先月のEテレ『100分de名著』はfor youth企画ということで、週ごとに別々の作品を取り上げていた。「じゃあ、25分de名著じゃん」といえば、たしかにその通り。
そのうちの1回が『思い出のマーニー』だった。ジブリのアニメではどういう話なのかまるで見当がつかなくて困惑したけど、宇多丸氏の映画批評を聴いてそれなりに得心してはいたのだった。自分のリテラシーでは、そこまで追いきれませんと諦めつつ。
今回、番組で原作について解説され、あらためて映像化にあたり米林宏昌監督が非常にきめ細かくヒロインの心象を描きこんでいることを理解したが、微細すぎて自分には感知できなかったのも無理はないと開き直るしかないのだった。
原作の舞台は作品が書かれたころ、20世紀中葉のイングランド東部だったが、アニメでは現代の日本に変えられていた。宮崎駿はこの変更が意外だったようだけど、それ自体は一長一短があって、かならずしも容易に優劣を論じられるところではないはずである。
それよりも、このストーリーについていえば、ヒロインがマーニーと過ごした時間の雰囲気、空気感のようなものがとても重要で、そもそも映像化がひどく困難な題材ではないだろうか。読みながら読者の思い描く光景が、後の展開で裏切られるところが勘所のはずで、それが実際に映像として提示されてしまうと、この根本的な転覆が袋小路にはまりこんでしまう気がする。
実写でも描くのはなかなか難しく、アニメとして扱うのは最も難しい題材ではなかったろうか。
かかる逆境の中で最大限の奮闘がなされたとは思いつつ、そもそも勝ってから戦うのが兵法の常であって、なんでわざわざこんな負け戦を引き受けたのかなあと思わなくもないのだった。
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