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2020年12月04日17:22

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奇想の国の麗人たち

弥生美術館で開催中の“奇想の国の麗人たち”に行きました。
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公式HP↓
http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/

コロナ対策の為、HPから予約して、予約確認メールを受付で見せるというシステムなのですが、受付に行ったら「名前で確認取れました。」と言われ、確認メールを見せないで大丈夫だったという(^_^;)。

今回は日本の伝承文学を絵と解説で見せましょうという企画。何でも鳥や狐が人に化け、人と結婚するという話は日本人特有で海外ではあまり見かけないらしい。そして、同性愛文学も、日本では古来からあるモノだけど、キリスト教で同性愛は罪となってる欧米では、これまた「ありえない」コトでもあると。

まずは、異類結婚譚。人と人に化けた動物が結婚する日本ではよくあるお話ね。西洋では、元々人だったのが、魔法で動物になるパターンが多い。日本は、動物が人間化けるという逆パターンですね。日本では嫁は正体が知れると立ち去り、婿は殺されたりするが、西洋では魔法が解けて人に戻り結婚するパターンが多いと。蛙になった王子様とか、そのパターンよな。

狐の嫁入柄の着物と玉藻前柄の着物があった。狐の嫁入り柄の着物。ズラ〜っと狐の大行列!輿に乗ってるのがお嫁さんかな?

玉藻前。実は九尾の狐が化けたもの。九尾は玉藻前に化け、鳥羽上皇を虜にし、保元の乱を引き起こす。モデルは鳥羽上皇に寵愛された美門院藤原得子だそうな。そうなの?!それは知らなかった。大河の清盛では、松雪泰子さんが演じてたよね?
私が好きな橘小夢の妖しげな玉藻前の絵。御簾から首を出し、ニヤリと笑む。
九尾の狐バージョンの絵もあった。こちらは桜の屏風の前で足を舐める。これは線画だった。小夢さんのカケアミが凄いんだ!(笑)

舌切り雀柄の着物もあった。雀…というか鳥人間だが…とおじいさんが連れだって雀のお宿へ行く姿。

次は蛇。蛇とくればまず思い浮かべる“安珍と清姫”。美形の坊さん安珍を好きになって口説く清姫。安珍は「じゃあ、帰りに寄ります。」と約束するのに、その約束を破る。怒った清姫は安珍を追いかけ結果蛇と化す…。
小夢さんの清姫は、鐘の中に入り蛇体を僧に巻き付けてていた。本来は逃げ込んだ鐘に蛇体を巻き付けるのだが、これはより積極的。様式化した炎や桜の花びら。モノクロの描線画だが、点描の凄さよ!

加藤美紀さんの清姫の絵は、顔は怒っているものの、凛とした佇まいで、姫としての高貴さを失ってない感じがした。

雨月物語。あ〜!“蛇性の淫”か!!あれも蛇だもんな。上田秋成が書いた怪奇幻想小説。耽美寄りだから、耽美屋さんは好きな人多し(当然、私も好き)。
真女児という超絶美女の正体は実は老いた大蛇。豊雄はそうとは知らずに好きになってしまうが…。
小夢さんの描く美女真女児は、うっそりと微笑むも、何処か妖し気。これは掛軸になっていた。
高畠華宵の真女児(本の挿絵)は、華宵が描く正統派美少女の姿だった。

次は人魚。日本は本来人魚というと人面魚だった。西洋は反対に下半身が魚で上半身は美女の姿でロマンチック系。でも日本も江戸後期になると、美女人魚に変わって行ったらしい(西洋文化が入って来たからかな?)

八百比丘尼の伝説。山岸涼子さんの漫画の表紙絵があった。美女比丘尼だった。因みにこんな話。ある漁師がとある島に流れ着いた。実はそこは蓬莱島。そこで料理をふるまわれるも、漁師は不安に思い、食べずに料理に出された肉を持ち帰った。その漁師の娘がそれを食べてしまう。実はそれは人魚の肉。18歳の娘は18歳のまま年を取らず800年生きたという。福井県小浜市の空印寺には比丘尼入定の洞窟があるのだそうな。パネルで紹介されていた。寺にはその物語が描かれた軸もある(パネル展示であった)。人魚を料理する場面も描かれていた。人魚は人面魚バージョン。

アマビエさまもいたケド…あ、そうか、これも一応人魚だね。
小夢さんの『水妖』は、蛇体を体に巻き付けもがくような仕草で上を向く、大変官能的な人魚だった。この絵、“賭ケグルイ”に使ってなかった?

