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2018年12月12日18:09

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ロマンティックロシア

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の“ロマンティックロシア”に行きました。
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公式HP↓
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_russia/

金曜の11時半くらいに入り、4時半頃までいたんですが、そこそこ人が入っていて吃驚。もっとガッラガラだと思ってた。しかも、ポスターに釣られて入って来た人が結構いるらしい。

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入口に、上記のような忘れえぬ女(ひと)と一緒に馬車に乗ってる感じで写真が撮れる撮影スポットがある。そこで、「写真撮って下さい。」とご婦人に話しかけられたのですが、「ロシアの画家は1人も知らないケド、先日オペラを観に来て、このポスターに引き込まれて、これは絶対に来なくちゃ!って思って、今日来たんです。」と言っていた。ポスターデザインって大事!(以前、Bunkamuraのミレイ展の時もギャルがオフィーリアの絵のポスターを観て「この絵、ちょー綺麗、ちょー綺麗!」と大興奮で言ってたのを思い出す。)
そして、ここで私は、『忘れえぬ女』がどれだけ美しいか大プレゼンをこのご婦人にしたって言う(笑)。
いや、ハードル上げても、この絵なら大丈夫だよ。

イワン・クラムスコイ『忘れえぬ女(ひと)』。私、この絵、2度目ましてです。以前もBunkamuraで観ました。10年くらい前に来日してるそうで、10年前の私の日記を遡るとレポが出てくる。
原題は『見知らぬ女』というのだが。日本人人気が凄く高い絵で、彼女、これで来日8回目。不思議な絵でね。描かれた場所も時も分かるのに、この女性が誰だかは分からない。毛皮がついた当時の最先端モードの濃紺の服を着た美女。帽子には白い羽飾りも。凛とした強い視線。高飛車な顔にも見える。何かを嫌悪してるようでもあり、悲しげでもある。10年前、マイミクさんに「目のところにうっすら白い点があり、涙なんじゃないか?と言われてる」と教えてもらい、今回、そこもちゃんと観る。本当に涙のような白い点がある。幌を上げた馬車の上から少し下を見る女性。誰なのだ?何を見ている?
アンナカレーニナでは?や、ドフトエフスキーの小説に出てくる自立した女性では?という説もあるし、高級娼婦なのでは?という説もある。私は、この説がお気に入りで、本当は好きな男性がいるケドそいつは庶民で、高級娼婦なんて、王侯貴族相手なんだから、そんな恋愛叶うはずもなく、彼女は毅然と「アナタとはお別れよ。」と言ってるけど、内心別れが悲しいのでは?と思ったり。
別のマイミクさんは「没落貴族の娘で、家の為に好きでもないお金持ちのオッサンに嫁ぐ前では?」という説を唱えていた。辛そうではあるが、でも、自分の運命をきちんと受け入れた顔だと。画面がキラキラ光るのも不思議。
背景は、靄に沈むサンクトペテルブルグの街。彼女は、今日も、濃紺のドレスを身に纏い、謎めく強い視線をこちらに向けているコトだろう。

あまりに好きな絵なので、冒頭にこの絵の紹介してしまったが。
今回は、ロマンティックロシアなので、ロマンティックな絵画が沢山来ています。
ハーヴェル・トレチャコフ氏が集めたロシア絵画。彼は熱心に風景画の収集を行った。なので、今回ロマン溢れる風景画多数来日。
19C〜20C初頭の絵が中心かな。19C帝国崩壊にロシア革命。農奴解放もあり、激動の時代を迎えたロシア。そんな折、郷土愛が高まり、ロシアの美しい自然やその時代を生き抜いて来た人々を描くコトが多くなった。
風景画もただ風景を描くのではなく、風景画を通じ、人間の内面に対する理解も深める。そして、祖国への自然に対する愛も表現される。

音声ガイドが声優の諏訪部順一氏で、そんなモノ借りるに決まってるじゃん!でした。甘く優しい声は、作品群に合っていた。プーシキンの詩等も諏訪部氏が朗読してくれるぞ!

