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2007年03月27日16:58

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亡月王(ぼうげつおう)個展〜こんてむてむんぢ〜

イラストレーターの亡月王氏の個展に行ってまいりました。
場所は、銀座・ヴァニラ画廊。
フェチシズムをお持ちの方は、ご存知の方も多い画廊ですよね。
久々に行ったら、迷ったよ、ヴァニラ画廊。

24日までだったので、もう終わってしまったのですが・・・良く考えたら、『こういう個展がありますよ』と、このブログで宣伝すりゃ良かったんじゃねぇか?というコトに今気が付きました。
亡月王さん、役立たず人間でごめんよ(-_-;)。
貧乏人だから、絵は買えないし・・・。1枚16万円だから、絵としては安いんだけどね・・・。

亡月王氏は、雑誌『幻想文学』の表紙を描いたり、デザインしたりしている方です。
他、ホラー小説の装画の仕事もしています。
その関係か、画集には、京極夏彦氏のコメントも載っていた。

そんな亡月王氏の描くイラストは、触手が生えた全裸の美女のイラストや、今回のモチーフは、骸骨だった。

このブログに画像を載せていると思うのですが、PCだと分かり難いと思いますが、コレ、CGじゃないのよ。全部鉛筆で描いているのです。
生で見ると凄いです!
美しい、鉛筆のマチエール。たかが炭素の粒子が、どうしてここまで美しいのかと、本当にそう思います。
職人のごとく、鉛筆で塗り重ね、妖怪のような触手女性の肌を塗っていく。
作品は1枚完成するのに、1ヶ月〜1ヶ月半かかるそうです。本当に、コツコツと塗っていくんだろうね。

亡月王氏の絵を語るとき、人は良く「肌理(きめ)」という言葉を用います。私もそうですが。
肌理細やかな絵。肌理が美しい絵。
思えば“肌理”とは面白い言葉です。
肌(はだ)の理(ことわり)と書いて肌理。

そうか。亡月王氏は、白い画用紙の上に、炭素の粒子で、肌の理を哲学者のごとく刻んでいっているのだな・・・そんなコトを思います。
ウネウネとうごめく触手美女。骸骨にはニョロニョロと蛇がまとわりつく。そこに肌の理が見え隠れする。

確かに、肌理も美しいです。
でも、私は、その肌理以上に、亡月王氏のイラストで好きな部分があるのです。

それは、手。
もっと言えば、手の筋や血管。
もう、たまりません。あぁ、なんと美しい!!

元来、“手フェチ”の私です。美しい手を見れば「その手を切って、私にくれ!」と思う私です。
美しい指も好きですが、私が好きなのは、その美しい指、美しい手に浮き出る、筋や血管。
私は亡月王氏以上に、美しい血管や筋を持った手を描く絵師を知りません。
黒い炭素の粒子で描かれた、血管や筋は、妖しく美しく。エロス的でもあり、そしてまた、タナトス的でもあるのです。

さて、亡月王氏の個展。絵以外に、もう一つお楽しみがあるのです。それは、亡月王氏と会話するコトです。
話がはずむ、はずむ(笑)。
そもそも、幻想文学好きや、自分で言うのは悔しいが、日本ではあまりメジャーじゃない、バロック美術や、血が出てる絵の話など、そんな話を出来る人が、まわりに殆どおらんのです!

亡月王氏は、幻想文学の雑誌の表紙を手がけていた方です。勿論、私以上に、幻想文学を知っているワケで。

オカルティズムの話やら、口裂け女のような都市伝説話やら、「10年前芦雪の美術展に行ったら、ガラガラで人がいなかった」話やら、又兵衛の“人体スッパーン”の絵を見てきた話やら、「地方でやってたフランスの中世ロマネスク美術展に行って、こんな大して目玉の絵もない美術展、誰が来るんだ?と思ったら、えらく混んでた話」やら、もう色々、話す話す。
正直、絵を見てた時間は1時間くらいで、あとの2時間半は喋りっぱなしでした・・・(^_^;)。
私、何しに行ったの???

で。結果として「バロック美術は、どう頑張っても日本じゃ人気出ないね」と「血の出てる絵も、今の日本じゃ受け入れられないね」という結論に達しました。
・・・チクショウ!!(笑)

自分で認めるのは、本当に悔しいのだが、私が本当に見たい美術展は、日本では2・3年に1度あるかないかです。

錦絵だって、大きな美術展は、北斎、歌麿、広重です。
「あぁ、そうですか。そうですか。又、北斎に歌麿に広重ですか。あぁ〜良かったですねぇ〜。人が沢山入りますねぇ〜。冗談じゃねぇ!!悔しかったら、月岡芳年の血みどろ残酷絵を中心とした、錦絵展でもやってみろってんだ!こちとら、女性、逆さづりにして、アンコウ斬りだぞ、べらぼうめ!」と嫌味の一つも言いたくなります。
そんな私も、勿論分かってはいるのです。
月岡芳年の無残絵が、錦絵のスタンダードになるワケはない。また、多分、なってもいけないのだ・・と。
こういう絵は、闇に置き、闇の匂いを嗅ぎながら愛でるモノだと。

誤解されると困るので、補足ですが、私は北斎や歌麿などの錦絵も嫌いなワケではありません。
ただ、北斎も歌麿も、私が好む、血まみれの絵は描いてくれなかった・・・それだけのコトです。

バロック美術もそうですね。バロック美術自体、日本ではあまり人気がないのですが、せいぜいあっても、レンブラントや、ルーベンスなんですね。
私ゃ、日本でカラヴァッジョがこんなに有名じゃないとは知りませんでした。それを亡月王氏に言ったら「仕方ないよ。」と諭されました(^_^;)。

カラヴァッジョも、マリンコニコ(一応、ルカ・ジョルダーノの弟子だぞ!って、ジョルダーノが日本じゃメジャーじゃないんだよ!(泣))も、リベーラも、スペインバロックのスルバランも、日本じゃ大して有名な画家じゃない・・・(-_-;)。

日本で1番人気のある洋画は印象派。
「あんな、ぼんやりした絵の何処が良いんだ!!」と嫌味の一つも言いたくなります。
でも、やはり分かってはいるのです。
カラヴァッジョのような、首を斬られる少年の悲鳴がそのまま聞こえてきそうな絵より、美しい睡蓮の花の絵の方が、今の癒しを求める日本には合っているというコトは。

亡月王氏とも話したのですが、よく『日光東照宮がニッポンのバロック』なんて言われたりしますが、西洋の方が、やっぱり凄いよね(^_^;)。本場だから当たり前だが。
装飾の上に装飾乗ってたりするもんね。装飾on装飾。もう、ゴテゴテ(笑)。日本人の感覚からしたら、さぞ「悪趣味」だろうね〜。
だから“侘び寂び渋み”の日本人からすれば、日光東照宮は、本当に頑張ったと思う。
艶(あで)やかに、装飾品も、西洋ほどではないにしろ、多目に配してあってね。

そんな話をずっとしておりました。
趣味が合う方は、私にとっては貴重な方です(笑)。

亡月王氏は画集を出版しているので(多分、『幻想文学』のHPを検索すれば出てくると思う)、気になった方は、見てみて下さい。

亡月王氏とは「いつか一緒に古書店巡りをしましょう〜」と約束をし、お暇しました。
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