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2006年11月27日17:07

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トーチソングトリロジー

注:現在“パルコ劇場”で上演中の、“トーチソングトリロジー”の感想を書きます。これから見られる方や、ネタばれがお嫌な方は*******以降からは、お読みになられない方が宜しいかと存じます。

トーチソングトリロジー。同性愛(マイノリティ)がテーマの演劇です。そして、以前も書きました通り、何故か母がくっついて来ました。何故に??母は“チャングム”(韓国ドラマ)にどっぷり嵌るような、いたって一般的な人なのですが。しかし、そんな母も楽しんでいたようだ。

芝居の後、母が「腹減った」と言うので、劇場下の沖縄料理店に行きました。後から私らのテーブルの横に来た3人の客。最初は気がつかなかったのですが、「あれ?声が・・・花組芝居の深沢さんだ!ちょっとオネエ喋りな、この声は深沢さんに間違いない!!うわぁ〜、お芝居見に来てたんだねぇ〜。」と思ったら・・・・。

そこに、この芝居の主役であるアーノルド役の篠井英介氏登場!!ひえぇぇぇ〜!!!!
私の真横の席で、篠井氏飯食ってますが?
食べるんだ!篠井さんも、ご飯食べるんだ。薔薇の花食べて生きてるような人だとばかり・・・(オイ)。
かなり急いで来られたのでしょう。舞台メイクのままいらしたようにお見受けしました。(レストランは12時までだからな。その時既に、10時くらいだった)
母はさかんに「サインを貰え!」と言ってましたが、恐れ多くてそんなコトは出来んかったよ(^_^;)。
私のようなモノが、あんな美しい人のそばに行ったらいけないのです!!溶けちゃうから!!
そのテーブルは、皆、役者さんだったのですが、舞台の裏話が聞こえてきて、凄く楽しかったですよ。
これからやるお芝居の打ち合わせみたいなのもしてた。篠井氏はメモを取っていたよ。

帰り、そんな私の興奮をよそに、母はキャッシャー横に売っていた沖縄限定販売の黒糖プリッツだの、パイン味の“ぷっちょ”だのを山のように購入していた・・・。

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トーチソングトリロジー

主軸となるのは、同性愛などのマイノリティの人達の話だ。コレがコメディ要素もともなって、嫌味なく上手くまとめられた芝居。
3幕構成なのだが、元々は個別だったモノを1本にまとめたらしい。だから長い(笑)。映画にもなったので、お話をご存知の方も多かろうが、あらすじをちょっと紹介〜。
因みに、日本の初演は1986年だったそうだ。その2年後再演もされた。その時は、主人公アーノルドを鹿賀丈史氏が演じ、その恋人役のエドを西岡徳馬氏が演じた。濃いカップリングだよね(笑)。
腐女子表記をすると“西岡徳馬×鹿賀丈史”となる(笑)。
当時の評価は高かったようだ。


第1幕。
ナイトクラブで働く(女装をして歌を唄う)アーノルド(篠井英介)には、バイセクシャルの恋人のエド(橋本さとし)がいる。ある日、エドに女性の恋人が出来る。エドはどうやら、ローレル(奥貫薫)というこの恋人と婚約まで考えているらしい。エドは「アーノルドのコトも愛しているし、手放したくないが、彼女のコトも好きだ」と言い、結果、ローレルを選んでしまう。

第2幕
ある日、エドの恋人、ローレルから電話がかかってくる。「週末、エドが持っている農場に遊びに来て欲しい」とローレルは告げる。どうやら、エドは、ローレルに、アーノルドと恋人同士であったコトを告げていたらしい。
アーノルドは現在の恋人アラン(長谷川博己)を同伴し、エドのウィークエンド・ハウス(週末だけ過ごす家)である農場へ向かう。
アーノルドが若くてハンサムなアランを連れて来たコトが面白くないエド。
皆それぞれ色々な思惑を抱え、4人で過ごす週末。アランはアーノルドにプロポーズをする。
ところがエドも、ローレルがいるにも関わらず、アーノルドのコトが気になってしまう。
エドは、アランと話をする為、アランの元へ。
ところが、ひょんな拍子に、アランとエドはベッド・インしてしまう。
そのコトをエドから告白されるローレル。ローレルは怒って、アーノルドの元へ行ってしまう。ローレルから、アランがエドと寝ちゃったコトを知らされ、吃驚仰天のアーノルド。
それでも、アーノルドはエドも、アランも許し、アーノルドはアランと共に暮らすことを選択する。
ローレルもエドと結婚するコトに決める。

