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2018年08月30日08:47

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I presume?

いろんなノンフィクション遍歴のなかで、暗黒大陸と呼ばれたアフリカの探検記には著名なものが多い。
なかでもアラン・ムーアヘッドのナイル河水源探検史である『青ナイル』と『白ナイル』の2冊は名高い。
日本では筑摩叢書でだされているこの2つの表紙を私は、このミクシィのプロフィール写真にしているくらいだ。
また私の愛読書の1つにジョセフ・コンラッドの『闇の奥』”Heart of darkness”を挙げているのも、「荒野の呪縛」に憑かれた白人が、コンゴ河の奥地にみずからが王となる支配地を築き、滅んでいくその舞台に堪らなく惹かれたからだ。
ちなみに魅力的なタイトルを持つこの物語は、舞台を東南アジアに移して、あのコッポラの『地獄の黙示録』になっている。つまりロシア皇帝への蜂起の企てで逮捕シベリア流刑になったポーランド貴族の父を持つコンラッドは、以降たった1人でマルセイユに出て、ずっと船乗りで生き、帰化英国人最高の英語作家となったが、かれには「西洋人にとってアフリカとは何か」の問いがあり、コッポラはそれを、「西洋人にとってアジアとは何か」に換骨奪胎したのだろう。いずれも、かれら西洋人にとり、深く、魅惑を秘めた謎なのだと、よく理解される。
また、シベリア抑留8年の戦後詩の石原吉郎には、「ロシアとは何か」の問いがずっと巣食っていた。二葉亭以来、日本人には離れられぬ問いである。戦時下の小林秀雄も、その問いへの容易ならぬ意気ごみを、『ドストエフスキイの生活』執筆開始時に綴っていた。
後者の映画では、数十年後に公開された長尺のノーカットのディレクターズカット版の、雨の立ちこめるベトナム奥地の居留地の不気味で神秘的で倦怠の塗り込める空気感が素晴らしい。

1つ、アフリカに絡む、欧米人のインテリになら必ず受けるぺダンティックな知識を、お教えしよう。
1856年、欧米人ではじめてアフリカ大陸を横断し、ヴィクトリア湖を発見し命名したのはリヴィングストンだが、その後も何度もアフリカ渡航と奥地への探検を繰り返す彼が行方不明になり、ニューヨーク・ヘラルド紙の社長が懸賞金を出して探させたことがあった。
名乗りを挙げたのは、新聞記者のスタンリーである。
苦心惨憺の奥地への探索行で、ついに密林でスタンリーはリヴィングストンを発見する。邦訳版が草思社からでているピーター・フォーバスの『コンゴ河』はその地域の探検史である。ここに書いてきた背景や状況が詳しく綴られている。
このとき、スタンリーが発した言葉が、後に欧米のある種の人びとの間では、有名になった。
貧しい私の経験でも、本などろくに読まない米国の大学生や社会人でも、アイビーリーグの出身者は、「何々さんと、お見受けしますが」という、思いがけない人に会ったとき、場面だけに定番のこの動詞と、それがそう使われるようになった由来は、ちゃんと知っていた。
このように、いろんな本を沢山読んでいると、国籍を超え、仲良しになれる。
”Dr. Livingstone, I presume?”
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