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2022年05月08日16:57
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山登りはじめました＃288「北穂高岳に行ってきた3rd」その��
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■山行概要
◆【北アルプス】
北穂高岳(3106m)
◆2022/5/1(日)〜2022/5/5(木)、快晴⇒猛吹雪⇒ガス⇒快晴
気温−8℃(涸沢カール/深夜)〜21℃(横尾/正午)、湿度快適
風速10m/s(体感/吹雪の時)、全備重量19.0kg
◆日程は全後泊含む4泊5日だが、山自体は山小屋泊の2泊3日
累積標高差約2118m、歩行距離ピストンで約34.6km
ピークまでの往路所要時間13:40(コースタイム9:50)
ピークからの復路所要時間09:30(コースタイム6:10)
◆1日目【活動時間/8:30、行動時間/6:25】
5:00/沢渡駐車場着(ここで朝食・装備と天気のチェックを済ます)⇒
タクシーに分乗⇒5:50/上高地バスターミナル(標高1505m)着、ここで
登山届け提出＆うんこタイム⇒6:20/上高地を出発、登山開始⇒7:25/
明神(ここで7:40まで小休止)⇒8:35/徳沢(標高1562m/ここで9:05まで
中休憩)⇒梓川右岸の臨時の迂回路へ⇒10:05/横尾(標高1620m/ここで
ウェアリング調整のため10:55まで大休止)⇒11:20/岩小屋跡⇒12:05/
本谷橋(ここでアイゼン装着等のため12:35まで中休憩)⇒14:30/涸沢⇒
14:50/涸沢小屋(標高2350m)到着、チェックイン
◆写真はYAMAPへ↓
残雪の北穂高岳
https:/
2017年より毎年、GWの恒例行事となっている「残雪の北穂チャレンジ」、3年ぶりに登ってきました。それではいつもの前説からどうぞ。
【前説】
「残雪の北穂チャレンジ」、これはもう文字通り、残雪期の北穂高岳にチャレンジしよう！というイベントです。自分の記憶では2017年からスタートしたと思います。
・2017年/梅さんとOG原さんの2人、OG原さん初回でクリア！
・2018年/梅さん、OG原さん、HGさん、ONZKさん、自分、O野夫妻の7人で参加。上高地から吹雪で、涸沢に上がる途中で全員撤退。登頂成功者ゼロ。
・2019年/前年と同じ7人が参加するもピークアタックは梅さん、自分、O野さんの3人のみ。自分とO野さん、2回目でクリア！
・2020年/コロナ禍で緊急事態宣言発出！山小屋は全て休業、日本全国ステイホームとかで登山どころの話ではない！
・2021年/山行予定も直前に涸沢カールで大規模な雪崩が発生！デブリが涸沢ヒュッテの幕営場まで達するレベル。天候も悪く、安全優先のため中止。
・2022年/2019年のメンツに弟氏を加えた総勢8名で山行決行！←New！
といった感じですね。まあ、直近の北穂チャレンジの経緯は
コレ↓
◆山登りはじめました＃264「光城山＆長峰山に行ってきた」
https:/
と
コレ↓
◆山登りはじめました＃263「大菩薩嶺に行ってきた3rd」
https:/
の冒頭部分に記載しているので、ここでは詳細説明は省きます。
さて今回。まだクリアしていないHGさんとONZKさんが「今年こそは！」と意気込み、昨年雪山装備を一式揃えるも、使わないまま塩漬け1年経過の弟氏が「俺も登りたい！」と言い出し、当初はこの4人での山行を計画しておりました。とは言えね、この4人だと登頂経験者は自分一人しかいない。北穂沢の最下部(ゴルジュよりも下)で途中撤退したHGさん・涸沢カールまでのONZKさん・雪山初心者の弟氏の3人を連れて、1回しか登ったことがない自分がリーダーを務めるにはあまりにも荷が重すぎる。
って話を梅さんに相談したところ、「あ、今年もやるんだ。じゃあみんなで行きますか！」と同行を快諾。昨年、膝の故障で最初から欠席表明だったO野夫妻も参加することになり、メンバーはこの8人で確定。早速みんなで集まり、プランの打ち合わせを行う。
山行計画は基本、昨年中止にしたプランを踏襲することになり、山中3泊組と2泊組、小屋泊組とテント泊組の組み合わせに。当初の計画では以下の通りでした。
★梅さん・弟氏・O野夫妻・HGさんの5人
涸沢でテン泊⇒北穂登頂後、北穂高小屋泊⇒涸沢まで降りて再度テン泊(HGさんのみ全て小屋泊、涸沢ヒュッテ⇒北穂高小屋⇒涸沢小屋)。
★自分・ONZKさんの2人
一日遅れで涸沢に入り、北穂は泊まらずに涸沢からの日帰りピストン。2泊目の涸沢小屋で先発組のHGさんと合流する。
★OG原さん
自分・ONZKさんと上高地までは一緒に入り、そこから別行動。上には上がらずに上高地⇔横尾間でキャンプ2泊、最終日にみんなと合流して一緒に帰る。
ところが、例によって例の如く、天気予報がよろしくないのです。当初の日程では
・先発組は4/30(土)に上高地入り
・後発組は5/ 1(日)に上高地入り
だったのですが、5/1(日)の予報が頗る悪い。涸沢から上は気温マイナス16〜17℃、風速20m/s前後の強風と、とてもじゃないがアタックは無理。下界は雨予報で、後発組は上高地から横尾まで、雨の中を11kmも移動しないといけない。で、日程を後ろにずらそうにも、山小屋の予約変更が全くできない状況。5/2(月)は元々、連泊予定で涸沢小屋を押さえていたので問題無いが、5/3(火)の予約がどうにもならない。予約無しで突撃してもし、宿泊を断られたら手詰まりになるので、中々決断ができないまま時間が過ぎる。
そして4/27(水)の早朝、連日の大雨の影響で林道上高地公園線の一部が土砂崩れで通行止めになった、との衝撃的ニュースが！報道では上高地入りしている観光客やスタッフ数百名が取り残されて孤立、当日予定されていた「開山祭」も急遽、中止になったとのこと。
