mixiユーザー(id:12923117)
2018年02月23日12:24
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『スリー・ビルボード』感想
３回観て、ようやくこれで感想書けるかなと思い書きました✍
１回目よりも２回目。２回目よりも３回目の方が泣きました。観る度に涙の量が増えていくのは・・・なぜ？
大いなるネタバレあり
鎮火した２つの魂が１台の乗って向かう果てには・・・・
〜アメリカ、ミズーリ州エディング。若い女性がレイプ後に殺害されるという無残な事件が起こる。母親のミルドレッドは、7ヶ月経っても警察が犯人を逮捕することができない状況に憤りを覚え、警察に抗議するため、町はずれに３枚の巨大な広告看板を出す〜
メインの登場人物は、ミルドレッド（フランシス・マクドーナンド）、ウィロビー署長（ウディ・ハレルソン）、ディクソン巡査（サム・ロックウェル）の３人。３人と３枚の看板。
冒頭、ずっと使われていない看板を車中から見ているミルドレッドは、髪をおろしていて、まあ普通の服なんですが、広告を出してからは、髪は束ね、時にバンダナを巻き、服は、ほぼずっとジャンプスーツでまさに戦闘モード。
最初に広告代理店に入ってゆく時も、スローモーションだったり、音楽もあいまって、どこか西部劇の如く。。。
広告の事はテレビニュースで取り上げられ、町の人々にも知れることになるが、署長の人柄を慕う人々からは、反発を招くことになる。
ミルドレッドには悔やんでも悔やみきれない娘との会話があった。
あの時、あの言葉さえ言わなかったら・・・。もっと娘に優しくしてあげていたら・・・。
まさか、あれが娘との最後の会話になろうとは・・・。
その時、元警官の暴力亭主とはすでに離婚していて、父親はそこにいなかったが、息子のロビー（ルーカス・ヘッジス）はその場に居合わせた。
ロビーは姉の事を忘れたくてしょうがないのに、毎日通学（ミルドレッドが送迎）でその看板がいやおうなしに目に入ることとなる。
ある晩、神父が家に訪ねてくる。ミルドレッドを説得に来たのだ。
だが、ミルドレッドはある事件を引き合いに出して「ギャングの一員になれば、自分自身は関与してなくても罪に問われる。神父だって、自分が２階で聖書を読んでいる間に、別の神父が下で少年に性的虐待をしていたら、罪に問われるだろう。そんなやつにつべこべ言われたくない」と神父を追い返してしまう。
神すらも信じられない。信じたくない。。。
このミルドレッドの信念は一貫していて、後半に出てくる、息子ロビーを学校へ送った場面で、自分の車に缶を投げた（と思われる）男子生徒に蹴りをいれた直後、その生徒のみならず、それを見ていた（と思われる）女子生徒をも躊躇なしに、同じ仕打ちをするという。
何もしていなくても、その場にいたから（見ていたから）同罪。。。
また、この繋がりは最後にも重要な伏線となっているのですが、後で書きます。
その広告看板の下に、花を手向けるようになるミルドレッド。
娘が燃やされた、焼死の跡が今も残っているその場所が、娘を弔う場所、心の拠り所となってゆく。
その場所に、突然、美しい鹿が現れる。
「あなたは娘の生まれ変わりなの？違うわよね。でも、どうして、来てくれたの？ありがとう・・・」
「世の中は廃れているし、神はいない。そう思いたくはないけど・・・」
神父は無下に追い払ったミルドレッドが、ここでは、神を信じたいと心をさらけ出す。
この場面では、ミルドレッドはひたすら娘を想う母親で・・・もらい泣き。
ウィロビー署長は膵臓癌を患っていた。
ミルドレッドの娘アンジェラ・ヘイズ事件については、やるべき捜査はすべてやっている。DNAを調べたが犯人がわからなかったと話すが「そんなんじゃ、まだまだ手ぬるい」とミルドレッド。
ウィロビー「俺がもうすぐ死ぬっていうことをわかっていて、広告を出したのか？」
ミルドレッド「そうよ。死んでからじゃ遅いでしょ」
ミルドレッドのこの台詞は・・・おそらく娘に対しての気持ちも入っているのでしょう。