まず、風景画は春から始まる。生命再生の時。古代ロシア暦では、3月が1年の始まりで、農家の生活サイクルとも結びつく。厳しい冬を抜け、春だ来た!という歓びもあるんだろう。

イリヤ・オストロウーホフ『芽吹き』写実な川と木々…白樺かな?新芽が芽吹き、川は増水してる。川面に映り込んだ木々。静かで落ち着いた色調も良い。彼を世に知らしめた最初の作品らしく、彼は後に美術館館長にまでなる。
ロシアって春の増水凄いのね。他の絵では、小屋が水没してたもん(^_^;)。

アブラム・アルヒーホフ『帰り道』もの悲しい荒野。道なき道行く馬2頭の馬車。御者の少年は後ろ姿。道はロシアの芸術でしばしば取り上げられるテーマだそうな。まっ平ら何処までも続く地平線。これは人生を表してるのかな?とも。この絵の解説時、音声ガイドでトロイカ流れて来て、テンション上がる(笑)。

次は夏。ロシアの夏は短い。長い昼と夜半にようやく水平線に沈む太陽。そうか、白夜か。

ミハイル・ヤーコヴレフ『花のある静物』フォーヴィズムのような強い色彩と筆致で吃驚。ロシアの風景画って、シーシキンが描く絵みたいに、超絶リアリズムが多いので、こんなタッチのもあるのねと。黄、オレンジ、赤。カラフルな花瓶の花々。薔薇の花もある。19Cと20Cの境界線の美術に特徴的な新しい視点の絵らしい。花の色彩自体に心魅かれ、画家自身によって作り出された色鮮やかなコンポジションを構成しようとしていると。

イワン・シーシキン『正午、モスクワ郊外』言わずと知れたロシア絵画の巨匠シーシキン。何処までも続く金色の小麦畑。画面の5分の4は空。遠くに教会の鐘楼。どこまでも続く道を歩く4人の農民。花のリアルさな。トレチャコフは移動派の作品を多く集め、これが彼が初めて買ったシーシキンの作品らしい。

移動派って、絵画は庶民の物という運動が起きて、移動美術館ってのが出来たのね。色んなところに移動して絵を見せる美術館。で、その運動をしてた画家達が移動派ね。

アルカージー・ルイローフ『静かなる湖』ナビ派のような筆致。画面の奥の森が書き割りみたいで象徴的理想郷的世界だと。平面的で装飾性もあると思う。手前にボートに乗り釣りをしようとする老人。湖は鏡面のように静かで木々が映る。「豪奢な自然も照明効果もいらない。泥だらけの水でも結構。そこに詩さえあれば。」とトレチャコフは言っていたそうで、こういう自然を評価していたそうな。

コンスタンチン・クルイジツキー『月明りの僧房』この絵大好きだった。神秘的な闇夜。月明かりに照らされる僧院。僧房の前には白い服の人物と修道士。ポプラの森のうっそうとした感じ。道に映るポプラの影も神秘的で幻想的。

ニコライ・ドゥポフスコイ『静寂』画面の3分の1は雲。暗い画面。下半分は湖。手前に光。雷雨の前の静かな瞬間。湖には一艘のボート。ニコライは幼い頃から雲を観察するのが好きだったらしい。だから、雲の描写が上手いのか。

シーシキン『雨の樫林』ロシアは森の国。映画のワンシーンのような雨の中、1つの傘に入り道行く男女の後ろ姿。靄がかかる森。水たまりの描写の上手さな。本物の水っぽいのよ。横に、『樫の木、夕方』という習作もあったのだが、習作からして描写が細かいって言う。シーシキンは、樫の木=シーシキンってくらい良く描いていたらしい。「風景を写生した作品は空想を交えてはならない。」とはシーシキンの言葉。

イワン・アイヴァゾフスキー『嵐の海』出た!海ばっか描く人!(笑)ロシアの海景画家だね。荒れる波、傾く帆船。左には手漕ぎボート。20人くらい人が乗っている。荒れてはいるが、黒雲はとぎれ、隙間からは青空が見える。光の当たる部分に雪に覆われた山の頂も覗く。ドラマチックな海景画。彼は海景画が得意なんだけど、イタリアに行った時もイタリア中の海辺を旅したんだって。海大好きか!

秋。詩人プーシキンも秋が好き。落葉等、彩のある視覚的な美がある。でも、ロシアの秋って短いだろうね。すぐ冬になりそう…。

グレゴーリー・ミャソエードフ『秋の朝』超絶写実。黄金色の落葉。木々の葉1枚1枚を克明に描く。赤や緑の葉も見える。小川も流れるも、黄金の葉で川面も埋まる。写実主義を貫いた彼の60歳の作品。彼は移動派展覧会協会創立者の1人。音楽にも堪能でピアノやヴァイオリンを移動派の画家に聴かせていたそうな。実は陽気な人だったのかも。