こりゃあ昨年と同様、山行自体が決行できるかすら怪しくなってきた。中止になる可能性を含みつつ、5/1(日)の予報が好転する可能性にかけ、予定通りの日程で実施する旨を関係者にアナウンス。
「土砂崩れはさあ、大丈夫だよ！長野県のドル箱観光資源よ？しかもGW！全力で復旧するよ、絶対に！」
と言っていた梅さんの話通り、復旧は急ピッチで進み、なんと2日後の4/29(金)には開通するとのニュースが！ただ、5/1(日)の天気は好転する見込みは無さそう・・・。
「5/3(火)なんだけどさ、北穂小屋の予約が取れたYO！最終日は山頂から上高地まで一気に降りるので相当厳しいと思うけど、晴天には代えられないから！日程後ろに倒しましょう！」
と梅さんよりアナウンスがあり、山行直前での日程変更発生。ところが
「いやー、もう日程確定って言うから5/4(水)に別の用事入れちゃいました！動かせないので自分らは予定通りの日程で動きます！」
とO野夫妻。2人とは5/2(月)の1日だけ、涸沢で会えるので残念だが今回は別行動とすることにしました。
【5/1(日)出発じゃ！】
さて、山行当日。自分の車(横浜組)は自分と弟氏・ONZKさんの3人。11時頃、横浜を出発。一路、塩尻の信州健康ランドへ。これね、一昨年の唐松岳登山と同じパターンです。今回装備は全備重量19.0kg。徹夜で運転して殆ど意味の無い短い仮眠の後、この重量の装備を背負って上高地から涸沢まで歩くのは嫌じゃ！やってやれなくはないけど、安全面からもできればやりたくない。そもそも北アルプス山行の際の全備重量の上限値は自分的には16.5kgがマックス。例外的に2018年の表銀座縦走の時は19.7kg背負って4日間歩いたけど、正直もう、それはやりたくない。
歳も歳だし、デブって自重も増えているので総重量は2018年の時よりむしろ2〜3kg重いんですもの。ってことで、この日は塩尻への移動だけ。健康ランドでノンビリ風呂やサウナ入って、飯食って軽く飲んだら休憩スペースでちゃんと仮眠。充分睡眠を取ってから、夜中に上高地へ移動する算段です。
GWの連休中なので渋滞を予想し午前中の出発としましたが、実はカレンダーでは3連休の最終日なのですよ(自分は今回、前後に休みを入れて10連休にしたのですが)。よって中央道の上りはもう、お昼過ぎなのに談合坂から高井戸まで長蛇の大渋滞！しかし下り車線はガラガラで渋滞皆無。SAやPAに何度も寄ったり、一つ前のインターで降りてお土産を物色したりして時間調整をするも、17時にはもう、健康ランドに到着してしまった。健康ランドもガラ空きで快適極まりないじぇ！
HGさんの車(川崎組)とは5/2(月)の早朝に沢渡の駐車場で待ち合わせなのですが、川崎組(HGさん・梅さん・OG原さん)も来れば良かったのに。渋滞で時間取られるのは嫌、ってことなんですが、予想通り、下りは渋滞なんて皆無でしたわYO！深夜に出発、徹夜で運転、重い雪山装備背負って涸沢まで登るのは絶対辛いっしょ？
【5/2(月)移動開始じゃ！】
日付が変わり5/2(月)深夜2時頃、再度風呂に入って山の服装に着替える。深夜料金が加算される午前3時前に健康ランドを出発。塩尻北ICから長野自動車道に乗って松本ICで降りる。途中のコンビニで朝ご飯と行動中の昼ご飯を調達し、沢渡駐車場には5時頃到着。予定通りだ。先に到着していた川崎組とも無事合流。朝食を済ませ、支度をしたらタクシー2台に分乗して上高地バスターミナルへ。
6時半前、前回よりも少し早い時間に登山開始です！河童橋から見上げる穂高の峰々は真っ白に冠雪している。前日は下界は雨でしたが、山間部では結構な降雪だったみたい。ただ、上高地は雪は降らなかったのかな？降雪の跡は全く残っていない。
まずは最初のマイルストーン、「明神」に到着。梓川の対岸、山頂が真っ白に冠雪した明神岳がお出迎え！真っ青な空、真っ白な山！もうこの光景だけでかなりテンションが上がってくる！続いて2つ目のマイルストーン、「徳沢」へ。実は徳沢から横尾にかけては今回、臨時のルートを歩くのだそう。何でも吊橋の「新村橋」を車輛が通れる橋に架け替える工事が進行中だそうで、いつもは梓川の左岸を歩くのだが、今回は臨時に作られた橋を渡り、右岸を歩いて行くみたい。ただどう見てもこれ、遠回りだよねえ。ま、いっか。
ここの区間、普段は梓川の右岸を歩くことなんてないので、かなり新鮮でした。河原から見上げる景色、冠雪した常念岳や赤岩岳などのピークがスカイラインに連なり、海外の山岳地帯をトレッキングをしているみたい！「エベレスト街道」ならぬ横尾「街道」って呼び名も、この光景を見たらあながち嘘ではないと思うのよ。後ろを振り返れば真っ青な梓川の清流、その背後に真っ白に冠雪した焼岳でしょ？素晴らしい眺望じゃあないですか！心が洗われるﾝｺﾞ。
それと普段、左岸を歩くと全く見えないんですが、今回右岸側で距離があるので、蝶ヶ岳から長塀山の稜線を見ることもできました。ちなみに工事とは関係なく、横尾手前の夏道は積雪のため通行止めでした。なので、梓川右岸からは横尾街道の冬道に途中から合流し、3つ目のマイルストーン「横尾」には冬道経由で到着です。
ここで少し長めの休憩を取り、ウェアリング調整。調整というか、レインウェア上下を着込む。想定積雪量からゲイターは装着しない。でもグローブはトレッキング用からレイングローブに交換する。本谷橋まではさほどではないと思うが、やはり涸沢までは雪の世界ですからね。全身防水仕様じゃないと転倒した時にびちゃびちゃになるし、そもそもレインパンツ履いていないと雪の上で座って休憩が出来ませんからね、ここは暑くても我慢です。
【ウッギャー！吹雪！吹雪じゃ！】
いやホント、マジで。死ぬかと思いました。
少し話を巻き戻します。上高地から横尾までは真っ青な空の下、快適なトレッキングでした。レインウェアを着ているのが暑いレベルの快晴です。まず、キャンプのOG原さんとは横尾で分かれて別行動に。OG原さん、この日は横尾でテントを張るそうです。次に涸沢でテン泊の梅さんと弟氏の2人、テントの設営があるので時間短縮のため先に横尾を出発。涸沢小屋泊の自分・HGさん・ONZKさんの3人は最後尾で後から横尾を出発。