その後、ウィロビーは、歯科医に怪我をさせたミルドレッドを尋問中に、吐血→緊急搬送→その後・・・自宅の馬小屋前で自殺。
自殺直後、馬小屋からウィロビーが飼っていた２頭の馬が出てきて、外で草を食べ始めるんですが・・・この場面が、夜空の下、神聖で幻想的で、とにかく美しいんです！！！
（ウィロビー亡き後、残されたこの２頭の馬は、もしかして、ラストシーンのディクソンとミルドレッドにつながる？）
ディクソンは冒頭から、人種差別の空気をプンプン放ってます。
広告を貼っていたメキシコ人に、小人症の男ジェームズに、土産屋でミルドレッドと働く黒人女性（ドラッグ所持の疑いでディクソンが逮捕）に、そして後半、新しく赴任してきた黒人署長にも、態度がどうしようもありません。
ややたるんだお腹（中に何か詰めていたとか）がいい役作りになっています。
ディクソンは母親と２人暮らしなのですが、かなり癒着している感じです。
母親は、息子が可愛くてしょうがないんでしょうが、息子のために、良からぬ入れ知恵を与えます。
ミルドレッドの元夫チャーリーが19才のガールフレンド（←妙に面白くて清涼剤）を連れて家にやってきます。
チャーリーは相変わらず気が短く、暴力的なところはありますが、娘の死に対しての辛い気持ちはミルドレッドと同じ。。。弱い面も見せます。
ただ「アンジェラは、殺される1週間前、俺と一緒に暮らしたいと言っていたんだ」の一言も。
ミルドレッドはロビーにそれが本当かと尋ねますが、ロビーは「知らない」と言います。
「知ってたのね・・・」とミルドレッド。
この場面では、父親が倒したテーブルを、ロビーが無言のまま元の場所に戻すのを手伝っていたのが印象的でした。
また背後に、表面に絵が描かれている鏡があって、登場人物たちの後ろ姿を映していたのもちょっと気になりました。
ウィロビーが亡くなった後↓
・土産屋にはミルドレッドを脅す男が来る。
・署長を敬愛していたディクソンは、失神後、悲しみが怒りに変わり、そもそもの事の始まりの広告代理店に押し入り、広告板を貸したレッド（ケレイブ・ランドリー・ジョーンズ）を窓から放り投げる。
・新しく赴任してきて、それを目撃していた黒人署長はディクソンを解雇
ウィロビーが残した手紙は３通。妻へ。ミルドレッドへ。ディクソンへ。
それぞれに、愛や謝罪、励ましのメッセージを贈っていた。
ある晩、ミルドレッドとロビーは、３枚の広告が燃えているのを目撃。
懸命に消火するがかなり燃え落ちてしまう。心の支えだった看板が・・・。
「もう手遅れだよ！（消火）やめなよ！」というロビーに母親は叫ぶ。
「ロビーーーーーーーーー！！！（手遅れなんて言わないで・・・。止めないで。消したいのよ。）」
号泣・・・。
ディクソンはウィロビーが残してくれた手紙を署で読んでいるが、そうとは知らないミルドレッドは
そこに報復の火炎瓶を投げ込む。
「お前の欠点はすぐにキレることだ。警察官に最も必要なのは愛だ。そうすれば、もっと良い警察官になれる。」
炎に包まれながらも、ディクソンは改心する気持ちが芽生えてゆく。
ようやく炎に気づき、燃え上がる室内で、なんとかアンジェラ事件ファイルだけは持ち出し、外に転がり出るディクソン。
たまたまそこを通りかかったジェームズが、以前から想いを寄せていたミルドレッドのためにアリバイをでっち上げてくれて、ミルドレッドは逮捕されないで済む。
この炎のシークエンスがまた素晴らしいったら！！！
おさらいしますと・・・。
娘アンジェラは、最後に焼かれて亡くなった
↓
焼け跡に公告看板。弔いの場所
↓
看板が放火される
↓
看板（娘）を守ろうとの必死に消火し、最後には消えない炎の上に立つ、ミルドレッド
↓
同じく炎の中、心を落ち着け、変わりゆくディクソン
↓
２つの炎が消えて・・・
実は火をつけたのは、ディクソンではなく、チャーリー。酔ってかっとなって・・・だったらしい。
19才の彼女の「怒りは怒りをきたす」の言葉に、感心するミルドレッド。
ディクソンは運ばれた病室で、レッドと同室になる。
ディクソンはレッドだとすぐわかるが、レッドは、顔中包帯だらけの男が、自分を放り投げたディクソンだとは全く気づかず「大丈夫かい？オレンジジュースでも飲む？」と優しく接する。
