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2016年05月12日05:58

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小説・限無幻夢 (時間旅行 5)

小説・限無幻夢 (時間旅行 5)
 人は偶然によって生かされるものかも知れない。自分を含め人の心に巣くう悪意や狡さを嫌って、俺は極力人との交わりを避けて来た。我慢の限界に来るとすぐに転職し、関係を切り捨てて来た。なんとなく始めた写真を趣味に、暇さえあれば歩き回り、目につくもの感じたものにシャッターを押す。現像し、プリントし、写っているのを確かめるとそれで終わり。ネガもプリントもゴミに出してしまう。撮るのが目的であって撮った後はどうでもいい。
 そうして歩き回っている頃、大学の正門前にある喫茶店が休憩の場所であり食事をする場所だった。最初は日替わりのモーニングとカレーしか無かった。俺は休みの度にモーニングを食べ、歩き回って空腹になるとカレーを食べる。丸顔の幼い顔をしたママさんがいた。不思議なママさんだった。いたずら好きで、モーニングセットのコーヒーカップを空のまま持って来たりする。無邪気に客がどんな反応をするかを楽しみたいのだ。
「あら?今日のコーヒーは透明なのね。これは珍しいからあなたにはやらない、わたしが飲む」
 驚く客に微笑んでカップを下げ、アルバイトの娘が持って来た本物のコーヒーと交換する。悪意が無いから客は憎まない。またか・・と笑う。
 学生たちの名物ママさんであり、珍しく俺が親しんだママさんである。不思議と流行り、道路を隔てた材木屋の社長がビルを建てて、2階でレストランをとしてくれないかと頼んで来た。それを受けるかどうかを、なぜか俺に聞いて来た。
「どうしたらいいと思う?」
「俺に聞かれたって・・俺は素人だよ」
「素人の意見を聞かせてよ。透明のコーヒーをおごるから・・」
「透明のコーヒーよりは出し殻コーヒーが良い」
「契約成立・・で、どうする?」
「どうするって?・・学生相手だろう・安くてボリュームを多くって要求されて儲からないよ。多分・・」
「学生相手で無い店にしようか?」
「でも学生しかいないぜ」
 そんな話しがあって、偶然腕の良いコックが共同経営したいと言いだし、前の店はつぶして駐車場にし、レストラン経営に切り替えた。
 素人の俺はなぜかオープンスタッフとして開店準備にかかわり、ちょっと無理すれば学生も来れるような店の方がいい、料理の写真をメニューに載せたらどうか?味だけでなく見栄えのユニークさも客を集めるのでないか?などと思い付きをしゃべり、結局、ドリンク担当兼カメラマンとして従業員になったのだ。(続く)


わーい(嬉しい顔)クウネル日記目がハート
 週末までは天気が良さそうですね。昨日は日差しがさほど強くないと言うのと、新聞に野尻湖の観光バラ園が6〜7分咲きと書いてあったので、もう一度バラに挑戦と車を走らせました。
 が・・事前調査をしない癖はいけませんね。なんと定休日でした(笑)クウネルらしい?(笑)
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