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2015年10月10日15:16

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もうひとつの『海街ダイアリー』。

『3月のライオン』第11巻読了。

ま、一部御仁から「そっくり」認定を
受けた悪役の退治が眼目の一巻。

なるほど、こういう風に見え、聞こえる
のか、と腑に落ちる処も多く。

若干落ち込む。
心当たり、ありまくるしなぁ。

そんなこんなで、滅茶苦茶時間の掛かる
読書であったが。

とても、面白かった。

ラスト近くの撃退劇が展開する橋の途上。
川本三姉妹と桐山の前に現れた
妻子捨男(仮名)が手を引いていたのが、
川本家を棄てて所帯を持って出来た娘
(更にそれを棄て、川本家に押し付ける事で
別の女と逃げようと思っている)。

最終的に、捨男(仮名)はあかり、ひなたに
完全に拒絶される事で、その事態から
「逃げる」。

連れてきた娘と手を繋いで。

これは、「外敵」の排除の成功による
ハッピーエンドだ(無論、これは物語の
構造のみのお話。「家族」である事の
厄介さ、解決の困難の血の滲むような描写は
特筆に値する。そして、それが決して
「平穏の恢復」などでは無い、という事も)。

「外敵」とその娘は、物語から退場した。

ここで、ひとつの作品を思い出した。

親に捨てられた三人姉妹。その前に
現れる捨てた父親が別の女性と持った
1人の娘。

三姉妹は、行き場の無い娘を引き取り、
共に暮らし始め、「家族」となっていく。

吉田秋生の『海街ダイアリー』だった。

美しい傑作で、『ラヴァーズ・キス』の
スピンオフという点からも注目していた。

当然、『3月のライオン』と
『海街ダイアリー』は別の作品だ。
構造だけを取り出して比較する事は
馬鹿げている。構造だけでも「父親の
生死」が異なり、その父親が
『3月のライオン』の外敵であったの
だから、その時点で相違は明白。

だがしかし。

『3月のライオン』が素晴らしく、
凄まじい作品であるが故に、
ある登場人物の物語からの退場が
どうしても「それだけ」には思えない。

この「喚起力」こそが素晴らしい作品の
条件の一つであり、だからこそ
『3月のライオン』は素晴らしい
(循環論法(笑))。

あの、夕陽の滲む街に、最低の父親
(彼は早晩この娘を「棄てる」)に
手を引かれ、物語から恐らくは
永遠に消えるであろう少女の。

未来が豊かであって欲しい、と
願ってやまない。

この少女が『海街ダイアリー』のすずとは
別の形で幸せになっていてくれたら、
と思う。

後の羽海野チカ作品で少女(らしき人でも
良い)が登場してくれたら、嬉しいなぁ。
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