ディクソンは泣きなれがら、自分の正体を明かす。レッドは怒りがこみ上げる・・・が・・・。
次の瞬間、オレンジジュースをコップに注いで、ストローをさし、ディクソンが飲みやすいようにストローの向きまで気を遣ってくれる。
この場面には、やられましたよ。。。コントロール、そして、赦し。
公告にはなんとスペアがあって、後日、また同じ広告を貼ることになります。
これは、ウィロビーが手紙でミルドレッドに「死んでからも自分の名前が残るのは面白い」と以前こっそり広告代も出してくれて勧めてくれたこと。
張り紙を貼るミルドレッドのハシゴを押さえている（←押さえている必要は全くない）ジェームズの気持ちがなんとも切ない・・・。
このハシゴ場面、個人的にツボでした。
ディクソンは、退院後、あるバーでアンジェラ事件の犯人なのでは？という人物と遭遇する。
DNA採取のため、わざとその男の頬を爪で傷つけ、喧嘩となり、またまた負傷するが・・・彼は犯人ではなかった。
でも、その男がある女性をレイプしたクソ野郎であるには間違いない。
ディクソンはミルドレッドに電話して、その男は犯人じゃなかったが、アイダホにいると話す。
するとミルドレッド「偶然ね。私もアイダホに行く用事があるの」
ここです！ここで、前出の伏線の最大の繋がりがあるんです！
銃をミルドレッドの車に積み込むディクソン。運転席に座るミルドレッド。目的は同じ。
銃を撃つのは、おそらくディクソン。でも、ミルドレッドは自分が手を下さなくても、一緒にいることで、おそらく同罪になるわけです。自らも、罪になるのを承知で、ディクソンと一緒にクソ野郎を殺しに行こうと決めたんです。娘を殺した犯人でもないのに。。。運命共同体。
車が動き出してすぐに、ミルドレッドは「警察署に放火したのは自分だ」と告白します。
するとディクソンは驚きもせず「あんた以外に誰がいる？」とあっさり。。。
鎮火した２つの魂が１台の乗って向かう果てには・・・・
殺人か、贖罪か、祈りの道か。。。
くすぶりは消えるのか、くすぶり続けるのか、再び発火するのか。
最後の最後、2人の乗る車が３つの看板の裏側を見せて走りすぎてゆくのですが・・・。
私は、どうにも、その時、看板の表の言葉が変わっているのでは？という気がしてなりませんでした。
看板�、�「ごめんなさい、そして、ありがとう、ウィロビー」
看板�□�「アンジェラ、あなたの事は忘れない」
看板��→「必ず捕まえる。いつか赦しを・・・」
その他印象的だった点
・警察署と広告代理店の立地（向かい合わせ）
・ミルドレッド宅の２つのブランコ（そこから看板３つの裏側が見えている）
・ミルドレッドがウィロビーの手紙を読んでいる時、貨物列車が通る。読み終えた時、遮断機があがる。ウィロビーの残していった言葉の数々が・・・ミルドレッドの心に刻まれ、通り抜けた
・ディクソンがレッドを窓から放り投げる場面のワンカット長回し
・ディクソンはおそらくゲイ。ハッキリとは描かれていないが、ところどころに匂わせている
ちなみに「今かかってるこの曲の歌詞を字幕で出してくれ〜！」って何度も思いました。
その場面場面に絶対関係あるはずだし、意味がわかれば、更に深みも増すだろうに。。。
というわけで、本当に素晴らしい作品です
############################################################################
＜追記＞
監督＆脚本のマーティン・マクドナーですが、私は映画は今回が初めてだったんですが、NTL『ハングマン』で彼の脚本を知っていました。その話というのがこんな感じ↓
「主人公は元死刑執行人。ある日、よそ者がパブにやってきて、主人公の娘をたぶらかし外に連れ出す。娘は帰ってこない。オレが殺したとよそ者。それを聞いた主人公がとった行動！そして娘は・・・」
内容的にはシリアスだと思うんだけど、随所にブラックジョークが散りばめられ、笑いながらも「えっ、なんなの？なんなの？」と終始ゾクゾクする展開で、想像力がガンガン掻き立てられ、ずっと魅了されて、もう面白いったら！！！
