続きました。
◆2日目【活動時間/6:50、行動時間/5:10】
5:00/起床⇒5:30/朝食⇒7:45/涸沢ヒュッテ(標高2309m)チェックアウト、幕営
場へ移動・集合(ここで不要な荷物を梅さんのテントにデポ・アイゼン装着など)⇒
8:20/涸沢小屋(標高2350m/ここで8:40までトイレ休憩)⇒ピークアタック開始⇒
10:15/南陵取付き近辺の標高で10:30まで小休止⇒11:35/インゼル上部で11:55
まで小休止⇒12:30/北穂高岳(標高3106m)登頂⇒北穂高小屋(ここで13:35までお
昼休憩)⇒13:45/北穂高岳山頂より下山開始⇒15:30/涸沢小屋(標高2350m)へ帰還、
チェックイン
◆写真はYAMAPへ↓
残雪の北穂高岳��
https://yamap.com/activities/3599264
【ピークアタック】
さて、朝です。おはようございます。昨日は夕食直前までテラスで飲んで、夕食後は談話室でゴロゴロしたり、各々自由に過ごす。自分はサブザックに不要な荷物を入れ、メインのザックの荷造りをしてから、早めに就寝。朝は5時過ぎに起床、5時半の初回のターンで朝食を取りトイレなどを済ませたら荷物を持ってテラスに集合。ザックは外付けしている小物などを全て中に収納、当然チェストバッグも中に入れる。不要な荷物を詰めたサブザックは梅さんのテントにデポすることに。梅さんのテント前でアイゼンを装着、一旦スタート地点の涸沢小屋前まで移動する。
ここで最終のトイレタイム。日が昇り気温がグングン上がってきたので、ミドルに着ているソフトシェルは脱いで行くことにした。予定を30分程押して8時半過ぎ、いよいよピークアタックに出発だ。
「別にパーティー組んでるわけじゃないけど、雪山ですからね、隊列組みますよ。一列縦隊で登ります。先頭は俺、二番手HGさん、三番手俺氏さん、最後尾はO野さんです。順番崩さないようにね！」
おや？人数少なくない？そうなんです。今回北穂に登るのはこの4人だけ。元々OG原さんは登らない予定(雪の北穂は登頂経験者だけど、怖かったのでもう二度と登らないとのこと)。ONZKさんは昨日のアプローチで足が攣ってしまい、その後、小屋に着いてからも足の別の個所が何回か攣ったそうで、みんなに迷惑をかけるといけないとの判断でピークアタックは辞退(お腹の調子も悪いらしい)。O野さん奥さんは昨日からの体調不良(扁桃腺が腫れてしまったそう)で同じく参加は辞退。登らない人はカールを散策したり、刺繍をしたり(O野さん奥さん)、昼間から飲んだりして時間を潰すとのこと。
さて、涸沢カール待機組と別れ北穂沢を登り始める。
「ゆっくりでいいからね、一歩一歩確実に。同じペースで足動かして登っていきますよ。前の人と間隔が空いても、追いつこうとしてスピード上げたりしちゃダメよ。あと、立ち休憩は各人の判断でね！」
梅さんの指示を聞きながら雪面を登って行く。ここは北穂沢の一番下、扇型に広がった広い場所なので特に気になる点は無い。スキー場だと初心者用ゲレンデの斜度である。ケインポジションで持ったピッケルが刺さる斜度ではあるけど、別にピッケルに頼るようなシチュエーションでは無い。少し歩いては振り返り、真っ白な涸沢カールを上から眺めては写真を撮る。時折下山者が尻セードで降りてくるのを見ては
「いいなあ、梅さん、自分もアレやりたい〜！」
とO野さん。
「いいけど君ら3人、アウターはレインウェアでしょ？尻セード気持ちいいけど、一回やったらレインパンツ、鑢かけたみたいにボロボロになるから要注意だよ！捨てていいやつなら構わないけど・・・。」
まあそうだろうな。新雪ならともかく、ザラメ状に融けたこの雪じゃねえ。。何だかんだで氷は固いですよ。
「そもそも論なんだけど、登って来る人の近くで尻セードはマナー違反ですから！決してやらないようにね、O野さん、OK？」
そんな会話をしながら登り出して30分弱、先頭の梅さんとHGさんの間隔が開くようになってきた。梅さん以外の3人が団子になって遅れている状態。しばらくするとHGさんがまさかのリタイヤ宣言。