予想通り本谷橋の区間までは残雪は殆ど無し。全く無いわけでは無いが、チェーンスパイクは不要。と思って重量軽減のために持ってこなかったんですが、大正解でした。なお本谷橋、事前情報の通り吊橋が架かっておりました。2019年の時は橋脚の頭まで雪の下だったのに・・・。少なくとも前回と比較すると積雪量は3〜5m少ない、ってこと。川も完全に露出しており最早、雪渓の面影すら残っていない。本谷橋から上は2018年の時と同様、完全に夏道歩きとなりそうだ。
さて、本谷橋で先行の2人と合流、自分らの到着と同時に梅さんと弟氏が出発するので、2人が陣取っていた岩の上の休憩スポットに滑り込む。なお、このタイミングでHGさんからまさかの撤退宣言が。
「いやー、何か靴が合わなくて猛烈に足が痛いのよ。今日は涸沢までは上がるけど、明日の北穂アタックはとても無理っすわ。明日は自分だけ先に独りで涸沢を降ります。梅さんには大変申し訳ないんだけど、北穂小屋の予約、自分の分はキャンセルして下さい！」
「了解だけど、降りてあと1日はどうするの？テン泊するなら、装備一式貸すよ？」
「いや、大丈夫です。横尾山荘にまだ空きが若干あるみたいなので、明日は横尾山荘に泊まりますよ。この調子だと多分、涸沢から横尾に降りるだけでも相当時間がかかりそうなので！」
「了解です。じゃあ自分らはテントの設営があるので、先に行くね！」
梅さんと弟氏を見送りつつ、カレーパンをモグモグしながらアイゼンを装着していると、雪がチラホラと舞ってきた。先行の2人を見送り、身支度をしていると今度は風が。まあ、自分は上下レインウェアだし、グローブもレイングローブだから大丈夫だべ。ピッケルは不要だがトレッキングポールは使うのでポールの石突カバーを外す。
休憩を切り上げ行動再開、自分を先頭にHGさん、ONZKさんの順番の一列縦隊で山腹を縫うように雪に着けられたトレースを登っていく。2018年に途中撤退したポイントを過ぎ、無積雪期であれば「落石注意！」「途中で立ち止まるな、危険！」の看板が立っている辺りくらいからだろうか？チラホラの雪はいつの間にか完全な吹雪になっていた。レインウェアのフードを被るも、風で直ぐに捲れてしまう。首回りから雪が侵入してくるので冷たい。アクスルコードを絞って顔周りにフードを密着させる。
Sガレに出たくらいか？吹雪が洒落にならないレベルに荒れてきた！てか、ホワイトアウト！前が全然見えない！この頃からHGさんが遅れ出す。最後尾のONZKさんは追い抜きはせず、HGさんの後方にピッタリと着いている。ホワイトアウトもそうだが、この強風、みるみるうちに先行者のトレースが消えて行くのだ！これは結構怖いぞ！
自分も相当な重量を背負っているので歩くのはかなり遅い。が、それ以上にHGさんの遅れが目立つ。追いつくのを待ってその度に大丈夫ですか？の声がけをする。返って来る返事は毎回、
「足が痛えよ！」
のみ。そして、寒い！寒いゾ〜！！
横尾では15〜16℃はあった気温が、HGさんが外付けしている温度計をチェックするとマイナス1℃(正確にはマイナス0.6℃でしたが)に！気温自体はまあ、さほどではないんですが、風がアカン！涸沢カールから吹き下ろしてくる強風はどう考えても体感で風速10m/sはある。つまり体感温度はマイナス11℃！強風はまあ、レインウェア上下にレイングローブをしているので風を通さないから大丈夫！じゃないんだよ、全然！だってシェルの下、保温材皆無だもん！レインジャケットの下は真夏用のペラッペラの長袖のみ。レイングローブの下も極薄のインナーグローブだけ。山の吹雪はスキー場で何度も経験しているので特段驚くことではないのだが、今回はとにかくこの服装がヨロシクない！
体幹部分は動いていれば辛うじて耐えられる寒さだが、手がヤバいよ手が！とにかく動かさないと！トレッキングポールを握りつつ、小まめに手をグーパーグーパーして意識的に動かす。ちょうど10年前、初めての富士山での体験を思い出す。時期は7月下旬の真夏だったが途中から大嵐に。速乾性のウェアがあだとなり、雨と風の気化熱でみるみる温度低下。グローブをしていたのに両手の指が紫色に変色して、危うく凍傷になるところだったのだよ。
目線を上げると顔に雪が吹き付ける。グラサンはしているけど、今回はゴーグルは持参しておらんのよ。雪が入り込むのを極力避けるため、どうしても下を向いて歩いてしまう。ただでさえトレースが消えていて危ないと言うのに。定期的に顔を上げてルートを確認、Sガレを通過して何度目か、ホワイトアウトの中にかすかに涸沢ヒュッテのシルエットが見えてきた。涸沢までは何度も歩いているので今更だが、この涸沢ヒュッテが見えてからが死ぬほど長いのだ。
黒い粒々が沢山、数珠繋ぎになっている。先行の登山者達だ。遠目だと全く動いている様に見えない。そりゃこの吹き下ろしで向かい風の吹雪だもん、サクサク登れるわけがない。それは自分達も同様、ゴールまではまだかなりの時間を見込まないといかん。このままの服装で行動継続して大丈夫だろうか？そればかり考えてしまう。防寒装備が無いならいざ知らず、ザックの中には色々入ってるんだよ。着替えは無理でももう1枚、レインウェアの下に着込みたい。ザックの雨蓋の下にはソフトシェルがあるのに！グローブはアルパイン用のグローブに交換するか、せめてインナーグローブを厚手の防寒仕様の物に交換したい！
風の動きを見ながら、ザックを降ろせる機会を伺って歩き続ける。風が止んだ！良し、今の内に！と思うも束の間、吹雪再開！うあー、こりゃあダメだ。レインウェアを脱いだ瞬間、非防水エリア全てに雪が付着して融ける。体温を奪う。ザックの中にも雪が入り込む。融ければ衣類を濡らす。ダメだ、これはこのまま頑張って小屋まで辿り着く以外の選択肢無しである。風速15m/sの強風の中、HGさんと二人で歩いた赤岳(八ヶ岳の)の稜線の記憶が蘇る。あの時は風だけだったけど、あまりの強風でザックを降ろせなかったんだよなあ。