本当にすごい脚本だった。なんたる才能！
１回目よりも２回目。２回目よりも３回目の方が泣きました。観る度に涙の量が増えていくのは・・・なぜ？
大いなるネタバレあり
鎮火した２つの魂が１台の乗って向かう果てには・・・・
〜アメリカ、ミズーリ州エディング。若い女性がレイプ後に殺害されるという無残な事件が起こる。母親のミルドレッドは、7ヶ月経っても警察が犯人を逮捕することができない状況に憤りを覚え、警察に抗議するため、町はずれに３枚の巨大な広告看板を出す〜
メインの登場人物は、ミルドレッド（フランシス・マクドーナンド）、ウィロビー署長（ウディ・ハレルソン）、ディクソン巡査（サム・ロックウェル）の３人。３人と３枚の看板。
冒頭、ずっと使われていない看板を車中から見ているミルドレッドは、髪をおろしていて、まあ普通の服なんですが、広告を出してからは、髪は束ね、時にバンダナを巻き、服は、ほぼずっとジャンプスーツでまさに戦闘モード。
最初に広告代理店に入ってゆく時も、スローモーションだったり、音楽もあいまって、どこか西部劇の如く。。。
広告の事はテレビニュースで取り上げられ、町の人々にも知れることになるが、署長の人柄を慕う人々からは、反発を招くことになる。
ミルドレッドには悔やんでも悔やみきれない娘との会話があった。
あの時、あの言葉さえ言わなかったら・・・。もっと娘に優しくしてあげていたら・・・。
まさか、あれが娘との最後の会話になろうとは・・・。
その時、元警官の暴力亭主とはすでに離婚していて、父親はそこにいなかったが、息子のロビー（ルーカス・ヘッジス）はその場に居合わせた。
ロビーは姉の事を忘れたくてしょうがないのに、毎日通学（ミルドレッドが送迎）でその看板がいやおうなしに目に入ることとなる。
ある晩、神父が家に訪ねてくる。ミルドレッドを説得に来たのだ。
だが、ミルドレッドはある事件を引き合いに出して「ギャングの一員になれば、自分自身は関与してなくても罪に問われる。神父だって、自分が２階で聖書を読んでいる間に、別の神父が下で少年に性的虐待をしていたら、罪に問われるだろう。そんなやつにつべこべ言われたくない」と神父を追い返してしまう。
神すらも信じられない。信じたくない。。。
このミルドレッドの信念は一貫していて、後半に出てくる、息子ロビーを学校へ送った場面で、自分の車に缶を投げた（と思われる）男子生徒に蹴りをいれた直後、その生徒のみならず、それを見ていた（と思われる）女子生徒をも躊躇なしに、同じ仕打ちをするという。
何もしていなくても、その場にいたから（見ていたから）同罪。。。
また、この繋がりは最後にも重要な伏線となっているのですが、後で書きます。
その広告看板の下に、花を手向けるようになるミルドレッド。
娘が燃やされた、焼死の跡が今も残っているその場所が、娘を弔う場所、心の拠り所となってゆく。
その場所に、突然、美しい鹿が現れる。
「あなたは娘の生まれ変わりなの？違うわよね。でも、どうして、来てくれたの？ありがとう・・・」
「世の中は廃れているし、神はいない。そう思いたくはないけど・・・」
神父は無下に追い払ったミルドレッドが、ここでは、神を信じたいと心をさらけ出す。
この場面では、ミルドレッドはひたすら娘を想う母親で・・・もらい泣き。
ウィロビー署長は膵臓癌を患っていた。
ミルドレッドの娘アンジェラ・ヘイズ事件については、やるべき捜査はすべてやっている。DNAを調べたが犯人がわからなかったと話すが「そんなんじゃ、まだまだ手ぬるい」とミルドレッド。
ウィロビー「俺がもうすぐ死ぬっていうことをわかっていて、広告を出したのか？」
ミルドレッド「そうよ。死んでからじゃ遅いでしょ」
ミルドレッドのこの台詞は・・・おそらく娘に対しての気持ちも入っているのでしょう。
その後、ウィロビーは、歯科医に怪我をさせたミルドレッドを尋問中に、吐血→緊急搬送→その後・・・自宅の馬小屋前で自殺。
自殺直後、馬小屋からウィロビーが飼っていた２頭の馬が出てきて、外で草を食べ始めるんですが・・・この場面が、夜空の下、神聖で幻想的で、とにかく美しいんです！！！
