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2020年05月02日21:30

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シェーンベルク :ヴァイオリン協奏曲&浄められた夜

【収録曲】
 シェーンベルク
1 ヴァイオリン協奏曲op.36(1936年)

 イザベル・ファウスト(Vn)
 スウェーデン放送交響楽団
 ダニエル・ハーディング(指揮)
 録音:2019年1月,ベルワルド・ホール,ストックホルム

2 浄められた夜op.4(1899年)弦楽四重奏版

 イザベル・ファウスト(Vn)
 アンネ・カタリーナ・シュライバー(Vn)
 アントワンヌ・タメステイ(Vl)
 ダヌーシャ・ヴァスキエヴィチ(Vl)
 クリスティアン・ポルテラ(Vc)
 ジャン=ギアン・ケラス(Vc)
 録音:2018年9月,テルデック・スタジオ,ベルリン

harmoniamundi: HMM902341(セッション)


2016年1月23日,地元オーケストラの定期演奏会でイザベル・ファウストの演奏に初めて接する。このときファウストが弾いたのはメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲だったが,かつて聴いた彼女の録音(ベートーヴェンとベルクのバイオリン協奏曲)などとは比較にならないほど凄い演奏だった。全てのフレーズが生きており,どの音も活き活きと躍動していた。一つひとつの音に命の息吹が込められ,ホールの空間を満たす。これこそが音楽なんだと思った。

先日,ファウストの最新盤となるこのディスクに関する批評を読んだ。シェーンベルクの音楽を現代音楽の完璧な流儀で再現したCDとの評価であった。この作品はヒラリー・ハーンのディスクで聴いたことがあるが,いまひとつピンとくるところのない演奏だった。このディスクを何度も繰り返し聴いたが,最終的にはどちらかというとカップリングされているシベリウスのヴァイオリン協奏曲に関心が向く。イザベル・ファウストの新譜はどうかというと,ハーンのCDを聴いたときの感想とそれほど違わない。現代作品の演奏としては,ハーンの演奏の方が鋭いかも知れないとさえ思う。

ただ,ファウストのディスクの解説を読んで,とても役に立つことが書いてあった。ヴァイオリン協奏曲はソナタ形式で書かれており,楽章構成も第1楽章−アレグロ,第2楽章−アンダンテ,第3楽章−ロンド・フィナーレという形式を採用している。厳格かつ厳密な12音の世界の中に作曲家が織り込んだ美しい旋律がこの上なく魅力的に引き出されている。

この一節を読んで,なるほどハイドンの協奏曲を聴くような心構えでシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲に接する必要があるのかと気づいた。たしかに,均整の取れた楽曲形式の中に12音の手法で音楽を詰め込んだのだとすれば,この曲を聴くポイントを間違えていた可能性が大きい。まだツボを抑えた聴き方ができているとはいえないものの,この曲を聴く際の手掛かりがつかめたように思う。たしかにシェーンベルクの音楽をわかっていない可能性もある。十二音音楽を理解していないのかも知れない。もう一度,時間をかけて聴き直す必要がありそうだ。

ワーグナーやブラームスの影響下にある,コンチェルトに先立つこと約40年前に書かれた浄められた夜はもっとアプローチは容易だ。爛熟するロマンチシズムの中にあるような作品なので分かりやすい。

しかし,このディスクに収めららた演奏はそのような色彩を保持しつつも,それを超える要素も秘める。CDに収録された曲が弦楽四重奏版で,演奏に参加するメンバーの顔ぶれをみれば一目瞭然だ。アンネ・カタリーナ・シュライバーはフライブルク・バロック・オーケストラのリーダーを務めるヴァイオリニスト。アントワン・タメスティはトリオ・ツィンマーマンのメンバーで,ダヌーシャ・ヴァスキエヴィチはアバド指揮モーツァルト管をバックにカルミニョーラが弾く協奏交響曲でヴィオラを担当する。ケラスについては説明は不要だろう。彼ら一流のソリスト・クラスが浄められた夜を演奏するとどのようになるか。管弦楽版の浄められた夜は言うに及ばず,他の室内楽版と比べても,雄弁であり表現主義的だ。どのパートも,どの弦楽器も他の楽器とのバランスに十分配慮しつつ,程良い自己主張が聴ける。一人ひとりの奏者が繰り広げる語りに耳を傾けるのが面白い。

もう少し時間をかけてこのディスクを聴き込んで,シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲が持つ意味を考えてみたい。できれば,この作曲家のピアノ協奏曲やチェロ協奏曲も聴いてみたい。そうすれば,音楽を聴くときの幅がより広くなるような気がする。
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