紀元前の中国、周王朝においては、男子の身長というのは【一丈】、
つまり百八十センチにならないと一人前の男と認められなかったと言いますから、
かなりハードルが高いですよね。
この身長に達した一人前の男子の事を【丈夫】と言いまして、
その丈夫の中でも、とりわけて優れている者を【大丈夫】と言ったんだそうですね。
そこから転じて、大丈夫というのは『危なげがなく、
非常にしっかりした様や間違いのない様』を意味するようになったわけですね。
言うまでもなく、大丈夫という言葉は、現代人の日常会話でもよく使われます。
しかし、最近の若者の【大丈夫】の使い方がおかしいと言われてましてね。
会社の上司が部下を飲みに誘うという、よくある光景で、
「山下君、今晩一緒にどうだ?」
「あ、大丈夫です」
これは昭和生まれのお父さんたちからすると、『大丈夫なんだから来られるんだろう』という
【イエス】の意味で取ってしまうわけですが、
平成生まれの若者たちは【ノー】だと断っているわけですね。
本来はもちろん【イエス】の意味で使われる言葉が、
なぜ逆の意味で使われるようになったのかが不思議ですが、
そこには若者なりの気遣いというのがあるようですね。
友達の誘いを断る時『今日、無理』なんてな具合にきっぱり断ると、
相手を傷つけてしまう可能性がありますが『大丈夫』だと優しい感じがして、
当たりが柔らかいからなんですね。
ですから部下が上司に『大丈夫です』と言ったのは、
『私を誘ってくださるようなお気遣いはなくて大丈夫です』という意味で言ってるわけですね。
「山下君、今晩一緒にどうだ?」
「はっ!自分はイヤでありまぁす!」
これはやはり角が立ちますから、大丈夫の方がいいかもしれませんね。
「ヒトミちゃん、僕と付き合ってほしいんだけど」
「あ、大丈夫です」
・・・この場合は、大丈夫の方が傷つく感じがしますよね。
本来、大丈夫というのは自信がある場合に使うわけですが、
自信のレベルを表せるような使い方が出来るといいですよね。
「このプロジェクト、君に任せたいのだが、やってくれるか?」
「はい!中丈夫です!」
【中丈夫】というくらいですから、語気の強さほど自信を持ってない事が判りますよね。
「私の手術の執刀、是非先生にお任せしたいのですが」
「任せてください。小丈夫ですよ」
これはもう、自信がないのが見え見えですから、こんな先生には頼みたくないですよね。
微笑亭さん太
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