いやー、厳しい〜！実に厳しいゾ！何が厳しいって休憩が全く出来ないんだよー！無雪期ならだいたい、Sガレの前後で必ず小休止を入れるんだけど、今回は休憩した途端に低体温症になってまうんでないか？せめて水分補給を、と思いハイドレーションのバイトバルブを咥えるが、水が出て来ない。うわー、凍ってる！凍ってるYO！ホースを摘まんだらカチコチになってる、マジかー！
後続の2人が追い付いたので、毎回の通り声掛けをする。
「HGさん、大丈夫ですか？」
「・・・」
下をうつむいたまま全く反応が無い。
「HGさん？」
覗き込むと、顔の筋肉が全く動いていない。受け答えに反応しないし、しゃべらないし、表情も変わらない！コレけっこう危険なんじゃね？
「私は大丈夫です、HGさんの後ろにピッタリ付いてサポートします！」
とONZKさん。
こりゃあ待った無しだ！小屋に辿り着くか凍死するかの二択じゃねえか？休憩して体力を回復、自分のペースで登りましょう！なんて生ぬるいこと言っていられる状況じゃねえ！一旦動きを停めたらもう二度と動けなくなるんじゃないか？全身防水仕様の自分ですらこの寒さ、ONZKさんもレインウェア上下を着こんでいるが、良く見たらHGさんだけ上はレインジャケット、下はゲイターだけやんけ！つまり腿の部分は山ズボンなんです。明るいカーキ色が水が染みて濃い色に変色している。
これも前述の富士山で経験済み。当時、腿が濡れた理由は自分がポンチョだったからなんですが、腿は表面積多いし太い血管が通っているので気化熱での体温低下は無視出来ないレベルですよ。自分の時は腿が濡れた後、毛細管効果で水がお腹の方まで染みてきてポンチョの下はズブ濡れ状態になったからねえ。とにかくHGさんを歩かせないと！呼びかけには全く反応しないが、少なくとも歩けない状態ではないので、とにかく登ってもらうしかない！
Climb or Die！ GUNG-HO！ GUNG-HO！ GUNG-HO！
それともう一つ。自分は本谷橋から12本爪のアイゼンを装着しているが、二人はチェーンスパイクなんですよ。もうね、少し歩くと雪団子が付いてしまい、ポールで団子を落とさないと歩けないので、更に進行が遅くなる。かと言ってこの天候じゃここでアイゼンに換装とか、とても無理だしなあ・・・。このカタツムリの様な速度で少しずつ、一歩ごとに深呼吸をしながら登って行くのはホント、富士山の山頂直下を彷彿とさせます。
テン場を見上げると涸沢ヒュッテ寄りの斜面の途中に先行の梅さんと弟氏を発見。スコップで雪のブロックを切り出して風除けの壁を作成している真っ最中だった。手を振ると向こうも気づいて、スコップを振り返す。無事到着したようで良かった。元気そうじゃねえか！先行者の列の大半はテント泊の様で、涸沢分岐に着くと殆どが左折してテン場の受付の方に向かって行く。自分ら涸沢小屋組はゴールまでまだもう少し、登らないといけない。
テン場の周辺はかなりの新雪だ。トレースも殆ど無く、踏み出すと足が膝下くらいまで雪に埋まってしまう。クソー、ゲイター装着してないんだよ、この調子だとレインパンツの膝下に雪が入ってしまうよ〜！HGさんとONZKさんが追い付くのを確認したら自分は一足先に涸沢小屋に向かうことにする。新雪の斜面をズボズボ歩いていると、
「あれ？なんかHGさんの声がする！」
との声が！
「ねえねえ、HGさんの声がするよ！」
と再び。
あ、O野さんの奥さんの声だ！テン場を振り返るがそれらしき人物は見当たらない。HGさんとONZKさんが二人で立ち止まっているので、自分も一旦テン場へ戻ることにした。合流するとトレース真横のテントのベンチレーターからO野さんの奥さんが顔を出していた。
「あー、俺氏さん！ヒドイ吹雪だよねえ、大丈夫だった？」
「今日は快晴予報だったのに、まさかここまで天候が急変するとは・・・」
「おー、俺氏さん！HGさんとONZKさんも！スゲー吹雪ですよ、大丈夫でした？」
ヒュッテの方からO野さんが歩いてきた。いつもの笑顔である。そういや2月の横手山の山頂で吹雪の中、「自分、面の皮厚いんで！」とか言って首から上はゴーグルのみだったいつぞやのスキーを思い出す。
「ところで3人だけ？梅さんたちは？」
「え？梅さんと弟氏なら先に到着してもう、ヒュッテの近くで設営作業中だよ、今」
「えー、二人用にここのテントの隣、場所キープしてたのに！」
「ありゃあ、そうなんですね」
「あー、じゃあ俺、ちょっと声掛けに行ってきますわ！俺氏さん達、また後でね！」
と、テントに戻って来たばかりのO野さんが再びヒュッテの方に引き返して行った。
O野さん奥さんの話だと、今日は快晴だったので二人で北穂にアタック。途中から雪がちらつき出し、下山してくるパーティーに同行のガイドさんから「天候が大荒れになるので急いで戻れ」とアドバイスを受けて、インゼル手前で引き返したところ、あっと言う間に吹雪に飲まれて今に至るとのこと。
「取り合えず早く小屋に行って温まった方が良いよ！うちら夫婦は後で小屋の方に顔出すから！」
「ですね、了解です。こっちもちょっとHGさんが危険なので。では後ほど！」
O野さん奥さんに挨拶をして、3人で涸沢小屋へ移動開始。モフモフで歩きにくい新雪の急斜面をえっちらおっちら登り、ようやっとのことで涸沢小屋に到着した。
その�△紡海�・・・。
■写真解説
�＿�晴の横尾街道を往く。梓川の清流、振り返れば冠雪した焼岳！青い空と白い雲！まるで海外の山をトレッキングしているみたいです。最高に気持ちｅ〜！
��完全に川が露出して、雪渓の「せ」の字も残っていない本谷橋。ここから先は完全に夏道歩き、確定です。そしてこの後すぐ、天候が急変して猛吹雪に！気温一気に氷点下まで下がる。涸沢までは地獄の道のりでした。
�Ｌ埒畧磴�ら一夜明けて快晴の涸沢カール！涸沢小屋のテラスからの眺望です。新雪は30cm程積もったみたい。これホントに雪？片栗粉じゃないの？あまりの景色に全然現実感が無いんですが。