「ちょっとこのペースだと迷惑かけるので。自分はここで撤退しますね！」
「了解、気を付けて降りて下さい！」
位置的には夏道だとゴルジュの辺りだろうか？直線距離的な行程だと全体の4分の1くらい。下山するHGさんを見送り、上で待っている梅さんに追いつく。それにしても暑い。日差しが強烈だ。雪は緩むというかシャーベット状に腐ってて逆に歩きにくい。全体の3分の1くらいまで来たろうか？
「だいたいこの辺が夏道だと南陵の取り付き部分かな？右上に小さい岩があるでしょ？その先で一回大休止取りますよ〜。」
ゴルジュから南陵取り付きまでの区間は、HGさんが撤退した場所よりも遥かに斜度がキツイ。目測で35〜40度くらいだろうか？スキー場だと確実に上級者コースの傾斜だ。そして高度を上げるほど南陵と東陵の幅が狭くなってくる。見上げると梅さんが右側にトラバースしながらピッケルで雪面を削ってる。自分も追いつき、ピッケルのアッズで左右長めのバケツを掘る。なるほど、アッズはこういう作業でも使うんだね。ステップカッティングやテント張る時の整地だけかと思ってましたから。
腰かける部分は自分とザックの幅、足を置く部分は自分の幅、それぞれアッズで雪を削って即席の休憩スポットを作る。後ろを向いたまま、まずはザックを下し、外付けしている120cmのダイニーマスリングと変形D型のスクリューロックカラビナを取り出す。カラビナとスリングをザックに繋いだら、ピッケルのシャフトにスリングを通し、そのままピッケルをヘッド部分まで雪に埋め込む。雪が柔らかいので、ヘッドを押すとほとんど抵抗なく雪に中に差し込まれる。これでザックが滑っても落ちることは無い。自分のピッケルリーシュはハンドリーシュではなく体掛け(60cmのダイニーマスリングを使用)なので、この状態で何もしなくてもセルフビレイ完了。これで自分もザックも滑落はしない。カールに向かって腰を下ろすと、涸沢ヒュッテのテント村がもうあんなに小さく！風も無く、グローブを外しても全然冷たくない。行動食を食べたり水分補給をしたら、行動再開だ。
「上の方にM字型の岩、見えるでしょ？インゼルっていう岩なんだけど、次はそこを目指します。正確にはインゼルの左側を登って行くけど、ここからがこのルートの核心部分ね。斜度は50度以上になるので気を抜かないようにね！」
遂に来たか、OG原さんが一番怖かったって箇所。確かにこの斜度は自分も未経験。どう未経験かと言うと、スキー場のゲレンデで経験したことがない斜度ってこと。ここまでの斜度も確かにスゴイんだけど、正直全然怖くはない。理由はスキー板があれば滑降出来る斜度だから。この件に関しては同様にスキー歴の長いO野さんとも意見が一致した。例え滑落しても、この雪質ならどうなるのか、どの辺りまで落ちるのか、などが経験上ある程度予想がつく。しかしここ、インゼル付近の斜度は全く想像がつかない。何せ上を向いて立った状態で膝が雪面に当たってしまう斜度の雪壁は未経験ですからねえ。
「もし上から人が落ちてきたら、頑張って避けてね！助けようとかしちゃ絶対ダメよ？巻き添え食らうのはやめてね。とにかく自分の安全確保を最優先して下さい！」
一昨年、OG原さんが梅さんと二人で登った時に、上からおばさんが滑落してきて梅さんがザックを掴んで止めた、って話を聞いていたので、梅さんに聞いてみる。
「ああ、あれね。あれはちょうど自分が避ける方向に滑落して来てね、衝突コースだった。あと、インゼルよりもっと下で斜度も緩かったからねえ。普通は止められないし、ぶつかったら自分も巻き添え食って一緒に滑落しちゃうから。とにかく避けること！ここ、滑落したら基本、止まらないんでそのつもりで！ゴルジュの辺までは落ちるから。もし滑落したら精いっぱい抗って止まる努力をしてね！」
と、梅さん。
「滑落停止訓練とか何もしてないけど、大丈夫かなあ・・・？」
O野さんがボソッと呟く。
「ああ、平気平気！この雪質だと教科書にあるような滑落停止方法、全く通用しないから！雪、グズグズなんでピック打ち込んでも全然抵抗にならないんで。むしろ膝曲げはしないで、爪先を雪面に蹴り込んで抵抗を増すようにしないとダメよ？」
