「ギ!ギーッ、ガッタンバッコン、ガタガタガタ・・・コローン」・・・。
先週以上にひどい音がして、今日も入口のドアがきしみ、ボクの来店を知らせてくれた。
「いらっしゃ〜い♪あは!じょ、じょ、じょらんじゃないのよね〜!」
ん?このしゃべりかたは、まさか??どうも気になるなあ・・・。
「ホットひとつ。それからナポリタンもね。パセリ多めにつけてちょうだい」
ここの珈琲はかなり濃いめの焙煎で、コクがあり、砂糖だけで飲むほうが、薫りも楽しめるのだ。
昔から、喫茶店で作るナポリタンの、あのチープな味が忘れられず、頼んでしまう。
中味は、ピーマン・タマネギ・ハムと、いたってシンプルなのだが、そのいいかげんなところが、また独特の魅力を作っている。
薄暗い店内から聞えてくる有線放送からは、プロコルハルムの「青い影」が静かに流れていた。
続けて流れたのが、ハプニングス・フォーの「あなたが欲しい」・・・ほとんど同じような曲だが、名曲ではある・・・きっとインスパイアされて作った曲なんだろうなあ?
アルファードとして活動した3年間、ジャズ喫茶では、ハプニングス・フォーとの対バンも多かった。
彼らのステージ、ベースのぺぺさん以外のメンバーは、ほとんどしゃべらなかったなぁ。
ヴォーカルのトメさんは、時々ギターも弾いていたっけ。
ボクはいま、残念ながら声帯が細くなってしまって、まともに歌えないが、ダイナマイツの瀬川さんの声量は、とてもワイルドですごかった。
きっと、とても丈夫で長持ちのする声帯を持っていたのだろう。
どう考えても、壊れそうにない強い強いiパワーを感じた。
瀬川さんは、今でもライブ・ハウスで歌っているらしい。
ボクらはビートルズやストーンズはもちろん、C・C・R(クリーデンス・クリアウオーター・リバイバル)、ビージーズなどをレパートリーにすることが多かった。
その選曲は、ザ・タイガースとも似かよっていたようだ。
サリーがのっぽに来た時に「好きなジャンルはなんですか?」と聞いてみた。
「う〜ん・・・やっぱ、ソウルやね」という答えに影響されて、オーティス・レディングはもちろん、サム&デイブやベン・E・キング、パーシー・スレッジなどを聞いたが、このノリのいい曲たちは、構成は単純ではあるが、なかなか難しかった。
井上宗孝とシャープファイブも共演することが多かったバンドだが、ドラムの井上さんとキーボードの古屋さん以外はしゃべったこともなかった。
まあ、インストとボーカル・グループでは、あまり共通点もなかったのだ。
ジャズ喫茶では、タイガースやワイルド・ワンズのように、ワン・バンドで勝負できるグループの他は、2バンドがステージに立つので、アンプなどの楽器も倍になる。
アンプはほとんど真空管なので、飛んでしまったときなんか、借りることができて便利だった。
ドラムは場所をとるので、ワンセットだけセッティングしておいて、バンド・チェンジごとに、スネアだけ自前に変えて、その他の微妙な部分も調整する。
ボクはよく知らなかったけど、バス・ドラのペダルも変えていたのかも知れないな。
喫茶店の斜め前の席に座ったボディコンの女性が気になる・・・あ、足を組みかえたぞ!
「お兄さん、レスカくれる?」
「あいよ〜♪」
お兄さんと呼ばれたおじいさんマスターは、クシャクシャなニコニコ顔で、大喜びだ。
「マスター!バンドやってたらしいけど、パートは何やってたの?」
「最初はサイド・ギターで、そのうちバンド事情でベースになっちゃった」
「アニキっていう、ちょっとキザなやつがボーカルでさ」
「え!アニキ!?俺もアニキっていうんだけど・・・」
「なにそれ!?アニキ??え〜!!こんなにおじいさんじゃなかったよ?」
「・・・・・・・・・・・(キミに言われたくないのだ)」
1972年頃のニューACBライブ音源です。
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