冬。長く苛酷なロシアの冬。ロシア絵画に冬の絵は実はさほど多くない。寒すぎて描きたくないんじゃあ(^_^;)。ロシアといえばウォッカだが、緯度が高くなるとアルコール度数が高くなるそうな。でも、現在はビールが主流で、ロシアヲタの上坂すみれちゃんが、ロシアに行った時、皆ビール飲んでて「ウォッカ飲まないんですか?」って訊いたら、「あんなアル中まっしぐらの酒、誰が飲むの?」って言われてショックだったそうな(すみぺちゃんは、折角ウォッカ飲めるようになってから行ったのに(^_^;))。

ニコライ・サモーキシュ『トロイカ』画面奥から手前に大疾走する力強いトロイカ(3頭だて馬車)。青い房飾りや鈴のついた馬。馬の目は血走り、鼻からは白い息。馬の息が上がってるのが分かる。雪を力強く蹴る筋肉質の足。御者も真剣な顔。トロイカは操作が難しく今もレースがあるくらい。元は重い荷物を速く運ぶ為の物。サモーキシュは動きの表現に関心を持っていたそうな。

ロシアの人々。肖像画。19C〜20C初頭、豊かに肖像画が展開。心理描写を重視。この頃は、ドフトエフスキー等ロシア文学が発展した時期でもあった。

イリヤ・レーピン『画家イワン・クラムスコイの肖像』レーピン、肖像画上手っ!厳しい灰色の目でこちらを見つめるクラムスコイ。右手は椅子の肘掛部分を持ち、足を組み座る。黒い服に濃い灰色の背景。レーピンはクラムスコイが最初の師。年は離れているが、深い友情で結ばれた。レーピンはクラムスコイのコトを「なんてまじめな顔なんだろう」って書いてるらしく、ちょっと笑ってしまった。そして、トレチャコフはレーピンとも仲良しだったんだって。
同じくレーピン『ピアニスト・指揮者・作曲家アントン・ルビンシュテインの肖像』腕を組み、思想に耽る表情。彼は演奏が力強く「ライオン」のようと言われた。音声ガイドでは、「髪型がライオンの鬣のよう」と言われてた(笑)。トレチャコフは1870年初頭、ロシアの優れた作家等の肖像画ギャラリーを作ろうとした。この絵はその為の1枚らしい。音声ガイドで、ルビンシュテインの“ロシアのセレナード”も聴ける。

女性達。女性の秘めたエネルギー、強い意思、権力性も映し出す。
“忘れえぬ女(ひと)”のほかに、クラムスコイはもう1枚凄いの来てた。『月明りの夜』。まず、デッカイ!月明かりの古い庭園。ベンチに座る1人のもの思いに耽る女性。後ろは森。奥に少し光が当たる。手前にあるのは池かな?花や木々の描写も細かい。最初クラムスコイは美術学校の生徒をモデルに描くも、トレチャコフの弟が自分の妻の面影を重ねるよう要求。忖度したんだねww 非常に美麗でロマンティック。
クラムスコイは1863年サンクトペテルブルグの美術学校の反乱メンバーの1人。何でも歴史画ではなく自由な画題で絵を描かせて!と言ったのに、その要求は通らず、反乱を起こし、学校を退学したんだそうな。その後、進歩的な画家と移動派展覧会協会を作る。この絵の当初のタイトルは“魔法の夜”。「幻想的で魔法のようなものを表現したかった」ので、そのタイトルだったらしい。

バーヴェル・チスチャーコフ『ヘアバンドをした少女の頭部』ツルゲーネフの“あいびき”に基づく油彩“あいびき”の為の習作。赤いヘアバンドをして目を伏せ俯く少女。琥珀(かな?)のネックレスと小さな耳飾りもしている。この絵の少女は物語に出てくる農家出身のアクーリナという温順な娘。

子供の世界。子供が描かれた絵。主人公はしばしば農家の子供達。ロシアの19Cの画家は民衆と農家の人々の生活に奉げた作品を数多く手がけた。

アントニーナ・ルジェフスカヤ『楽しいひととき』この絵、好きだったな。アコーディオンに合わせてノリノリで踊るおじいさんと孫。木工房らしく、床には木屑が散乱する。楽しげなアコーディオン奏者の顔も良い。発表当時表記なしで展示された。当時はまだ、女性に画家という職業はふさわしくないと考えられていたかららしい。