第3幕。
マンハッタンへ引っ越した、アーノルドの家。ローレルと別居したエドもいる。恋人だったアランを亡くしたアーノルドは、ディビット(黒田勇樹)という少年を養子にした。そんな折、アーノルドの母親(木内みどり)がアーノルドの家を訪ねて来た。
アーノルドのコトを愛しつつも、彼がゲイであるコトをどうしても認められない母親。
アーノルドと母親はお互いの意見を言い合い、辛辣なコトも言い合い、お互いを傷つけてしまう。
罵りあいの果てに、交通事故と言っていたアランの死は、実は、中学生に集団暴行され、殴り殺されていたコトを母に告げる。(アメリカのゲイ差別ですね。ゲイ狩りっていうのがあるんだよ。)
アーノルドは母にこう告げる。
「アナタのような“正しい教育”をしてきた母親に育てられた子供達が、アランを殺したのよ!」(因みにアーノルドは、ユダヤ人。多分、母親はユダヤ教にのっとって、アーノルドをきちんと育てたのだろう)

喧嘩の場面を見せたくないという配慮から、ディビットを連れ出したエド。ディビットは元々、ストリートチルドレン。売春で生計を立てていたらしい。エドは彼と話すうち、アーノルドともう1度やり直してみたいと思うようになる。

喧嘩をした朝。母親は朝一の飛行機で帰ると言う。アーノルドはここで、自分の気持ちを母に告げる。

こんな感じのストーリー。

本来はかなり重い内容なのです。アーノルドは、アメリカというキリスト教のお国で、ユダヤ人(ユダヤ教徒なのだが「私、ユダヤ教は、もう捨てたの」という台詞も出てくる)で、同性愛者というWパンチのマイノリティ。
恋人アランは、中学生の差別によるゲイ狩りにより殴り殺される。
重い・・・重いのだが・・・。
上手〜くコメディでコーティングして口当たりの良い仕上がりになっているのです。

第2幕のエド、アラン、アーノルド、ローレルの4人の関係もドロドロだしな。(^_^;)
それでも、キチンと笑いどころを作っている。

で、今回の最大のヒットは、エド役の橋本さとし氏。
エドは、節操なしで、結構いい加減ではあるが、優しく、憎めない良い奴の設定。そして、コメディリリーフとなるコトが多い。
橋本氏は元々劇団☆新感線の役者さん。
笑わせるのは得意ですね。別に大げさなギャグを言うワケではないのだが、どの場面でどうやればお客さんが笑うか分かっているのだと思う。
篠井氏も、意外にコメディ得意だったりするし。

1幕。アーノルドとエドの電話が可笑しい。
アーノルドの口喧嘩攻撃に耐えられず、エドが「じゃあ『死んじまえ!』って言って、電話を切れば良いじゃないか」と言い、アーノルド「あらぁ〜。私、そんなコト言わないわ。で、彼女(ローレル)のコトはどう思っているワケ?」エド「・・・彼女は・・・天使だ」アーノルド「死んじまえ!!」
この会話が可笑しい。そして、アーノルドのチャーミングなコト。

篠井氏のアーノルドは、美形で理知的。でも、理知的である故の理屈っぽさと、ちょっと意地悪なところを併せ持つ、チャーミングなアーノルドになっていました。
合ってた・・というか、橋本エドと、篠井アーノルドという配役が合っていたと言うべきかも知れん。
舞台美術もシンプル。舞台に『フィッティング・ルーム』や『アーノルドズルーム』(英語で書いてあるよ)と書いたプチ舞台のような上で役者は演技し、ここが何処だか分からせる。それだけ。本当にシンプル。

時々、エミ・エレオノーラさんのトーチソング(哀愁のある歌のコト)が生演奏、生歌で入ります。

この1幕目。“バックルーム”のシーンが出てくるのだが、“バックルーム”って一般の方分かるのかな?
日本で言う“ミックスルーム”のコトだと思うんだけど。
お酒飲んだり、サウナ入ったりするところと別に、薄暗くて、ある程度の広さのある部屋があるのだが、そこで、まぁ、コトをいたすワケだな。ゲイのハッテン場・・で分かるのかな。
薄暗いから顔も殆ど見えないらしいのだが。
篠井氏の演技が見事でした。
人はおらず、1人だけでセックスをしてるように見せるのね。喋りながら(笑)。
「私、立ったまんまの結構やりにく〜い状態なんだケド・・・。」と言うシーンがえらく可笑しかったです。

2幕も、冷静に考えりゃ、4角関係のような結構ドロドロした関係なのに、上手いことコメディになっている。

舞台上には大きなベットがあるだけ。そこで役者は動き、今どんな状態かを表現する。
私ゃ、エドとアランがデキちゃったコトを、アーノルドがローレルから知らされるシーンが大好き。可笑しい。
アーノルド「まさに、絶妙なタイミング!!」
ローレルはエドに向け「だって、知ってるって思ったんだもの!!」
ローレルとエドは隠し事がないよに・・と何でも話す仲だったらしいのだが、大人の事情は、そうそう人に話さないのが、“大人”だよな・・・(^_^;)。