◆【北アルプス】
北穂高岳(3106m)
◆2022/5/1(日)〜2022/5/5(木)、快晴⇒猛吹雪⇒ガス⇒快晴
気温−8℃(涸沢カール/深夜)〜21℃(横尾/正午)、湿度快適
風速10m/s(体感/吹雪の時)、全備重量19.0kg
◆日程は全後泊含む4泊5日だが、山自体は山小屋泊の2泊3日
累積標高差約2118m、歩行距離ピストンで約34.6km
ピークまでの往路所要時間13:40(コースタイム9:50)
ピークからの復路所要時間09:30(コースタイム6:10)
◆1日目【活動時間/8:30、行動時間/6:25】
5:00/沢渡駐車場着(ここで朝食・装備と天気のチェックを済ます)⇒
タクシーに分乗⇒5:50/上高地バスターミナル(標高1505m)着、ここで
登山届け提出＆うんこタイム⇒6:20/上高地を出発、登山開始⇒7:25/
明神(ここで7:40まで小休止)⇒8:35/徳沢(標高1562m/ここで9:05まで
中休憩)⇒梓川右岸の臨時の迂回路へ⇒10:05/横尾(標高1620m/ここで
ウェアリング調整のため10:55まで大休止)⇒11:20/岩小屋跡⇒12:05/
本谷橋(ここでアイゼン装着等のため12:35まで中休憩)⇒14:30/涸沢⇒
14:50/涸沢小屋(標高2350m)到着、チェックイン
◆写真はYAMAPへ↓
残雪の北穂高岳
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2017年より毎年、GWの恒例行事となっている「残雪の北穂チャレンジ」、3年ぶりに登ってきました。それではいつもの前説からどうぞ。
【前説】
「残雪の北穂チャレンジ」、これはもう文字通り、残雪期の北穂高岳にチャレンジしよう！というイベントです。自分の記憶では2017年からスタートしたと思います。
・2017年/梅さんとOG原さんの2人、OG原さん初回でクリア！
・2018年/梅さん、OG原さん、HGさん、ONZKさん、自分、O野夫妻の7人で参加。上高地から吹雪で、涸沢に上がる途中で全員撤退。登頂成功者ゼロ。
・2019年/前年と同じ7人が参加するもピークアタックは梅さん、自分、O野さんの3人のみ。自分とO野さん、2回目でクリア！
・2020年/コロナ禍で緊急事態宣言発出！山小屋は全て休業、日本全国ステイホームとかで登山どころの話ではない！
・2021年/山行予定も直前に涸沢カールで大規模な雪崩が発生！デブリが涸沢ヒュッテの幕営場まで達するレベル。天候も悪く、安全優先のため中止。
・2022年/2019年のメンツに弟氏を加えた総勢8名で山行決行！←New！
といった感じですね。まあ、直近の北穂チャレンジの経緯は
コレ↓
◆山登りはじめました＃264「光城山＆長峰山に行ってきた」
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と
コレ↓
◆山登りはじめました＃263「大菩薩嶺に行ってきた3rd」
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の冒頭部分に記載しているので、ここでは詳細説明は省きます。
さて今回。まだクリアしていないHGさんとONZKさんが「今年こそは！」と意気込み、昨年雪山装備を一式揃えるも、使わないまま塩漬け1年経過の弟氏が「俺も登りたい！」と言い出し、当初はこの4人での山行を計画しておりました。とは言えね、この4人だと登頂経験者は自分一人しかいない。北穂沢の最下部(ゴルジュよりも下)で途中撤退したHGさん・涸沢カールまでのONZKさん・雪山初心者の弟氏の3人を連れて、1回しか登ったことがない自分がリーダーを務めるにはあまりにも荷が重すぎる。
って話を梅さんに相談したところ、「あ、今年もやるんだ。じゃあみんなで行きますか！」と同行を快諾。昨年、膝の故障で最初から欠席表明だったO野夫妻も参加することになり、メンバーはこの8人で確定。早速みんなで集まり、プランの打ち合わせを行う。
山行計画は基本、昨年中止にしたプランを踏襲することになり、山中3泊組と2泊組、小屋泊組とテント泊組の組み合わせに。当初の計画では以下の通りでした。
★梅さん・弟氏・O野夫妻・HGさんの5人
涸沢でテン泊⇒北穂登頂後、北穂高小屋泊⇒涸沢まで降りて再度テン泊(HGさんのみ全て小屋泊、涸沢ヒュッテ⇒北穂高小屋⇒涸沢小屋)。
★自分・ONZKさんの2人
一日遅れで涸沢に入り、北穂は泊まらずに涸沢からの日帰りピストン。2泊目の涸沢小屋で先発組のHGさんと合流する。
★OG原さん
自分・ONZKさんと上高地までは一緒に入り、そこから別行動。上には上がらずに上高地⇔横尾間でキャンプ2泊、最終日にみんなと合流して一緒に帰る。
ところが、例によって例の如く、天気予報がよろしくないのです。当初の日程では
・先発組は4/30(土)に上高地入り
・後発組は5/ 1(日)に上高地入り
だったのですが、5/1(日)の予報が頗る悪い。涸沢から上は気温マイナス16〜17℃、風速20m/s前後の強風と、とてもじゃないがアタックは無理。下界は雨予報で、後発組は上高地から横尾まで、雨の中を11kmも移動しないといけない。で、日程を後ろにずらそうにも、山小屋の予約変更が全くできない状況。5/2(月)は元々、連泊予定で涸沢小屋を押さえていたので問題無いが、5/3(火)の予約がどうにもならない。予約無しで突撃してもし、宿泊を断られたら手詰まりになるので、中々決断ができないまま時間が過ぎる。
そして4/27(水)の早朝、連日の大雨の影響で林道上高地公園線の一部が土砂崩れで通行止めになった、との衝撃的ニュースが！報道では上高地入りしている観光客やスタッフ数百名が取り残されて孤立、当日予定されていた「開山祭」も急遽、中止になったとのこと。
こりゃあ昨年と同様、山行自体が決行できるかすら怪しくなってきた。中止になる可能性を含みつつ、5/1(日)の予報が好転する可能性にかけ、予定通りの日程で実施する旨を関係者にアナウンス。