そういう神秘的な人魚譚が多い中あった、山東京伝の“箱入り娘面屋人魚”。スゲエばかばかしい人魚話。乙姫の男妾の浦島は、魚と浮気して子供を作る(どうやってセックスしたの?(^_^;))。生まれたのは女の人魚。浦島は子を捨てるも、その女人魚は漁師の平次に助けられる。平次が貧しかったので、人魚は花魁になって稼ごうとする。名前は“魚人”。でも、「生臭い」と客には不人気。客はつかず。しかし、人魚を舐めると長生き出来るという噂が出て、平次は妻を人に舐めさせる商売を始める(何だそれ!・苦笑)。平次も妻を舐めまくっていたので、舐めすぎで子供の姿になってしまう。そこに浦島が現れ玉手箱の煙で丁度いい年齢に戻って、めでたしめでたし。(何だ、この話!(^_^;))
挿絵も入ってて、挿絵も軽〜く描いてるザックリ絵で、ばかばかしさに拍車をかける。

谷崎潤一郎『人魚の嘆き』。私が大好きな小説。美麗な挿絵は水島爾保布。この挿絵の一つは、フォトスポットになっていた。
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これね。頽廃と耽美とが一体になった絵。物語は人魚の美に溺れ身を滅ぼす貴公子の物語で、谷崎の耽美派らしい小説。

次は“霊魂”。日本には御霊信仰がある。政治的失脚者が怨霊になったりする。菅原道真や、崇徳天皇等だな。平安中期には物の怪が。一定の相手に憑依する。源氏物語の葵上における六条御息所みたいなものか。

御正伸の描いた六条御息所。身をよじり苦しむ葵上を、上から見下ろし微笑んでいる。この絵はポスター絵に使っていた。
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これね。御息所は蛇の鱗柄の着物を着てる。
同じく、御正伸の平家の怨霊の絵。『残霊』だったかな?無数の無念の顔が船上の武士たちに襲いかかる。薙刀を持っているのは弁慶だろうか?僧兵っぽい恰好。

伊藤彦造の“耳なし芳一”の挿絵。琵琶を弾く芳一の姿。カケアミが細かく美麗。芳一は白目でちょっと怖い。芳一の周りにふわふわ飛ぶのが、おそらく平家の霊。人魂かも。

牡丹燈籠。有名な怪談話。実は中国の話で、これを怪談の名手円朝が日本の話にアレンジ。小夢の牡丹燈籠の絵。蚊帳の中を覗くお露の女中のお米が美しくも怖い。お露からの手紙を広げ、ひれ伏して泣くお露の恋人新三郎。結果、新三郎は、お露に憑り殺される方を選んでしまう…。

次が両性具有の神々。おそらく私の得意分野なんだが。一応学問として習ってるし(まあ、でも忘れているよな…)。
神、異性装、芸能は互いに深く関わっている。白拍子や歌舞伎もそう。熊襲を女装して討取る日本武尊。美女に化け酔わせて殺す。古事記に“戯れまさぐる”って書いてあるのよ。戯れてまさぐったのに、どうして熊襲は日本武尊が男だって気が付かなかったのか?「もう、この際、男でもいいや〜」という心情だったのか?
異性の装束を身につけると超人的パワーが出ると考えられてもいたみたい。男装して戦った神功皇后等もそうだと。

源義経。牛若丸は女装して弁慶と戦う。あれは白拍子の恰好っぽいよね。
伊藤彦造の水彩画の義経がとても美麗だった。扇を持っている姿。

鬼。今まさに、鬼退治の漫画が大ヒット中ですが。
まずは、大江山の鬼。酒呑童子よね。昼間は童子の姿で夜になると鬼の姿になる。
戸隠山の鬼女伝説。鬼女紅葉。平維盛が退治する話だ。錦絵にも良く出て来る。
石田年英の鬼女紅葉。紅葉の下の美女。実はこの美女は鬼女。盃をじっと見つめる維盛。これって、月岡芳年の絵を参考にしたのだと思う。同じようなポーズの絵があるの。

佐賀の化猫もあった。小夢さんのペン画の化猫は、ギロリと睨む猫人間だった。

今昔物語。「今となっては昔のことだが…」で始まる平安時代の短編集。作者は源隆国と言われるも、良く分かっていない。大正期には芥川龍之介がリメイクして小説を書き、谷崎や太宰もインスパイアされて小説を書いてる。改めて思うのは「今昔物語、変な話多いよね!」である。
田代光氏の挿絵と一緒に観る今昔物語。
“股間の物が失せること”。ある男が女の元に夜這いに行ったらチンコがなくなった。この男は、他の男にも夜這いに行かせるが、全員変な顔してるので、おそらくチンコがなくなってる。後に女の召使が包みを持って来て、開けたら中に紛失したチンコが入ってた。…なんだ、この話!(笑)てか、その後、チンコは無事にくっついたのか?それが気になる。絵は寝てる女に這いよる裸の男。

