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2017年08月30日12:21

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北朝鮮ミサイル“標的”は韓国 権力闘争…金政権「3つの本質」とは

 下記は、2017.8.30 付の【李相哲氏講演詳報(1)】です。

                        記

 日本上空を通過するミサイルの発射など、度し難い挑発を北朝鮮はなぜ続けるのか−。アジア近代史などが専門の李相哲・龍谷大学教授は、北朝鮮の本質は「3つの要素」に分類できると指摘する。中国という社会主義国で生まれ育ったからこそ深く理解できる金ファミリー政権の「かたち」を8月23日に大阪市内で行われた講演会(主催・ウェーブ産経)から読み解く。(発言はすべて23日時点)

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■北朝鮮に核兵器を放棄させる、国際的圧力…カギ握るのは結局、金正恩委員長

 8月21日から韓国では米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダム・ガーディアン」を実施しています。兵器を実際に動かしての演習ではなくて、戦争が起こった場合のさまざまな場面、約35パターンを想定して、対応をシミュレーションする訓練です。

 31日までやるのですが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、この10日間に金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が何もしなければ、対話局面に入るのではないかと述べていた。

 つまり金委員長が今までいろんなことをやってきたが、それは不問にして10日間だけ静かにしてくれたらわれわれは話し合う用意があると言ったのです。

 これは非常に問題です。今まで米国や国際社会が金委員長に求めてきたのは、核兵器を放棄しなさいということです。少なくともその意志があれば話し合いには応じると言っていた。

 それがなかなか上手くいかないので、ならば核兵器とミサイル開発を凍結すれば話し合っていいのではないかと。しかし、なお金委員長は聞く耳をもたないので、ミサイルや核実験などの挑発をしなければ話し合ってもいいとなった。

 そして今回の文氏の発言です。「10日間何もしなかったら話し合う」と。ずるずるとトーンダウンしていて、金委員長が思う通りに展開しています。米国のティラーソン国務長官も最近、「さらなる挑発をしなければ話し合う用意がある」とハードルを低くしています。

 残念ながら、この局面をコントロールするというか、キーを握っているのは金委員長なのですね。

 金委員長は1週間ほど前に、韓国の最も西の延坪(ヨンピョン)島から1キロしか離れていない場所で軍の部隊を視察し、その映像が流されている。つまり米国がここまで圧力をかけても、金委員長は全く恐れていない、という大胆さをアピールした。

 こうした金委員長の行動パターン、また北朝鮮が一体何を考えているのかということを多くの方たちが疑問に思っていると思う。そこで、金正恩政権とはどのような政権かを中心にお話をしようと思います。

 この政権の本質は3つあると僕は想定しています。その3つの基準で、金委員長の行為を見ています。

 まず北朝鮮という国は「力」しか怖がらないという国です。これは社会主義国の哲学でもあり、中国もそうです。毛沢東はかつて「権力は銃口から生まれる」と言いましたが、(北朝鮮の)金正日(キム・ジョンイル)総書記も全く同じことを言っている。力から政権が生まれるし、力がなければ政権は維持できないと。

 北朝鮮の場合は、国家目標として70年間、軍事力増強に邁進(まいしん)し、力を蓄えています。経済建設はないがしろにして首都の平壌(ピョンヤン)をショーウインドーと見なし、ここには大きな建物などがあるが、国民は非常に惨めな生活をしている。経済は全て軍事力に注いでいる。

 金正日総書記の著作には「私の力の源泉は軍事力にある」とあります。彼は長らく「先軍政治」、つまり軍がすべてに優先するという政治をやってきた。それは彼の父の金日成(キム・イルソン)国家主席のころからです。

 金日成主席は、朝鮮戦争で1950年6月25日に韓国を一気に制覇しようとして韓国に攻め込み、わずか3日で韓国の首都ソウルを占領するのですが、ここからが問題でした。

 最近、旧ソビエト連邦(現ロシア)の3大資料館のひとつ、社会政治史資料保管所から見つかった資料から、なぜ金日成が一気に韓国南部の都市、釜山(プサン)まで攻め込まなかったかが分かりました。一言で言うと、当時の北朝鮮にはそこまでの力がなかった。