ワシーリー・コマロフ『ワーリャ、ホダセーヴィチの肖像』白い鞠と赤い帽子の人形。その横にふかふか絨毯に座るピンクの服の少女。顔は人形の方を向くが、眼差しは、もっと遠くを見つめているよう。ザックリ描いてるように見えるも、少女の服のレースの襟の質感が分かり凄い。少女のワーリャは法律学者で美術愛好家のホダセーヴィチの娘。幼い頃から、画家と交流していたからか、ワーリャは子供の頃から絵を描き、イタリアやロシアで舞台美術家としても活躍した。

そういえば。画家のプロフィールを読むと“舞台美術家としても活躍”って人が結構いた。
ロシアと言えばバレエもあるし、舞台芸術が盛んだったのかな。バレエはフランスよりロシアの方が、よほど革新的で進んでいたしな。ニジンスキーも有名だよね。

オリガ・ラコダ=シーシキン『草叢の少女』白い花々の中に赤いスカーフと民族衣装サラファンをつけた少女の姿。花の茂みに座り込む少年もいる。花と木の描き方が細かい。オリガは1880年にシーシキンと結婚。花や木が細かいのはそれでか?と思う。

次は日常と祝祭
イラリオン・ブリャニシニコフ『悲痛なロマンス』ドヤ顔でギターを弾く男。女性はそっぽを向くも頬は赤い。音楽で娘の心を虜にする“月並みな物語”がここでは描かれていると解説で言っていた。19C末、ロシアでは大衆歌謡や歌曲が流行した。教訓的な絵でもあるらしい。残念な男、それにひっかかる愚かな女みたいな意味があるのかな?

グリゴーリー・セドーフ『民族衣装を着たクルスクの町娘』豪華な細工が施された民族衣装を着た娘。王冠のような物も被っている。透けたレースのブラウスも来てる。これは、祝日に豪華な衣装に刺繍のある金色の頭飾りをつけた娘の姿なのだそうな。こういう風習がロシアの村ではいくつも残っていたらしい。トレチャコフは、クラムスコイの推薦でこの絵を入手した。

ワシーリー・マクシーモフ『嫁入り道具の仕立て』花嫁衣裳を作る人達。婚礼の準備をしている。左の女性は手を頭の後ろで組み「疲れたは」のポーズ。少女は編み物(かな?)をしている。少年は小休止なのか、隣りの少女に話しかける。今ならスナップ写真なのだろうな。日常の一コマ。

ウラジーミル・マコフスキー『大通りにて』秋の日のベンチに座る男女。女性は深刻そうな顔。出稼ぎ労働者風の男は「あ〜あ」と冷めた顔でアコーディオンを弾く。家族崩壊というドラマを描いた絵。無力な人々の人生への心からの同情が描かれていると(^_^;)。これ、売れたのかな?面白い絵だけど、これ家に飾りたいか?それとも教訓にするの?

最後は都市の風景。18C初頭、ピョートル大帝は首都をモスクワからサンクトペテルブルグに移した。町の建物も新しい原理で建設した。

セルゲイ・スヴェトラーフスキー『モスクワ美術学校の窓から』17Cに建てた聖プルス・聖ラウルス聖堂の丸い屋根と鐘楼が見える。屋根には雪がかかる。聖堂を飾る十字架が金ピカで豪華。装飾も細密に描かれる。灰青の空とのコントラストも美麗。

ロシア正教は元がギリシャ正教。ロシア正教の特徴的な丸屋根は雪を滑り落とす為とも言われているそうな。

このような数々の絵を集めたトレチャコフさん。彼は紡績業で財を成し、弟セルゲイとコレクションを作ったらしい。「私が最も信頼する絵画とは、私自身が画家から直接買った作品だ」と言い、画家達と交流した。画家から買えば本物だし、パトロンにもなるから、画家も助かるしね。1881年にコレクションを一般公開。1891年、弟が亡くなると、絵画は全てモスクワ市に寄贈された。
何で、弟が亡くなったら寄贈だったんだろう?コレクションの管理者が弟だったのかな?
でも、そのおかげで、こうやって観るコトが出来るんだね。

お土産はポストカード3枚と『忘れえぬ女』は、10年前にポストカードを買ったので、今回はクリアファイルを買いました。
あと、クラムスコイとシーシキンの缶バッチガチャがあったので、1回づつやってみた。
Bunkamuraさん何気にガチャガチャ好きね(笑)。

ロシア絵画好き、ロマンティックな絵画が好きな人、そして抒情的な風景画が好きな人にも今回は良いかと。『忘れえぬ女』を観に行くだけでも結構価値があるよ。

1月27日までやっています。
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