mixiユーザー(id:295366)

2024年04月21日16:54

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名作ではなかった。

今もそうだが、ガキの頃は熱心なビートルズファンで貧弱な環境ながらも当時の日本で観られる映像作品の殆どに目を通していた。YouTubeとかなかったから、名画座で映画の再上映があれば親を説得して観に行かせてもらったりして。
たしか"Let It Be"は劇場公開ではなくて、テレビの深夜枠で流されており、当日は夕方に寝溜めしておいてからリアルタイムで鑑賞し、あとテレビにラジカセを繋いて音だけ保存したはずだった(ビデオデッキは当時10万円超えで家庭に1台という環境ではなかった)。そこまでして懸命に観た映画の印象は …良くなかった。

Ono某がJohnから離れないし、Georgeは明らかにやる気がないし(収録前にJohnと大喧嘩していたことを知ったのはかなり後のこと)、Paulは逆にやる気が滑っているし、Ringoはなんだか印象がないし …と。それでも頭数が揃えば"I've Got A Feeling"の熱気が出てくるのでThe BeatlesはThe Beatlesなわけなのだが。でも節々に入るジョークは明らかに寒かった。
"Get Back"の名の下集められた膨大な音源を前にしても「散漫」「やる気がない」雰囲気を殺すことはできずに、一旦リリースを諦め、緊褌一番で名作"Abbey Road"を作ってから解散したというのも納得のできる話だった。

ところが、メンバーというよりも周囲が"Get Back"の放棄に耐えられず、"Let It Be"にプロジェクト名を変え、外部からフィル・スペクターを呼んで強引にアルバムを作ってしまったのは有名なエピソードであり、特に"The Long And Winding Road"のアレンジを巡って猛反発をしたPaulがバンドの解散に踏み切ったのもファンなら誰でもご存知かと思う。

"Let It Be"のアルバムだが、自分の記憶が確かなら日本でいちばん売れたThe Beatlesのアルバムであり、有終の美を飾ったかのような印象があるが、じつは全くそうではない。なにせタイトル曲が絶対いらないゴミみたいな小曲("Dig It"と"Maggie May")に挟まれており、しかも殆どメドレーだったのでアナログ盤でこの曲だけ取り出して聴くというのは至難の技だった。それに畳み掛けるオーバー・プロデュース。この曲と"Get Back"はGeroge Martinのプロデュースしたシングルも出されているが、くだらんジョークに付き合わなくて済むだけでもシングルの方が出来は遥かによい。
実はアルバム全体がこの調子であり、LPはもちろん映画の方もいま観返す気が到底起こらないのである。というわけで日本では大ヒットした「最後」のアルバムの我が家での稼働率は正直"Anthology"や"BBC Live"よりも低い。

半世紀経過して、他のお蔵入りコンテンツの存在が明らかになり、再度編集をしたところで映画の全体を貫いていた「やる気のない」イメージが払拭されることはないと思うので、"Get Back→Let It Be"セッションを核としたコンテンツが出ても食指が動くということはないのだ。逆に万一"Abbey Road"セッションの映像作品が出たら飛びつくのだが。
そんなわけで熱心なファンを自称していても"Let It Be"だと辛いし面倒くさいしで、わざわざカネを払って観る気が起こらない。ディズニーが絡んでいると聞くとさらに不信感が募ったりしてくる。

冒頭で触れた、映画から録音されたテープは、音数の少ない"The Long And Winding Road"の再生専用となった。昔も今も、自分にとってはそれだけの映画なのである。

幻のドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:Let It Be』、ディズニープラスで50年ぶり復活
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=25&from=diary&id=7834251
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