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2016年10月24日17:24

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日本発の光格子時計 相対性理論で標高差を測定 次世代の世界標準に期待

 下記は、2016.10.24 付の産経ニュース【科学】です。

                      記

 超高精度の「光格子時計」を使って2つの場所の標高差を測定することに、香取秀俊東大教授らのチームが成功した。重力が違うと時間の進み方が変わるというアインシュタインの相対性理論に基づく成果だ。地殻変動の精密観測などで防災に役立つと期待されている。(草下健夫)

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重力で時間に遅れ

 光格子時計は香取氏が2001年に提唱した超精密な次世代時計。ストロンチウム原子が特定の周波数の光を吸収する性質を利用して時間を計る。1秒の長さを定める国際基準で使われているセシウム原子時計と比べ、約100倍の高精度を誇る。

 一般相対性理論によると、標高の低い場所は重力が大きいため、高い場所より時間がゆっくり進む。この違いを日常生活で感じることはないが、チームは数百億年当たり1秒しか狂わない性能を持つ光格子時計なら、わずかな時間変化でも検知できるとみて検証実験に挑んだ。

 直線距離で15キロ離れた東大(東京都文京区)と理化学研究所(埼玉県和光市)に光格子時計をそれぞれ設置。光ファイバーで結んで比較したところ、東大の時計は周波数がわずかに低かった。

 周波数は時間当たりの振動数を示しており、換算すると東大の時計は3日間で0・4ナノ秒(ナノは10億分の1)だけ時間の進み方が遅いことが判明。この差から、東大の標高は理研より15・16メートル低いとの測定結果を得た。

 国土地理院の測量結果と比べたところ、標高の誤差はわずか5センチ以内。遠隔地に置いた時計で標高差を精密に測定できたのは世界初という。通常の測量は時間がかかる上、長距離になるほど誤差が大きくなるが、今回の手法は短時間で済み、長距離でも誤差が拡大しない利点がある。

けた違いの精度

 セシウム原子時計は誤差が3千万年に1秒と、日常生活には十分な精度を持つ。しかし近年、極微の世界を扱う量子力学や素粒子物理学の発展に伴い、けた違いに精密な時計が求められるようになってきた。

 そこで香取氏はセシウム原子より周波数が高く、精密に時間を計れるストロンチウム原子に着目。時計内部でストロンチウム原子をしっかり静止させ、電気などの雑音により周波数が狂わないようにすることが技術の鍵だった。

 このためレーザー光を6方向から当て、光の波でできた格子状の器をたくさん作り、そこに原子を1個ずつ閉じ込める方法を採用。この方法は多くの原子の周波数を同時に計測して平均を求めることで、誤差や計測時間を減らせる利点がある。03年に基礎実験に成功。14年には宇宙誕生から現在までの138億年で約0・5秒しか誤差が出ない超高精度を達成した。

対抗馬は米国

 1秒の長さは、新たな世界標準づくりに向けた検討が既に始まっており、国際機関が約10年後に決定する見通し。光格子時計は新基準で使う次世代時計の有力候補と期待されている。

 対抗馬は米国で1980年代に考案された「単一イオン光時計」。一時はセシウム原子時計の後継となることが確実視され、この2種類の時計の考案者らは89年にノーベル物理学賞を同時に受賞した。

 ただ、単一イオン光時計の弱点は計測に多くの回数が必要で、10日以上もかかってしまうことだ。光格子時計は後発だが、わずか1秒で計測できるという。香取氏は「世界で20以上のグループが光格子時計の開発を進めている点では圧倒的に優勢」と自信をにじませる。

 光格子時計はさまざまな用途が考えられている。全国各地に設置し、標高の基準となる水準点として利用すれば、地殻変動を精密に観測できる可能性がある。香取氏は「火山活動やプレート(岩板)の動きを監視でき、防災に役立つ」と話す。

 セシウム原子時計はカーナビゲーションや携帯電話を実現させ、社会を大きく変えた。はるかに精密な光格子時計は、超高精度のカーナビや自動運転の実用化をもたらすかもしれない。日本発の次世代時計は、想像もできない便利な世の中を生み出す可能性を秘めている。
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 http://www.sankei.com/life/news/161024/lif1610240029-n1.html
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