だよね、確かに。氷みたいな雪壁だと、アイゼンの前爪が引っかかると身体が起き上がってピックが抜けてしまうので膝は曲げるけど、この雪質じゃ逆ですわな。
「もし撤退するなら、ここが最終決断ラインよ。登れると思うけど、降りてこられるかどうか？自分自身とよく相談してね。」
「あ、はい。このまま行きます！」
O野さんに撤退の打診は愚問だった。何事も無かったように登り始める。
「インゼル超えた上部で二回目の大休止取ります！そこまでは一気に通過するので、ゆっくりでいいから確実に登ってきて！」
「了解っす！」
見上げるような雪壁。緩んだ雪なので前爪の無いアイゼンでも問題なく蹴り込めるが、ピッケルが長すぎて腕を全開で振り上げないと雪に差し込めない。上級者＝短いピッケル、ってこういうことか。スタートから最初の大休止ポイントまではケインポジションとステークポジションを交互に使い分けてきたが、ここはそれも難しい。斜度的には教科書だとケイン⇒ステーク⇒ローダガー⇒ハイダガーとポジションが変わっていくが、雪質がこれだとピックを使うダガーポジションは役に立たない。仕方ないのでシャフトの一番下を持ってピックをハンマーの様に打ち込むトラクションポジションで登っていく。リーシュが身体に付けてあるので、一旦ピッケルを打ち込めば安心して足を一歩踏み出せる。
雪壁と悪戦苦闘すること小一時間、先頭を登る梅さんがまた右側にトラバースを始めた。
「各人、適当にバケツ掘って休憩して〜！」
二回目の大休止。後ろを振り返ると流石に恐怖を感じる斜度と高度感。うわ、これ降りられるのか？だんだん不安になってくる。
「あ、あれ見てあれ！あの降り方よ！下り、怖かったらあんな感じで降りると良いよ！」
梅さんの指さす方を見ると、壁を登るスパイダーマンを逆回しにしたような感じで雪面をヨツンヴァインでシャカシャカ降りてくる人がいる。O野さんと二人で動きを凝視する。なるほど、これだ！
「急斜面はここまで。ここまで来ればあと30分くらいかな？松濤のコルまでは先行して構わないから！」
「じゃ、先行ってます！」
と、O野さん。今まで言いつけを守って隊列の最後尾にいたが、物凄い勢いで登って行ってしまった。
休憩を切り上げ、梅さんの後ろに着いて再び登り出す。インゼルほどキツくない、っていうだけでここの斜度も相当なもの。気を抜かず慎重に雪壁を登って往く。
視界にスカイラインが入ってきた。どんどん空が広くなっていく。着いた、松濤のコルに到着。先行していた梅さんに追いつく。振り返ると遥か真下に涸沢ヒュッテのテント村が見える。小さい。純粋な高さで言うと800m近く下ですからね。以前夏に来た時はガスで何も見えなかったんですが、視界があるとこんな景色なのか。ランドマークの松濤岩も全体像を初めて見た。
「夏だとここの岩に×印があるでしょ？ここから滝谷に降りて行けるんだよ。」
梅さんに滝谷方面の説明を受ける。雪があろうが無かろうが、滝谷は一般人が足を踏み入れたらアカン場所の筆頭格じゃないかな？以前TVでドローン空撮の滝谷の映像を見たことあるけど、凄かったもの。
「さて、登頂しちゃおう、山頂はすぐそこだから！」
松濤のコルから山頂までは5分足らず。先行していたO野さんとも合流し、無事、残雪の北穂高岳(3106m)に登頂。いやっほう〜！！山頂からの眺望に圧倒される。360度のパノラマ。青と白の世界。空と雪しか見えない。槍ヶ岳が見える。大キレットから続く稜線。常念岳が見える。蝶ヶ岳へ続く稜線。前穂高岳、涸沢カール。滝谷、飛騨側の山々。凄い。こんな景色、見たこと無い。飛行機から見た様な景色じゃないか！
10分程、写真撮影で滞在したら雪の切通しの階段を下りて北穂高小屋、梅さんの元職場へ。ここでもテラスからの絶景に圧倒される。荷物を下し、アイゼンを外してヘルメットを脱いだら小屋へ入ってお昼休憩。自分と梅さんはカレーを注文、O野さんはラーメン。
「あれ？もしかして梅さん？」
