
ベルリンフィルなんて、結構ヘボな指揮者でも鳴るっていいます。
でも、そのベルリンの音を弄ろうと指揮者が考えたら
一筋縄ではいかない、と。そこはやはり、演奏者のプライドなんでしょうね。

しかし、尊敬する指揮者に対する惜しみない敬意も
きちんと表明されていて、そこが片手落ちにならずに
鼻につく事も無い軽妙さの所以となっています。
特にサヴァリッシュに対する惜しみないリスペクトは
面白い。あまり私のなじみの無い指揮者ですが、
この人の指揮での演奏を聞いてみたいと思いました。

プレイヤー視点で、楽団内の話というのは
なかなか新鮮です。ソロプレイヤーの本ならば
散見出来るのですが、NHK交響楽団を「カイシャ」と呼び
人間関係も無論あり、ルーティンワークには
苦心して楽しみを見つけようとする・・・
『交響楽団』という一個の集りの精度を
高めるために人間がそれぞれの切磋琢磨を
している処を、見られた事が面白かったですね。


0 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する