（ウィロビー亡き後、残されたこの２頭の馬は、もしかして、ラストシーンのディクソンとミルドレッドにつながる？）
ディクソンは冒頭から、人種差別の空気をプンプン放ってます。
広告を貼っていたメキシコ人に、小人症の男ジェームズに、土産屋でミルドレッドと働く黒人女性（ドラッグ所持の疑いでディクソンが逮捕）に、そして後半、新しく赴任してきた黒人署長にも、態度がどうしようもありません。
ややたるんだお腹（中に何か詰めていたとか）がいい役作りになっています。
ディクソンは母親と２人暮らしなのですが、かなり癒着している感じです。
母親は、息子が可愛くてしょうがないんでしょうが、息子のために、良からぬ入れ知恵を与えます。
ミルドレッドの元夫チャーリーが19才のガールフレンド（←妙に面白くて清涼剤）を連れて家にやってきます。
チャーリーは相変わらず気が短く、暴力的なところはありますが、娘の死に対しての辛い気持ちはミルドレッドと同じ。。。弱い面も見せます。
ただ「アンジェラは、殺される1週間前、俺と一緒に暮らしたいと言っていたんだ」の一言も。
ミルドレッドはロビーにそれが本当かと尋ねますが、ロビーは「知らない」と言います。
「知ってたのね・・・」とミルドレッド。
この場面では、父親が倒したテーブルを、ロビーが無言のまま元の場所に戻すのを手伝っていたのが印象的でした。
また背後に、表面に絵が描かれている鏡があって、登場人物たちの後ろ姿を映していたのもちょっと気になりました。
ウィロビーが亡くなった後↓
・土産屋にはミルドレッドを脅す男が来る。
・署長を敬愛していたディクソンは、失神後、悲しみが怒りに変わり、そもそもの事の始まりの広告代理店に押し入り、広告板を貸したレッド（ケレイブ・ランドリー・ジョーンズ）を窓から放り投げる。
・新しく赴任してきて、それを目撃していた黒人署長はディクソンを解雇
ウィロビーが残した手紙は３通。妻へ。ミルドレッドへ。ディクソンへ。
それぞれに、愛や謝罪、励ましのメッセージを贈っていた。
ある晩、ミルドレッドとロビーは、３枚の広告が燃えているのを目撃。
懸命に消火するがかなり燃え落ちてしまう。心の支えだった看板が・・・。
「もう手遅れだよ！（消火）やめなよ！」というロビーに母親は叫ぶ。
「ロビーーーーーーーーー！！！（手遅れなんて言わないで・・・。止めないで。消したいのよ。）」
号泣・・・。
ディクソンはウィロビーが残してくれた手紙を署で読んでいるが、そうとは知らないミルドレッドは
そこに報復の火炎瓶を投げ込む。
「お前の欠点はすぐにキレることだ。警察官に最も必要なのは愛だ。そうすれば、もっと良い警察官になれる。」
炎に包まれながらも、ディクソンは改心する気持ちが芽生えてゆく。
ようやく炎に気づき、燃え上がる室内で、なんとかアンジェラ事件ファイルだけは持ち出し、外に転がり出るディクソン。
たまたまそこを通りかかったジェームズが、以前から想いを寄せていたミルドレッドのためにアリバイをでっち上げてくれて、ミルドレッドは逮捕されないで済む。
この炎のシークエンスがまた素晴らしいったら！！！
おさらいしますと・・・。
娘アンジェラは、最後に焼かれて亡くなった
↓
焼け跡に公告看板。弔いの場所
↓
看板が放火される
↓
看板（娘）を守ろうとの必死に消火し、最後には消えない炎の上に立つ、ミルドレッド
↓
同じく炎の中、心を落ち着け、変わりゆくディクソン
↓
２つの炎が消えて・・・
実は火をつけたのは、ディクソンではなく、チャーリー。酔ってかっとなって・・・だったらしい。
19才の彼女の「怒りは怒りをきたす」の言葉に、感心するミルドレッド。
ディクソンは運ばれた病室で、レッドと同室になる。
ディクソンはレッドだとすぐわかるが、レッドは、顔中包帯だらけの男が、自分を放り投げたディクソンだとは全く気づかず「大丈夫かい？オレンジジュースでも飲む？」と優しく接する。
ディクソンは泣きなれがら、自分の正体を明かす。レッドは怒りがこみ上げる・・・が・・・。
