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2016年07月21日00:04

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ドラマ24『アオイホノオ』

 知ると見たくなってしまうので、新しく始まるドラマの情報は見ないようにしています。じゃあ、評価の定まったドラマを厳選して再放送で見るとかというとそうでもなく、結局、事前の情報を入れたくないのでなんとなく適当に再放送を選んで見ています。

 われながら意味不明なことに気づきましたが、とりあえず、新しいドラマを見ないことでテレビの視聴時間に一定の歯止めをかけているのだと思います。あまりテレビばかり見ているわけにはいかないので。子どものころから、ずっと言われてますけど。

 そんななか、今季はちょうど2年前に放送されたドラマ24の『アオイホノオ』を見ています。脚本と監督が勇者ヨシヒコシリーズや『33分探偵』、最近だと『ニーチェ先生』の福田雄一だったので、つい録画してしまいました。

 原作は島本和彦による同名の自伝的マンガで、1980年に作者こと焔モユルが大阪芸術大学に入学してきたところから物語は始まります。この年のこの大学の新入生はすごくて、庵野秀明・山賀博之・赤井孝美といった後にガイナックスを立ち上げる面々を擁していました。特に庵野秀明(いちおう実在の人物をモデルにした架空のキャラクターなので、ドラマ上の表記は庵野ヒデアキといったように下の名前はカタカナになっています)は、最初の課題であるパラパラマンガで緻密にしてダイナミック、学生の水準をはるかに超えた作品を提出してクラスの話題をさらい、グループワークによる映像作品でもツボをおさえた演出で学生らしからぬ特撮を制作、力の差を見せつけて焔モユルを絶望のどん底へ叩き落とします。

 主人公が映画『銀河鉄道999』に登場したキャプテン・ハーロックの歩き方を真似ていると、
「作画枚数を考慮しないときちんとした真似はできないぞ」
 ともっとうまく真似てみせたりもします。ドラマ中に差し挟まれる主人公による同時代の作品への論評は鋭いのですが、あくまで受け手による凝視の視線によるものでしかない一方、庵野ヒデアキは具体的な制作手順が実際の表現へいかなる影響を及ぼすかまで視野に収めており、ここでもその差は歴然としています。

 そんなキツい連中に揉まれつつ、実体験に欠ける学生ゆえの万能感と無力感の間の激しい行き来が、島本タッチを彷彿とさせる実写映像で展開されていきます。

 主人公の焔モユルを演じるのは、14歳でカンヌの男優賞を受賞した柳楽優弥。島本タッチを実写で再現しようとすると、たいていしょっぱいことにしかならないと思うのですが、絶叫して通行人を薙ぎ倒しながらキャンパスを全力疾走したり、眉間にしわをよせ虚空をにらむ顔をアップで撮られたりしつつ、ちゃんと成立させているところが本当にすごいと思います。さすが、カンヌ俳優。演技のベクトルはカンヌとは真逆でしょうが。

 俳優陣は他に庵野ヒデアキが安田顕、山賀ヒロユキは福田雄一作品常連のムロツヨシなど、曲者ぞろいで各シーンをコントみたいに見ていってもおもしろいと思うのですが、この舞台そのものが80年代アニメ・サブカルチャー史のメインステージの一つでもあるわけで、そういう文化史っぽい見方でも楽しめるんじゃないかと期待しています。


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