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2022年05月01日14:43

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「戦争は女の顔をしていない」その8

「お人形とライフル」の章

大尉(軍医
「いやいやとんでもない戦争だったよ。私たち女の目で見ると、これ以上ないってほど
恐ろしいものだった。だから私たちには訊かないことにしているんだね。」
「人々が泣いたり叫んだり、戦争、という言葉が聞こえたけれど
「まさか!明日は大学の試験よ、戦争なんてあるはずないわ」と思った。
でも1週間後には空襲が始まって、私たちは負傷者に救出にあたってた。」
「歩きながら眠れるなんて考えたこともなかった。
隊列を組んでいるのに前の人にぶつかって、はっと目覚めてまた前に進む。
ある時暗闇で、横にずれていってしまったことがあった。
野原へ出てしまって、溝に落ちたので目が覚めたの。駆け足でやっと追いついた。」
「何昼夜もぶっ続けで手術台についていたとき、立っているんだけど
腕は勝手に垂れてしまう。手術中の患者に頭をぶつけてしまうこともあった。
眠くて眠くて、目も疲れすぎて閉じられなくなってしまった。」
「胸がえぐれて心臓が見える。その人は死んでいくところ。
最後の包帯交換をしたら「ありがとう、看護婦さん」って手を差し出す。
小さい金属製のもの、銃とサーベルが交差しているお守り。
「どうして私に?」
「母さんがこれがお前を守ってくれると言ったけど、もう不要だ。」
「君はもっと幸運かもしれない」そう言って壁のほうを向いてしまった。」
「看護婦さん、脚が痛くなってきた、と呼びかける人がいる。もう脚はないのに。」
「負傷者が運ばれてくる。頭の負傷、包帯で全身ぐるぐる巻き。
でもその人は、私を見て何かを思い出したみたいだった。たぶん恋人なんでしょう。
「来てくれたんだね、来てくれたんだ」私は手を取ってあげる。
「来てくれるってわかってた。戦争に行くとき、君にキスする暇がなかった」
身をかがめてキスしてあげる。片方の目から涙がこぼれて包帯の中にゆっくり流れて、
その人は死んだの。」
「戦争のはじめの数年は武器が足りなかった。
ドイツ軍には戦車も迫撃砲も飛行機もあったのに。
仲間が倒れると武器を拾い集めた。その武器を使うの。
殴り合いのけんかに行くように、素手で直接戦車にとびかかる。」
「ドイツ軍は従軍していたソ連の女たちを捕虜にしなかった。
ただちに銃殺、だから私たちはいつも二つの弾を残した。不発だと困るから。
仲間の看護婦が捕虜になって、翌日私たちがその村を解放したとき、
仲間は目をくりぬかれ、胸を切り取られて杭に突き刺してあった。
19歳だったのに髪は真っ白、背嚢の中には家からの手紙と緑色の鳥のおもちゃ。」
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