「土砂崩れはさあ、大丈夫だよ！長野県のドル箱観光資源よ？しかもGW！全力で復旧するよ、絶対に！」
と言っていた梅さんの話通り、復旧は急ピッチで進み、なんと2日後の4/29(金)には開通するとのニュースが！ただ、5/1(日)の天気は好転する見込みは無さそう・・・。
「5/3(火)なんだけどさ、北穂小屋の予約が取れたYO！最終日は山頂から上高地まで一気に降りるので相当厳しいと思うけど、晴天には代えられないから！日程後ろに倒しましょう！」
と梅さんよりアナウンスがあり、山行直前での日程変更発生。ところが
「いやー、もう日程確定って言うから5/4(水)に別の用事入れちゃいました！動かせないので自分らは予定通りの日程で動きます！」
とO野夫妻。2人とは5/2(月)の1日だけ、涸沢で会えるので残念だが今回は別行動とすることにしました。
【5/1(日)出発じゃ！】
さて、山行当日。自分の車(横浜組)は自分と弟氏・ONZKさんの3人。11時頃、横浜を出発。一路、塩尻の信州健康ランドへ。これね、一昨年の唐松岳登山と同じパターンです。今回装備は全備重量19.0kg。徹夜で運転して殆ど意味の無い短い仮眠の後、この重量の装備を背負って上高地から涸沢まで歩くのは嫌じゃ！やってやれなくはないけど、安全面からもできればやりたくない。そもそも北アルプス山行の際の全備重量の上限値は自分的には16.5kgがマックス。例外的に2018年の表銀座縦走の時は19.7kg背負って4日間歩いたけど、正直もう、それはやりたくない。
歳も歳だし、デブって自重も増えているので総重量は2018年の時よりむしろ2〜3kg重いんですもの。ってことで、この日は塩尻への移動だけ。健康ランドでノンビリ風呂やサウナ入って、飯食って軽く飲んだら休憩スペースでちゃんと仮眠。充分睡眠を取ってから、夜中に上高地へ移動する算段です。
GWの連休中なので渋滞を予想し午前中の出発としましたが、実はカレンダーでは3連休の最終日なのですよ(自分は今回、前後に休みを入れて10連休にしたのですが)。よって中央道の上りはもう、お昼過ぎなのに談合坂から高井戸まで長蛇の大渋滞！しかし下り車線はガラガラで渋滞皆無。SAやPAに何度も寄ったり、一つ前のインターで降りてお土産を物色したりして時間調整をするも、17時にはもう、健康ランドに到着してしまった。健康ランドもガラ空きで快適極まりないじぇ！
HGさんの車(川崎組)とは5/2(月)の早朝に沢渡の駐車場で待ち合わせなのですが、川崎組(HGさん・梅さん・OG原さん)も来れば良かったのに。渋滞で時間取られるのは嫌、ってことなんですが、予想通り、下りは渋滞なんて皆無でしたわYO！深夜に出発、徹夜で運転、重い雪山装備背負って涸沢まで登るのは絶対辛いっしょ？
【5/2(月)移動開始じゃ！】
日付が変わり5/2(月)深夜2時頃、再度風呂に入って山の服装に着替える。深夜料金が加算される午前3時前に健康ランドを出発。塩尻北ICから長野自動車道に乗って松本ICで降りる。途中のコンビニで朝ご飯と行動中の昼ご飯を調達し、沢渡駐車場には5時頃到着。予定通りだ。先に到着していた川崎組とも無事合流。朝食を済ませ、支度をしたらタクシー2台に分乗して上高地バスターミナルへ。
6時半前、前回よりも少し早い時間に登山開始です！河童橋から見上げる穂高の峰々は真っ白に冠雪している。前日は下界は雨でしたが、山間部では結構な降雪だったみたい。ただ、上高地は雪は降らなかったのかな？降雪の跡は全く残っていない。
まずは最初のマイルストーン、「明神」に到着。梓川の対岸、山頂が真っ白に冠雪した明神岳がお出迎え！真っ青な空、真っ白な山！もうこの光景だけでかなりテンションが上がってくる！続いて2つ目のマイルストーン、「徳沢」へ。実は徳沢から横尾にかけては今回、臨時のルートを歩くのだそう。何でも吊橋の「新村橋」を車輛が通れる橋に架け替える工事が進行中だそうで、いつもは梓川の左岸を歩くのだが、今回は臨時に作られた橋を渡り、右岸を歩いて行くみたい。ただどう見てもこれ、遠回りだよねえ。ま、いっか。
ここの区間、普段は梓川の右岸を歩くことなんてないので、かなり新鮮でした。河原から見上げる景色、冠雪した常念岳や赤岩岳などのピークがスカイラインに連なり、海外の山岳地帯をトレッキングをしているみたい！「エベレスト街道」ならぬ横尾「街道」って呼び名も、この光景を見たらあながち嘘ではないと思うのよ。後ろを振り返れば真っ青な梓川の清流、その背後に真っ白に冠雪した焼岳でしょ？素晴らしい眺望じゃあないですか！心が洗われるﾝｺﾞ。
それと普段、左岸を歩くと全く見えないんですが、今回右岸側で距離があるので、蝶ヶ岳から長塀山の稜線を見ることもできました。ちなみに工事とは関係なく、横尾手前の夏道は積雪のため通行止めでした。なので、梓川右岸からは横尾街道の冬道に途中から合流し、3つ目のマイルストーン「横尾」には冬道経由で到着です。
ここで少し長めの休憩を取り、ウェアリング調整。調整というか、レインウェア上下を着込む。想定積雪量からゲイターは装着しない。でもグローブはトレッキング用からレイングローブに交換する。本谷橋まではさほどではないと思うが、やはり涸沢までは雪の世界ですからね。全身防水仕様じゃないと転倒した時にびちゃびちゃになるし、そもそもレインパンツ履いていないと雪の上で座って休憩が出来ませんからね、ここは暑くても我慢です。
【ウッギャー！吹雪！吹雪じゃ！】
いやホント、マジで。死ぬかと思いました。
少し話を巻き戻します。上高地から横尾までは真っ青な空の下、快適なトレッキングでした。レインウェアを着ているのが暑いレベルの快晴です。まず、キャンプのOG原さんとは横尾で分かれて別行動に。OG原さん、この日は横尾でテントを張るそうです。次に涸沢でテン泊の梅さんと弟氏の2人、テントの設営があるので時間短縮のため先に横尾を出発。涸沢小屋泊の自分・HGさん・ONZKさんの3人は最後尾で後から横尾を出発。