次の瞬間、オレンジジュースをコップに注いで、ストローをさし、ディクソンが飲みやすいようにストローの向きまで気を遣ってくれる。
この場面には、やられましたよ。。。コントロール、そして、赦し。
公告にはなんとスペアがあって、後日、また同じ広告を貼ることになります。
これは、ウィロビーが手紙でミルドレッドに「死んでからも自分の名前が残るのは面白い」と以前こっそり広告代も出してくれて勧めてくれたこと。
張り紙を貼るミルドレッドのハシゴを押さえている（←押さえている必要は全くない）ジェームズの気持ちがなんとも切ない・・・。
このハシゴ場面、個人的にツボでした。
ディクソンは、退院後、あるバーでアンジェラ事件の犯人なのでは？という人物と遭遇する。
DNA採取のため、わざとその男の頬を爪で傷つけ、喧嘩となり、またまた負傷するが・・・彼は犯人ではなかった。
でも、その男がある女性をレイプしたクソ野郎であるには間違いない。
ディクソンはミルドレッドに電話して、その男は犯人じゃなかったが、アイダホにいると話す。
するとミルドレッド「偶然ね。私もアイダホに行く用事があるの」
ここです！ここで、前出の伏線の最大の繋がりがあるんです！
銃をミルドレッドの車に積み込むディクソン。運転席に座るミルドレッド。目的は同じ。
銃を撃つのは、おそらくディクソン。でも、ミルドレッドは自分が手を下さなくても、一緒にいることで、おそらく同罪になるわけです。自らも、罪になるのを承知で、ディクソンと一緒にクソ野郎を殺しに行こうと決めたんです。娘を殺した犯人でもないのに。。。運命共同体。
車が動き出してすぐに、ミルドレッドは「警察署に放火したのは自分だ」と告白します。
するとディクソンは驚きもせず「あんた以外に誰がいる？」とあっさり。。。
鎮火した２つの魂が１台の乗って向かう果てには・・・・
殺人か、贖罪か、祈りの道か。。。
くすぶりは消えるのか、くすぶり続けるのか、再び発火するのか。
最後の最後、2人の乗る車が３つの看板の裏側を見せて走りすぎてゆくのですが・・・。
私は、どうにも、その時、看板の表の言葉が変わっているのでは？という気がしてなりませんでした。
看板�、�「ごめんなさい、そして、ありがとう、ウィロビー」
看板�□�「アンジェラ、あなたの事は忘れない」
看板��→「必ず捕まえる。いつか赦しを・・・」
その他印象的だった点
・警察署と広告代理店の立地（向かい合わせ）
・ミルドレッド宅の２つのブランコ（そこから看板３つの裏側が見えている）
・ミルドレッドがウィロビーの手紙を読んでいる時、貨物列車が通る。読み終えた時、遮断機があがる。ウィロビーの残していった言葉の数々が・・・ミルドレッドの心に刻まれ、通り抜けた
・ディクソンがレッドを窓から放り投げる場面のワンカット長回し
・ディクソンはおそらくゲイ。ハッキリとは描かれていないが、ところどころに匂わせている
ちなみに「今かかってるこの曲の歌詞を字幕で出してくれ〜！」って何度も思いました。
その場面場面に絶対関係あるはずだし、意味がわかれば、更に深みも増すだろうに。。。
というわけで、本当に素晴らしい作品です
############################################################################
＜追記＞
監督＆脚本のマーティン・マクドナーですが、私は映画は今回が初めてだったんですが、NTL『ハングマン』で彼の脚本を知っていました。その話というのがこんな感じ↓
「主人公は元死刑執行人。ある日、よそ者がパブにやってきて、主人公の娘をたぶらかし外に連れ出す。娘は帰ってこない。オレが殺したとよそ者。それを聞いた主人公がとった行動！そして娘は・・・」
内容的にはシリアスだと思うんだけど、随所にブラックジョークが散りばめられ、笑いながらも「えっ、なんなの？なんなの？」と終始ゾクゾクする展開で、想像力がガンガン掻き立てられ、ずっと魅了されて、もう面白いったら！！！
本当にすごい脚本だった。なんたる才能！
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