小屋のスタッフも常連さんも、色々な人が梅さんに話しかけてくる。今の北穂高小屋は先代の社長が引退して二代目とのこと。この二代目の社長は梅さんと小屋番の同期なんだそうで。コーヒーをご馳走になりました。ありがとうございます。折角なので小屋の前で二代目社長と一緒に写真撮影。名刺も頂いた。相変わらず梅さんは色々な人に囲まれているので、しばらく小屋の周りで写真撮影など。
「さて、そろそろ下山しますか。」
梅さん、O野さんに続いて再び山頂に上がる。
【初めての雪山下降】
やはり下山するのが名残惜しくて、再度360度景色を見まわして同じ写真を何度も撮る。さて、そろそろ降りるか。さらば北穂高岳！また来るよ。ってあれれ？梅さんもO野さんもいない！
「おやや！」
二人はもうとっくに松濤のコルまで降りてる！しかも全く待つ素振りも見せず、下山し始めてるじゃないの〜！こりゃイカン、急がなくては。松濤のコルに降りると二人の姿はもうない。雪壁に向かおうとすると、登ってきた二人組のうちの一人に話しかけられた。
「下山、気を付けてね。そこのドームの左側、さっき登ってくる間に4人滑落してるから。」
「え、4人も！？大丈夫だったんですか？」
「まあ誰も救助要請とかしてないし、大事には至らなかったんじゃないかな。でも危ないからね、気を付けて降りなよ。」
どうも山頂からコルに降りてくる自分を見て、あ、コイツどうみても雪山初心者じゃね？って思われたんだろうなあ。まあ、何にせよ忠告をいただけるのはありがたいことだ。で、ドームってどれだろ？下を覗くとこんもりとした部分が下方に見える。あ、あれだ、インゼル！インゼルの上部が上から見るとドーム状に見えるのか。でも左側ってルートじゃないよね？ってことはインゼル寄り、つまり降りる時の向きから左側が危ない、ってことでいいのかな？
で、先行の二人はどこに・・・。あ、いた！二人を目視するが、随分右側を降りてるなあ。登ってきたトレースは全く被っていない。O野さんは南陵に向かって斜めに下降を続けている。もちろん後ろ向きで。梅さんに至っては物凄い速さで下降しており、もうすぐインゼル上部に到達しそうな勢い。自分も急いで後ろ向きになって雪壁に取り付く。ピッケルは左手にローダガーポジションで持つ。右手はグーを握って雪に突っ込む。右足を下して雪面に蹴り込む。体重をかけると右足がズルズルと下に落ちる！
「ぬをっ、マジか！」
慌ててピックに体重を乗せて体を固定。もう一度。今度は大丈夫だ。でもこんなスピードじゃ下山にどれだけ時間がかかるんだ？さっき登りの時に見た人のような動きが全く出来ない。今度はつま先を蹴り込んだ後に、膝も雪に押し当てて、膝からつま先全体で雪を捉えるようにしたら、安定した。なるほど、単純に接地圧の問題か。登りで通ったトレースじゃなく、新雪の上だからか。しばらくこのスタイルで下降を続けるが、スピードが遅く先行2名との距離がどんどん離れていく。でもここで焦ったら危険だ。慌てず急いで正確に。正直言って雪山の下山は体力だけじゃどうにもならない。当たり前なんだが技術の未熟さを痛感する。
それとこのピッケルの持ち方だと、身体からリーシュが垂れる感じになって非常に邪魔であることに気づいた。無理にさっきの人を真似る必要はないので、自分に合った安定した降り方を模索しよう。とにかく雪が緩いので接地圧を下げることが重要だ。ピッケルのシャフトが遊んでいる。これは無駄だ。ダガーポジションを止め、両手でピッケルをバーのように持ち、雪面に押さえつけると更に安定感が増した。よし、これだ！時折股下から二人の位置を確認し、左斜め下(上から見たら右方向、南陵方面)に向かって後ろ向きで下降を続ける。途中何度かズルっときて冷や汗をかきまくるが、何とか梅さんとO野さんに合流できた。が、ここから最初の大休止を取った場所までは斜度50度以上の雪壁。休憩もそこそこに下降を再開する。
「んー、ちょっと天気怪しくなってきたねえ。飛騨側、雲が出てきてる。予報は快晴だけど、高層に寒気が居座っているからちょっと心配かなあ。」
と梅さん。北穂小屋で7年働いていた人ですからね、そういう人の観天望気は信頼性が高い。