予想通り本谷橋の区間までは残雪は殆ど無し。全く無いわけでは無いが、チェーンスパイクは不要。と思って重量軽減のために持ってこなかったんですが、大正解でした。なお本谷橋、事前情報の通り吊橋が架かっておりました。2019年の時は橋脚の頭まで雪の下だったのに・・・。少なくとも前回と比較すると積雪量は3〜5m少ない、ってこと。川も完全に露出しており最早、雪渓の面影すら残っていない。本谷橋から上は2018年の時と同様、完全に夏道歩きとなりそうだ。
さて、本谷橋で先行の2人と合流、自分らの到着と同時に梅さんと弟氏が出発するので、2人が陣取っていた岩の上の休憩スポットに滑り込む。なお、このタイミングでHGさんからまさかの撤退宣言が。
「いやー、何か靴が合わなくて猛烈に足が痛いのよ。今日は涸沢までは上がるけど、明日の北穂アタックはとても無理っすわ。明日は自分だけ先に独りで涸沢を降ります。梅さんには大変申し訳ないんだけど、北穂小屋の予約、自分の分はキャンセルして下さい！」
「了解だけど、降りてあと1日はどうするの？テン泊するなら、装備一式貸すよ？」
「いや、大丈夫です。横尾山荘にまだ空きが若干あるみたいなので、明日は横尾山荘に泊まりますよ。この調子だと多分、涸沢から横尾に降りるだけでも相当時間がかかりそうなので！」
「了解です。じゃあ自分らはテントの設営があるので、先に行くね！」
梅さんと弟氏を見送りつつ、カレーパンをモグモグしながらアイゼンを装着していると、雪がチラホラと舞ってきた。先行の2人を見送り、身支度をしていると今度は風が。まあ、自分は上下レインウェアだし、グローブもレイングローブだから大丈夫だべ。ピッケルは不要だがトレッキングポールは使うのでポールの石突カバーを外す。
休憩を切り上げ行動再開、自分を先頭にHGさん、ONZKさんの順番の一列縦隊で山腹を縫うように雪に着けられたトレースを登っていく。2018年に途中撤退したポイントを過ぎ、無積雪期であれば「落石注意！」「途中で立ち止まるな、危険！」の看板が立っている辺りくらいからだろうか？チラホラの雪はいつの間にか完全な吹雪になっていた。レインウェアのフードを被るも、風で直ぐに捲れてしまう。首回りから雪が侵入してくるので冷たい。アクスルコードを絞って顔周りにフードを密着させる。
Sガレに出たくらいか？吹雪が洒落にならないレベルに荒れてきた！てか、ホワイトアウト！前が全然見えない！この頃からHGさんが遅れ出す。最後尾のONZKさんは追い抜きはせず、HGさんの後方にピッタリと着いている。ホワイトアウトもそうだが、この強風、みるみるうちに先行者のトレースが消えて行くのだ！これは結構怖いぞ！
自分も相当な重量を背負っているので歩くのはかなり遅い。が、それ以上にHGさんの遅れが目立つ。追いつくのを待ってその度に大丈夫ですか？の声がけをする。返って来る返事は毎回、
「足が痛えよ！」
のみ。そして、寒い！寒いゾ〜！！
横尾では15〜16℃はあった気温が、HGさんが外付けしている温度計をチェックするとマイナス1℃(正確にはマイナス0.6℃でしたが)に！気温自体はまあ、さほどではないんですが、風がアカン！涸沢カールから吹き下ろしてくる強風はどう考えても体感で風速10m/sはある。つまり体感温度はマイナス11℃！強風はまあ、レインウェア上下にレイングローブをしているので風を通さないから大丈夫！じゃないんだよ、全然！だってシェルの下、保温材皆無だもん！レインジャケットの下は真夏用のペラッペラの長袖のみ。レイングローブの下も極薄のインナーグローブだけ。山の吹雪はスキー場で何度も経験しているので特段驚くことではないのだが、今回はとにかくこの服装がヨロシクない！
体幹部分は動いていれば辛うじて耐えられる寒さだが、手がヤバいよ手が！とにかく動かさないと！トレッキングポールを握りつつ、小まめに手をグーパーグーパーして意識的に動かす。ちょうど10年前、初めての富士山での体験を思い出す。時期は7月下旬の真夏だったが途中から大嵐に。速乾性のウェアがあだとなり、雨と風の気化熱でみるみる温度低下。グローブをしていたのに両手の指が紫色に変色して、危うく凍傷になるところだったのだよ。
目線を上げると顔に雪が吹き付ける。グラサンはしているけど、今回はゴーグルは持参しておらんのよ。雪が入り込むのを極力避けるため、どうしても下を向いて歩いてしまう。ただでさえトレースが消えていて危ないと言うのに。定期的に顔を上げてルートを確認、Sガレを通過して何度目か、ホワイトアウトの中にかすかに涸沢ヒュッテのシルエットが見えてきた。涸沢までは何度も歩いているので今更だが、この涸沢ヒュッテが見えてからが死ぬほど長いのだ。
黒い粒々が沢山、数珠繋ぎになっている。先行の登山者達だ。遠目だと全く動いている様に見えない。そりゃこの吹き下ろしで向かい風の吹雪だもん、サクサク登れるわけがない。それは自分達も同様、ゴールまではまだかなりの時間を見込まないといかん。このままの服装で行動継続して大丈夫だろうか？そればかり考えてしまう。防寒装備が無いならいざ知らず、ザックの中には色々入ってるんだよ。着替えは無理でももう1枚、レインウェアの下に着込みたい。ザックの雨蓋の下にはソフトシェルがあるのに！グローブはアルパイン用のグローブに交換するか、せめてインナーグローブを厚手の防寒仕様の物に交換したい！
風の動きを見ながら、ザックを降ろせる機会を伺って歩き続ける。風が止んだ！良し、今の内に！と思うも束の間、吹雪再開！うあー、こりゃあダメだ。レインウェアを脱いだ瞬間、非防水エリア全てに雪が付着して融ける。体温を奪う。ザックの中にも雪が入り込む。融ければ衣類を濡らす。ダメだ、これはこのまま頑張って小屋まで辿り着く以外の選択肢無しである。風速15m/sの強風の中、HGさんと二人で歩いた赤岳(八ヶ岳の)の稜線の記憶が蘇る。あの時は風だけだったけど、あまりの強風でザックを降ろせなかったんだよなあ。