狐が嫁に化けるが、狐は臭い小便をするのでバレ、逃げる話。

“藪の中”。盗賊に襲われた夫婦。男は縛り上げられ妻は藪の中で襲われた。これを元に芥川は『藪の中』という小説を書く。刑事が話しを聞くも、証言がどうも食い違ってしまう…。ここから迷宮入りの事件のことを「事件は藪の中だな」というようになったそうな。へえ〜。絵は、盗賊が女を羽交い絞めにし、竹藪の中に連れ込もうとしている姿。

“蕪と交わって子ができる話”。道を歩いていた男。やおら情欲が出て来て蕪で情欲を満たした(どうやって?(^_^;))。男はその蕪を捨てるが、その蕪を拾って食べた娘が妊娠(すげえ〜!)。娘は子供を産む。後に男がここをもう1度通った際、その子供が自分の子だと分かり、蕪を食べた娘と結婚する。絵は蕪の中に赤ちゃんがいる絵。凄いファンタジー小説。

“何者ともしれぬ女盗賊の話”。ある女に誘われ一緒に暮らす男。その男はそのままいつくも、女は男を鞭で打ち、その後優しく手当をするようになる。男は女に命じられ屋敷を襲うも、その盗賊の頭は小柄で美しく、何処となく自分と一緒に暮らしてる女…妻と似ているような…。ある日その女は突然「お別れしなくてはなりません。」と言い、姿を消してしまう。彼女は人外の類なのか?これが1番不思議な話だった。オチが不条理で何か怖いし。絵は、白拍子姿の女が裸の男を鞭で打つ姿。

高畠華宵の『美少年美少女風俗絵巻』もあった。久々に観たぞ。槍を持つ縄文時代の美少年。奈良時代はミズラの美少年と少女。貴公子が2人話している平安時代。鎌倉時代は、白拍子の少女や槍を肩にかけ休む少年の姿。室町になると、おそらく小姓の少年がお酒を運んでいる。安土桃山時代は三味線を弾く美少女と、それを聴く少年。煙管(かな?)を持って流し目して鏡を見る美少年の姿も。江戸期は、若い美形の侍と男の姿。
色んな衣装の美少年・美少女を楽しみましょう!という意図なんだと思う。

“南総里見八犬伝”。曲亭馬琴の名著。今でも漫画になったりゲームになったり。伊藤彦造の八犬伝の絵が美麗で良かった。八房という犬に「大将の首を取ってきたら、伏姫をおまえの嫁にやる。」と言うと、八房は本当に大将の首を取って来る。褒美に餌をやるもそれでは納得せず、八房は姫を連れて行く…。彦造の絵。犬の背に乗る姫の姿。姫は少し悲しげだ。犬の嫁だもんなぁ。姫が死ぬ時、姫の体から8つの玉、仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌の霊玉が飛び出す。それを持つ八犬士が活躍する話。
芳年も描いた信乃との戦いの場面を彦造も描いていた。屋根に乗る信乃。刀を咥えポーズを取る。

天下取りたちの伝説。信長、斎藤道三の『国盗り物語』、秀吉等々。御正伸氏の絵、『残月』。秀吉に捕らえられた秀次の妻や側室や子供たち。子供を抱え嘆く娘もいる。既に幽鬼になったのか白目の女性も。油彩で怖く美麗な絵。

地獄と極楽。四十九日の死後裁判は日本独特の物だと知る。そうなの?インドや中国にはないのか…。
小夢の『紫式部妄語地獄』。今回この絵が1番好きだったかな。源氏物語に男女の恋愛や愛欲を様々に書いたので、式部は地獄に堕ちるコトに。それを救ったのが小野小町の父である小野篁。篁は井戸を使って地獄に行って、地獄の補佐官をやったりしてたんだよ。絵は、獄卒の鬼たちに剣を向けられる式部の姿。でも、式部の顔は何処か微笑んでいるようにも見え、得意気にも見える。「こんな小説書けるのは、私ぐらいよ。」そんな矜持があったのかも知れない。これは屏風絵だった。

加藤美紀さんの異界シリーズ。加藤さんは、神社仏閣や古い樹木を描くコトで太古から現代までの悠久の時間を絵画化。異界と現実の間に現れる美女を描く。作品はほぼガッシュだったかな?
『日ノ本』白蛇の巻き付く古代の剣らしき物を背に背負い椅子に腰かける少女。後ろには日輪。少女は凛として前を見つめる。周りには、菊、牡丹、桜、藤等の花が描かれる。思うに日本という国の擬人化なんじゃないかな?と。北斎の波らしき波涛も描かれていた。

