mixiユーザー(id:5456296)

2015年03月30日13:10

375 view

サウジがイエメンに軍事介入:新たな中東戦争の恐れ

 下記は、2015.3.30付のJBpressに掲載された、 Financial Times の記事です。

                         記

                      (2015年3月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 イエメン内戦へのサウジアラビアの軍事介入は、スンニ派アラブ諸国がシーア派の競合国イランと対峙する一触即発の冷戦を激化させている。

 3月26日早朝に行われたサウジアラビアの戦闘機による空爆は、イエメンの防空網や、イエメン国内の多くの領土を制圧したシーア派武装組織「フーシ」の政治拠点のほか、フーシの協力者であるアリ・アブドラ・サレハ元大統領に忠実な特殊部隊の拠点を狙った。

 軍事攻撃を指揮したのは、今年1月に王位を継承したサルマン国王の息子で防衛相のムハンマド・ビン・サルマン王子だ。フーシの民兵部隊は、イエメン北部の山岳地帯の拠点からサウジアラビアにロケット弾を発射して応戦したと述べた。

 対立が激化する中、イスラム教スンニ派の10カ国連合が支援するサウジの介入が地域の戦火拡大に火を付けるとの不安がある。

 空爆から数時間内に、イランの外相は軍事行動を非難し、戦闘停止を求める声明を発表した。イランの代理勢力であるレバノンのヒズボラも、イエメン国内での「不当な攻撃」を非難した。

 終わりの見えない紛争

 「今回の介入の政治的道筋が明確でないため、事態がエスカレートする道が見て取れる」。元駐サウジアラビア英国大使で、英国のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)中東オフィス代表のジョン・ジェンキンス氏はこう言う。「これがどこで終わるのか、分からない」

 サウジアラビアとイランは長年対立しており、イラクやシリアなどの戦場で、双方の代理勢力が戦いを繰り広げてきた。ここへ来て、サウジ軍がイランの代理人と見なすフーシの民兵組織を直接攻撃しており、この対立が他国を巻き込むのではないかという不安を招いている。

 今回の空爆を受け、湾岸諸国はすでに国内の安全保障対策を強化している。例えば、石油輸出国クウェートは、国内の石油施設周辺の治安対策を強化した。やはり懸念されているのは、イエメンの混乱によってジハード(聖戦)主義者のグループがスルタン(国王)の健康不安を利用するのではないかという懸念がある隣国オマーンだ。

 緊張は、イラク国内での「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」との戦いをさらに複雑にする可能性がある。イランはこのジハード集団と戦うシーア派民兵組織を支援している。一方で、サウジアラビアは、ISISへの空爆を実行している米国主導の連合軍の一員だが、イラク政府内のイランの影響力について不安を表明している。

 今回の混乱に「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」がつけ込むとの不安もある。AQAPは欧米で攻撃を実行すると脅している、イエメン中部および南東部の強力な勢力だ。

 「現時点では、地域の大国を巻き込む恐れのあるどんな対立も、ただでさえ不安定な地域に壊滅的な影響を与える可能性がある」とノッティンガム・トレント大学のテロ専門家、ナターシャ・アンダーヒル氏は言う。

 このような不安定さの中で、サウジアラビア政府は、イランは介入せず、その結果フーシが交渉のテーブルに着かざるを得なくなると確信しているように見える。サウジは、フーシのミサイル攻撃能力と防空網を弱体化し、イエメンに対する連合軍の空の優位性を確保している。

 サウジアラビアは、船舶に対してもイエメンに上陸しないよう警告し、フーシに武器を与えるイランの試みを抑え込んでいる。

 「湾岸諸国は金融、政治両面の圧力を試み、今度は空爆を行った。さらには地上侵攻の脅威もある」。アラブ首長国連邦(UAE)を本拠とする政治アナリスト、アブドルハレク・アブドラ氏はこう話す。

 期限の迫るイラン核協議に影響する恐れ

 「イランが戦火に巻き込まれる危険性もあるが、イランが戦闘から多くのものを得るとは思えない。イランにしてみれば、イエメンは遠く離れており、優先事項ではない。彼らはイラク国内の本当の脅威やISISの脅威から注意をそらしたくないと思っている」

 イランは数日内に、経済制裁の段階的緩和と引き換えに、米国その他の核保有国と核開発問題に関する合意を結びたいと思っている。

 だが、地上侵攻の脅威はイランを刺激する恐れがある、とアナリストらは言う。サウジはイエメンと隣接する南部国境――サーダという北部の町周辺のフーシの中核拠点に隣接する地域――に向けて数千人の部隊と重装備の装甲車両を移動させている。

 侵攻は恐らく、反フーシのスンニ派部族が拠点を置く、マアリブやジョウフといった北部の州を通ることになるだろう。だが、フーシの民兵組織やサレハ氏に忠実な武装部隊と戦う試みは危険が伴う。

 IHSカントリーリスクの中東分析の責任者を務めるフィラス・アビ・アリ氏は、シーア派アラブ諸国の連合軍が、「地の利が大きな強みになる山岳地域の戦いでフーシとその協力者に対抗できる可能性は低い」と言う。

 そのような試みがあればイランの支援を促すことになり、報復のエスカレーションの悪循環を招く恐れがあるという。

By Simeon Kerr in Dubaiコピーライト The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. Please do not cut andpaste FT articles and redistribute by email or post to the web.

  http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43341
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する