 当時、北朝鮮が頼りにしたのはソ連の武器であったのに、ソ連の最高指導者のスターリンは武器を約束通りに送らなかった。これに関して、金日成は後に直筆の文書を残しています。その3日間が自分の人生で痛恨のミスだったと。一気に釜山まで攻め込み韓国全土を占領していたら、米国は以後、朝鮮半島に介入できなかったのに、と。

 さらに、こうも記しています。ソ連はなんでもわれわれに対価を求めて支援をしてきた。日本が撤退したあとソ連が入ってきて発電所や製鉄所の設備を全て撤去し、設計図面まで奪っていった。鉄道のレールまで奪っていこうとしているのを私が阻止した、というのです。

 そこから金日成は悟ったのでしょう。国家の方針を国防建設に全て注ぎ込むことを決めます。

■「社会主義の優等生」正当化…韓国ソウル五輪に対抗し“借金”

 北朝鮮の歴史を概観してみると、内部での権力闘争は国防・軍備を優先するか、国民生活を優先するかで起こっている。

 金日成は1912年生まれなので1972年には還暦を迎えました。韓国、朝鮮の人たちにとって60歳の還暦はとても大事な節目の年なのです。彼は常に周辺に「72年の還暦祝いはソウルでやる」と言っていた。

 当時、米国はベトナム戦争で苦戦し、ニクソン大統領はアジアから軍備を縮小するとの方針を打ち出していた時期です。朝鮮戦争後金日成は中国の周恩来首相と何度も話し合い、もう一度ソウルに攻め込みたいと主張していた。

 北朝鮮は国民経済の30%以上をつぎ込んで武器をつくり、ソ連からも武器を買ったが、1970年代後半から80年代にかけて経済状態が韓国と逆転し、このままでは韓国に負けるのではないかという状況になった。

 決定的なきっかけは1988年のソウル五輪です。それまで北朝鮮は社会主義経済の優等生とされ、韓国と競う国とみられていた。

 そこで、豊かさで韓国に勝っていることをアピールするため、金日成は1989年に「世界学生青年祭典」というものを首都の平壌で開催します。金日成は、とにかくソウル五輪より大きくしろということで、15万人を収容できるスタジアムを造ったり、凱旋(がいせん)門を造ったり、世界190以上の国・地域から1万2千人以上を無料で招待した。推定で約50億ドルを使ったといわれています。

 北朝鮮経済は当時、国民総生産(GNP)が300億ドルもない国です。なのに50億ドルもの現金を祭典につぎ込んだため、一気に経済が悪化してしまった。これ以降、経済発展は完璧に韓国に負けます。

 このため、韓国に勝ってきた武器システム−潜水艦や戦車の数、戦闘機の質などでも、勝ち続けるのは到底無理になった。

 そこで彼らが注力したのが非対称武器、つまり生物化学兵器です。これは貧者の武器といわれる、とても恐ろしい兵器です。そして核兵器とミサイルの開発に邁進する。

 今日の北朝鮮の問題の根源は、韓国に優位に立とうと突っ走ってきた結果です。北朝鮮のミサイル開発は米軍に対抗するためのものだというような一部の評論家の声がありますが、これは全く間違っています。 1にも2にも3にも、ミサイルの目標は韓国です。

 ではなぜ長射程の大陸間弾道ミサイルを開発するかというと、彼ら北朝鮮は、自分たちのやり方で韓国を軍事的に制覇できるのに、米国が邪魔をするとみている。だから米国をこの朝鮮半島問題から切り離すために弾道ミサイルを開発、実験しているのです。

 関与すればミサイルを打ち込まれる可能性があるぞと。米国は駐留軍を韓国から撤収することもありえる岐路に立っている。

 そういう意味で彼らは核開発をしてきたが、政権の力の源泉もまた核兵器にあるともいえる。だから金委員長が命綱である核兵器を放棄することは全くない。=(2)に続く

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 【プロフィル】李相哲(り・そうてつ) 中国黒竜江省生まれ。中国で新聞記者を経て1987年に来日。上智大学大学院博士課程修了(新聞学博士)。主な著書に産経新聞に「秘録金正日」として連載した「金正日秘録 なぜ正恩体制は崩壊しないのか」(産経新聞出版)、「朴槿恵の挑戦」(中央公論新社)。

 http://www.sankei.com/west/news/170830/wst1708300026-n1.html
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