『逆鱗』清姫の絵。燃え盛る炎。後ろに鐘。清姫は斜め上をスッと見上げ、視線はこちらに向ける。龍の腕が姫に纏わりついている。

『転生』。香炉を持つ白い装束の少女。前を向きほのかに笑っている。香炉からは白い煙。おそらく反魂香なのだろう。誰の魂を呼び戻すのか?はたまた自分の魂を誰かにあげるのか…。少女の周りを飛ぶ白い蝶は魂の象徴かな?と(西洋だとそうなの)加藤さんの絵は、これが1番好きだった。これは油彩だったかな?

日本の古典BL。井原西鶴『男色大鑑』。若衆と念者の話等。『雪の中の時鳥』。義兄弟になる話なのだが、その証しとして左右の小指を食いちぎるってのが凄い。その指をあげるんだな。小指は約束の指なのか。

『雨月物語』の“青頭巾”。耽美屋さん、みんな大好き青頭巾。稚児を寵愛した僧侶。しかし稚児は流行病で若くして亡くなる。僧侶は嘆き悲しみ、あまりの悲しみから稚児の肉を食べ、いつしか僧侶は鬼と化す。ちょっと鬼滅の刃の鬼っぽくもないですか?鬼になったのにも悲しい理由がある。ようは、昔から鬼ってそういう存在なんだね。

寺院の稚児の剃髪の様子の絵があった。パネル展示だけど。寺院の稚児の剃髪はショッキングなコトだったらしい。17歳〜19歳で剃髪するのだが、美しい稚児が髪をおろす(坊主になる)ので、結構なショッキング事案だったと。稚児は10歳〜19歳くらい。良い家柄の子供…貴族の子や武士の子だな…は、学びに時間をさけたけど、卑しい身分…ようは庶民だったり、人買に売られた身だったり…には、仕事(僧侶のお付や、掃除や食事を運ぶ等)が割り当てられたらしい。寺でも身分差別はあるんだなぁ。

『秋夜長物語』。梅若という聖護院の稚児と比叡山の僧侶が契りを結ぶも、敵対してる寺だったので争いになってしまうという話。高畠華宵が描く稚児梅若がめちゃくちゃ美少年だった。「こりゃ、好きになるは〜」と思えるレベルの美少年。

明治に入る前までは、こういう男色は普通だった。それが西洋人には奇異に映る。ルイス・フロイスは著作の『日本史』の中で男色に嫌悪を示し、医師ケンペルは『江戸参府気候』の中で、「男色は神をも恐れぬ所業」という。キリスト教文化の人には「何だそれ!」案件だったのだろう。因みに、私、この辺り、きちんと習っているはずなのに、結構忘れてる(^_^;)。レジュメは持ってるはずだが…。
ケンペルだっけ?「街道沿いに侍がきたら、お茶屋から美少年が出て来て、この侍とイチャイチャしだした!信じられん!」って書いたの。きっと少年は体も売るお茶子だったのだろう。

その流れで、英雄の少年。楠木正行(楠木正成の子)。玉村吉典の絵だったかな?切腹しようとする正行。それを止めようとする母。犬坂毛野と犬塚信乃。信乃は女装するし、毛野は女役として人気を集める役者。兵庫曲の毛野の絵があった。義経も女装するし、前述した女装パワー(異装パワー)があるってコトだろう。

最後は異界の嫁。『はまぐり女房』うまい味噌汁を作る女房。しかしその正体は、はまぐりが女性に化け嫁になっていた。上手い味噌汁も、実は彼女の小便(はまぐりだから、はまぐりの汁になる)や、体から出汁を取っていた…。ちょっとグロイ話である。絵本に『はまぐり姫』といのがあったが、これは高貴な姿の姫になっていた。流石に小便は子供にはねえ…(^_^;)。
加藤まさをの“佐保姫”。これもとても美しかった。体にヒトデや貝を一面に纏った姿で描かれる。
他、かぐや姫等も。

こんな感じの展示でした。お土産は、コロナで最小限の解説のみにした…とのコトで、図録代わりの本を購入。
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ポストカード5枚と、華宵のキーホルダーも買いました。華宵ガチャガチャで出なかった“雨中の銃声”のが売っていた!
加藤美紀さんヴァージョンの大人のぬり絵も欲しくて最後まで悩んだ。でも、あれを塗る腕が私にあるかどうか…。

1月15日くらいまでやるんだったかな?日本の伝承に興味がある人は是非。観に行く場合は、予約が必要です。
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