いやー、厳しい〜！実に厳しいゾ！何が厳しいって休憩が全く出来ないんだよー！無雪期ならだいたい、Sガレの前後で必ず小休止を入れるんだけど、今回は休憩した途端に低体温症になってまうんでないか？せめて水分補給を、と思いハイドレーションのバイトバルブを咥えるが、水が出て来ない。うわー、凍ってる！凍ってるYO！ホースを摘まんだらカチコチになってる、マジかー！
後続の2人が追い付いたので、毎回の通り声掛けをする。
「HGさん、大丈夫ですか？」
「・・・」
下をうつむいたまま全く反応が無い。
「HGさん？」
覗き込むと、顔の筋肉が全く動いていない。受け答えに反応しないし、しゃべらないし、表情も変わらない！コレけっこう危険なんじゃね？
「私は大丈夫です、HGさんの後ろにピッタリ付いてサポートします！」
とONZKさん。
こりゃあ待った無しだ！小屋に辿り着くか凍死するかの二択じゃねえか？休憩して体力を回復、自分のペースで登りましょう！なんて生ぬるいこと言っていられる状況じゃねえ！一旦動きを停めたらもう二度と動けなくなるんじゃないか？全身防水仕様の自分ですらこの寒さ、ONZKさんもレインウェア上下を着こんでいるが、良く見たらHGさんだけ上はレインジャケット、下はゲイターだけやんけ！つまり腿の部分は山ズボンなんです。明るいカーキ色が水が染みて濃い色に変色している。
これも前述の富士山で経験済み。当時、腿が濡れた理由は自分がポンチョだったからなんですが、腿は表面積多いし太い血管が通っているので気化熱での体温低下は無視出来ないレベルですよ。自分の時は腿が濡れた後、毛細管効果で水がお腹の方まで染みてきてポンチョの下はズブ濡れ状態になったからねえ。とにかくHGさんを歩かせないと！呼びかけには全く反応しないが、少なくとも歩けない状態ではないので、とにかく登ってもらうしかない！
Climb or Die！ GUNG-HO！ GUNG-HO！ GUNG-HO！
それともう一つ。自分は本谷橋から12本爪のアイゼンを装着しているが、二人はチェーンスパイクなんですよ。もうね、少し歩くと雪団子が付いてしまい、ポールで団子を落とさないと歩けないので、更に進行が遅くなる。かと言ってこの天候じゃここでアイゼンに換装とか、とても無理だしなあ・・・。このカタツムリの様な速度で少しずつ、一歩ごとに深呼吸をしながら登って行くのはホント、富士山の山頂直下を彷彿とさせます。
テン場を見上げると涸沢ヒュッテ寄りの斜面の途中に先行の梅さんと弟氏を発見。スコップで雪のブロックを切り出して風除けの壁を作成している真っ最中だった。手を振ると向こうも気づいて、スコップを振り返す。無事到着したようで良かった。元気そうじゃねえか！先行者の列の大半はテント泊の様で、涸沢分岐に着くと殆どが左折してテン場の受付の方に向かって行く。自分ら涸沢小屋組はゴールまでまだもう少し、登らないといけない。
テン場の周辺はかなりの新雪だ。トレースも殆ど無く、踏み出すと足が膝下くらいまで雪に埋まってしまう。クソー、ゲイター装着してないんだよ、この調子だとレインパンツの膝下に雪が入ってしまうよ〜！HGさんとONZKさんが追い付くのを確認したら自分は一足先に涸沢小屋に向かうことにする。新雪の斜面をズボズボ歩いていると、
「あれ？なんかHGさんの声がする！」
との声が！
「ねえねえ、HGさんの声がするよ！」
と再び。
あ、O野さんの奥さんの声だ！テン場を振り返るがそれらしき人物は見当たらない。HGさんとONZKさんが二人で立ち止まっているので、自分も一旦テン場へ戻ることにした。合流するとトレース真横のテントのベンチレーターからO野さんの奥さんが顔を出していた。
「あー、俺氏さん！ヒドイ吹雪だよねえ、大丈夫だった？」
「今日は快晴予報だったのに、まさかここまで天候が急変するとは・・・」
「おー、俺氏さん！HGさんとONZKさんも！スゲー吹雪ですよ、大丈夫でした？」
ヒュッテの方からO野さんが歩いてきた。いつもの笑顔である。そういや2月の横手山の山頂で吹雪の中、「自分、面の皮厚いんで！」とか言って首から上はゴーグルのみだったいつぞやのスキーを思い出す。
「ところで3人だけ？梅さんたちは？」
「え？梅さんと弟氏なら先に到着してもう、ヒュッテの近くで設営作業中だよ、今」
「えー、二人用にここのテントの隣、場所キープしてたのに！」
「ありゃあ、そうなんですね」
「あー、じゃあ俺、ちょっと声掛けに行ってきますわ！俺氏さん達、また後でね！」
と、テントに戻って来たばかりのO野さんが再びヒュッテの方に引き返して行った。
O野さん奥さんの話だと、今日は快晴だったので二人で北穂にアタック。途中から雪がちらつき出し、下山してくるパーティーに同行のガイドさんから「天候が大荒れになるので急いで戻れ」とアドバイスを受けて、インゼル手前で引き返したところ、あっと言う間に吹雪に飲まれて今に至るとのこと。
「取り合えず早く小屋に行って温まった方が良いよ！うちら夫婦は後で小屋の方に顔出すから！」
「ですね、了解です。こっちもちょっとHGさんが危険なので。では後ほど！」
O野さん奥さんに挨拶をして、3人で涸沢小屋へ移動開始。モフモフで歩きにくい新雪の急斜面をえっちらおっちら登り、ようやっとのことで涸沢小屋に到着した。
その�△紡海�・・・。
■写真解説
�＿�晴の横尾街道を往く。梓川の清流、振り返れば冠雪した焼岳！青い空と白い雲！まるで海外の山をトレッキングしているみたいです。最高に気持ちｅ〜！
��完全に川が露出して、雪渓の「せ」の字も残っていない本谷橋。ここから先は完全に夏道歩き、確定です。そしてこの後すぐ、天候が急変して猛吹雪に！気温一気に氷点下まで下がる。涸沢までは地獄の道のりでした。
�Ｌ埒畧磴�ら一夜明けて快晴の涸沢カール！涸沢小屋のテラスからの眺望です。新雪は30cm程積もったみたい。これホントに雪？片栗粉じゃないの？あまりの景色に全然現実感が無いんですが。
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