この時、ベットのふちに4人腰掛け、右から、エド、ローレル、アーノルド、アランとなる。つまり、真ん中のローレルとアーノルドが向かい合って話している時は2人の会話。ローレルが右に向き直りエドと会話する時はエドとの会話。アーノルドが左を向き、アランの方を向けば、アランとアーノルドとの会話となる。
2人つづの会話が入れ子細工状態になっているのだな。
この演出が結構好みでした。テンポ良く、トントントンと進む。

あと、ローレルがエドに「自分とのセックスの最中『アーノルド』って呼んだ!」と詰め寄るシーンも可笑しくて好き。エドは「そんなコト絶対にない」と否定するのだが(^_^;)。
「セックスは人を無心の状態にするのよ。素直に言葉を話すわ。」
というローレルの台詞が良いですね。

セックスと言えば、エドとアランのセックスシーンはどうするんだろう?と思ったら、ちゃんとやってました(と書くと変だな(^_^;))。
キスシーンだけは、そのままの照明で、あとは、照明を落として影のみで見せる演出になっていた。
そんなどぎつい絡みじゃないし、橋本氏も長谷川氏もイケメンなので、イケメン兄さん同士の絡みだから、照明そのままでも別に嫌な感じはしないケドね。でも、シルエットの方が綺麗ではあるか。

第3幕。
私が1番好きな幕です。ストーリー知ってても、最後、ちょっと泣く。
アーノルドも、アーノルド母も、お互いが嫌いなワケでも、喧嘩したいワケでもないのに、ゲイを認められない、認めたくない母親。そして、ゲイの部分を否定されたら、アイデンティティが崩壊してしまう息子アーノルド。

母親が言う「オマエだって、結婚して、もしかしたら子供が出来るかも知れない。」
と言う台詞が切ない。母親は悪気では言っていない。でも、アーノルドにとっては、これだけ傷つく言葉もなかろう。
ゲイであるのは、アーノルドのせいじゃない。
母親は嘆く。「何処で育て方を間違ったんだろう。オマエなんか生むんじゃなかった。」と。
言ったあと、母親はちゃんと神に懺悔するケドね。「生むんじゃなかったと言った舌を抜いてくれ」と。
でも、神に懺悔するあたり、この母親の立場を物語る。
息子ではなく、神に懺悔する辺りね。
多分、敬虔なユダヤ教徒なのだろう。

こんな母に、ディビットという男の子を養子にしました・・・とはなかなか言えないアーノルドも気の毒。
本当は、恋人アランと築くはずだった家庭だろうが、アランは、中学生に集団暴行されて殺されちゃってるし・・・(-_-;)。

母親も少し前、父親を亡くしているので、アーノルドの悲しさは分かるのだろうが、どうしても素直になれずアーノルドのコトを「未亡人気取り」と罵ってしまうのも悲しい・・・。
罵るのは、自分がちゃんと育てられなかった・・と思っているが故であろうしな。

最後、喧嘩して母親が帰る朝。少し素直になったアーノルドが母に言う「アランがいなくて淋しい・・・。」という台詞が良いなぁ。
母も黙って聞いていて、息子を励まそうとする。電話で言葉は遮られてしまうケド。それでも、ほんの少しは分かり合えたのではないか・・・と示唆する部分。

誰も悪いワケではなく、それでも傷つかなくちゃいけない。マイノリティだったばかりに。その傷が少しでも癒えればと・・そう思えるけれど、ちょっと苦いラストシーン。

こんな3幕にも、ギャグはあるワケで。エドさん大活躍なワケで。
私が好きなのは、エドがディビットに焚き付けられて(?)もう1度アーノルドに告白しようとして、アーノルドをソファに押し倒すも、アーノルドに「アンタは家に帰れ!」と跳ねつけられて、もう1度押し倒そうとしたら、ディビッドが電気つけちゃうシーン。
ソファを向こう側に飛び越えるエド・・というか、橋本さとし氏!流石は劇団☆新感線!身体能力の高さが半端じゃねぇです。その後、舞台上手端に、膝を抱えてチョコンと座るのが可愛い。「NO!って言われた」って、泣きそうになりディビッドに言う(笑)。どっちが子供か分かりゃしない(^_^;)。

母親との罵りあいも、そのままだとキツイので、ギャグが入ります。私ゃ、アーノルド母が「(ちゃんと結婚した)お友達(エド)を見なさい!」と言い、アーノルドが「見てる。別居した。」と言うシーンがえらくツボでした。
あぁ・・エド。反面教師になっちゃってるよ(^_^;)。

ジメジメせず、カラっとした社会派劇。そんな感じのトーチソングトリロジー。
やっぱり私は、この芝居が好きらしい。
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