「下界でも晴れた日に夕立あるでしょ。それと一緒で今日みたいな日は暑いので上昇気流が発生、高層の寒気で冷やされるとさ。」
分かった、もう止めて〜！雨じゃなく吹雪くんだよね？これからインゼルの難所を降りないといけないのに、そんなこと言われたら焦っちゃうじゃんか！
「ま、可能な限り早く降りましょう。」
梅さんは行ってしまった。
「ちょ、ま、待って〜！」
自分も急いで下降を再開する。無我夢中だったのでほとんど記憶が無いのだが、とにかくグローブがびちゃびちゃになってしまった。グーを握ると水が滴り落ちるレベル。これ、今は暖かいからいいけど、風が出てきたり気温が下がったらヤバいんじゃね？凍傷になっちゃう！
最初に大休止を取った場所で再び二人に追いつく。
「ここまで来たらもう後は余裕っしょ。滑落したら速攻下まで降りれるよ！危ない箇所は無いんで、各人自由に。せっかくだから遊びながら降りるといいよ！」
えー、何を言ってるのこの人？尻セードがやりたくて仕方ないO野さんは、左の方へ行ってしまった。梅さんは新雪の中、右の方へ降りて行く。この斜度ならもう後ろ向きじゃなくても大丈夫だが、梅さんの後をトレースしようとすると、足が雪に埋まってしまって全然先に進めない。
「これも接地圧か」
さっきと同じだ。梅さんより自分の方が20kg近く重い。そりゃそうだわな。「自由」に、ってそういう意味か。自分に合った降り方、ルートで行けってことね。左右に分かれた二人にはついて行かず、自分は真ん中の登りで使ったトレースを降りることにした。踵着地で軽く走る感じ。富士山の下山、砂走りの要領だ。ヨチヨチ歩きで全然進まなかったのが、歩幅2m以上で一気に下まで降りてきた。HGさんが撤退したあたりで梅さんと合流。O野さんは視界に無いので、もう小屋まで降りてしまったのだろう。それにしてもこの斜度、スキーがあれば1分もかからずに下山出来るのに・・・。
「天候の崩れ、大丈夫ですかね？」
梅さんに尋ねる。
「ああ、大丈夫じゃね？」
えー！何そのテンション？さっきのはガセ？
「じゃあ俺はこのままテント戻るからね、俺氏さんはそこ右に降りると涸沢小屋だから。無事登頂＆下山、良かったね、おめでとう！また明日ね！」
そう言って梅さんは降りて行ってしまった。
涸沢小屋入口のアイゼン脱着所で装備を下してへたり込む。疲れた。肉体的にも精神的にも。小屋を見ると土間でみんな既に酒盛りを始めている。アイゼンを外し、ピッケルを雪に突き刺す。ヘルメットを脱ぎバラクラバを脱ぐと白くなってる。舐めるとしょっぱい。目出し帽、汗かきすぎて塩吹いたか。雪の中だってのに。クールダウンしたら荷物を持って他のメンバーと合流。梅さんテントにデポした荷物はみんなが小屋まで持ってきてくれていた。
補足すると、ホントは涸沢ヒュッテに連泊の予定だったのですよ。でも連泊で予約しても一旦チェックアウトしてまたチェックインしないといけなくて、水場も外だし建物の構造も複雑でわかりにくく、何よりも混雑してたのでね。満場一致で2日目は涸沢小屋にしよう、と急遽逗留先を変更したのですね、今朝。涸沢ヒュッテのキャンセルと涸沢小屋の予約は涸沢カール待機組にお願いをしておきました。
荷物を部屋に置いたら土間に合流してまずはビール。みんな(自分もだけど)どんだけ酒とかつまみとか持ってきてるんだよ。つまみだって乾き物じゃなく生ハムとかトマトとかチーズとかオリーブとか。これもう夕食要らないんじゃね？ってレベルで宴会です。でも北穂登って降りてきましたからね、腹は減ってます。夕食も問題なく平らげ、夜はデッキのテラスから星を眺めたりして、まったりと過ごす。グローブはびちょ濡れなので乾燥室に、ブーツも中が足汗で湿っているので、丸めた新聞紙を詰めてから靴置き場に。荷物整理は明日の朝やることにして、今日も早めに就寝です。
その��に続く・・・。
■写真解説
�〇沈磴遼綿羚盂�(3106m)に登頂〜！やった〜！
�∋劃困�らの眺望、槍ヶ岳へ続く大キレットと右奥は常念山脈。
��山頂からの眺望、飛騨側の山々。
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