ビルマ戦詩集 自昭和十九年一月 至昭和二十年一月 吉田嘉七
笹時雨 ー 吉田嘉七 ビルマ戦詩集より
<われらが兵舎は竹藪奥深きあたり、竹の柱を立て掘立て、椰子の葉を葺きて作る。
いぶせしと人言はば言へ。風一たび来たらば、思いもうけぬ風雅、わくら葉屋根に鳴ってこよなし。>
たそがれの竹の仮屋の
小窗よりまろ寝に仰ぐ こまどよりまろねにあおぐ
夕雲はとぎれとぎれて
篁に風のわたりぬ たかむらにかぜのわたりぬ
はらはらと時雨にも似て
竹の葉は枯れて落つるを
ゆくりなくかかる夕べに
ききぬべく我や稚し
杳けさは小暗き宿の はるけさはこくらきやどの
ランプの灯ほのか照れるに
胸逼る故郷の思ひ むねせまるこきやうのおもひ
さやぎては雨ふるごとく
<ヘンサダ市外ネーパン村にて>
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